Apr 30, 2022

春たけて そのさん

a1

夕暮れになり、ルビーはアンを呼び出して、
明日研究所に帰ることになると告げた。
アンのお面の表情からは何も読み取れない。


a2

さっそく動物たちが寄ってきて、
アンに挨拶している。
アンもテレパシーで答えているようだ。


a3

でもさっきは驚いたわ。
倉庫にこもって何してるかと思ったら、
あんな女の子と遊んでたなんて。

アノ子ハ、人間デハアリマセン。
私ガ、ミュー、ト名付ケタ、ロボットナノデス。
え、そうだったの。
そうか、あなた倉庫であの子を作ってたのね。


a4

燃料の水持ってきたよ。と言いながら、
ジョウロとポリタンクを下げて
アイスがやってきた。

あれから夢見の水補給してたけど、
今日は普通の水でいいんだね。
ハイ。ヨロシクオ願イシマス。


a5

水の補給を受けながら、
アンが打ち明けた話の内容は
二人には驚くべきことだった。
かって(正確には3月16日)、アイスがアンに
間違えて夢見の水を補給してしまったせいで、
研究所のバトラー博士たちが開発中で
アンに搭載されていた超認識回路、
KSシステムのロックが解除され、
未知の能力が備わってしまい、
動物たちと会話できるようになったほか、
アンの知能レベルが格段に向上した。
アンはやがて自分が研究所に戻されると
知っていたので、この能力が知られれば、
重大な結果を招くと予測して、
秘密を守るために、
ある計画を実行することにした。
それは、自分のコピーロボットを作り、
そのロボットに自分の全ての記憶情報を
保存した上で、自分の記憶をリセットし、
代わりに疑似記憶をセットしておく、
というものだった。
そのための準備は全て終えており、
あとは体から夢見の水の効果がなくなるのを
待つばかりなのだとアンは言った。


a6

動物たちはもうアンに呼びかけても
何も答えてくれなくなったので
がっかりしているようだ。


a7

ゴキゲンヨウ。オヤスミナサイ。

そういうと、アンはドルフィンに戻っていった。
アンは、もうセリフで漢字が使えなくなっている
ようだったが、さすがに誰も気づかなかった。


a8

しかし一部始終を見聞きしていた
黒猫が一匹、屋根に駆け上がり。


a9

たまには猫に変身して
夜遊びするのもいいものね。
なんだか面白そうな話だったわ。
と言っている。


解説)
今日は雨で
気温が下がりました。
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Apr 29, 2022

春たけて そのに

a1

ジョー軍曹の言葉遣いって丁寧だね。
エルマとは大違い。
エルマが普通でしょ。
それで軍曹どうしたの。
屋台で肉まんとベーカリーで
カメロンパンたくさん買って
みんなに配るって異界に戻っていったよ。
軍曹らしいね。
これからは、いつでも来られるから
また来るって言ってた。


a2

メアリー・シェリー博士!
ああ、ドロレス元気そうね。
エリスは事務所にいる?
はい。
今度のお手伝いは、エリスに頼まれたから、
一応報告しとかなくちゃって寄ってみたの。
でも、実際にはアンがあなたに私を呼んでほしいと言って、
あなたがエリスに頼んで私を呼んだそうね。
ええ、エリスさんと博士は親しいし、
私が直接博士と接触するのは危険だとアンが。
ええ、その判断は正解。
ともかく事務所に行きましょう。


a3

ロボットがロボットを作るなんて。
それも工作機械みたいなものじゃないんでしょう。
ええ。人型ロボットで、知能もある。
それで完成したの?
なんとかね。あとは動力源に水を使うんだけど。
それが特殊な水で、この界隈で
夢見の水って言われている水。
それを注入すれば稼働するって、
アンが言ってる。


a4

人型ロボットって、
メアリーのやってる研究分野そのものね。
なるほど、それで頼んだのか。


a5

爆発事故以来ほそぼそやってた研究が
役に立ったわ。
最新型のボディーは私のところから運んだの。
で、頭の部分はね。
ドルフィンの倉庫に保管されてたのを
アンが見つけ出してきて、それを使うことにした。
よくそんなの見つけたね。
以前、研究所のロボットが暴走して
軍の特殊部隊やCGが出動して破壊したことが
あったの覚えてる?
その時のロボットのヘッドの部分が
外側だけ残っていたのよ。
顔のデザインは私が担当したものだったから、
なんだか感慨深いわ。
アンはそのいきさつも知ってたみたい。
アンの知能はちょっと計り知れないよ。


a6

ベーカリー前では、
ソローが台車で樽を運んでいた。

それって、夢見の水?
今月分はもう貰ってるけど。
アンに頼まれて倉庫に運ぶんです。


a7

さっき、ロボット研究所の
バトラー博士から連絡があって、
明日アンを引き取りに来るそうです。


a8

アンをここで預かったのが、2月の27日だったから、
ほぼ二ヶ月の試験運用期間が終わったということだね。
アンは最近倉庫にこもって何か工作してるみたいだけど、
自分の回収を予期して、何か記念になるものでも
残そうとしてるのかもしれない。
ロボットって言っても
アンの意識は人間と変わらないから、
なんだか健気というか。
アンには私から伝えるわ。
とルビーが言った。


a9

ねえ、魔法使いがいるっていうことは、
魔女も存在するっていうこと?

それはもう当然。
とエヴァが答えている。


解説)
アンの登場は今年の2月24日の
「春を待つロボット」からでした。
早いものです。
今回も流れのままに。
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Apr 28, 2022

春たけて

a1

ジョー軍曹がモモコとたまきと話している。


a2

お二人とも、懐かしいですね。
たまきさんはスイカ柄の服を着てましたよね。
スイカによろしくってエルマが言ってました。
モモコさんは、怪物をものすごい声で
退散させた活躍が印象に残ってますけど、
最初はパトロールボートから降りて来られたのでした。


a3

エルマはね。もー。
ちゃんと名前覚えるように言っといてよ。
わたし、すぐ気を失っちゃったけど、
あの時もらったこの拳銃、
今も身につけてるよ。とたまきが言った。

最初は船に乗ってる夢だったから。それから、
あの声は、わたしの地声じゃなくて、
エリコっていうエイリアンの友達の声なのよ。
とモモコは必死に弁明している。


a4

ベーカリー前では
リリスが鏡に映る自分の姿に見入っていた。
こういうショットも面白いなあ。
という誰かの声が聞こえたような気がしたが、
気のせいだと思ったのだった。


a5

ヘルミーネは鉢植えを覗き込んでいる。


a6

植物に興味がおありなの。
とルルが話しかけた。
ええ、ずっと昔ですけど、
すごく園芸の好きな作家のお宅で、
お世話になっていたことがあって。


a7

変わった建物ができたおかげで、
すっかり日陰になっちゃって。
と言われながら、
ヘルミーネは水やりを手伝っている。


a8

おや、これは珍しい。
シェリー博士ではないですか。
あ、マスター。


a9

今ね、お宅に同居してるアンっていう
ロボットがいるでしょう。
今日は友人に頼まれて、彼女の手伝いに来たの。

アンといえば、最近はずっと
倉庫にこもって顔を見せないなあ。
機械を持ち込んで何やらやってるようですが。

それがね。なんとロボットを作ってるのよ。
アンの人工知能はすごく優秀で、
基本になっている思考回路が、
独自の自己進化を遂げてるみたいなの。
専門家の私でも理解できない部分があって、
それでここでちょっと勉強してたのよ。
あ、今の話は内密にね。


解説)
シェリー博士の持っている豆本も
秋葉原のフィギア売り場で見つけたもので、
各ページに英文が印刷されています。
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Apr 27, 2022

新緑の頃 そのはち

a1

そのボンベ、どうするの。
ドルフィンの倉庫に搬入するんだ。
アンに頼まれたんだよ。


a2

あのこ、倉庫の一画に
いろんな機械を運び入れて作業場のようにしてるみたい。
何か作ってるのかしら。
ロボットの考えてることはわかんないわ。


a3

ジョー軍曹は、
アイスとベランダに登っていた。

ここは見晴らしがいいね。


a4

でも、なぜか遠くはいつも靄ってるのよ(^^)
それはそうと、これからどうするの。
たまきさんやモモコさんにも会ってみたいなあ。
じゃあ、呼んできてあげるよ。


a5

劇場から出てきたハリーに、
ドルフィンのマスターが声をかけている。

このフィギア、先ほどレンタルされた車の中にありましたよ。
あ、ジャンさんからもらったフィギアのこと、
すっかり忘れてた。


a6

どうもありがとう。
と言いながら、ハリーは、
テレパシーでフィギアと会話していた。

君、名前はあるの?
ヘルミーネと呼ばれてました。


a7

あら、ハリー、
そのフィギア初めてみるわ。
とエヴァが言った。
君たちと同じように精霊が宿っているんだよ。

と言ってハリーが建物に入っていき、
しばらくすると。


a8

鏡の中から女性が現れた。
お、さっそくお出ましね。
とエヴァがいった。


a9

あなた、お名前は?
ヘルミーネと言います。

ジャンの倉庫で一緒だった筈だけど、
あの帽子を被ったフィギアに精霊が宿ってたなんて、
全然気が付かなかった。
あなた、私たちの異世界にもいなかったわよね。
とリリスがいった。

ずっと長い間眠っていたんです。
それが、何か不思議な光で目が覚めて、
誰かいないかなと光の方に向かって呼んでみたら、
ハリーさんが手に取ってくれて。

ふーん、ハリーってかなりなのね。
あれはそうなのよ。とエヴァが言った。
ともあれ、私はリリスでこちらはエヴァ、
これから、どうぞよろしく。


解説)
ガスボンベと台車セットは、
金属製のもので、かなり重くて、
リアルで気に入っています。
先日久しぶりに出かけた秋葉原の
ラジオ会館の「宇宙船」で入手しました。

bx

ヘルミーネのフィギアヘッドもゲット(^^)
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Apr 26, 2022

新緑の頃 そのなな

a1

魔術劇場の中で、人間の姿に戻してもらった
軍曹とリリスはベーカリーの前に出てきた。

ハリーの魔法って移動に便利よね。
突然思いつきでやるから、こっちは結構大変なのよ。
それは言えてる。
と言っている。


a2

ジョー軍曹は、初めて見る別世界の町の風景に
興味津々のようだ。


a3

しかし、何人かの住人は、
以前向こうの世界を訪れたことがあり、
ジョー軍曹のことを覚えているのだった。

エトナが再会を喜んでいる。


a4

そうそう、ドイツ軍の連中が
この写真を君に渡してほしいっていうので、
預かってきたんだ。


a5

それは兵士の勧誘のためのポスター用にと、
エトナにコスプレのモデルを依頼して
ドイツ軍が撮影した写真で、
誘うように笑っていないという理由で
編集段階で没になったものだった。

記念に取っとくわ。
とエトナが言った。


a6

おや、ジョー軍曹じゃない?
おお、アイスさん。


a7

お元気でしたか。
怪物退治の際はお世話になりまして。

私はなんとか。
向こうの世界はどんな様子?
あの騒動以来、ドイツ軍とは休戦状態で、
外敵襲来に備えて共同で警戒活動しています。
リーダーのあなたがこっちに来ちゃって、
大丈夫なの?
指揮はエルマとエルザに任せていますから。
それなら安心ね。


a8

ベーカリーで食事中だったジルは、
広場から届いてくる二人の立ち話の内容を
聞くともなく聞いていたが、
エルマという名前を耳にして、
思わず顔を上げた。
しかし会話に割り込むと
話がややこしくなりそうなので
食べ続けることにしたのだった。


b1

そのとき、広場の前に
ソローが台車を押してきた。
重そうな高圧ガスボンベが積まれている。


解説)
エリスのコスプレ画像は
2021年9月2日「報告とあれこれ」からの
再掲です。
Posted at 20:43 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Apr 25, 2022

新緑の頃 そのろく

a1

ジョー軍曹は魔法のドアから異界に戻り、
手荷物を持って戻ってきた。

みんなの統率はドイツ軍士官のエルマと
部下のエルザに頼んできました。
二人なら仲良くやってくれるでしょう。
さすがそつがないわね。
とリリスが言った。


a2

ハリーはジャンのフィギアコレクションを
見せてもらっている。

このバービーのドレスはですね。
とジャンが解説している。


a3

第二次大戦時の兵士のフィギアを改造して、
中世世界のジオラマも作ってみたかったんですが、
今の村造りで、それどころじゃなくなっちゃって。
気に入ったのがあれば、一つ差し上げますよ。
とジャンが言った。
ではこの女性のフィギアをいただこうかな。
かなり念が宿っていて、私を呼んでいるようだ。
あ、それは確か貰い物です。前の持ち主は誰だったかな。
なるほど、そういう因縁付きのフィギアもあるんですね。


a4

さて、そろそろ町に戻りますか。
ええ、でも軍曹も乗るんでしょ。
帰りもあの車しかないわよ。
それなら簡単。
またやるのね。


a5

ということで、二人の乗ったワーゲンは、
ベーカリー前に帰り着いた。


a6

ハリーおかえりなさい。
それGIジョーのフィギアじゃない?
あ、それはそうと、さっきポリスが来て、
ご主人とお話したいって言ってるの。


a7

シティポリスが
巡回に来ているようだ。


a8

もう半袖なのね。
今日も夏日ですから。


a9

こんにちわ。どうもお呼びだてして。
私シティポリスのものです。
この建物、魔術劇場というんですか。
ご主人のハリーさんと聞きましたが。
ええそうですが、何か?
いやあ、特に何か事件という訳ではないんですが、
最近この界隈に新しい住人が増えているようで、
この地区担当のものとして一応ご挨拶にと。
それはご苦労様。
ところでつかぬことをお伺いしますが、
この建物、入り口も窓も見当たりませんが。
ああ、用心のために仕掛けがしてあるんです。
必要な時だけ、あることをすると、
ドアが出てくるという仕組みです。
そうでしたか。それはユニークな防犯設備ですなあ。
それはそうと、噂では
何かここで奇術ショーのようなことをされているとか。
まあそうですね。よかったら今度ぜひご覧ください。
悩みのある人は無料ですので。
そうでしたか。その、有料だと、お高いんですか。
ええ、それはもう。
そうなんですかー。ふうむ。
ああ、その、そのお手持ちのフィギア、
6分の1サイズのGIジョーですね。
ミニタリーフィギアは、私も大好きなんですよ。
ドラゴン社製の第二次大戦シリーズが特に。
トムという兵士の名前のついたフィギア、
ネットで探したりしているんですが、
これがAmazonやヤフオクでも、なかなかねえ。
などと、ポリスは久しぶりに人と会話できたせいか、
とめどなく話は続いたのだった。


解説)
今回は久しぶりに
巡回シティポリスのコンビが登場しました。
Posted at 20:43 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Apr 24, 2022

新緑の頃 そのご

a1

うーん。どうなってるのか。
そういいながらジョー軍曹はあたりを見回した。


a2

このミニチュアの物置のような
室内風景には見覚えがある。

ジョー軍曹は振り返ると、
やあ、みなさん、先ほどは。
といった。
ここには、以前エルマの捜索中にきたことがあります。
ということは、
酒場の二階のドアから続いている
皆さんの住む世界ですね。

その通りよ。さすが記憶力がいいのね。
パニックを起こさずに冷静沈着なのが素晴らしいわ。
とリリスがいった。


a3

ふむ。突然呼び出したりしてすまなかった。
しかし残念ながら、私が呼びたかったのは、
異世界に住む君でなく、その原型になっている
GIジョーのフィギアに宿る精霊なんだ。
この特別な場所のせいかもしれないが、
どうやら異世界での経験が強固になって、
そちらの君が実体化してしまったようだ。
ちょっと変な夢でもみたとでも思ってくれたまえ。
と言ってハリーは、再び、
ジョー軍曹に手をかざそうとした。


a4

ちょっと待ってください。
とジャンが言った。
軍曹は記憶力が良さそうだから、
あの村についての、
何か古い記憶を思い出すかもしれませんよ。


a5

ジョー軍曹はちょっと目を閉じていたが、
やはりお手上げだ、という感じで、
気がつくとドイツ軍との交戦中でしたから。
それ以前の記憶はさっぱり、といった。

夢見の水でも飲んでみたら。
とリリスが言った。


a6

ジョー軍曹はコップの水を飲むと
じっと考えている様子だったが、
ふと思いついたように話し始めた。

そういえば、記憶そのものじゃないんですが、
日差しの強い荒地のようなところで、
いつも風ばかり吹いている。
そんな夢を見ることがあります。
それが、自分では古い記憶の風景ようで。


a7

ハリーはそれを聞いて
ちょっと微笑んだようだった。
これは驚いた。


a8

その夢は、君が物に宿った精霊として、
ずっと存在し続けていた証拠だよ。
何かの想念の宿ったフィギアが
夢見の水や人々の空想の力を借りて
あの異世界を生み出したのだと予想していたけれど、
それがこんなふうに確かめられるとはね。
その夢を見たということは、
君にとってあの世界はもう唯一の現実じゃない。
ある意味リリスやエヴァのように、
その姿のままで自由に行き来できるはずだ。
これからどうするかは君にお任せしよう。


a9

それなら、せっかくだし、
こちらの世界も見てみたいです。
とジョー軍曹は言った。


解説)
なんとなくわかるようで
わけのわからない出来事でした。
Posted at 21:02 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Apr 23, 2022

新緑の頃 そのよん

a1

ジャンの家で、ジャンに面会した一行は
リリスの魔法のドアを通って
異世界の見聞を終えて倉庫に帰りつき、
一息ついている。



a2

とても興味深い体験でした。
ところでジャンさん。
あの世界が出現したきっかけを
何か思い当たりますか?


a3

家の庭に作ったジオラマの村を見にきた
たまきさん、ナオミさんと三人で、
この倉庫で夢見の水を飲んでいたんです。
すると突然戸口からドイツ軍兵士が入ってきて。
それが最初ですが、
その時からドアの外は異世界だったようです。
だから直前に三人で見ていた
ジオラマの村のイメージが
夢見の水を飲んだせいで、
実体化したような感じとしか。

ふむ。他に何か気づかれたことはありますか?
そうですねー。
実際に僕が向こうに行けるようになったのは
リリスがドアを作ってくれてからなんですが、
こちらのジオラマの村の設定が向こうの世界に
影響を与えているらしいことや、
村の家々や風景だけでなく、住民もまた、
僕がジオラマ用に使っていたフィギアが
原型になっているみたいだったことかなあ。


a4

そういってジャンは棚の箱から
いくつかのフィギアを運んできて
机の上に置いた。

さっき向こうでお会いになったように、
ドイツ軍女性士官のエルマや、
米軍兵士のメラニーや民兵のジェーンなど、
これらが向こうでは人間になっているんです。


a5

そうそう、
このGIジョーのフィギアが、
向こうの世界での、米軍のリーダーのジョー軍曹です。
このフィギアを買った日に、ベーカリーで、
たまきさんと知り合ったのでした。
彼女が私の持っていた
このフィギアに興味を持ってくれて。

なるほど、その出逢いがなければ、
起こらなかったことと考えれば、
遠因はそのきっかけになったフィギアかもしれない。
このフィギアに念のようなものが込められていれば。


a6

ハリーはそっとフィギアに手をかざした。


a7

薄い靄のようなものが
立ち上り。


a8

あたっといいながら、
ジョー軍曹が現れた。


a9

この倉庫、天井低いのよ。
とリリスに言われている。


解説)
話はまたしても
予期せぬ方へ。
Posted at 20:27 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Apr 22, 2022

新緑の頃 そのさん

a1

そのお話はまたいつか。
と魔子は言った。


a2

あのね。
私、マンスフィールドさんに引き取られて、
彼女の家の倉庫「人形の家」にいたんだけど、
そこは今ジャンさんっていう人の家の倉庫になってて、
そこから異世界に通じるドアをつくったの。


a3

その異世界はジオラマ好きのジャンさんが
想像した世界がもとになってるんだけど、
そこには友達もたくさんいて、
素敵な酒場のある大きな家も持ってるのよ。

それは夢の研究家としても興味深い話だね。
ぜひ行ってみたい。


a4

それならこれから出かけましょうよ。
とマンスフィールドさんが言った。

ジャンさんの家なら、
元は私が住んでいた場所だし、
ドルフィンで車を借りればいい。
でも私が運転するとして、
レンタルできるのは
二人乗りの車しかないけど。


a5

それなら簡単なことだよ。
と言って、ハリーはすうっと
手を差し上げた。


a6

あらら。
これで二人乗りで行けばいい。


a7

マンスフィールドさんは、
ドルフィンで車を借りたようだ。
ハリーはリリスの人形を抱えている。


a8

ハリーどっか行くの?
うん、ちょっとでてくる。


a9

今日の開演は延期だね。
それって残念。


解説)
寒暖の差が激しい日が
続いているようです。
今日は暑い方で夏日でした。
Posted at 20:42 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Apr 21, 2022

新緑の頃 そのに

b1

サラたちの部屋でも
魔術劇場の話題がでていた。


b2

私はあんまり驚かなかったよ。
だって骸骨が話すのだって普通だし。
そういえばそうなのか。


b3

レッド・ツェッペリンか。
このアルバム、古すぎて懐かしいなあ。
と言っている。


b4

夕暮れまじかのベランダでは、
マンスフィールドさんと
ハリーが再会していた。

お久しぶり。あなた若返ったみたい。
とハリーは言われている。


b5

あなたとお会いしたのは、
もう思い出せないほど遥か昔のことね。
人形コレクターの友人から、
人形のせいで怪異現象が起きるので
相談に乗って欲しいって言われて、
家に行ってみたらあなたが先に。


b6

あのポルターガイスト現象の原因は
リリスとエヴァと名付けられた
2体のピエロの人形でしたね。
人形に念が宿るというか、
ああいうことはよくあるんです。
捨てると祟るかもしれないというので、
それぞれ私たちが引き取ったわけですが、
リリスの方はどうなりましたか。


b7

私なら元気にしてますよ。
と言って屋内からリリスが顔を出した。
ハリーはちょっと驚いた様子だった。

君は自分で変身する魔術を身につけたの?
いえいえ。
異世界や特別な場所じゃなければ、
無理でしたけど、
葛の葉を使う方法を魔子さんっていう
狐から教えてもらったんです。

狐の魔子さん、って、
あの300年以上生きてるという野狐だね。
ご存じなんですか。
うん、一応専門なので噂だけは。
業界では有名な狐だよ。
じゃあ、お呼びしますよ。魔子さーん。


b8

なんですか。
といいながら魔子がやってきた。

紹介するわ。こちらハリー原さんって言って、
超常現象の研究家。というより、
今人気の魔術劇場の主催者って言った方がいいかな。
精霊の宿った人形だった私たちの力を見抜いて、
最初にテレパシーで話しかけてくれた人なの。

もしかして魔法使いですか?
と魔子は聞いた。


b9

うん、そんなふうに呼ぶ人もいるね。
君の噂も聞いているよ。
幕末の頃には
ずいぶん活躍したそうじゃないか。
とハリーはちょっと楽しそうにいった。


解説)
どうなることかと思って
画像を撮影すると
会話が勝手に進んでいくのも
よくあることです。
Posted at 20:42 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Apr 20, 2022

新緑の頃

a1

窓の欅もすっかり新緑の装い。


a2

ジェニーたちの部屋では、
ナオミが魔術劇場に行った報告をしている。

あのハリー原っていう人の名前、
ハリー・ポッターにあやかったのかしら。


a3

ハリー・ハラーって
小説の主人公の名前にあるね。
その作品には、
魔術劇場っていうのも出てくるんだ。
似てるのは名前だけみたいだけど。
ふーん。


a4

ベーカリー前は相変わらず
そこそこ賑わっていた。


a5

郊外の森林公園近くの竹藪で、
今年も筍が採れたので、
管理人が持ってきてくれたようだ。


a6

早速茹でたんですね。
オリーブオイルで
ソテーにして食べる?
若竹煮もいいですなあ。
いや筍ご飯が。
などと会話している。


a7

魔術劇場は不定期ながら
開演している様子だ。


a8

空中でピエロが消えちゃうのが
どうしても謎なのよ。
とリタが言っている。


a9

ルビーは、あの夜の体験は
なんだったんだろうと思っている。


解説)
人形たちの日々の明け暮れの背景に
ゆっくり季節が流れています。
Posted at 20:47 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Apr 19, 2022

春たけなわの頃 そのはち

a1

やがて、ピエロは跡形もなく消えてしまった。
場内はどよめいている。


a2

これが魔術です。
と言っている。


a3

フロアに薄い煙が立ち上ると、
今度はエヴァが現れた。
会場は再び、どよめいている。

本日はご来場ありがとうございました。
お帰りはあちらから。

観客は、今のなんだったの。
もっと見たい。
きゃーアンコール。
などと声を上げている。
拍手も鳴り止まない。


a4

ふーむ。
と、ハリーは少し考え込んでいるようだ。

では特別に。


a5

例えばこの私ですが。

とハリーが言って、
パチンと指を鳴らすと。


a6

すっと、一瞬ですり替わったように
黒髪の男の顔が現れた。


a7

これが魔術です。
と言っている。


a8

驚愕した観客のどよめきは収まらない。
ナオミがきゃーアンコールと叫んでいる。


a9

ハリーが会釈して
悠然と鏡のドアから退出すると、
本日の魔術劇場は終了しました。と、
エヴァの声が流れた。
みんなは帰り支度を始めている。

この部屋に仕掛けがあるんじゃない?
あの緞帳が怪しい。
鬘被りの早業。
今夜は若竹煮なの。
もう夢に見そう。
などと会話が飛び交っている。


解説)
今回の魔術劇場では、
何が起きるのか不明でしたが、
なんとか無事に終わったようです。
Posted at 20:39 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Apr 18, 2022

春たけなわの頃 そのなな

b1

最近、このチンパンジー、
愛想が良くなった気がする。
なんか話しかけてるみたいなんだけど。
とフレイムが言っている。
ルビーは魔術劇場の前に
ひとが集まっているのを見ていた。


b2

入場希望者が何人もいるようだ。
もうすぐ開演です。
というエヴァの声が聞こえる。


b3

円形の屋内は、床半分に段差のある
小劇場のようになっていた。

魔術劇場へようこそ。
ご来場のみなさんは、
魔術劇場という名前から、
奇術ショーのようなものを
想像されているかと思いますが。
とハリーが話している。


b4

今日は最初にご想像通りのものを
お見せしましょう。
これは世にも不思議な
ピエロの指揮者です。

ハリーが合図すると
大きなピエロが登場した。
指揮棒を振り上げて
首をふりふり、
調子をとり始めると、
屋内に、オルゴールの旋律で、
「ある愛のうた」が流れ始めた。
客席からどよめきが上がる。

どこで演奏してるの?
これすごく古い曲だね。
などと声が聞こえる。

しかし演奏は次第に
テンポが遅くなり
やがて止んでしまった。


b5

ハリーが出てきて、
ピエロの背中のネジを巻いている。
ご覧のように、このピエロは
体にオルゴールが内蔵された
カラクリ人形なのです。
なーんだ。という声が聞こえる。


b6

ネジを巻いてもらったピエロは、
再び嬉しそうに演奏を始めた。

演奏が終わるとハリーが登場して、
ご覧のように意外に思えることも
カラクリがわかると驚きは失われます。
本当の魔術とはそういうものではありません。
といった。


b7

ハリーが両手を差し出すと、
ピエロの体がふわりと宙に浮いた。


b8

ピエロはどんどん
高みに登っていく。


b9

やがてピエロの体は
霞のようなものに包まれ
輪郭も次第に定かでなくなっていった。


解説)
今回使用したピエロ人形は、
オルゴールが内臓されていて、
実際ネジを巻くと首を振りながら
「ある愛の歌」を奏でるという、
エピソードそのままのもので、
エピソードにもそのまま使用しました(^ ^)。
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Apr 17, 2022

春たけなわの頃 そのろく

a1

ベランダから戻った別世界のルビーが
椅子に腰掛けると、
周囲から動物たちが寄ってきた。
かなり懐かれているようだ。

そうなの。
なんかみんなに懐かれちゃっててね。
動物と話ができると楽しいんだけど。

ルビーはせっかく別の自分と向き合ったけれど、
何を話せばいいのかわからずに、
結局とりとめのない
天気や動植物の話をして別れたのだった。


a2

屋台に行ってみると
いつもの見慣れた顔ぶれが揃っている。
この人たちも、それぞれ
現実世界の本人の別の人格なんだろうか。
それともハリーの魔術が生み出した
幻影に過ぎないのか。


a3

エトナと知り合いになって、
肉まんを奢って、別世界のルビーのことを
色々聞くことができた。
この世界ではルビーはCGを引退して
ベーカリーの経営に専念しているらしい。
自分には考えられないことだ。
最初のうちは、別人格と言っても、
自分とほとんど変わらないと思っていたが、
彼女と自分とでは、日常の振る舞いについて、
微妙な行動原理が違うことに気がついた。
その微妙な違いの積み重ねが、
周囲に異なる環境を産み育てて
別の人生を歩ませるのだろう。

なんか近々結婚するって噂もあるよ。
彼女、いかにも専業主婦むきだからねー。
きっといい奥さんになるよ。とエトナは言った。


a4

楽しめましたか。
とハリーは言った。
考えさせられることが沢山あり過ぎて、
頭がいっぱい。
それでいいんですよ。
こういう魔術は、
ペルソナの統合にも役立つんです。
とハリーは謎のようなことを言った。


a5

ドアを出ると
ルビーは元の世界に戻っていた。


a6

もうお昼だよ。
どこに行ってたの。と言われている。


a7

魔術劇場に、
と言ってルビーが振り返ると、
「どこにもドア」がなくなっていた。


a8

その数日後。

ルビー、どうしたの?


a9

あそこにいる人。
ああ、あの人セリアっていうらしい。
最近時々見かけるね。


解説)
朧げな春の夜の夢のような
魔術劇場の一幕でした。
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Apr 16, 2022

春たけなわの頃 そのご

c1

では別のあなたが暮らす町へご案内しましょう。
でもその前に注意をいくつか。
そこは今のあなたが暮らす世界とそっくりなのですが、
あくまでも別の世界なので、あなたが混乱しないように
この青いサングラスを通して見られるような世界にします。
それはまあ世界をそれなりの色眼鏡でみるということです。
もっとも大抵の場合人はそうした色眼鏡を自分なりに作り上げ、
フィルター越しに世間を見ているものです。
真実というものはあまりに眩しすぎるので。
そういうとハリーの眼鏡の縁がきらりと光った。

もう一つは、あなたの訪問は別世界の秩序を乱したり、
別人のあなたを驚かせたりするのが目的ではないので、
あなたには、姿を変えてもらいます。
セリア、おいで。


c2

この子があなたの分身になります。
何かご質問は?

どうやったら戻って来られるんですか。
あそこの鏡のドア、私は「どこにもドア」と呼んでいますが、
そのドアからここに戻って来られますよ。
別世界の入り口もあのドアからです。
では、ボンビアッジョ。


c3

ルビーがドアを潜り抜けると、
そこには見慣れた
ベーカリー前の風景が広がっていた。
しかし世界的全体に青いフィルターが
かかっているようだ。


c4

私って、こんな姿なのね。


c5

リタがいたので話しかけてみる。
え、あなた誰だっけ?
ルビーって。
ルビーなら、そこで
観葉植物の手入れしてるよ。
同じ名前なの?


c6

すぐそばのテーブルの脇に
別世界のルビーがかがみ込んでいた。

この枯葉とって。
などという自分の声が聞こえる。


c7

髪型や顔立ちが
微妙に違うけれど。
あれは私だ、とルビーは思った。


c8

あら、こんにちわ。
何かごよう?
と別世界のルビーは言った。
えーっと、ちょっとお話がしたいんですが。
というと。


e1

あ、雲行きが怪しいから、これから急いで
洗濯物取り込まなくちゃならないの、
すぐ済むから、それでもよかったら待ってて。
と言って別世界のルビーはベランダに
急ぎ足で向かっていった。


解説)
別世界のルビーは
なんだか働き者のようです。
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Apr 15, 2022

春たけなわの頃 そのよん

a1

夜が更けて、建物に明かりが灯り、
ドアが出現していた。


a2

ベーカリーの店じまいを終えたルビーが
気がついて建物に近づいてみると、
エヴァが現れた。


a3

悩みのある人は入場無料です。
と言って、エヴァはそっとドアを開けた。


a4

これ、ただの鏡じゃないの。
鏡のようで鏡じゃないのです。
そのまま奥へお進みください。


a5

ルビーが鏡に手を触れてみると、
ほとんど抵抗がなく、
ルビーの体は、そのまま
鏡の奥へと吸い込まれて言った。


a6

建物の内部は、
見かけよりかなり広がりがあり、
室内の中央に男が一人立っていた。

今宵はようこそ魔術劇場へ。
私は主催者のハリー原といいます。


a7

あなたは魔術劇場という
名前に惹かれてここに来られたのでしょう。
ここで何か奇術のようなものを
みられると思っていましたか。


a8

そうね。ただ名前に惹かれて来てみたの。
奇術ショーみたいなものじゃないかなと。

残念ながらここで体験できるのは、
種や仕掛けのある奇術の世界ではありません。
甘くて美味しい種無しスイカのような世界です。
とハリーは言った。


a9

ところであなたはご自分の心が
ひとつきりだと思っていませんか。
それはまあ、ひとつでしょう。
ところが、そうではないのです。
あなたの心にはいくつもの別人の心があるのです。
というか、別人のあなたは別の世界で暮らしている。
私は魔術でそういう世界を創造して行き来できるのです。
別人のあなたに会ってみたいですか?
もしそんなことが可能ならば。
とルビーは答えた。


解説)
二日も夏日が続いたと思ったら、
連日雨で気温が下がり、
今日は2月並みとのこと。
やっと魔術劇場に入場できました。
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Apr 14, 2022

春たけなわの頃 そのさん

a1

そのジャンさんのジオラマって?
とエヴァが聞いた。
ジャンさんが作ったジオラマの世界が
実物大で出現して、その世界と
行き来できる扉をリリスが作ってくれたの。
ふーん。よく似てるわね。
魔術劇場の入り口の扉も
私が作ることになってるから。
リリスも私も役目が同じなのかな。
服装はリリスが変だけど。
このドレスはマンスフィールドさんが、
着せてくれたんだよ。
ピエロの服は、ある日人形の家に
忍び込んできた小人に取られちゃって。
ああ、あの床下に住んでる連中ね。


a2

その時、ペギーが、
観葉植物の鉢を持ち出してきた。
ベランダの方が日当たりがいいから。
あ、私そろそろ行かなくちゃ。
とエヴァが言った。


a3

あの建物、入り口がないよ。
いつ始まるの。
と言われている。
ハリーがまだ来ないんです。
近日中に。


a4

このスカフェラは順調に育ってるね。
ここに置くと何かと差し障りがありそう。
などと話している。


a5

エヴァは屋台でも宣伝している。

行ってみたいですか。
入り口がないじゃない。


a6

美味しい。
あなた、あの黒いドレスの人と
ご姉妹なの?よく似てらっしゃる。
製作者が同じみたいで。


a7

その頃、サラたちの部屋では、
相変わらず古いロック音楽が流れていた。


a8

ジミー・ペイジのギターソロはね。
とアイスが身振りをしている。


a9

さっきピエロの女の人が、
魔術劇場行ってみたいですかって。
あの人、まだ言ってるの。


解説)
なかなか進展しませんが、
そこはそれで。
Posted at 20:45 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Apr 13, 2022

春たけなわの頃 そのに

a1

今日は魔術劇場の宣伝に、
え、あなたリリスなのね。
変な格好してるから見違えちゃった。
とエヴァはいった。

モモコは、変なのはピエロの格好の
方じゃないの、と思ったが黙っていた。


a2

久しぶりだね。
思いだせないくらい遥か昔以来。


a3

思いだせないくらい遙か昔に、
エヴァとリリスは、
ピエロの人形の好きなコレクターの家で
一緒に飾られていたことがあったのだった。

しかし2体の人形には精霊が宿っていて、
いろいろな悪戯をしたものだから、
怖くなったコレクターはピエロ人形を手放すことにした。
そこでリリスは、高名な人形コレクターだった
マンスフィールドさんに訳あり物件として引き取られ、
エヴァはその騒動の調査に来ていた超常現象の研究家の
ハリーという人物に引き取られた。
そんな経緯で二人は離れ離れになったのだった。


a4

私を引き取ったハリーっていう人は、世間的には
超常現象の研究家っていうことになってるけど、
実際には超能力を備えた魔法使いみたいな人だったの。
なんだか話が見えてきた。とモモコは思った。
彼のおかげで、人形だった私はこの姿になれた。

さっき最初に言ってた魔術劇場ってなに?
とリリスがきいた。
あれはね。基本的にはハリーの想念の世界なんだけど
その世界を想像する人たちの心の世界でもある。
共同で見る夢の世界のようなものかな。
その世界を春の夜の夢のように楽しもう、ってこと。
ジャンさんのジオラマの世界とよく似てるね。
とモモコがリリスにいった。


a5

観葉植物の鉢は
さまざまな場所で預かってもらうことになった。

喫茶店のインテリアにちょうどいいわ。
と言っている。


a6

このフィカス、枯れそうだね。
ここ西日がよく当たるから
どうなるかな。


a7

生物って本当にいいですね。
とドロレスが言っている。


a8

これは元気だね。
日陰で大丈夫かしら。
ベランダに出そうか?
などと言っている。


a9

ベーカリー前では
ルビーたちが建物の様子を見ていた。

何も変わらないね。
私は水やりが減って
ずいぶん暇になったわ。


解説)
あれこれと
ゆっくり進んでいます。
Posted at 20:49 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Apr 12, 2022

春たけなわの頃

a1

植物水槽が片付けられ、
観葉植物の鉢植えは
それぞれありあわせのバケツに収納された。

こうしておけば、
水やりしても溢れないね。


a2

二人が一休みして戻ってみると、
いつのまにか建物が建っている。


a3

こちらが魔術劇場です。
近日開演。


a4

ピエロはいつのまにか
いなくなっていた。

すごく狭そうだし、
入り口のドアもないよ。
なにこれ、
などといっている。


a5

今子。変身に使った葛の葉まだもってる?
貴理子さんが奉納してくれたもの。
うん大事にもってるよ。
いちまいちょうだい。


a6

今子がもっていた葛の葉を使って
もういちど試すことになった。

念じるときにね、
「寝付きのいい野狐」って唱えるの。
すると急に眠くなって
気がつくと変身してるから。

ねつきのいいのぎつね


a7

すると薄煙が立って
リリスは変身した。


a8

さっきの呪文、どこで覚えたの?
わたしが考えたのよ。
それにこんなふうに印をきれれば完璧なんだけど。
それちょきの手だね。
私には無理だ。
魔子さんって回文が好きなの?
などと話が弾んでいる。


a9

魔子が部屋に戻ったあとで、
ピエロが階段をのぼってきた。

あら、あなたエヴァじゃないの?
とリリスがいった。


解説)
今日も地元は夏日でした。
図書館が改修工事で
1年半ほど休館になるので、
最後の返却に。
Posted at 20:35 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Apr 11, 2022

花散る春の日 そのなな

a1

文学青年はまた散歩していた。
すっかり葉桜になったなあ。

世の中にたえて桜のなかりせば
春の心はのどけからまし


a2

この世に桜なんてなかったら、
のどかに春を過ごせるのに、
っていう歌なんだけど。
と文学青年がつぶやいていると、
珍しくナオミが聞いていて、

散ればこそいとど桜はめでたけれ
浮き世になにか久しかるべき
と言った。


a3

リリスがいると教えて貰って
モモコが屋台の前に来てみると、
リリスの姿がなかった。

リリスは?
なんか急に人形になっちゃって。
とエトナがいった。


a4

あら、かっこいいフィギアですね。
そこの席の方は?
とレイに聞かれて、
いまちょっと席をはずしてます。
とエトナが応えている。

モモコはリリスと
テレパシーで話している。
どしたの?
よくわからないけど、
葉っぱの効力が切れたみたい。


a5

二人のテレパシーの会話を聞きとって
向かいの席から、
魔子がやってきた。

葛の葉を頭にのせて
強く念じるだけで変身したんでしょう。
あれにはコツがあるのよ。
と言っている。


a6

ピエロの扮装の女性は
ドルフィンやベーカリーのスタップに
挨拶している。

春といえばピエロ。
今日は魔術劇場の宣伝しにきました。
なにそれ、といわれている。


a7

それはどこにあるの?
まだどこにもないですが、
いってみたいですか?


a8

そーだね。
面白そうな名前だから
いってみたい。


a9

じゃあ、きまり。
あの広場に魔術劇場をつくりましょう。


解説)
またまた
思いつきの展開です。
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Apr 10, 2022

花散る春の日 そのろく

a1

文学青年は夢をみていた。

やどりして春の山辺にねたる夜は
夢の内にも花ぞちりける


a2

起きたの?

今桜の夢をみていたんだ。
このところ毎日散歩して
桜ばかりみていたせいかな。
そういう昔の歌があってね。


a3

歌っていえば
歌が上手くなったウグイスが
しきりにないてるよ。
とジェニーが言った。


a4

モモコがペスパを倉庫に返しに
ドルフィンにやってきた。
黒いドレスのひと見なかった?
エトナと屋台の前で話してるよ。


a5

肉まんを食べ終わったエリスが、
ベランダからの風景を楽しんでいる。


a6

ペギー、Tシャツに着替えたの?
舞は相変わらずパジャマだね。


a7

エリスは広場に
かわった格好の人が
やって来たのをみつけた。


a8

リタとルルは
話に夢中。

最近やたらに新しい住人が
増えてない?
そうかなあ。
などといっている。


a9

ピエロの扮装をしているようだ。


解説)
今日は気温もあがり
地元も夏日(25度以上)でした。
あいかわらず
さきゆきのみえない日々が
つづいています。
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Apr 09, 2022

花散る春の日 そのご

b1

文学青年は肉まんをたべながら
散歩していた。

桜花散りぬる風のなごりには
水なき空に波ぞ立ちける


b2

なごりって、名残と余波(なごり)を掛けているんだ。
こういう見立ては。
と文学青年はいいかけたが、
ルルは聞いていなかった。


b3

リリスっていうひとの格好、
去年モジリアニ展にモモコが持ってきてた
人形とよく似てたね。
緑の髪の色もそっくり。


b4

あのこは、私の影響で人形マニアなのよ。
人形のコスプレするのが好きなの。
とマンスフィールドさんがいった。


b5

ドルフィンの二階の部屋をでて、
階段を降りかけていたリリスは
撮影中のエトナとばったり出会った。


b6

ひさしぶりだね。
どうやってこっちの世界に来られたの?


b7

頭に葉っぱをのせてもらって変身したの。
まさか狐じゃあるまいしって思ったでしょ。
でもそういうものだから。
ふーん。


b8

ジョー軍曹やエルマやエルザや
メラニーやジェーンは元気でやってる?


b9

よく名前覚えてるね。
みんな元気だよ。
あのドアの向こうの世界、
忘れてしまっていても、
無くなるわけじゃない。
思い出してくれれば蘇るから。


解説)
エトナはリリスたちの住む異世界に
行ったことのある
数少ない人のひとりなのでした。
Posted at 20:52 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Apr 08, 2022

花散る春の日 そのよん

a1

机のうえで変身したから、
天井で頭をうっちゃった。
でも無事成功ね。


a2

これからどうするの?
そうだねー。
とりあえず町にいって
懐かしい人に会ってみたいな。
ペスパで送る?
ひとりでぶらぶら歩いてくよ。


a3

リリスはベーカリー前に
たどりついた。


a4

あ、このまえの人形が人間になってる。
と今子が驚いている。
リリスさん、変身できたのね。
あなたのヒントのおかげよ。


a5

マンスフィールドさん、
まだこちらにいらっしゃいますか。


a6

マンスフィールドさん。こんにちわ。
その声は。
え、あなたリリスなの?


a7

この人はわたしの遠い親戚で、
リリスっていうの。
とマンスフィールドさんは、
部屋の住人たちに紹介した。

以前マンスフィールドさんには、
とてもお世話になっていたんですよ。
とリリスは言った。


a8

リリスは人形コレクションを眺めて、
人形の家で一緒にいた頃のことを思い出している。

みんなここに置かれてるのね。
どのこも私のともだちだった。
みんな懐かしいわ。


a9

この土偶ははじめてみる。
リリスはなにか強い力を感じていた。


解説)
リリスは、もともと
人形コレクターだったマンスフィールドさんが、
さる人物から譲り受けた精霊の宿る人形で、
彼女が「人形の家」と呼んでいた
人形コレクション用の倉庫に置かれていましたが、
その後マンスフィールドさんの引っ越しの際に、
家や倉庫とともにジャンに譲られたのでした。
ジオラマ好きのジャンは
倉庫を工作用の作業室や備品の保管場所にして、
譲られたリリスのことを忘れていましたが、
あるきっかけからリリスの精霊が出現します。
2021年7月13日「リリス」。
リリスについては、
こういうややこしい過去のいきさつが
設定されていたのでした。
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Apr 07, 2022

花散る春の日 そのさん

b1

今日も気温があがっている。


b2

カーディガン脱いだら
お腹が空いちゃった。
肉まんでも食べに行かない?
私はお水しか。
あ、そうだったわね。


b3

エリスが屋台に行くと、文学青年がいた。

春眠暁を覚えず処処啼鳥を聞く。
というのは、鳥の声を聞いてるわけだから、
早起きしてないですか。
と文学青年は言ったが、
エリスは肉まんを食べるのに忙しかった。


b4

そのころ、郊外のジャンの家の倉庫に
森林公園の管理人が遊びに来ていた。


b5

この前の地震で起きた崖崩れの補修をしていて、
桜の枝についた葛の葉をみつけたんだ。
この地方では昔から、この葉には魔力があるって、
言い伝えがあるんだよ。狐が変身に使うとか。


b6

すぐ枯れちゃうと思うけど、
話のネタに進呈するよ。といいのこして、
葛の葉を置いて管理人が帰ったあと、
リリスのフィギアがモモコに
想念を送ってきた。


b7

試してみたいって、
人形なんだから無理じゃない?
狐の精霊にできて、人形の精霊に
できないってことはないわよ。

ジャンには二人の会話が聞こえないので、
モモコの解説をまっている。


b8

葉っぱを頭にのせて、
パワーを集中して。


b9

すると薄煙がたちのぼり、
あたっといいながら、
等身大のリリスがあらわれた。


解説)
葛の葉の登場から、
思いつきは意外な方向に。
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Apr 06, 2022

花散る春の日 そのに

a1

文学青年は今日も散歩していた。

花の色は移りにけりないたづらに
わが身世にふるながめせしまに


a2

ながめって、眺めと長雨の両方の意味を
掛けているんだ。
と文学青年はつぶやいたが、
ルルもリタも聞いていなかった。

今日もいい天気ですね。
肉まん蒸かし立てみたいですよ。
といわれている。


a3

ベランダではペギーが
洗濯物を干している。


a4

乾いたらこの黄色いTシャツ
着ようかな。


a5

部屋の中では
ベスとニッキーと舞が
今子のことで話合っていた。

11人もいるんだから、
同居人がひとり増えても
変わらないわよ。
あの子かわいいしね。


a6

きみはいったいいくつなのさ?
とトラ猫がいっている。


a7

ベーカリー前では
狐の姉妹が食事していた。

姉さん私やっと化けられるようになったよ。
貴理子さんが奉納してくれた
あの葛の葉のおかげみたい。


a8

そうね。あれは夢見の水で育った
迷いの森の特別な葛の葉。
もっと時間がかかると思ったけど、
あなたみたいな若い狐でも
変身できたのは驚きだわ。
でも上手く化けたつもりでも、
尻尾をださないように気をつけてね。


a9

うん、気をつけるよ。
尻尾はしっかり着物でかくしてるから大丈夫。
と今子はいった。

解説)
今日は気温が随分あがりました。
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Apr 05, 2022

花散る春の日

a1

文学青年は散歩していた。

久かたの光のどけき春の日に
しず心なく花の散るらむ


a2

静心って、落ち着いた心っていう意味なんだ。
と文学青年はつぶやいたが、
リタは聞いていなかった。


a3

ペンギンの前ではるなが水やりをしていると。


a4

あのー、巫女さんみたいな服装の女のひと、
知りませんか。
と声をかけられた。
そのひとならベーカリーの前で
ときどき見かけますけど。


a5

ベーカリーの前で
ベスにも聞いている。
ああ魔子さんのことね。
彼女ならうちで同居してるのよ。


a6

家はドルフィンの二階。
そこの階段あがればすぐ。


a7

いるわよ。
あなたお名前は?
駒井今子っていいます。


a8

魔子さんに、
こんな妹さんがいたなんて。
今子さんっておっしゃるのね。


a9

今子はきつねうどんに
夢中のようだ。


解説)
小狐が
無事変身できたようです。
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Apr 04, 2022

花冷えの月曜日

a1

権太が桜の枝を片付けている。
短い間だったけど、
楽しませてもらったね。


a2

変わった形の葉があるよ。
と貴理子がいった。


a3

あ、それは葛の葉みたいね。
と通りがかった駒井魔子がいった。


a4

葛は狐と縁が深い植物なのよ。
そーなんだ。


a5

わたしお稲荷さんに
お供えしてくる。
と貴理子がいった。


a6

さすが貴理子だね。
とエトナがいった。
縁がふかいって。
「信田妻」の伝説なんかに
「葛の葉」って狐がでてくるでしょう。
ふーん。


a7

貴理子はお稲荷さんにやってきて。


a8

コップに生けた葛の葉をお供えした。


a9

がんばる。


解説)
今日も終日雨でしたが、
フィギアたちの世界では
雨上がりです。
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Apr 03, 2022

花冷えの日曜日

a1

今日は朝から雨が降っている。


a2

みんな外出せずに。


a3

それぞれの部屋で過ごしている。

それでどうなったの?
思わずね。


a4

ベーカリー前にも
霧吹きで吹いたような雨が
降っていた。


a5

エトナは雨宿りしている。


a6

今日はひまでいいですね。
たまにこういう日も。


a7

ベランダのテーブルも
濡れるままになっている。


a8

ペギーは遠くの霞む景色を眺めている。


a9

洗濯物取り込んどいてよかったね。
全然気にしない人だから。
などと話している。


解説)
とりたてて
なにもおきない
日曜日でした。
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Apr 02, 2022

風に吹かれて

a1

ルイちゃん、こっちむいて。


a2

ジェイソンは、タンポポの話が
気になってサラに会いに行った。


a3

なんだかあれ聴きたい気分なの。
わかった。じゃあ、これから
ドルフィンに寄ってから、
そっちで一緒に聴こうよ。
サラさん。
あのタンポポの鉢植えのことですが。
ああ、あれはルルから貰ったの。


a4

ルルさん。
あのタンポポの鉢植えのことですが。
あああれね。日陰に咲いてたの。
そこに行ってみる?


a5

この二つの大きな石の傍に
枯葉に埋もれるようにして咲いてたのよ。
この辺なんだかきれいになってるし、
誰か掃除したみたい。


a6

アイスはレコードを持ちだしてきた。
「フリーホイーリン・ボブ・ディラン」ね。
それそれ。


a7

サラはアイスを連れて
さっそく部屋に戻った。


a8

慎重にレコード盤に針をおとしている。


a9

A面の最初の曲が流れている。
頭蓋骨は風ばかり吹いていた
長い夢のことを思い出しているようだ。
メメはタンポポの葉を食べたそうにしていたが、
もう骸骨なので食べられないのだった。


解説)
今日は花びら混じりの風の吹く日でした。
崖沿いの裏庭で枯葉を掃いたり。
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Apr 01, 2022

お花見気分

a1

タンポポの鉢植えを
ジェットが部屋に持ち帰った。

サラは?
アイスと話があるからって。


a2

随分立派なタンポポだね。
タンポポといえば。


a3

オセロのことを思い出す。
リクガメのオセロは、
タンポポの葉が好物だったんだ。
亡くなってちょうど今日で、まる1年になる。
と頭蓋骨が言った。
メーメーとメメがないた。


a4

ベーカリー前では
さすがに宴会が終わっていた。


a5

フローラは、
よく飲むねーといわれている。
うん、たまにしかこられないから。
また名前よんでね。


a6

エトナは近接撮影に
挑戦している。


a7

落ちると痛そう。

サラはベランダでアイスと
話している。

ディランのレコードみつかった?
うん、今度もってくよ。


a8

レイがジムに肉まんを手渡している。
広場に駒井魔子がルイを連れて
桜を見に来たようだ。


a9

ルイちゃん。
これ桜っていう花だけど、
普通はこんなに大きくないからね。
うん。


解説)
まだお花見気分の
ベーカリー前です。
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April 2024
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