Apr 17, 2022

春たけなわの頃 そのろく

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ベランダから戻った別世界のルビーが
椅子に腰掛けると、
周囲から動物たちが寄ってきた。
かなり懐かれているようだ。

そうなの。
なんかみんなに懐かれちゃっててね。
動物と話ができると楽しいんだけど。

ルビーはせっかく別の自分と向き合ったけれど、
何を話せばいいのかわからずに、
結局とりとめのない
天気や動植物の話をして別れたのだった。


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屋台に行ってみると
いつもの見慣れた顔ぶれが揃っている。
この人たちも、それぞれ
現実世界の本人の別の人格なんだろうか。
それともハリーの魔術が生み出した
幻影に過ぎないのか。


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エトナと知り合いになって、
肉まんを奢って、別世界のルビーのことを
色々聞くことができた。
この世界ではルビーはCGを引退して
ベーカリーの経営に専念しているらしい。
自分には考えられないことだ。
最初のうちは、別人格と言っても、
自分とほとんど変わらないと思っていたが、
彼女と自分とでは、日常の振る舞いについて、
微妙な行動原理が違うことに気がついた。
その微妙な違いの積み重ねが、
周囲に異なる環境を産み育てて
別の人生を歩ませるのだろう。

なんか近々結婚するって噂もあるよ。
彼女、いかにも専業主婦むきだからねー。
きっといい奥さんになるよ。とエトナは言った。


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楽しめましたか。
とハリーは言った。
考えさせられることが沢山あり過ぎて、
頭がいっぱい。
それでいいんですよ。
こういう魔術は、
ペルソナの統合にも役立つんです。
とハリーは謎のようなことを言った。


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ドアを出ると
ルビーは元の世界に戻っていた。


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もうお昼だよ。
どこに行ってたの。と言われている。


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魔術劇場に、
と言ってルビーが振り返ると、
「どこにもドア」がなくなっていた。


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その数日後。

ルビー、どうしたの?


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あそこにいる人。
ああ、あの人セリアっていうらしい。
最近時々見かけるね。


解説)
朧げな春の夜の夢のような
魔術劇場の一幕でした。
Posted at 21:04 in n/a | WriteBacks (0) | Edit
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