May 17, 2026
赤い人形 そのなな

エリーゼは二人に紅茶を入れた。
ケイト、さっきから、
おとなしいわね。
さっき泣きじゃくって、
私を呼び覚ましてくれたせいで、
力を使い果たしたのよ。
今は深く眠っている。
とエリーゼが言った。

あなたとケイトは特別な関係みたいね。
ケイトはあなたの力を弱めるために、
二人が引き離されたとも言っていた。
それと、
ここはあなたの見ている夢の世界なんでしょう?
夢食いが夢の中に侵入するのは珍しいことじゃない。
でもアスラーダは、ここは冥界に近い夢の世界で、
あなたがもう死んでいるっていっていた。
とても謎が多いわ。
とシモーヌが言った。
うまく説明できそうもないけれど、
ここは私の見ている夢の世界というだけじゃないの。
それに、ケイトは否定したけど、
アスラーダが言ったように
私はもう死んでいるのよ。
とエリーゼが言った。
死んでいるって、
こうしてちゃんと話しているじゃない?

この体は幽霊のようなもの。
私は幼い頃両親を亡くして
一人ぼっちになったの。
母が作ってくれた毛糸の人形、ケイトだけが、
私の友達だった。
彼女にいつも話しかけているうちに、
ある日、人形に精霊が芽生えて、
お話ができるようになったの。
それから私には精霊の声ばかりでなく、
亡くなった魂たちの声も聞こえるようになった。
生前の世界に執着して彷徨っている魂たち。
自分が死んでしまったことにまだ気付かない魂たち。
怖い幽霊みたいに言われるけど、
そんな人たちだけじゃないのよ。
私が病気になって死んだ時、
その霊たちが私の魂をこの世界に招いてくれたの。
それは私が病床で見た夢の続きだとも言えるけれど、
死者たちが魂のために用意されていた世界に
招いてくれたんだと思う。
ここには深い森と草原、その果てには
砂漠のような風ばかりが吹く大地が広がっている。

もしここがそんな世界で、
あなたも招かれた死者の一人にすぎないんだとしたら。
夢食いの蜘蛛があなたを繭に閉じ込めて眠らせても、
この世界を支配することはできないんじゃない?
とシモーヌが尋ねた。
普通の夢食いにとってはそうね。
死者の魂を消すことは彼らにはできないから、
ただ邪魔だからという理由で私を眠りに閉じ込めた。
彼らはいつまでも消えない夢の器が欲しいだけなのよ。
でもアスラーダは別。
彼もすでに亡くなっている人の魂なの。
だった、というべきかしら。
今はモンスターみたいな姿になってしまったけれど。
奇妙なマスクをしていたでしょう。
あの下には髑髏の顔がある。

アスラーダも夢食いの仲間じゃないの?
とサラがいった。
同じように夢に入り込む力を持っているけれど、
彼の目的は私の魂なのよ。
私と一体になれれば冥界の覇者になれると思っている。
彼にとって私は特別な存在らしいの。
それで夢食いの蜘蛛たちを利用して
私を繭の中に閉じ込め、
私からケイトを引き離してを燃やすように命じた。
私と一心同体のケイトが邪魔だったの。
じゃあなぜ、
あっさり引き下がったのかしら?
私が繭の中に寝ていると思ってやってきたら、
ケイトのおかげで私が目覚めたので、一旦諦めたのよ。
目覚めていれば私は自ら消滅することができる。
それを彼は一番恐れているの。

繭の中で眠らされている状態を狙うなんて最低ね。
彼はまたやってくるんでしょう。
エリーゼ、この世界から離れて
現実世界に戻ってこない?
とシモーヌが言った。
そんなこと考えたこともなかった。
私は死者の魂なのよ。
生前には幽霊たちが見えて
話ができたって言ってたじゃない?
今度は立場が逆になるだけよ。
それと、お仲間もいるかも。
とサラが言った。

シモーヌが呪文を唱えると、
中空に鏡の扉が出現した。
とりあえずサラたちの部屋に戻りましょう。
マンスフィールドさんの倉庫に行って、
オウルも常春の国に戻してあげないと。
とシモーヌが言った。

ふむ。井戸の壁にへばりついていて、
話が聞けたぞ。
エリーゼ、お前への愛が
私をこんな姿でも生きさせているんだ。
諦めるわけにいかないよ。
さすがアスラーダ様。
なんだ、まだ夢食い蜘蛛がいたのか。
そうだ。お前、現実世界に行って、
あいつらの居所を確かめてくれないか。
私は夢食いですよ。
夢の世界ならともかく
人間たちの現実世界だなんて、
よほどの事情がないといけませんよ。
それにどうやって行くんです。
野原の川を下ればいいんだよ。
迷いの森を通っていけるはずだ。
そんなルートがあったんですね。

夢食い蜘蛛は野原で小川を探していた。
いいこと聞いたな。
迷いの森に飛ばされてしまった
うちのボスにも報告しなきゃ。
解説)
続きます。
May 16, 2026
赤い人形 そのろく

お前たちは夢食いじゃないな。
人間と、さっき魔法を使ったのは魔族か。
こんなところまで来るとは、
お前たちも死に損ないか。
それにしても仲間を一瞬で消し去るとは。
仲間っていうことはあなたも夢食い?
ここはエリーゼとケイトの住んでいた
夢の世界でしょう。
侵略者は容赦しないわよ。
とシモーヌが言った。

ここがエリーゼの夢の世界だと?
たしかにそうも言えるが、
正確ではないな。
ここはお前たちが想像するより
ずっと冥界に近い夢の世界だ。
夢食いばかりでなく、
死者の魂もやってくる。
何も知らないようだから教えてやるが、
エリーゼはすでに死んでいる。

そんなの嘘よ。
とケイトが叫んだ。
ケイトはエリーゼに縋り付いている。
エリーゼ、エリーゼ。
すると、エリーゼの目が開いた。

エリーゼはゆっくり立ち上がった。
おや、これは驚いた。
おまえ、目覚めたのか。

私を繭に封じて眠らせておけば、
思い通りになると思ったのね。
ここから立ち去りなさい。
さもないと。
とエリーゼが言った。

わ、わかったよ。
というとアスラーダは
井戸の中に
吸い込まれるように消えていった。

この井戸は?
幽冥の世界に通じているのよ。
蓋をすることはできないの?
これは通路になっていて、
そういう仕組みだから。

オウルは消えちゃったのね。
とサラが言った。
大丈夫よ。
オウルの精霊は、この世界で消えても、
元のフィギアの体に戻っただけ。
今頃はマンスフィールドさんの倉庫で
眠っているはずよ。
とシモーヌが言った。

まずは自己紹介しなくちゃね。
こちらはサラ、私は魔族のシモーヌ。
私たちは川に流されていた赤い人形ケイトを拾って、
ケイトからあなたのことを聞いて、
ケイトの記憶を辿って、
現実世界からこの世界にきたの。
ケイトを拾ってくれた上に、
わざわざみなさんで私を助けてくれたのね。
とてもとても感謝します。
とエリーゼが言った。

家の中は蜘蛛の巣だらけだけれど、
屋外にテーブルセットがあるはず。
こっちよ。
とエリーゼが案内している。
解説)
続きます。
May 15, 2026
赤い人形 そのご

大きな人面蜘蛛は
シモーヌたちににじり寄ってきた。
何あれ。

大きな蜘蛛の上に
別の蜘蛛が乗っているみたい。
みんな離れて。
とシモーヌが叫んでいる。

シモーヌが呪文を唱えようと
手をかざすと、
蜘蛛の放った黒い糸が、
その手に絡み付いてきた。

強い力で引っ張り込まれたシモーヌは、
組み敷かれている。
お前は魔法を使えるのか。
その口を聞けないようにしてやる。

その時、後ろからオウルが蜘蛛に飛びかかり
鋭い嘴で蜘蛛の首をちょんぎった。
やったねー。
とケイトが歓声を上げている。
蜘蛛の姿は次第に薄れていく。

その時、
奇妙な姿のモンスターが
井戸の中から現れた。
おやおや、
チームプレイは素晴らしいものだな。

モンスターが、
右手から紫色の光線を放つと、
オウルの体が切り裂かれた。
オウルの姿は次第に消えていく。
オウル!

どうだ、いい感じだろう。
この光線は死骸線というのだ。
変な名前つけてるのね。
あなたは誰?

私の名はアスラーダ。
アスラって、
阿修羅のことね。
興福寺の阿修羅像は、
もっと美形じゃないの?
ややこしいことを言うなよ。
あいつとは違うんだ。
私の名には語尾にダがついているだろう。
蛇足付きなのね。
私を怒らせるなよ。
解説)
続きます。
May 14, 2026
赤い人形 そのよん

一行は森の中に
分け行っていた。

随分深い森ね。

これは行き止まり?
ここよ。
ここに私たちの小屋があったの。
壁が草木に覆われてるみたい。
左に行くと井戸があるはず。
とケイトが言った。

井戸を見つけた。
気をつけて、
蜘蛛がいるわ。

なんと大きな蜘蛛が
網の目のような繭の上にいる。

繭の中に女性の姿が見える。
あれはエリーゼ、
とケイトが言った。

シモーヌたちに気がついた
蜘蛛たちは襲ってきた。
シモーヌは身構えて、
咄嗟に呪文を唱えた。

薄煙が立ち上り、
周辺は一瞬光に覆われた。
蜘蛛たちはひっくり返って
次第に姿が薄れていく。

エリーゼ。
大丈夫?
エリーゼは身動きしない。

その時、草むらから
人面の大きな蜘蛛が現れた。
よくもやってくれたわね。
と言っている。
解説)
続きます。
May 13, 2026
赤い人形 そのさん

シモーヌたちはケイトを連れて
応接室でオウルと話している。
そういうわけで、
新しい住人になるかもしれないケイトよ。
本人の希望をまだ聞いてないんだけど。
ここは住みやすそうなところだけど、
私はエリーゼのことが忘れられない。
エリーゼのいた世界に帰りたい。
とケイトが言った。
あなた、燃やされそうになって、
逃げてきたんじゃなかったの?

そうなんだけど、どうしても、
エリーゼと一緒じゃなくちゃ駄目なの。
困ったわね。
それじゃ一緒に探しにいきましょう。
シモーヌ様、そんなことできるんですか。
どんな世界かもわからないんでしょう。
とオウルが言った。

ケイトが、その世界の記憶の風景を
思い出して、心に思い浮かべてくれれば、
鏡の扉を使っていけるわ。
シモーヌさん。
あなたってすごい魔法使いなんですね。
頑張って思い出してみるわ。

ケイトは記憶の風景を脳裏に思い浮かべた。
シモーヌが呪文を唱えると、
ありありとその風景が部屋の背後に現れた。

シモーヌがさらに呪文を唱えると、
鏡の扉が中空に現れた。
さあ、行きましょう。

四人は鏡の扉を抜けて
別世界に入り込んで行った。
オウル。
あなたも来ちゃったの?
それはもう。
創造主さまの護衛ができて
光栄です。

随分広々としているわね。
ケイト、ここがどんな世界なのか、
聞いてなかったけど、
教えてくれる?
エリーゼと私が二人で暮らしていたの。
そしたら、ある日突然、
黒い蜘蛛の群れがやってきて、
エリーゼは囚われてしまった。
私たちは引き離されて、
蜘蛛たちが私を火にくべて
燃やすって相談していたから、
必死になって逃げ出したら
川に落ちちゃったの。
二人だけで暮らしていたとしたら、
それはエリーゼっていう人の見ていた
夢の世界かもしれないわね。
だとしたら、襲ってきたのは
夢食いの可能性が大きいと思うわ。
と側で聞いていたシモーヌが言った。

夢食いって、あのアーキスみたいな
怪物ですか。
とオウルが尋ねた。
アーキスもそうね。
夢食いも色々いるみたいなのよ。
ところで、エリーゼが囚われている場所って
どこなのかしら?
あの森の中よ。
とケイトが言った。
大きな蜘蛛が何匹もいるの。
ほんとに助け出せるのかしら。

それはやってみないとね。
三人は森に向かって行った。
解説)
続きます。
May 12, 2026
赤い人形 そのに

サラたちは森林公園から
部屋に戻ってきた。

サラ、シモーヌ。
おかげで公園見物楽しかったわ。
私これから広場に行って、
マンスフィールドさんに
人形のこと、聞いてみる。
何かわかるといいけど。
と言って、サラは帰って行った。

この人形どうしたの。
公園の川に落ちていたのを拾ってきたのよ。
赤い毛糸で
ぐるぐる巻きになってるのね。
これなら私にも作れるかな。
そうかもね。
この人形には精霊が宿っているの。
今は精霊は別世界に行っていて、
抜け殻状態だけど、
ここで保管することしたの。

メメがしきりにメーメーと言っている。
あら。
どうしたのかしら。

シモーヌは立ち上がって呪文を唱え、
鏡の扉を開けた。
私これから常春の国に行って、
人形の精霊に話を聞いてくる。
サラはどうする?
もちろん、一緒に行くわ。
何がどうなってるのか知りたいし。
あ、その人形は、
なくさないようにしてね。
とサラは、みんなに言った。

ジェイソンは人形を首から下げた。
僕がしっかり保管します。
ジェイソン、さっきから
メメがメーメー言ってるけど、
何言ってるの。
懐かしくて嬉しがっているんですよ。
僕もなぜだか、懐かしいんです。
わしもさっきから
そんな感じがするんだ。
と骸骨のお父さんも言った。

シモーヌとサラは、鏡の扉を使って、
常春の国のお城の一室に出てきた。
これはこれはシモーヌ様。
ミネルバ。
赤い毛糸の人形見なかった?
おお、その人形なら、
お城の入り口に倒れていたので、
客室のベッドに運んでおきました。
また新しい住人になる精霊なんですか。
まだわからないのよ。
話を聞きたいので
案内してくれるかしら。
はい。

よく眠っているようね。
声をかけても応答がない。
また魔法で起こしましょう。
というとシモーヌは呪文を唱えた。
すると薄い煙が立ち上り。
あたりが一瞬クリアになった。

人形はブルブル身震いして
飛び起きた。
おお、ここはどこでしょう?
また同じこと言ってる。
無理ないわね。
ここは精霊たちの暮らす常春の国よ。
気分はどう?
すごくスッキリしてる。
体もなんだか身軽な感じ。
今のあなたは精霊状態なの。
元のあなたの体は別の世界にある。
この世界では、その姿で生きられるのよ。
そうなの?魔法で作った世界なのね。
あ、あなたたちのこと覚えてる。
私また眠っていたのね。
そうみたい。
私はシモーヌ、隣にいるのはサラ。
あなたのお名前は?
ケイトっていうのよ。
毛糸って、
覚えやすそうな、いいお名前ね。
ケイトよ。
解説)
続きます。
May 11, 2026
赤い人形

ソローとリリスとトマソンは
お花見の場所に戻ってきた。
その人形は?

人工の滝の岩の上に
落ちていたのよ。
上流から流れてきたみたい。
精霊が宿っているみたいなんだけど、
反応がないの。
深く眠っているみたいね。
とシモーヌが言った。

シモーヌは人形を
そっと草の葉の上に横たえた。
上流っていうと、
迷いの森の方ね。
とサラが言った。

あの人工の川は迷いの森から流れてくる、
夢見の水を利用して作られているって、
ジルさんから聞いたことがあります。
とソローが言った。
迷いの森から流されて来たのなら、
この人形、この世界のものじゃないわね。
迷いの森は異世界の交差点のようなところだって、
局長が言ってたわ。
とサラが言った。

なんか怖そうな話してるなあ。
と喜六は思っている。

起こしてみましょうか。
そんなことできるんですか。
ショックを与えるのよ。
そういうとシモーヌは
呪文を唱えた。
すると薄い煙が立ち上り、
あたりが一瞬クリアになった。

人形はブルブル身震いして
立ち上がった。
ああ、ここはどこでしょう。
ここは森林公園の中よ。
と言ってもわかるかな?
あなたは川に流されてきたらしいの。

ああ、私を拾って
救ってくださったんですね。
私は燃やされそうになって、
逃げてきたんです。
何か悪いことでもしたの?
エリーゼの力を弱めるために。
エリーゼと私は一心同体なの。
ああ、今頃エリーゼは。
というと人形は、
力が尽きたようで、
また眠り込んでしまった。

何かのっぴきならない
事情があったみたいね。
これからどうしましょう。
まずもっと詳しく事情を聞くために、
この人形の精霊を、常春の国に送ろうと思うの。
精霊たちの世界に行けば、
きっと元気を取り戻すはず。
人形の本体はサラの家で預かって。
わかった。
あと、リリスとトマソンさんは、
赤い人形のこと、
マンスフィールドさんやハリーに
聞いてみてくれる?
コレクターや研究家の間で
知ってる人がいるかもしれない。
迷いの森の別世界から
流れて来たんでしょう?
そうなんだけどね。
あの人形、私たち人間の姿を見ても
全然驚かなかったし、
話しかけても普通に答えてた。
別世界って言っても、
誰かの見ている夢の世界かもしれない。
解説)
続きます。
May 10, 2026
公園の散歩など

ソローは、公園を
案内しましょうと言っている。
僕も一緒に行ってもいいかな。
もちろんよ。

私は彫像のある花壇がみたい。
僕は人工庭園の名残だという、
人工の滝川が見たいなあ。
などと言いながら、
三人は出かけて行った。

サラとシモーヌは、
喜六の魔法の練習を見ている。
バナナの皮を元の大きさにできたわね。
オレンジの皮も小さくしてね。
はい。
ゴミはまとめてもって帰らなくちゃ。

シモーヌが口笛を吹くと、
巣箱から野鳥が飛んできて、
シモーヌの手に留まった。

シモーヌさん、
もしかして野鳥と会話できるんですか。
そういう魔族もいるみたいけど、
私はダメね。
精霊が宿っていれば、
話は別だけど。
でも何を考えているかは、
なんとなくわかるものよ。
何考えているんですか?
お腹が空いたとか。
天気が悪くなるとか。

その頃三人は、公園内を巡って、
正面の入り口付近に来ていた。
この綺麗な花壇も造花なんですね。
ジルさんの趣味で、
全体が人工庭園だったからね。
今では植林もしてるけど。

もう一人の管理人エドワードに出会った。
エドワード、
これから人工の滝川を見に行くんだけど、
橋の上から見たいんで鍵を貸してくれる?
ああいいよ。
あそこまで行くなんて珍しいね。
行っても水量は減ってるよ。

三人は人工の川が見えるところまでやってきた。
この向こう岸は、迷いの森で、
境界のフェンスがあるだけだから、
この橋を渡っても行き止まりだよ。
でも橋の上からは見晴らしがいいんだ。
と言いながらソローは橋の入り口の
柵の扉を鍵で開けていいる。
すぐそこが滝なのね。
確かに水が流れ落ちて
飛沫をあげる水音が聞こえる。

三人は橋の上から
川の風景を眺めている。
あれ、あそこに何か赤いものが。
あれは人形みたいだね。
僕が河床に降りて取ってこよう。
とソローが言った。

人形はわずかな滝の水流に流されて
下の石の上に移動していた。
いそいで取らないと、
川に流されちゃう。
とソローが言っている。
解説)
続きます。
May 09, 2026
魔法の練習 そのに

喜六の魔法の練習は
続いていた。
今のは怪しい光が出たでしょう。
もう少し肩の力を抜いてみて。
とシモーヌが言っている。
わかりました。
今度は、このバナナで。
喜六は肩の力を抜いて呪文を唱えた。
するとバナナは発光せず、
薄い煙が立ち上り。

なんとバナナは
巨大なバナナに変化した。

これってしっかり
中身が詰まってるわ。

飲みかけのオレンジジュース持って来たけど、
これ絞った方が新鮮ね。

それ食べすぎじゃない?

シモーヌさんも
すごい呪力をお持ちだと、
ハリーさんが感心してましたよ。
この巨大化の魔法は使わないんですか。
とトマソンが言った。

必要ないから、普段は使わないわ。
でも呪文は覚えてる。
久しぶりにやってみましょうか。

シモーヌは静かに呪文を唱えた。

薄い煙が立ち上り、
なんと巨大なチップスターの
筒が現れた。
おお、こういうオブジェ作るの、
すごく大変なんですよ。
とトマソンが言っている。
でも空っぽの筒は
ゴミが粗大ゴミになっちゃうだけから、
元に戻すわ。
そう言ってシモーヌは再び呪文を唱えた。

その時、ざわざわと
草むらの揺れる音がして、
茂みから公園管理人のソローがやってきた。
あ、どうも。
覗き見するつもりはなかったんですが、
青い車が公園の裏口から入ったって聞いて、
様子を見に来たんです。
すごいものを見せてもらいました。

今のは魔法ですか。
物を大きくしたり元に戻したり。
魔術劇場のハリーさんや
娘さんのヴィヴィアンさんが
魔法使いだっていうのは有名ですが、
シモーヌさんも。
そうなの、私たちは魔族って呼ばれている。
今見たことを誰かに話したら、
カエルにしちゃうわよ。
というのは冗談だけど、
内緒にしといてね。
わ、わかりました。
このジュースおいしいですね。
果汁100%よ。
とサラが言った。
解説)
続きます。
May 08, 2026
魔法の練習

三人は森林公園を見て回る前に、
桜のある場所で一休みすることにして、
サラはシートを広げようとしていた。
あら、車の音。

トマソンと喜六の乗った
オープンカーが到着した。

誰かと思ったら、
トマソンさんと黒木さん。
こんにちわ。
これから休憩するところ。
オレンジジュースと、
ポテトチップス持って来たから、
よかったら一緒に食べない?
とサラが声をかけている。

五人は車座になって
会話している。
住民はみんな飽きっぽいから、
もうここに来る人は
いないんじゃないかと思ってた。
とサラが言った。
僕もそう思ってたんです。
それで喜六さんの魔法の練習場所に
いいかなと思って来たんです。
とトマソンが言った。

どんな魔法?
物を巨大化する魔法です。
僕は「魔術の書」で
呪文を覚えたばかりなんで。
と喜六が言った。
そうか。喜六さんは
ハリーさんの持っていた、
「魔術の書」で呪文を覚えたのね。
是非、私たちにも魔法を見せて。
ここにいる人たちはみんな
魔族や魔法のことは知っているから、
魔法を使っても大丈夫よ。
とシモーヌが言った。

わかりました。
やってみます。

シートの中央にオレンジを一つ置くと、
喜六は呪文を唱えた。
するとオレンジは怪しげな光を放ち、
周囲に薄煙が立ち上った。

おお。
成功したようです。

これ本物よね。
とサラが言っている。
解説)
続きます。
May 07, 2026
森林公園再訪

トマソンと黒木喜六の会話は
弾んでいた。
それで練習の結果、
物を巨大化する魔法を使えるようになったんですか?
うん、まだ練習中だけど、
なんとか覚えたよ。
練習も兼ねて、お見せしたいところだが、
ハリーさんから、
人前で魔法を使うのは禁じられていてね。

じゃあ人のいない所で
練習されたらどうです。
郊外の森林公園なんていかがです?

郊外には行ったことがないし、
かなり遠いんだろう。
鏡の扉を使ったらいいじゃないですか。
まだそんな高度な魔法は
覚えていないんだよ。
じゃあ車で行きましょう。
前に僕が行った時には、
ルビーがジープで来てました。
確かドルフィンの倉庫でレンタルできるはずです。

喜六は農家の直売所で、
買い物をしている。
バナナとオレンジね。
毎度。

ジープをレンタルできますか?
今ねあいにく出払ってるの。
二人乗りのオープンカーならあるけど、
バービー仕様だから狭いわよ。

二人は車を借りて
森林公園に出発した。

その頃、サラたちの部屋でも、
森林公園の話題が出ていた。
公園にもういちど行ってみない?
この前にみんなで行ったばかりでしょう。
お花見の場所だけはね。
あの公園は広いみたいだから、
他の場所も見てみたい。
とリリスが言っている。

じゃあ行って見ましょう。
一瞬で行けるから。
とシモーヌが言って
鏡の扉に向かって呪文を唱えている。

三人は公園に抜け出てきて、
桜の咲いている場所まで歩いて行った。
綺麗だけど、
ちょっと季節感が狂うわね。
と言っている。
解説)
続きます。
May 06, 2026
子供の日の続き

ケイたちが柏餅を食べているところに、
鏡の扉を抜けて、
サラとシモーヌとリリスが
常春の国から帰ってきた。
おかえりー。

ジェット。
すごいのかぶってるのね。
ドルフィンの倉庫で見つけたんだ。
子供の日に飾る置物みたいだけど、
かぶってみるとなかなか
良い感じなんだよ。

シモーヌはじっくり観察している。
これ一体成型の鋳物ね。
けっこう重いでしょ。
うん。
骨董品なの?
パリのお店で売れる?
ちょっと難しいわね。

広場に、たまきたちも帰ってきた。

試運転にしては
随分遅かったわね。
昨晩はキサラの家に泊まったから。
調子は良好だったわよ。
このペスパは後で
キサラが取りに来るって。

たまきたちはベランダに行って
モモコと話している。
公園の桜はどうだった?
満開で綺麗だったけど、
もう五月だからねー。
それでビストロにピザ食べに行ってから
バイトしてるキサラの家に泊まったのよ。
昨日は子供の日だったから菖蒲湯沸かしたの。

広場には歌声が流れている。
しょうぶゆわか~して~
おとおとと~がまんくらべ~🎵

マンゴー亭では、
トマソンと黒木喜六が話していた。
二人は魔術劇場に客人として泊まっているので、
顔馴染みになっていた。
随分マイナーな曲歌ってますなあ。

ところでここだけの話ですが、
最近はハリーさんに魔術の書をお借りして、
呪文の勉強をしているんですよ。
この前、とある場所で実験したんですが、
やかんを巨大にするのに成功したんです。

魔族の人は羨ましいなあ。
僕は、現物の6倍サイズのオブジェを製作して
路上に展示放置するという芸術活動をやってきましたが、
一瞬に物を大きくできたらさぞ便利でしょうね。
もっとも僕にとっては、結果はさほど重要ではなく、
6倍サイズの物を作り上げるプロセスこそが
芸術活動なんです。
どうして6倍なんですか?
それはどうしてもです。
解説)
続きます。
May 05, 2026
子供の日

広場には
今日も歌声が流れている。
はしら~のき~ずはおととしの~
ご~がついつか~のせいく~ら~べ🎵

今日は魔族の人が魔法で描いたみたいに
いい天気ね。

喫茶ペンギン前では、
ローラが完成した柏餅を
テーブルに並べていた。

美味しそうだけど、
鹿せんべいの方がいいなあ。
とピリカが言っている。

それはなあに?
これはちまき。
昔は関西ではこれを食べたのよ。
柏餅をたくさん作ったから
お裾分けに配るんだけど、
手伝ってくれる?

圭とルイは柏餅の入った籠を
ジェニーたちの部屋に届けに行った。
ローラが作ってくれたんだよ。
お裾分けだって。
それはラッキー。
あの人料理の達人みたいだから
きっと美味しいわね。
他の人たちはいないの?
たまきとナオミは森林公園に出かけて
郊外のキサラの家に泊まったの。
もうすぐ帰ってくると思うわ。
お花見に行ったんだね。
僕も行きたいなあ。

これはなあに?
五月人形の金太郎だよ。
ずっと飾ってあったんだけど、
撮影するには今日がぴったりだね。
誰か撮影するのかなあ。

ローラはすずとピリカと一緒に
サラたちの家を訪ねた。
これおいしいね。
サラはシモーヌたちと出かけたきり
まだ帰ってきてないんだ。
いつものことだけど。

ジェットさん。
その兜私たちとお揃いね。
すごくかっこいい。
とすずが言った。
かぶってみる?
それ金属製ですごく重いのよ。
子供はやめといた方がいいわ。
とメアリーが言っている。
解説)
続きます。
May 04, 2026
すぐに子供の日

広場には
今日も歌声が流れている。
い~ら~か~のな~み~と~
く~も~のな~み~🎵

今日はちょっと
風があるわね。
派遣コウモリのひそこは
吹き流しに巻き込まれて
戸惑っている。

子供たちは
自分たちで折り上げた
紙の兜をかぶって
ドルフィンの2階から降りてきた。

オセロも小さな兜を
折ってもらった。

大人の人に見せに行こうよ。
きっと褒めてくれるよ。

子供たちは
高台の休憩所に
自慢しに行った。
すごいわね。
自分で作ったの?
うん。すごいでしょ。

子供たちは
喫茶ペンギン前まで遠征した。
すごいわねー。
と言われている。

子供の日って明日でしょ。
そうなんだけど。

じゃあ、
私が柏餅作ってあげる。
とローラが言った。
やたー。
と子供たちは
歓声を上げている。
解説)
続ききます。
May 03, 2026
広場の風景 そのに

広場には
歌声が流れている。
屋根よ~り た~か~い
こいの~ぼ~り~🎵
気が早いなあ
とルビーが言っている。

ドルフィンのマスターが
鯉のぼりの支柱を補強しているのだった。
子供たちは真剣に見守っている。

これで完成だよ。
貫禄だけど
破れてないから大丈夫ね。

風がないので、
吹き流しの鯉は
垂れ下がっている。

鯉のぼりって
あんなに大きいのね。
感動しちゃった。
とピリカは言っている。
大きさは色々なんだよ。
ルイちゃんは?
どこだろ。

ルイがドルフィンの2階から降りてきた。

ルイちゃん、その紙の兜
どうしたの?
魔子さんが作ってくれたの。

子供たちは
さっそくドルフィンの2階に
走って行った。
魔子さん。
僕にも兜作って。
私にも。
折り方教えてあげるから
やってみる?
解説)
続きます。
May 02, 2026
広場の風景

今日は薄曇りで
過ごしやすい午後。

ルビー、革ジャン脱いだの?
流石にもう5月だからね。

舞は洗濯物を干している。

子供たちはオセロに
バナナをあげて遊んでいる。

こんな平穏な日が
続くと楽でいいなあ。

ドルフィンの倉庫から、
ナオミとたまきが出てきた。
たまきは和服を着替えて
来たようだ。

私たちも森林公園の桜を
見に行きたいんだけど、
倉庫に乗り物ある?
ペスパがあるわよ。
キサラに修理を頼まれてたんだけど、
もう直したの。
試運転に使ってみて。

これから七夕まで
広場のイベントはないわね。
そういえばそうだね。
暇になりそうでありがたい。

そこに子供達がやってきた。
マスターさん。
もうすぐ子供の日でしょ。
ピリカちゃんに鯉のぼりの
説明したんだけど、
今まで見たことないんだって。
それで。

ドルフィンのマスターは
広場に鯉のぼりを立てることにした。
スタッフのリタが倉庫から出してきた
鯉の吹き流しを確認している。
この鯉も随分貫禄になったわね。
使うの4年ぶりぐらいじゃないかしら。

たまきとナオミは
ペスパで森林公園に出発した。
解説)
続きます
May 01, 2026
コンテストの結果発表

あっという間に
5月になった。

もうコンテストの優勝者の
発表日になったけど、
なかなか決まらないわね。
4月はみんなお花見に出かけたり、
住民以外の新規の登録者もいなかったから、
難しいなあ。
最近は最後まで決まらなくて
ルビーが目についた人に決めてたでしょう。
たまには説得力がある人を選びたいわね。

それもそうなんだけどね。
みんな慣れちゃってて、
参加賞目当てに
普段着で登録に来るからなあ。

そうじゃない人もいたよ。
ほら。
とボニーが言った。

ルビーはマイクを持って
立ち上がってアナウンスを始めた。
みなさん。
4月のコスプレコンテストの
優勝者を発表します。
優勝したのは、
ライダースーツ姿の
エリスさんです。

エリスは、喫茶ペンギン前のテーブルで、
アイスコーヒーを飲んでいた。
拡声器からルビーのアナウンスが
流れてきた。

エリスさん。
優勝おめでとうございます。
とはるなが言っている。
えー。信じられないわ。

エリスはローラと二人で、
広場に出向いた。
いつも通り万雷の拍手と歓声に迎えられ、
トロフィを授与されている。

まさか私がトロフィもらえるとはね。
あのライダースーツは着るのが大変だから
普段着で駆けつけたのよ。

全然OK。
授与式は形だけだから。
エリスのハーレーを整備した
ドルフィンのマスターも喜んでいる。

優勝はエリスさんなのね。
ライダースーツは格好いいからなあ。
オートバイって音うるさい。
そこがいいんだよ。
チョコもらいに行こう。
などと言っている。
解説)
続きます
Apr 30, 2026
カマキリを探す そのさん

すごいところね。
この斜面を登ると
トロンの住む小屋があるのよ。
また登るのね。

ここは「常春の国」とは違うのね。
ええ。
私の祖母のみた「忘れられた夢の世界」なの。
祖母は夢を見ながら亡くなったけど、
最後に見ていたその夢だけは残っているのよ。
ふーん。シモーヌのお婆さまって、
さぞかしすごい魔族だったんでしょうね。
すると風が吹いてきて
あたりの粉雪が煌めいた。

トロンの家が見えると、
サラは走って行った。
家からトロンが出てきて挨拶している。

3人はトロンの小屋で
休憩している。
あなた、洞窟を抜けて
「常春の国」に出かけたでしょう。
はい。
マルテが洞窟の入り口を溶かしたから、
一人で散歩に行ってみたんです。
お城には知り合いのフクロウもいるし。
でもお城に行く途中で。
途中で?
お花畑でカマキリに出会って。
意気投合して二人で戻ってきたんです。
そのカマキリを探しているのよ。
カマキリなら、
雪原で遊んでいますよ。

サラたちが雪原に行くと、
カマキリの姿が見えた。
ゆ~きやこんこ🎵
と歌っている。

カマキリはサラたちに気がついて
飛んできた。
これはこれは、
シモーヌ様にサラさん。
シモーヌさんたちは、
君を探しにきたんだって。
とトロンが言った。
えー。そーなんですか。

僕は、毎日お花畑にいるのに
飽きちゃったんです。
平和で天国みたいなところですけど、
昆虫の友達もいないし。
それでトロンと出会って、
話が盛り上がって彼の家に遊びに来たんですよ。
あなたの行動はもちろん全然自由だけど、
急にいなくなったので、オウルが心配してるのよ。
オウルは、ディアナの代役の王様をやってるから、
常春の国の治安にすごく責任を感じてるみたいなの。
それは気がつきませんでした。
お花畑には毎日エドが散歩に来たり、
フクロウたちも通りますから、
誰かに出かけることを言えばよかったんですね。
そういうことね。
随分前にディアナが失踪したこともあったから、
みんなも気にしてた。
私も夢食いに攫われたりしたんじゃないかって、
ちょっと心配してたの。
それはどうも。
わざわざこんな遠くまで探しに来られたなんて
恐れ入ります。
大したことじゃないのよ。
私たちは一瞬で移動できるから。

シモーヌは鏡の扉に向かって
呪文を唱えている。
カマキリはいいなあ。
僕なんて誰も心配してくれないよ。
とトロンが言っている。
あなたは夢食いでしょ。
神出鬼没なんだから当たり前じゃなの。

一行は鏡の扉を抜けて
お城の部屋に移動してきた。
これ便利ですねー
とカマキリが言っている。

昼寝から覚めたら
カマキリが戻ってきていたなんて
私の心配事も短い夢のようでした。
これもシモーヌ様のおかげです。
オウル。
ちょっと相談があるの。
あの雪山の洞窟は
マルテっていう火星人の家にしたんだけど、
マルテはしばらく不在なの。
洞窟は今も別世界との通路になってて不用心だから、
誰か留守番を頼めない?
もちろん向こうの世界に遊びに行くのは自由だけど、
留守番がいれば出入りをチェックできるわ。
わかりました。
それじゃ、この世界に来たばかりで
仕事を探している福郎に頼みましょう。
解説)
続きます。
Apr 29, 2026
カマキリを探す そのに

3人は森の小道に分け入っていった。

大きなセコイヤの木の根元に
大きなトカゲが寝ていた。
こんにちわ。
ちょっと起きてくれる?
ああ。サラさん。
シモーヌ様も。
二ヶ月ぶりですね。
あのタコは元気ですか。
マルテにはしばらく会ってないけど
元気だと思うわ。
ところで、いつもお花畑にいる
カマキリを見かけなかった?
いなくなったので
オウルが心配して行方を探しているの。
どこか散歩してるんじゃないですか。
お花畑はあいつのテリトリーだけど、
さすがにずっと同じ場所にいるのは飽きるでしょうから。
私も森を出て歩き回りたくなることがあるんですよ。
そう思いつつ、ここで寝てしまうんですが。

じゃあ見かけなかったのね。
ええ、カマキリは見ませんでしたよ。
最近では、丸っこい緑色の亀みたいなのが、
通り過ぎるのをちらっと見ましたが。
あれには、前にも会ったことがある。
確か去年の6月頃のことだったか、
3人連れの女性たちと一緒にきて、
お城に行く道を聞かれたんです。
その3人連れって、アイスたちが、
最初にこの国に来た時のことね。
丸っこい緑の亀みたいな、、、。
ありがとう。他を探してみるわ。
とシモーヌが言った。
どういたしまして。
カマキリを見かけたら、
シモーヌ様たちが心配して
探していたと伝えておきますよ。

丸っこい緑の亀みたいなのって。
きっとトロンのことよ。
トロンって?
とリリスが尋ねた。
「忘れられた夢の世界」に
住んでいる夢くい。
こっちまで来たんだわ。

ここを登るの?
確かめたいことがあるの。
雪景色も楽しめるから、
観光気分でついてきて。

3人は雪山の洞窟前に
たどりついた。
この洞窟は、火星人のマルテの家。
もとは「忘れられた夢の世界」との
通路になっていたから、
トロンはそこを通ってきたのよ。
とシモーヌが言った。
マルテって、
さっきトカゲが言ってたタコのことね?
そうよ。

入って行ってもいいの?
マルテは、みすずの家で
自伝みたいな本を執筆中で留守のはず。
出かける時に、
向こうの世界に通じる出口を
開けたままにしてたのを思い出したの。
だからそこを通って
トロンに会いにいくのよ。

3人は洞窟を進んでいった。
全く何も見えないわ。
これはマルテの仕業よ。
実際には洞窟の中だから、
壁の手触りを伝っていけば向こうに抜けられる。
どうしてこんなことを。
マルテは、このほうが天国にいるみたいで
落ち着くって言ってたわ。

3人は
忘れられた夢の世界の
西の外れの洞窟に抜け出てきた。
解説)
続きます
Apr 28, 2026
カマキリを探す

オウルたちに見送られて
サラたちはお城を出た。

ここは庭園になってるのね。
乗り心地はどうですか。
いい感じよ。
一度乗ってみたかったの。
ところで、アーキスって。
怪鳥みたいな姿の夢食いよ。
事情があって、
この国の番人をしてくれてるの。

アーキス。
こんにちわ。
おお、シモーヌにサラか、
それに新顔だな。
リリスっていうのよ。
そうか、俺はアーキス。
それで何か用事かい。

お花畑のカマキリが
いなくなってオウルが心配してるんだけど、
どこかで見かけなかった?
そういえば見かけないな。
もっとも俺は毎日この国を巡回してるんだが、
上空から見渡すだけだから、
森陰や草むらの中までは見通せないんだよ。
花畑の中で昼寝したりされたら、
まず見分けられない。

あのカマキリって、
どうせフィギアの精霊だろう。
現実世界のフィギアの本体が壊れて
精霊もこの世界から消えちゃったんじゃないか。
まあ、これから巡回に行くところだから、
注意してみてみるよ。

なんか怖いこと言ってたわね。
とリリスが言った。
確かに僕たちフィギアの精霊は、
本体のフィギアが壊れたら
拠り所が無くなっておしまいですからね。
とエドが言った。
そういうことも考えられるけど、
あのカマキリのフィギアは、
私のパリのお店で安全に保管してあるはずよ。

とりあえず、
お城を出て探してみましょう。

一行はお花畑に到着した。
僕はこの辺りの草原を
探してみます。
アーキスが言ってたみたいに、
草陰に寝てるのかもしれない。
とエドが言った。
了解。
私たちは別の場所を探してみるわ。

素敵な風景ね。
いいところでしょう。カマキリ探しが、
リリスにこの国を案内する
道ゆきになるなんておかしな展開。
森の中も上空からは見えない場所。
森の方に行ってみましょう。
大きなトカゲが住んでいるから、
何か知っているかも。
解説)
続きます。
Apr 27, 2026
常春の国で

お城の客間での会話は
続いていた。
オウル。それで、
心配事ってなんなの?
いえね。いつもお花畑にいる
カマキリの姿を、
最近見かけないというんですよ。
これからみんなに集まってもらって、
情報を聞こうと思っていたところなんです。
あのカマキリはフクロウ仲間ではないですが、
彼もこの国の立派な住人ですから
心配しているんです。
この前私が、ディアナに
鹿せんべいを届けに来たのは、
そんなに前じゃないわよね。
ディアナはまだいるの?
ディアナ様はエドがこの国に
慣れたからといって、
「忘れられた夢の世界」とかに
お戻りになられましたよ。
エドならお部屋にいるはずです。
エドとディアナは
毎日野原を走り回っていたはず。
カマキリを見かけてないのかしら。
私たちが聞いてみるわ。
では私は広間にみんなを
集めてお待ちしています。

3人はエドの部屋に向かった。
広いから迷いそうだけど、
確かこっちだったはず。
とサラが言っている。
エドっていうのも
何かのフィギアの精霊?
とリリスが尋ねている。
エドは馬のフィギアの精霊よ。

これはこれは、
シモーヌ様に、サラ。
それにあなたは!
リリスではないですか。
エドワードね。
さっき馬って聞いて、
そうじゃないかって一瞬思った。
二人は知り合いなの?
ジャンの倉庫で一緒だったのよ。
短い間だったけどね。
ジャンが連れて行ったまま
帰ってこなかったから
誰かにあげたんだと思ってた。
シモーヌ様がこの世界に
送ってくれたんですよ。
その「さま」ってつけるのやめてよ。
シモーヌでいいから。
はい。ついフクロウたちの口調と、
一緒になっちゃって。

この前いただいた
鹿せんべい美味しかったですよ。
それは良かったわね。
でも馬があんまり鹿せんべい食べすぎると、
馬鹿になるっていうわよ。
そうなんですか。
もちろん冗談よ。
またお土産に持ってくるわ。
ところで最近お花畑で、
カマキリの姿を見た?
オウルが心配してたんだけど。
毎日散歩してますが、
そういえばこのところ見かけないですね。
いつも走る時は、
踏み潰さないように注意してるんです。
やっぱりね。
いなくなったのは事実みたい。
オウルがみんなに集まってもらうって
言ってたから、広間に行ってみましょう。

3人が広間に行くと、
サラたちはオウルの横に
並ぶように言われた。
シモーヌ様、またお目にかかれて
光栄です。などと叫ぶフクロウもいる。
サラは、エドも
カマキリを見かけていないと言っていると、
オウルに伝えた。

オウルは、みんなにリリスを
シモーヌの客人として、
また自分の古い友人としても紹介してから
おもむろに話し始めた。
さてみんな、
集まってもらったのは
お花畑からカマキリがいなくなったようなんだ。
だれか見かけたものはいないかな。
遊覧船を運転してますが、
湖付近では見かけませんでした。
毎日森に木の実を拾いに行きますが、
途中で通るお花畑で
確かにこのところ見かけませんね。
そうかそうか。
見かけたら報告してくれたまえ。
では散会。

みんなそれぞれ
広間から去っていった。
カマキリがいなくなったのは確かで、
そのごの目撃者ゼロみたいね。
あのー、シモーヌ様。
あら、あなたはグーフォ、
頭に乗ってるのは、
この間マンスフィールドさんの倉庫から
ここに送ってあげた
カラフルな置物のフクロウね。
元気で暮らしてる?
おかげさまで。
でも、僕にはまだ名前がないので、
自己紹介できないんです。
そうだったのね。
急いでて名付けるのを忘れてたわ。
じゃあ、ここで名付けてあげましょう。
あなたの名前は福郎。

福郎ですか。おめでたそうで、
いい名前ですね。
とても気に入りました。
でもどうして。
オウルは、マンスフィールドさんが
つけた名前だけど、
ここにいるフクロウたちの名前は、
精霊としてこの国に送るときに、
私がいろんな国の言葉で、
フクロウの名称を呼び変えて
そのまま名付けたの。
あなたの名前はそのまま、日本語よ。
体に福って書いてあるでしょ。
その文字を生かしたの。
そうだったんですね。

オウル。
私とサラは、今回は
リリスにこの国を案内するために来たんだけど、
カマキリの行方を探すのを
手伝ってあげる。
おお。ありがとうございます。
さすがお優しい創造主さま。
夜型のあなたはお昼寝するといいわ。
まずはアーキスに聞いてみる。
解説)
続きます。
Apr 26, 2026
常春の国へ

サラたちの部屋では、
朝食が続いていた。

シモーヌ。その常春の国って、
どんな精霊たちが住んでいるの?
主にフクロウの置物の精霊たちがいるわ。
町外れのマンスフィールドさんの倉庫に
収納されていた置物たちよ。
あ、たぶん、
その倉庫にはリリスがいたっていう人形の家から
マンスフィールドさんが引っ越しの時に
持って行った置物もあったはずね。
何か覚えてる?

フクロウの置物か。
マンスフィールドさんは、
ここに残りたいって言い張った私だけ残して、
コレクションをみんな持って行ったの。
引っ越しだから当然なんだけど。
そういえば、その中にフクロウのぬいぐるみ
みたいなのがあったのは覚えてるわ。
ぬいぐるみって言っても、
中に機械が仕込んであって、
話しかけると同じ言葉で返事をするの。
子供向けの向けの玩具ね。
マンスフィールドさんは、オウルって呼んでた。
とても精霊が宿ってるようには
思えなかったけど。
オウルなら、
常春の国で、ディアナの代理の王様をやってるわ。
とサラがいった。

シモーヌ、
またクロスワードパズルなんだけど、
フクロウのこと、フランス語で何ていうの?
シュエットよ。
耳のある木兎のようなフクロウは、
イブっていうわ。
常春の国に、そんな名前のフクロウも
いた気がする。
とサラが言った。

さて、そろそろ出かけましょう。
と言ってシモーヌは呪文を唱えている。
サラもまた出かけるの?
ええ
それはもう。

3人が鏡の扉を抜けると、
そこは常春の国の
お城の中の一室だった。

素敵なお部屋ね。

おお。
これはこれはシモーヌ様。
それに、サラさん。
お連れの方も。
この人はリリス。
私のお友達よ。
このフクロウは
ミネルバって言って、
執事をしてくれているの。
オウルはお昼寝中?
オウル様は
起きていらっしゃいますよ。
客間の方にお呼びいたします。

シモーヌ様。
ようこそ。
まだ日が高いのに、
起きてたなんて珍しいわね。
それがちょっと
心配事がありまして。
あ、そちらの方は?
リリスよ。
人形の家で暮らしていた時、
あなたのことを知っていたって。
何と。
私も見覚えがありますぞ。
そのお名前も。
思い出したわ。
でもまだあなたに精霊が宿る前のことでしょ。
とリリスが言った。
そうでしたな。
私に仕込まれた録音再生装置を使って、
あなたが面白がって、
何度も自分の名前を吹き込んだので、
うっすらと覚えているのです。
あの悪戯なピエロ人形のリリスでしたか。
でもあの反復のおかげで
私に精霊が宿ったのかもしれません。
一人きりで寂しかったので、
話し相手が欲しかったのよ。
あなたは引っ越しでいなくなっちゃたけど。
なんか運命的な別れと出会いを
感じる話ね。
解説)
続きます。
Apr 25, 2026
お花見の翌朝

翌朝の広場。

ルビーがハーレーの運転するバイクに乗って
帰ってきた。
朝帰りなのね。
と佳奈に言われている。

ハーレーは、すぐに
境界警備隊本部に帰っていた。
また飲みましょう。
ハレーは、
わたし出番が少ないとつぶやいている。

昨日は帰りに警備隊本部まで送ってもらったら、
CGの仲間に引き止められちゃってね。
結局本部に泊まってきたの。
朝まで飲んでたんですか。
まあそんなところね。

今度はキューベルワーゲンが
広場に走り込んできた。

ギルダさん。
どういう風の吹き回しで。
昨日ビストロで食事してたら、
ジャンさんやアルと
この方たちと一緒になって、
ジャンさんのお宅に泊まるっていうから
ジャンさん宅の倉庫でパーティをしたの。
それで送ってきたわけ。
なるほど。
それで朝まで飲んでたんですか。
そんなところね。

その頃、サラたちの家では、
朝食を食べていた。

ピーナツバターにジャム。
朝から甘いもの食べてるんですか。
とリリスが言った。
イタリアではドルチェって言って、
朝から甘いパンを食べるのが普通よ。
フランスに住んでる
シモーヌはよくご存知ね。

お父さん、
昨日は楽しかったね。
そうだなあ。
メメもメーメーと言っている。

そこにケイたちが帰ってきた。
広場で肉まん買ってきたよ。
と言っている。
解説)
続きます。
Apr 24, 2026
お花見は続く そのろく

サラも加わって
リリスたちの話は続いていた。
自分が人形に宿っている精霊だと
気がついたのはいつ頃?
とシモーヌが尋ねた。
随分昔のことよ。
ピエロ人形のコレクターがいて、
私もピエロの服を着た人形だったの。
一緒に精霊であることに目覚めた
もう一体の私とよく似た人形がいて、
彼女と二人で色々悪戯したものだから、
持ち主が怖がって手放すことになったの。
私をもらってくれたのが。
マンスフィールドさんなんでしょう。
とサラが言った。
そうなのよ。
マンスフィールドさんは
私を専用の倉庫に保管したんだけど。
そこは人形の家って呼ばれていて、
居心地が良かったから、
彼女が引っ越す時にそこに居残ることにしたの。
この話前にサラにしたっけ?
誰かから聞いたような気がする。
それでマンスフィールドさんから、
倉庫付きのバービーハウスを買った、
ジャンがその倉庫の持ち主になったわけね。
もう一体の精霊の宿った人形は
どうなったの?
とシモーヌが尋ねた。

夜な夜なピエロ人形が騒ぐっていうんで、
呼ばれた超常現象の研究家がいて、
その人に貰われていったわ。
そこで彼女とは離れ離れになったんだけど、
その研究家っていう人が。
ハリーさんだったんでしょ。
とサラが言った。
そうなのよ。
ハリーに貰われた彼女は
エヴァって言うんだけど、
今でも魔術劇場の宣伝とか、
入り口の管理をしてるわ。
広場で再会して驚いた。

エヴァは今でも
ピエロの格好してるのよね。
とサラが言った。
そうなの。
私の着ていたピエロ服は
床下の小人たちに盗まれちゃった。
それはまた別の話だけど。
人間の姿をした精霊が
大勢いるなんて素晴らしいわね。
でもそんなケースばかりじゃない。
私は人形や置物に宿る精霊を見つけたら、
望みを聞いて別世界に送ってあげてるのよ。
とシモーヌが言った。
そうなんですか?
とリリスが言った。
ええ。そこでなら、
人間の姿にならなくても
自由に暮らしていけるから。
ふーん。
私も行って見たいなあ。

さてと。
ピザも食べ終わったし、
うちのビストロに行って一杯やろうか。
ジェット、君たちもくるかい?
郊外には滅多に来ないから、
伺いたいですが、
帰りが遠いですからねー。
良かったら
みんなうちに泊まればいいよ。
普通のバービーハウスだけど、
倉庫のスペースもあるし。
ナタリーも喜ぶと思うよ。
とジャンが言った。

警備隊も帰り支度をしていた。
ルビー歩いて帰るなら
乗っけてこうか。
そうねー。
バギーのドライブは久しぶり。
レイブンやハーレーにも会いたいし
じゃあ警備隊本部まで。

ルビーがバギーに乗り込んで、
バギーはエンジンを始動した。
サラ、先に帰ってるわ。
もっとも、帰りつくのはそっちの方が
早いかもしれないけど。
それどういうジョーク?
とイメルダに言われている。

バギーが去った後、
後片付けをしていると、
公園散歩からケイたちが戻ってきた。

管理人のソローも一緒だった。
途中で出会って、
みなさんを案内してたんです。
人工の滝や遊具コーナー、花壇や
お茶運び人形の像など、
見どころがたくさんですよ。
サラさんたちもいかがです。
とソローが言った。
もうすぐ夕暮れになるし、
また今度にするわ。
夜は公園は閉園になるんでしょう。
一応そういう決まりですが、
申請してもらえれば、
キャンプもできますよ。
いいこと教えてもらったわ。

サラはみんなと相談した結果、
ケイとジェットとメアリーは、
アルとジャンと一緒にビストロに行って、
今晩は近くのジャンの家に泊まることになった。
サラとシモーヌとリリスは、
ジェイソンとお父さんとメメと一緒に
鏡の扉でサラたちの部屋に戻ることにした。
シモーヌがリリスを、精霊の国に
案内すると言う話になったのだ。

サラたちは、
鏡の扉に向かった。
これを使えば、
一瞬の移動なのにね。
これは便利だけど、
魔族だけの秘密。
使いようによっては
悪いことができちゃうからね。
移動したら扉の痕跡も消しておくわ。
解説)
続きます。
Apr 23, 2026
お花見は続く そのご

お花見は続いていた。
さっきまでバービーたちも
来てたのよ。
みんな新しもの好きだからなあ。
僕もだけど。
でも飽きちゃうのも早いわね。

シモーヌとリリスは
二人で話し込んでいた。
あなたは人形の精霊ね。
ひと目でわかるっていうことは、
あなたは魔族?
ええ。
それに骨董品の売買や
鑑定の仕事をしてるから、
見分けるのは得意なの。
人形のあなたをハリーさんが
人間の姿にしてくれたのかしら。
いいえ。
自分の力で変身したのよ。
もっとも、魔子さんっていう狐の精霊に
変身の呪文を教えてもらったんだけど。
「寝つきのいい野狐」っていうの。

狐の回文呪文か。
それにしてもすごいわね。
人間たちの世界で、そうやって
変身して暮らしてるの?
いいえ。
私は普段は別世界で暮らしているの。
そこはフィギアの精霊たちが暮らす村。
ジャンとは特別な友人で、
今日はジャンの家でお茶を飲んでたら、
やって来たアルに誘われてお花見にきたのよ。
フィギアの精霊たちが暮らす世界か。
やっぱり彼らにとってはその方が幸福ね。
その世界はハリーが作ったのかしら。
創造主はわからない。
特定の魔族じゃないと思う。
私は人形コレクターが、人形の家って呼んでいた
彼女の倉庫に置かれていたんだけど、
その世界が生まれたのは、
倉庫の持ち主がジャンに変わってからのこと。
倉庫にはジャンのコレクションしていた
ミリタリーフィギアが収納されるようになった。
最初の記憶では私の住む古い小屋があって、
その外にぼんやりと世界が広がっていた。
やがて家が建って兵士姿の住人を見かけるようになった。
家がだんだん増えて小さな村になったの。
その村が、ジャンが庭に作っていた
ジオラマの村そっくりだということは後で知ったのよ。
それから、なぜか私の住む小屋のドアが、
現実世界の倉庫の入り口のドアと繋がって、
行き来できるようになったの。
面白いけど、
すごく長くなりそうな話ね。
まだ全然途中よ。

リリスとシモーヌが
あれこれ話している時、
境界警備隊のバギーが走って来て、
停車した。

ルビーが走りよって
話している。
何かあったの?
特に何もないわよ。

いつも通り、フェンス際の道を
巡回パトロールしてたんだけど、
新聞に載ってたこの場所にも
行ってみようってことになってね。
一応森林公園は
フェンス沿いに迷いの森に隣接してるから、
ここもパトロール対象区域といえば
いえないこともないし。

とか言いながら、
お花見に来たっていうわけね。
一応パトロールは済ませたから、
サボってるわけじゃなく、もう勤務外なのよ。
まさか、ここにルビーがいるとはね。
報告はしないから
安心して。

あのー、ピザは。
食べちゃった。
バナナあるわよ。
解説)
続きます。
Apr 22, 2026
お花見は続く そのよん

やがて歓談のひとときが過ぎ。

バービーたちは
記念写真を撮影して。

帰って行った。
いつかこんなのに乗ってみたいなあ。
アルのビストロで
ピザでも食べましょう。
などと言っている。

エリスとローラも
帰ることになった。
お花見は充分楽しんだから、
堤防の方をツーリングして帰るわ。
この時期、新緑も綺麗よ。
エリスはそっちの方が
目的だったんでしょ。

みんな帰っちゃったわね。
あれ、ケイたちは?
ケイとメアリーと
ジェイソンとお父さんは
メメを連れて、
公園を散歩するって言って
出かけたよ。
みんな森林公園は初めてなので、
見て回りたいらしい。

そこに3人連れがやってきた。
アルとジャンとリリスだった。

お花見ができる場所の記事を読んで、
ジャンたちを誘って来たんだ。
ビストロもジャンの家も
ここから近いからね。
とアルが言っている。
お店はどうしてるの?
普通にやってるよ。
キサラやシオンがいるし。
オーナーは気楽でいいわね。
お店から
ピザを持って来たんだけど、
食べる?

ワインやビールもあるわよ。
とリリスが言った。
あら、あなたは。

あ、シモーヌは
初対面だったかしら。
ビストロを経営してるアルと
ジオラマの庭で有名なジャン。
それと。
私はリリス。
ジャンの友達よ。
あなたがシモーヌさんね。
どうぞよろしく。
とリリスが言った。
解説)
続きます。
Apr 21, 2026
お花見は続く そのさん

お花見の場所にいたのは、
公園の管理人のソローとバービーたちだった。

こんにちわ。
私たち、郊外のバービーハウスに
住んでiいるから、ここから近いのよ。
この場所のこと新聞記事で知って、
公園の入り口から
ソローさんに案内してもらったの。

その時、オートバイの
小気味よいエンジン音が聞こえて、
エリスとローラを乗せた
ハーレーが走り込んできて停車した。
これは千客万来ね。
とエリスが言っている。

みんながなんとなく集まって、
歓談の時が始まった。

来る時公園で
車を見かけなかったけど、
大勢で歩いてきたの?
広場で出かける時、
確かジェットを見かけたけど、
先に着いてるんで驚いちゃった。
もしかして。
実はね。
そのもしかしてなのよ。
エリスは鏡の扉のことは
噂でしか知らないのだった。

ルビーさん。
この前の銀色の子供はどうなりました?
ああ、ピピのことね。
子供たちと仲良くなって遊んでたけど、
無事に帰ったみたい。
あの子は、あれなんですか。
そうなのよ。

それでね、
クロスワードパズルの、
この言葉がわからないの。
それはサイギョウじゃない?
有名な歌人よ。

あ、この子、
いつもサラたちの部屋で、
隅っこの机の下でじっとしてる子ね。
連れてきたの?
メメって言うんですよ。
メメはメーメーと言っている。

外出したのは何年ぶりだろう。
公園に来て桜が見られるとは
思わなかったなあ。
お父さんと外出したのは、
たしか5年前の11月だよ。
二人でメメの頭蓋骨を探しに、
ジャンさんの家に行ったんだ。
もうそんなになるか。
花見ができるなんて嬉しいなあ。
作り物の桜の花だけど、
大きくて綺麗だね。

バービーたちがやってきた。
今誰かと話してたみたいだけど。
その置物、話ができるの?
あ、いえ。
僕、腹話術の練習してたんです。
解説)
続きます。
Apr 20, 2026
お花見は続く そのに

エリスのハーレーは、
森林公園に向かっていた。

フェンス沿いの道は
通らないの?

あの道は落葉が
ひどくてね。
ちょっと遠回りだけど、
こっちの方が気持ちいいでしょう。

Born to Be Wild🎵

もうすぐ着くわよ。

その頃、サラたちの部屋では、
到着したルビーに、
サラとシモーヌが事情を説明していた。
そういうわけで、
あなたたちがピピを見つけた場所の
近くに行きたいの。
その場所のことを
思い浮かべてもらえるかな?
いいわよ。

ルビーが公園の記憶の風景を
思い浮かべると、
シモーヌの背後に幻影が浮かび上がった。
シモーヌはその風景を見つめてから、
思いついた呪文を唱えている。

さあ行ってみましょう。
僕たちが留守番してますよ。
とジェイソンが言った。
部屋は留守にしても大丈夫よ。
せっかくだから、
みんなでお花見にいきましょう。
とサラが言った。
おお。
それなら、わしも一緒に。
と頭蓋骨のお父さんが言っている。

鏡の扉を通り抜けて、
サラたちは森林公園に出てきた。
これすごく便利ね。
なんとかいうゲームに出てくる
旅の扉みたい。
桜が咲いてるのは
この近くのはずよ。

サラたちが桜が設置された場所を見つけると、
すでに先客が来ていた。
解説)
続きます。
Apr 19, 2026
お花見は続く

サラたちの部屋では
会話が続いていた。
それはすごく便利だけど、
鏡の扉のことは、
一般人には秘密なのよ。
この扉を使えばいいのよ。

でも、一度行ったことのある
場所にしか行けないんでしょう。
私たちは行ったことがないの。
それが問題ね。
その公園の桜のある場所に
行ったことのある人に、
その場所をイメージしてもらうの。
私がそのイメージを透視して、
心に浮かぶ呪文を唱えるだけ。
だったらお花見に行った誰かに
頼めばいいんじゃない?
もう何人も行っているはずよね。
普通の人はまずいの。
鏡の扉のことを知っていて、
信頼できる人。

だったらルビーね。
その場所ってピピの円盤が
見つかった場所でしょ。
ルビーは子供連れで行ってるはず。
とメアリーが言った。

僕が広場に行って、
ルビーを呼んでくるよ。
とジェットが言った。

ジェットはさっそく
広場に出かけた。

ドルフィンのマスターと
エリスが話している。
エリスがこれに乗るの久しぶりだね。
急な話だったけど、
倉庫の奥から出してきて、
メンテは済ませたよ。
ありがと。
本当にそうね。
何年ぶりかしら。

ローラはおやつ用に
バナナを買っていた。

ルビー。サラが頼みたいことがあるから
きてほしいって言ってるんだけど。
いいわよ。
頼み事って何かしら。

ルビーはサラたちの家に
出かけて行った。
エンジン始動。
しっかりつかまっててね。

エリスとローラを乗せた
ハーレーは広場を出発していった。
解説)
続きます。
Apr 18, 2026
お花見を終えて そのに

翌日の広場も
天気が良かった。

たまきがルビーに
話しかけている。
新聞で読んだけど、森林公園に
桜の名所ができたんですって?
名所ってほどじゃないみたいだけど、
トマソンが作った造花の桜を
捨てるのに忍びないので、
公園で飾ることにしたのよ。

アフリカから戻ってきた黒木が、
舞に薬罐を返している。
ハリーさんがこれを。
無断でお借りましたが、
舞さんによろしくとのことでした。
ルビーから聞いてました。
何に使ったんですか。
それが魔法の練習なんですよ。

バー・デジャでは、
ジルとギルダが話している。
昨日は楽しかったね。
あの記念写真
分けてもらえるかしら。
後でみんなに配るって言ってたよ。

店内のみんなも
公園のことを話しているようだ。
ジョニーにイリヤ。
この店もお休みにして、
桜見物にでも出かけたら?
ヴィヴィアンさんが留守なので、
勝手に休業はできませんよ。
お店がなくなってても
全然気にしないと思うわよ。
アンジーもジムと二人で
行けばいいのに。
ミニクーパーがあるんだし。
とゼロが言った。
今は混んでいそうだから、
そのうちにね。

ローラは、マンゴー亭の手伝いから
解放されて、ペンギン前で話している。
2階の探偵事務所からエリスが
休憩に来ていた。

私もお花見に行ってみたいんだけど。
郊外の森林公園って遠いんでしょう。
車がないと、
歩いていくには大変みたいね。

私が乗せてってあげましょうか?
とエリスが言った。
え、ほんとですか。
バイクの後ろ座席で良ければ。
バイクもたまに乗らないとね。
ツーリングは3年ぶりくらいかしら。

サラたちの部屋でも
お花見の話で盛り上がっていた。
サラはその場所知ってるの?
行ったことないけど、
ルビーから聞いてる。
ピピの円盤が墜落したのと、
同じ場所らしいのよ。
行ってみたいなあ。

そこに、シモーヌが
鏡の扉から姿を現した。
あ、シモーヌ。
常春の精霊の国からご帰還ね。
随分時間がかかったじゃない?
例によってフクロウたちに
歓待されちゃってね。
ついでにフランスのお店にも
よってきたから。

何の話してたの?
盛り上がってたみたいだったけど。
いつでもお花見のできる場所の話。
お花見なら、常春の国に行けば、
いつでもできるわよ。
それもそうね。
でもこの町の郊外の
森林公園にもそういう場所ができたの。
みんな行きたがってるんだけど、
交通の便が悪くて。
だったら、
鏡の扉を使えばいいのよ。
解説)
続きます。
Apr 17, 2026
お花見を終えて

広場にジープが到着した。

公園はどうでした?
気持ちのいい場所でしたよ。
すっかり昼寝しちゃいました。

リタはボニーに
借りたカメラを返している。
桜は綺麗だった?
造花ですからそれなりに。
それより記念写真を
たくさん撮ったの。

お店はどうだった?
ほとんど暇だったわ。
私は薬缶を探してたの。

ローラご苦労様。
もう帰ってきたんですか。
朝出かけて
もう夕方だから
ほぼ半日ね。
いいところだから
あなたも行ってみたら?
そういえば、郊外はまだ
行ったことがないなあ。

その頃サラたちの部屋では。

デイリープラネット紙に
森林公園の桜のことが載っているよ。
ケントさんの記事みたい。

できたばかりなのに、
情報が早いのね。
エトナが教えたんじゃないかな。
確か彼女専属カメラマンでしょ。

クロスワードパズル解いてるんだけど、
日本の武士で僧侶で歌人だった人の名前って
わかる?

それは有名でしょ。
とサラが言った。
あの人だよ。
とケイが言った。
思い出せないのね。
解説)
続きます。
Apr 16, 2026
公園のお花見 そのよん

記念写真を撮りましょう。
リタも写さなくちゃ。

リタはメガネ外すと、
雰囲気変わるわね。

ジルさん。
二人で腕組んで。
これでいいかな?
連行されてるみたいだけど、
まあいい感じよ。

あなたたちは
いつもチャーミングね。

お花見と飲食を堪能した
みんなは帰路につくことになった。
運転変わろうか?
大丈夫よ。

その頃、郊外に続く道を
コフィとミランダの乗った
境界警備隊のバギーが
巡回パトロールをしていた。
今日はいい天気ね。

おや珍しい。
ジープが来る。

2台はあっという間にすれ違った。

さらに走っていくと、
キューベルワーゲンが見えた。

2台はまたすれ違っていった。

今のは、ジルさんでしょ。
運転していたのはギルダっていう人。
いつも第二次大戦の
ドイツ軍士官のコスプレをしてる。
それでキューベルワーゲンに
乗ってるの?趣味が徹底してるわね。
それよりこの道
落ち葉で荒れてない?
誰か掃除したほうがいいよ。
解説)
続きます。
Apr 15, 2026
公園のお花見 そのさん

公園の桜の近くで、
ジルとギルダは
くつろいでいる。

ジルさんたち、
折りたたみのパイプ椅子まで
用意してくるなんて、
流石に準備がいいわね。

このワイン美味しい。
などと言っている。

あの二人お似合いのカップルね。
人と人形との恋。
現代のピグマリオン伝説と言われてるわ。
誰が言ってるの?
主に私だけだけど。

みなさん。
ご一緒に食事しませんか?
いいワインがあります。
とジルが言った。

みんなシートの周りに
輪になって食事が始まった。

ギルダさんは、
最初エルマっていうお名前だったわよね。
とリタが尋ねた。

そうなの。
ジルがそう名付けてくれたんだけど、
その名前にはモデルがあってね。
同名の女性がいらっしゃるのよ。
私がこちらの世界に住むようになって、
混乱するから自分で改名したの。

僕らにとっては必要なことだったんだ。
エルマと別れてから、
僕はエルマそっくりの人形を作った。
その人形に精霊が宿って今に至っているんだ。
ギルダという名前は、
彼女が独立した人格であることの
証でもあるんだよ。
ジルさんはロマンチストなのね。
昔の恋人そっくりの人形を作るなんて。
その時は囚われていたんだよ。
僕はそんな思いを断ち切るためにも、
エルマの人形を手放して、
フィギアマニアの友人のジャンに預けたんだ。
そうしたら奇跡のようなことが。
とジルが言った。

エルマさんは
広場にたまにいらっしゃるわね。
金髪だけど顔立ちはギルダさんそっくり。
今でも、会えば
挨拶をする友達だよ。
それも時のなせる技なのかしら。
普通そんなものだよ。
とマスターが言った。
解説)
続きます、
Apr 14, 2026
公園のお花見 そのに

広場では
ドルフィンが休みでも、
あまり変わりがなかった。

私が愛用してる薬缶見なかったですか。
ああ、言い忘れてた。
あの薬缶は、ハリーさんが
ちょっと借りるって言ってたよ。
舞によろしくって。
何に使うんでしょう?
さあねー。

マンゴー亭では、
ローラが蒸籠を運んでいた。
お漬物もありますか。
とトマソンが言っている。

ボニー。さっき倉庫の方で、
ジルさんたちを見かけたけど。
車を出しにに来たんだよ。
ドルフィンが休みなので、
僕が応対したんだ。
どこかに出かけるのかしら。
お花見に行くって言ってたよ。

公園の桜のある場所では
マスターが昼寝から覚めていた。
あーよく眠ったようだ。

目覚めると満開の桜が目に映るなんて
いい気分だね。
願わくば花の下にて我死なん、か。
その如月の望月の頃、ね。
なにそれ。

その時、キューベルワーゲンが
走ってきて停車した。
乗っているのは、
ジルとギルダのようだ。

ジルさんにギルダさん。
こんにちわ。
やあ、ソローから
桜を移植したって聞いて
仕上がりの様子を見にきたんだ。
ついでにピクニックも兼ねてね。
このあたりはフェイクの植物ばかりなので、
よく馴染んでいますよ。
模造品が模造品に自然に馴染むっていうのも
おかしなものですが。
とマスターが言った。

素敵な景観ね。
さっそくシートを広げましょう。
この車少しバックさせて
スペースを開けるわ。
とギルダが言っている。
解説)
続きます。
Apr 13, 2026
公園のお花見

リタたちは森林公園内の
桜のある場所に到着した。

ジープから降りて
景観を楽しんでいる。
花のたまりもあるわよ。

さっそく記念撮影。
レイとアンナは
ポーズをとっている。
はいチーズ。

二人はいつも笑顔。

マスターと恵子は
シートを広げていた。
大きなバスケットだね。
何が入ってるのかな?

巣箱に野鳥がいるのね。

バスケットの中には
主におむすびと
巻き寿司が入っていた。

肉まんはないの?
毎日お店で食べてるからね。

みんな食事をして
思い思いに
くつろいでいる。

マスター眠っちゃったみたい。
気持ちよさそうね。

私も眠くなってきちゃった。
とレイが言っている。
解説)
続きます。
Apr 12, 2026
日々は続く そのに

今日は好天に恵まれていた。

マンゴー亭の従業員たちは、
お花見に行くための
服装に着替えていた。

お店休まなくても
よくなったのね。
舞が手伝ってくれるって。
それにローラにも頼みに
行ってくれてるわ。

ペンギン前で舞はローラに、
マンゴー亭の手伝いを頼んでいる。

ローラはすぐに
マンゴー亭にやってきた。
ここでバイト始めてから
休暇なんて初めてよ。
とレイが言っている。
いつからやってるの。
マンゴー亭が開店したのは、
2022年の1月20日だから
もう4年になるわ。

丹下さんは
お花見に行かないんですか。
調理は私が代わりますよ。
いやいや有難いけど、
ウェイトレスをしてくれれば、
十分だよ。
仕事の鬼なんですね。
そうでもないんだ。
花粉症でね。

ドルフィンのスタッフは
お揃いのジャンパーを脱いでいた。
ようやく春夏モードね。
ルビーも革ジャン暑くない?
そうねー。

小池恵子がやってきた。
お待たせ。
準備ができたわ。
あれ、どっかに行くの?
公園にお花見に行くのよ。
マスターの運転で。
ドルフィンは休業するの。
ふーん。

みんなはジープに乗り込んだ。

いざ出発進行。
解説)
続きます。
Apr 11, 2026
日々は続く

広場はいつもの
歌声と演奏で賑やかだった。

森林公園から
ルビーたちが戻ってきた。
佳奈、ジープをドルフィンの倉庫に
戻しといてくれる?
OKです。
運転できるの嬉しいな。
などと言っている。

ルビーおかえり。
どうでした?
すっかり桜を移植できたわ。
森林公園は
新名所になるかもね。

舞はさっそく公園に
桜を移した話をしている。

恵子さん、私たちも
お花見に行ってみませんか?
とアンナが言った。

そうね。
このところ働き詰めだったし、
みんなでお休みを取るのもいいわね。
やったね。
とレイが言っている。

局長を見送ってきたサラは
ペンギン前から戻ってきた。
おかえり。
ただいま。

しばらく家でゆっくりしようかな。
あら、オセロは?
最近、よく外に出かけるみたいなんだ。
高台の休憩所じゃないかな。
この前もトカゲたちと
日向ぼっこしてるのを見かけたよ。

オセロはまだ
高台の休憩所にいた。

子供たちは、宇宙人のピピが
カメやトカゲと話していたのをみて、
自分たちも会話ができると信じて、
話しかけていた。
ルイちゃん、お人形と
お話しできるんでしょ。
カメはなんていってるの?
よくわかんない。
解説)
続きます。
Apr 10, 2026
局長の帰還

黒木は別の呪文を唱えている。

薄い煙がたちのぼり、
やかんが大きくなった。

その時、近くの草むらに
突然レプティリアンが現れた。
やあ、驚かせてしまったかな。
透明マントを着て、
魔法を見せてもらっていたんだよ。

シベール。
お久しぶりですな。
局長さん、今年もお忍びの休暇ですかな。

ただ観察しているつもりだったんだが、
どうにも懐かしくなってね。
はるか昔のことだが、
私たちレプティリアンと魔族が
共存していた頃、
都の広場でよく魔族の子供たちが、
そんな魔法の練習をしていたんだ。
そうなんですね。

呪文を唱えていたのは、
見かけぬ顔だな。
子供ではないようだが。
私は黒木と言います。
ハリーさんに呪文を教えてもらっていたんです。
全く驚くことばかりです。
あなたも魔法生物とかですか。
私はそんなんじゃないよ。
シベールさん。
姿を現したんだから、
ついでに夕食をご一緒にどう?
とサラが言った。
ふむ。
では、おやつを食べてから伺うよ。

やがて、ホテルでの夕食の席に
シベールも現れた。
いつもああやって
姿を隠して覗き見してるの?
とサラが尋ねた。
そんなことないよ。
我々はこの惑星の保護者だからね。
異常がないか見回っているんだ。
まさか
露天温泉に来なかったでしょうね。
とカコが言った。
そんなことしないよ。
とシベールが弁明している。

夕食が終わりサラたちは
部屋に戻った。
時が経つのはあっという間ね。
流石に明日は帰らなくちゃ。
と局長が言っている。
ええ。
また来年も会えると
いいわね。
記念に枕投げでもしましょうか。

翌日、
サラたちは部屋に戻ってきた。
ジェット、
これからここで局長の着替えをするの。
悪いけどその間に広場に行って、
お土産の肉まんを買ってきてくれない?
わかった。
ジェットさん、
お手数かけるわね。

サラはペンギン前で、
局長と別れの挨拶をして、
お土産の肉まんを手渡している。
今年も一緒にお花見できて
楽しかったわ。
温泉で羽根も伸ばせたし。
その洒落、何度聞いても
いいですね。
解説)
続きます。
Apr 09, 2026
ホテルの広場で

サラたちは温泉から出てきた。
いーお湯だったわね。
局長の天使の翼も見られたし。
シーザー。
ここでずっと見張っててくれたの?
どうもありがとう。
ホテルからの
道はここだけですから。
ほとんど獣道ですけど。

3人は、
ホテル裏の広場に戻ってきた。
さてどうしましょう。
この広場には、
宇宙ステーションに行ける、
転送装置があるのよ。
ふーん。
湯上がりの散歩がてら
見に行きましょう。

大昔にレプティリアンたちが
作ったものだって聞いたわ。
今では宇宙ステーションからの
観光客が使ってるの。

この中央に立つと、
装置が私を認識して、
光線が降ってきて、宇宙ステーションに
吸い込まれていくの。
行ってみますか?
局長。
宇宙ステーションは、
まずいんじゃないですか。
宇宙連合の様々な惑星から来た連中が
乗っているんでしょう。
お披露目じゃなくて、
お忍びの休暇中なんですから。
とミラが言った。
そうだったわね。

サラたちがホテルの方に
引き返してくると、
ハリーと黒木喜六の姿が見えた。

喜六は呪文を唱えている。

薄い煙がたちのぼり、
なんと草むらに置かれていたやかんが、
ゆっくりと空中に浮上した。

ハリーさん。
部屋で仰っていた魔術の実験ですか。
そうなんだよ。
黒木さんに呪文を覚えてもらったんだ。
彼は魔族の血を引いているのに間違いない。
なかなかの呪力をお持ちのようだ。

やかんは中空に留まっている。
これは物品を操る魔法ね。
龍の舞でシモーヌが使ったのと同じ。
お湯沸かせるの?
それは無理です。
解説)
続きます。
Apr 08, 2026
ホテルナジャで

サラたちはリンリンに
部屋に案内された。
お荷物は?
何もないのよ。

素敵な眺望ね。
裏手は広場になっていて、
そこも広々としていて、
いい感じよ。
あ、まずはハリー夫妻に
到着のご挨拶に行きましょう。

サラたちがハリー夫妻の
常宿にしている部屋に行くと、
二人が出迎えてくれた。
アフリカでも
ここは高地なので
結構しのぎやすいのよ。
私たち気にいっちゃって
ずっと泊まってるの。
とカーミラが言った。
あら、お客さんがいらっしゃるんですね。
ああ、デジャの鏡の扉から
ここに来る時、店で声をかけたんだ。
黒木さんっていうんだ。
コスプレコンテストで優勝した方ね。
とサラが言った。

ハリーは黒木を紹介している。
黒木さんは、魔術に興味を持たれていてね。
ご自身でも自分が魔族ではないかと
考えられていたらしい。
そこで、デジャから魔術の書を持ってきたんだ。
彼が魔族かどうかは、
この本の呪文を唱えてみればわかるだろう。
全くお世話になりまして恐縮です。
と黒木が言った。
魔法を使うには
人間のいない場所が最適ですからね。
ところで、管理局って、
やはり魔法と関わっているんですか?
とカーミラが尋ねた。
あなた方が魔法と呼んでいる力とは、
深く関わっていますよ。
それはこの宇宙の生命全般にいえること。
呼び名は惑星によって様々ですが。
でも今は休暇中なので、
そうした話はちょっと。
と局長が言った。
おお、そうでしたね。
これは失礼しました。
近くのジャングルには、温泉があるし、
マークの村に行けば居酒屋もある。
村外れには美しい滝の見える場所もあります。
どうぞ、ごゆるりとお過ごしください。
よろしければ夕食でもご一緒に。
とハリーが言った。

3人はハリー夫妻の部屋を辞して、
ホテルのロビーにやってきた。
さてどうしましょう。

窓の外には広場が広がっている。
とりあえず広場に行ってみましょうか。
いいわね。

3人はホテルを出た。
裏の広場には、
こっちを通っていくのよ。

わあ、広々としてる。
サラは、向こうから歩いてきた
シーザーと何か話している。
3人は温泉に向かった。

露天温泉だけあって、
野趣があるわね。
とミラが言っている。
ここには魔法生物が多いのね。
さっき何話してたの?
と局長が尋ねた。
あれはシーザーって言って、
ホテルの従業員なんです。
この温泉をしばらく、
貸切にしてくれるように、
頼んでいたの。

3人は温泉に浸かっている。
ああ、いいお湯加減。
局長、背中から羽根が。
のんびりと羽根を伸ばしているのよ。
それって洒落なんですね。
そうかな。
解説)
続きます。
Apr 07, 2026
ホテルに行く

広場では大道芸人たちが
歌と演奏を始めていた。

はるこうろ~の~
はなのえん~🎵

アンナはマンゴー亭で使う
食材を買っている。
最近野菜高いわね。
キャベツがお買い得ですよ。

マンゴー亭では
サラたちが話している。
局長。アフリカに行くんですか?
ええ。
お言葉に甘えることにしたの。
私たちは、
デジャからお先に。
ホテルでお待ちしてますわ。
とカーミラが言った。

サラたちは一旦家に戻って、
サラはみんなにまた出かけることを告げた。
サラは鏡の扉に向かって
魔法の呪文を唱えている。

3人は扉を抜けて
アフリカのフラハの家の
裏庭の扉から出てきた。
こんにちわフラハさん。
珍しいね。
観光案内かい?
そんなところよ。

3人はあっという間に
ジャングルを抜けて
ホテル・ナジャに到着した。

ここは大気が澄んでるわね。
この星の青空は本当に綺麗。
大気の組成は窒素と酸素で全体の99%。
他にアルゴンや二酸化炭素などが
含まれています。
リンリン、こんにちわ。
ハリー夫妻は到着してる?
はい。
お部屋にいらっしゃいます。
他にもうひと方。
そうなの?
どなたかしら。

サラはホテルのフロントに行った。
いらっしゃいませ。
お泊まりですか。
ええ。三名よ。
解説)
続きます。
Apr 06, 2026
桜の移転

トマソンとソローと舞は、
リヤカーに造花の桜を積んで、
森林公園に運んできた。
この辺りです。
とソローが言っている。

静かな場所ですね。
公園の裏口の側なので、
滅多に誰も来ないんですよ。
早速作業を始めましょう。

3人はそれぞれ、
作業を始めた。

ルビーが佳奈を連れて
ジープで到着した。

トマソンさん。
広場に残っていた作品を持ってきたわ。
それは桜じゃないんですが。
似てるから一緒に
飾りましょう。

作業はあっという間に終わった。
これで完成ですね。
このあたりだけですが、
常春のコーナーになりました。

ソロー。
あなたが設置したって言ってた巣箱に
きれいな鳥が来てるわよ。
とルビーが言った。
あ、あれはルリビタキみたいですね。
夫婦仲のいい鳥なんです。

あそこにも鳥の巣があるみたい。
と佳奈が言っている。

以前ピピが引っかかっていた老木に
モズが巣をかけていた。
驚かせちゃったかしら、
ここが名所になったら大変ね。
不便な場所ですし、
大丈夫ですよ。
とソローが言っている。
解説)
続きます。
Apr 05, 2026
桜の移転計画 そのに

さくら祭が終了し、
後片付けも済んで、
広場はいつもの姿に戻っていた。

大道芸人たちは、
いつもの場所に戻って、
演奏準備をしている。

椅子の上には、
投げ銭用の空き缶が置かれている。
そろそろみんなで分けて
また稼ごう。

農家の産地直販店も
広場に戻ってきた。

森林公園の管理人のソローが、
舞と話している。
農家の人がリヤカー貸してくれて、
ちょうどよかったわね。

公園までは結構あるからね。

トマソンとサラは
桜の花びらを拾い集めてきた。
これも運ぶの?
もちろん公園に撒くんです。

堤防のお花見の散歩から戻ってきた
ハリー夫妻は、
局長たちとマンゴー亭で
話していた。
私たちはまたアフリカのホテルに
戻りますかけど、よかったら
遊びにいらっしゃいません?
お誘いは嬉しいけど、
どうしようかしら。
そろそろ管理局に戻らないと
いけないんです。
去年はいつ頃帰ったっけ。
確か4月の9日でしたよ。
とカコが言った。

だったら10日くらいに
戻ればいいわね。
そうなんですね。
解説)
続きます。
Apr 04, 2026
桜の移転計画

ベランダでは、
洗濯物を干しに出た舞が、
空を眺めている。

何みてるの。
と手伝いに出てきたナオミが
言った。
円盤。

何にも見えないわよ。
雲間に隠れちゃった。
最近よくみるなー。

広場には堤防の花見から
局長たちが帰って来ていた。
話に花が咲いている。
桜どうでしたか。
満開だった。
早目に見に行かないと
散っちゃうわよ。
花の命は短くて、
ですね。

サラもルビーたちと話している。
さくら祭、先月の17日からだから、
もう3週間近くになる。
そろそろ終わりにしようと思うの。
大道芸人たちも広場で演奏したいみたいだし。
造花の桜はどうするの?
トマソンがつくって路上に置いていく工作物は、
ふつう邪魔になるから捨てちゃうけど。
なんかもったいないわね。

どこかに移転すればいいのよ、
邪魔にならない場所に。
ふーむ。
そういえばいい場所知ってるわ。
森林公園の中なんてどう?
この前ピピを探しにいった場所。
公園の裏口の近くで普段誰も来ないところなの。
それはいいアイデアね。
森林公園といえば、
さっきジルさんを見かけたから
頼んでみよう。

ジルはギルダと一緒に、
広場にピザを食べに来ていた。

ジルさん、ご相談があるんですけど。
サラは造花の桜の移転計画を
ざっとジルに説明した。

面白いアイデアだね。
森林公園はこの町に寄贈したけど、
確かに実質的には今も僕の管理下にあって、
ソローや丹後権太君やエドワードに
公園の整備や管理を任せている。
あそこにはフェイクの植物が多いから、
ちょうどいいかもしれないね。
桜の木を運ぶのなら、彼らに手伝って貰えばいい。
それはありがとうございます。
ゴミ回収に出されなくてよかった。

お話は終わったの?
造花の桜を森林公園に移すそうだ。
一年中お花見ができる場所になりそうだよ。
ふーん。それもいいけど、
万物流転は世の習い。
花も散るから美しいのよ。
でも映画のロケ地に便利かもしれないわね。
解説)
続きます。
Apr 03, 2026
ピピの帰還

子供たちは
高台の休憩所に来ていた。

そろそろ僕
宇宙ステーションに帰ります。
名残惜しいですが、
またすぐ来ますので。
どうやって帰るの。
サニーに修理してもらっていた
円盤が治ったって
連絡があったんです。

ピピは円盤を呼んでいるようだ。

上空に円盤が現れた。

円盤は静かに舞い降りてきた。

ピピは円盤に乗り込んだ。
子供たちに分けてもらったチョコも
たくさん積んでいる。

じゃあまたね。
バイバイ。

円盤は静かに上昇していった。

子供たちの姿が
小さくなっていく。

チョコをいっぱい貰っちゃった。
何かお礼したいけど、
何にしようかなあ。
解説)
続きます。
Apr 02, 2026
堤防の散歩の続き

サラたちは堤防の上の
遊歩道を歩いている。

みんな花より団子で
楽しそう。

桜もいいけど、
若葉の緑も素敵だわ。

3人は堤防の斜面で
間近に花を見ている。
あら、あそこの人。
あ、佳奈だわ。

佳奈はエトナと二人連れだった。
こんにちわ。
撮影日和なので、
出かけてきました。
とエトナが言っている。

3人は早速
桜を背景に撮影してもらった。

タイミングよく出会えたわね。
ほんとそうですね。

あら、見事な花じゃない?
あれはユキヤナギね。
この時期に毎年咲いているんですよ。

佳奈も一緒に
記念撮影。
解説)
続きます。
Apr 01, 2026
コンテストの優勝者の発表

ハリー夫妻やサラたちに代わって、
広場には高台の休憩所の
常連たちがやってきていた。

今日はいい天気ね。
ピザ食べたらお花見に行こうか?
ここは禁煙なの?
などとルルと江本友恵が話している。

ルビー。
今日はコンテストの発表の日だよ。
え、もう4月なの?
すっかり忘れてた。

ルビーはマイク片手に
アナウンスを始めた。
みなさん。
3月のコスプレコンテストの
優勝者の発表をいたします。
厳正中立な審査の結果、
優勝したのは。

広場に観光でいらした
シックなダブルのスーツ姿の黒木さんです。

黒木さんって、
あなた?
そうなんですが。
それはおめでとう。

黒木喜六氏は、
万雷の拍手と感性に包まれながら、
優勝トロフィを授与されている。

どうして私が。
お気にせずにどうぞ。

見ず知らずの観光客の私なのに、
すごい盛大な拍手に迎えられて、
感激しました。
暖かいおもてなしですなあ。
みんな
毎月恒例のマンネリセレモニーを
楽しんでるのよ。
いつもこうなの。
と古川和歌子が言っている。

参加賞のチョコの掴み取りイベントが
始まった。
今回は、子供たちがピピのために
一番乗りしている。
ピピは
マカダミアナッツ入りの
ありますか。
と言っている。
解説)
続きます。
Mar 31, 2026
堤防の散歩

今日は久しぶりの
晴天だった。

今日はお花見日和ね。
あしたは、
また曇りか雨だよ。

ハリーさん。
お出かけですか。
堤防まで
出かけてきます。

サラはドルフィンの倉庫で
衣料品を選んで、
局長に着替えてもらっていた。
これちょっと地味じゃないかしら。

あまり目立たない
普通の格好がいいんですよ。
お忍びですから。
じゃあ私たちも、
お花見に出かけましょう。
カコも一緒に?
ボディガードですから。
仕事休むのね。

3人は桜並木のある
坂道を下っていく。
ここももう満開ね。

3人はあっという間に
多摩川の堤防に到着した。

やはり晴れた日に来て正解ね。

堤防の土手を上がると、
行楽客で賑わっていた。

桜並木は遠方まで
続いている。
毎年見てるけど、
桜の花の色って目に優しくていいわね。
解説)
続きます。
Mar 30, 2026
雨上がり そのに

デジャでは、
会話が続いていた。
魔族って、そんな呼び名があるんですか。
今や絶滅危惧種だけどね。
私も魔族の仲間を探すという目的もあって、
魔術劇場の興行で世界を回っていたんだ。
私が調査して、これはもしやと思っているのは、
デイリープラネット紙の記者で、
ケントっていう人ですよ。
魔法を使ったとしか思えないような、
すごいスクープ記事を時々書くんです。
その人も魔族よ。
とカーミラが言った。

みなさん、
雨が上がったようですよ。
とゼロが言った。

外の方が気持ちがいいから、
外の席に戻ろうか。
ご一緒してもいいんですか?
もちろん。
なかなか熱心に魔族のことを
調査されているようなので、
もし差し支えなければ。
もっとお話を伺いたいからね。
黒木は嬉しかったようで、
椅子から立ちかけている。

ハリーさんたち、
出かけちゃったわね。
とアンジーが言った。
魔族の調査か。
MI6顔負けだね。
とジムが言った。
さっきの黒木っていう人、
宝石商としては、
結構名の知れた人物ですよ。
時々、すごい宝石を
オークションに出品するんです。
とゼロが言った。
ふーん。
さすが怪盗ゼロと呼ばれる、
宝石泥棒ね。
盗んだことがあるの?
直接はないです。
とゼロが言っている。

雨は完全に上がったようで、
広場は活気を取り戻していた。

また忙しくなるわね。
と言っている。

すごい売れ行きだね。
ビールもそうでしょ。

外の席でも
ハリーたちの会話は続いていた。
黒木さんって、
ファーストネームはなんて
おっしゃるの。
親が回文好きで。
わかった。
きろくさんでしょ。
喜びの喜に、漢数字の六で、
喜六って書くんです。
小池恵子とか、中野佳奈とか、
今井舞とか、駒井魔子とか、
なぜかこのあたりにも、
そう言う名前多いのよね。
とルビーが言っている。

そろそろ堤防の桜も、
見頃じゃないかしら。
明日行ってみましょう。
解説)
続きます。
Mar 29, 2026
雨上がり

やがて雨は上がった。

ずいぶん大きな
虹が出てるわよ。

キサラたちや小池恵子が
屋台を再開している。

こういう景色も
雨上がりの風情ね。

ドミノは、
この椅子濡れてないかなあ
と言っている。

子供達が相談している。
また外で遊ぼうよ。
広場は狭くて遊べないよ。
テーブルを
広場に移動したはずだから
高台の休憩所に行こう。
圭は賢いのね。

少女探偵団は
高台の休憩所に行った。
やっぱり誰もいないよ。
あれそこに。

ベンチの下で
カメたちが雨宿りしていた。

カメたちは出てきて、
ピピと何か話している。
なんて言ってるの。
カメはオセロって言って、
サラたちの部屋から来たって。
赤いトカゲはレッドって言って、
ドルフィンにいたけど、
今はここに住んでるんだって。
白いトカゲはダルメって言って、
探偵事務所から来たって。
レッドとダルメは、
レプティリアンがお礼に人間に
プレゼントしたものらしいよ。
時々集まっているんだって。
みんな歴史があるのね。

最近のロボット人形は
進化したものだなあ。
バク転してカンフーをする
ロボットもあるそうだよ。
解説)
続きます。
Mar 28, 2026
春の雨 そのに

雨はなかなかやまなかった。

子供達も、
マンゴー亭で雨宿りしている。

大道芸人たちが話している。
このロボット人形は
言葉が話せるのか。
ピピは
チョコください。
と言っている。

ルイは小池恵子に
濡れた髪を拭いてもらっている。
次僕だよ。

ハリー夫妻はデジャに
避難していた。
危うく
びしょ濡れになるところだったわ。
それは危うかったですね。

ジムはカーミラに
席を譲っている。
さすが英国紳士ね。
ハリーは同席した男性に
声をかけられた。

もしかして、
魔術劇場を主催されている
ハリー原さんでしょうか。
いかにも、
私がハリーです。
劇場は休業状態ですが、
どちらさまかな。
これは申し遅れました。
私は黒木というものです。
魔術劇場のある広場の噂を聞いて、
観光で来たんですが、
劇場は郊外に移転されたと聞いて
がっかりしていたところです。
ほう。
魔術に興味がおありかな。

はい。がっかりしていたところ、
春節の龍の舞では、
すごいものを見せていただきました。

今年はシモーヌが、
作り物の龍を操ったそうね。
私たちは来たばかりで見ていないの。
とカーミラが言った。
ああ、こちらは妻のカーミラだよ。
立っているのは友人のジムだ。
それはどうも
どうぞお見知りおきを。

やはりあの方とお知り合いでしたか。
実は私、魔術に興味を持って調べているうちに、
この世界には、普通の人々とは別に、
特殊な能力を持つ種族が
いるんじゃないかと思い至ったんです。
シモーヌさんは美術品の売買をされていますが、
骨董品の真贋を見抜く能力は業界では有名。
不思議な力を持っていると言われています。
あなたのお仕事は調査員か何かなの?
私の本業は貴金属の売買です。
個人的な興味ですよ。
実は私自身もそんな種族の一人じゃないかと、
考えていましてね。
この探究は自分自身のルーツを探る
旅路でもあるんです。
ロマンチックなのね。
その種族のことを、
私たちは普通に魔族って呼んでるわ。
解説)
続きます。
Mar 27, 2026
春の雨

広場は今日も花曇りだった。

あら、
ぽつりときたみたい。
とルビーが言っている。

やがて本格的に雨が降り出した。
みんな急いで雨宿りしている。

広場に雨が降るのは久しぶり。

桜の時期は
これだからなあ。
植物にとっては
恵みの雨でしょ。
本物の鉢植えは
砂漠のバラだけだよ。

子供達は、
春雨じゃ、濡れてしんぜよう。
と言って遊んでいる。
あ、ローラさん。
忘れ物だよ。

ありがと。
取り込むの忘れちゃた。

たまきたちも
ドルフィンの2階に
避難させてもらった。

洗濯物大丈夫だった?
ええ手伝ってもらったおかげで
セーフだったわ。

みんなビールは
しっかり手放さないのね。
飲みかけですから。
解説)
続きます。
Mar 26, 2026
ベンチを増やす

アルはベーカリーの厨房から出てきて
休憩している。
ピザ焼くのって大変でしょ。
まあ、慣れてるからね。
郊外でビストロを始めたのが、
2009年の6月だから、
17年になるんだ。
年季が入ってるのね。
普段は専属のシェフ任せなんだけどね。
たまには僕も厨房に入るんだよ。

そこにはるながやってきた。
マスター、お願いがあるんですけど。
なんでしょう?
喫茶ペンギンで、
倉庫から新しくベンチをいれたんですけど。
中古品なので塗装が剥げたりしていて、
それを補修していただけないかと。
お安いご用ですよ。
お花見のお客さんが来そうなので、
外のテーブル席を増やそうっていう
ことになったんです。

ドルフィンのマスターと
スタッフのリタは、
さっそくペンギンに行って
ベンチの補修作業を始めた。
ペンキをちょっと塗れば
完成です。

これすぐ乾くんですよね。
まあね。
このベンチ、
市販の製品に座高を上げるために
台座を補強してあるんだね。
なるほど。

はるな何してるの?
トマソンさんから桜の花びらを
分けてもらってきたんです。

これで完成。
花びらが散っていると、
雰囲気が出るわね。

ちょうど、
ペンギンの2階の探偵事務所から
エリスたちが降りてきた。
あ、いらっしゃいませ。

いつも僕とカコが占領してますが、
これでゆとりができましたね。
とバグが言っている。

すごい模様替えして、
一人分の席が増えただけみたいだけど。
これまでの椅子も使えば、
二人分増えたわよ。
などと話している。
ミルフィーユは
いつも外の席に座りたかったので、
喜んで覗いている。
解説)
続きます。
Mar 25, 2026
春風に吹かれて

広場は今日も華やいでいた。

何も起きない日々っていいわね。
平穏無事が一番。
いろんな意味で
そうかも。

売り物のメニュー増やした?

かぼちゃの煮物と、
こんにゃく炒めね。
かぼちゃの煮物は
前に作って大好評だったから。
ちぎりこんにゃくは
花吹雪に似合うのよ。
それチゴイネルワイゼンでしょ。

トマソンはまた
造花の桜の花を増やして、
木の枝に取り付けていた。

遠近感覚で錯覚するから、
花が大きくても違和感ないわね。
そうかなあ。

これは新メニュー?
お酒の苦手な人に
レモネードを出すことにしたのよ。

サラたちのグループでも
話が尽きなかった。
ピザも美味しいけど、
私はやっぱりマンゴー亭の肉まん。
と局長が言っている。

最初に食べた時から、
ファンになっちゃって。
時々、カコやバグに頼んで、
管理局まで取り寄せてもらってるの。

サラはジョニーが持ってきてくれた
ビールを飲み始めた。
サラさん、そのビールは?
これは青島ビールよ。
解説)
続きます。
Mar 24, 2026
局長の訪問 そのさん

広場は花曇りから晴れになった。

ベランダに洗濯物を干しに出た舞は、
モモコたちがいるのに気がついた。

広場のテーブル席は満席なので、
ここで休憩しているの。
お邪魔かしら。
とナオミが言った。
いえいえ。

近くで見ると大きいけど、
トマソンの作品、
よくできるわね。
とたまきが言っている。

ダイソーに売ってた気がする。
もっと普通のサイズでしょ。
セリアじゃなかった?

広場からも、
造花の桜をカミーラが見上げていた。
本物の堤防の桜は
まだ蕾かしら。

昨日はまだほとんど蕾でしたよ。
とルビーが言っている。

私たちは堤防の桜が目当てで来たんだが、
こんなイベントをやっていたとは知らなかった。
ところで、ヴィヴィアンは見なかったかい。
みんないないんですよ。
このところ魔族の人も見かけない。
とルビーが言った。

私が把握してるところを言うと、
ヴィヴィアンはアイスと一緒に
クックドゥーの海賊船で航海中です。
フミコは忘れられた夢の世界のみすずの家で、
ミミコの世話をしています。
シモーヌは精霊たちの世界に
ディアナに鹿せんべいをあげるって言って
出かけたまま。
私の知ってる魔族の人たちの消息はそんなところね。
とサラが言った。
一年来ないうちに、
ここの魔族は、いろんな異世界と接触してたのね。
と局長が言った。
管理局はお見通しじゃないんですか。
とルビーが言った。
とんでもない。
そういう細かいことは把握してないのよ。
ミラやバグから報告があれば別だけど。
そうなんでしょうね。
とルビーが言った。

レイは小池恵子と話している。
焼きそばとたこ焼きの売れ行きがイマイチね。
みんなピザ食べてるのよ。
それにお漬物もあるし。
私もきゅうりの浅漬け食べたい。
私も。
解説)
続きます。
Mar 23, 2026
局長の訪問 そのに

このところ、アフリカのホテルに
逗留していたハリー夫妻が、
バー・デジャの店内の鏡の扉を抜けて、
広場にやってきた。

ハリーさん、こんにちわ。
やあジョニー。
おや、これはうまそうな漬物だね。

夫妻はうたに席を移動してもらい、
ルビーと話している。
なかなかいい企画じゃないか。
ビールも漬物もうまいし。
ボニーの思いつきなんですよ。

ところで、ハリーさんは、一昨年に、
春節の竜の舞で、最後に作り物の龍を
魔法で空に登らせたことがあったでしょう。
今年は、シモーヌが同じ魔法を使って、
作り物の龍に、最初から龍の舞を踊らせたんです。
ふむ。
ところがその龍は、踊りの後に、
たまたま飛行中だったピピの乗った円盤を
口に咥えて運んでいったんです。
そんな動作をシモーヌが指示したとは思えない。
まるで作り物の龍が、自分の意思で、
円盤を口に咥えたように思えるんですけど、
そんなことが可能なんでしょうか。

面白いね。空に登らせれば、あとは
回収のために指定された着地場所に
飛んでいくだけだろう。
普通そんな動きはするはずがないな。
だが、その作り物の龍に、
精霊が宿っているなら話は別だ。
私が操った時は、そんな気配はなかったが、
春節の舞に何度も使われているうちに、
精霊が目覚めたのかもしれないね。
龍の舞ってそもそも、
龍が地上で探していた宝珠を見つけて、
天に帰っていくっていう内容の舞でしょう。
精霊が目覚めかけていたのなら、
円盤を宝珠だと勘違いして、
思わず口に咥えたのかもしれないわね。
でもなぜ、口に咥えたのかしら、
とカーミラが言った。
あの作り物の龍には
手足がついてなかったからかなあ。
とルビーが言った。

その時、ペンギン前から
サラと局長とミラがやってきた。
あら、ハリー夫妻も来てる。

こんにちわ。
ハリーさん、
2年ぶりですね。
と局長が言っている。

局長のガード役としてついてきたミラは、
ローラと話している。
家で姿を見ないと思ったら、
お漬物を売ってたのね。
最近凝ってるんですよ。

トマソンが席を譲ってくれたので、
サラたちはハリーたちと相席になり、
ルビーは隣のテーブルから
椅子を持ってきた。
これでご一緒できます。

さっそく話に花が咲いている。
ハリーさん、
一昨年は魔術劇場の中を、
くまなく案内していただいて、
とても楽しかったですわ。
みなさんお元気ですか。
しばらく帰ってないんですが、
何かあったとも聞いてないから、
相変わらずみんな元気だと思いますよ。
とハリーが言った。
私たち、アフリカの
ナジャっていうホテルに
ずっと逗留していたんです。
空気は澄んでいるし、
温泉もあって、とてもいいところよ。
局長さんは長期休暇なんでしょう。
サラも何度も行って知ってるから、
ご案内して差し上げたら?
とカーミラが言った。
そうねえ。
何するかは未定なので、
後で二人で相談してみます。
とサラが言った。
解説)
続きます。
Mar 22, 2026
局長の訪問

ミラたちの家から通じている地下通路を通って、
ミラを同伴して管理局から局長がやってきた。
局長こんにちわ。

今年もお忍びの訪問ですね。
毎年恒例になってるし、
局員には知れ渡っているから、
もうお忍びっていう感じじゃないんだけどね。
それ何食べてるの?
鹿せんべいですよ。
今同居しているローラっていう人が
作ってくれたんですよ。
彼女は料理がとても上手なんです。
とミラが言った。
一緒に暮らしてるの?
あなたたちは管理局の職員なのよ。
この星の住民とのコミュニケーションは、
ほどほどにしといてね。

局長の光沢のある衣服を見て、
ミルフィーユが覗き込んでいる。

そこにサラがやってきた。
あ、サラ。
また遊びに来たわよ。
元気にしてた?

去年、お別れしたのは4月9日でしたから、
ほぼ一年ぶりになりますね。
町は平穏で変わりないですが、
私的には色々ありすぎて、
慌ただしい一年でした。
局長がお帰りになった前後のこと、
未来からロボットが人探しにやってきて、
それからはもう。
未来って、あの仮想現実の?
そうじゃなくて、
別の未来だったんです。
ふーん。
時間管理部が興味を持ちそうな話ね。

その未来世界からさらに夢の世界への通路が見つかって、
あっち行ったりこっち行ったりで、
けっこう忙しかったんです。
この界隈は何も変わらなかったんだけどね。
ハロウィーンも、クリスマスも、
お正月も春節も普通にあったし。
とバグが言った。
そうなのよ。
魔族やCGの人たちを巻き込んで、
別の世界に行き来できる
一部の関係者たちだけが大忙しだったの。

ふうん。後でゆっくり聞かせてね。
さて、お花見にはまだ早いみたいだし、
何して遊びましょうか。
今年は広場で
さくら祭っていうイベントをやってるんですよ。
屋台が出てテーブル席が設けられてるだけですが、
造花の桜が飾られて賑やかですよ。
行ってみましょう。

その頃、広場のジョニーの屋台には、
ローラが手伝いに参加していた。
それって全部自分で漬けたの?

そうよ。
ビールに合うのかなあ。
ピザとか食べた後に
さっぱりしたものが
いいのよ。
たしかに、
あれば食べたくなるかもね。
解説)
続きます。
Mar 21, 2026
さくら祭 そのよん

広場は桜の花に彩られて
賑わっていた。

イベントの噂を聞いて、
たまきとモモコとナオミがやってきた。

キサラとシオンだ。
ここでビストロのピザが
食べられるの?
そうなのよ。

ナオミは焼きそばに関心があるようだ。
これは市販の3玉セットの麺ね。
最初に焦げ目をつけて
焼くのがコツなのよ。

モモコはうたに、
その着物の柄、ぴったりね。
と言われている。

トマソン、そのバッグって。
去年のフリーマーケットで買ったんです。
覚えていていくれましたか。
工具を入れて持ち歩いてるのよね。
覚えていてくれましたか。

ローラが広場にやってきた。
サラに伝言があるようだ。

サラ、ミラが明日、
局長が遊びに来るって言ってたわよ。
あ、今年も休暇をとったのね。
明日か。またお出迎えに行かなくちゃ。

局長って、管理局の局長ですか?
そうなの。
クロリスっていう名前だけど、
みんな局長って呼んでるの。
毎年この時期に休暇をとって、
町に遊びに来るのよ。
堤防の桜並木を見に行ったりするの。
去年来たのは3月20日だった。

ローラはジョニーの屋台を訪ねている。
おお、ビールですか。
色々ありますよ。
バドワイザーがいいわ。
えっと、もしよかったら
お店、私にも手伝わせてくれない?
もちろん、いいですけど。
ついでに食べ物を売りたいの。
ほう。何を売るんですか。
お漬物よ。
解説)
続きます。
Mar 20, 2026
さくら祭 そのさん

翌日、サラがトマソンを連れて、
広場にやってきた。
おはようルビー。
おはよ。
久しぶりね。

魔術劇場に行ってトマソンに
桜の花の工作を頼んだの。
徹夜で作業してくれたのよ。
できた作品を、ドルフィンのフタッフに
さっそく取り付けを頼んだわ。

それはご苦労様。
この大きなザルの中にあるのは?
これは桜の花びらです。
広場に撒くんですよ。

リタが造花の桜の樹木を
設置している。

ドルフィンのマスターも作業している。
これって、枝垂れ桜ですね。

舞も桜に似た花木を設置している。
これ桜に似てるわね。
桜と思えば桜に見えてくるものよ。

広場は華やかに飾られた。

サラとトマソンは、
桜の花びらを地面に撒き始めた。
凝った演出ですなあ。

子供たちも手伝っている。

結構雰囲気が出てきたみたい。
思いつきでも
なんとかなるものね。
解説)
続きます。
Mar 19, 2026
さくら祭 そのに

サラはサニーと宇宙ステーションに行き、
円盤を届けて部屋に戻ってきた。

広場でさくら祭りっていうイベントが
始まったらしいよ。
もうそんな季節なのね。

この日傘、広場にどうかな。
とメアリー=ケイトが言った。
飾りになりそうね。
持っていってみるわ。

広場に設けられたテーブル席には、
住人がちらほら座り始めていた。

佳奈と舞がさっそくピザを食べている。

ドルフィンのスタッフたちもいる。
おや、それはなんですか。
ジャガバターですよ。
何を飲んでるんです?
僕はラムネが好きなんです。

ふだん大道芸人たちに混じって
アコーデオンを弾いている
田上うたも、ピザを食べている。

やはり大道芸人たちに混じって
たまにギターを弾いているドミノは
ビール片手にピザを物色している。
どれにしようかな。
このサラミ入り、おすすめですよ。
一切れ味見してみません?
とキサラとシオンに言われている。

広場にサラとジェットが
やってきた。
あら、ジョニー。
ビール売ってるの?
種類が色々ありますよ。
青島ビールある?
え。

サラはルビーに会った。
この傘はメアリーからの差し入れよ。
さくら祭り始めたのね。
そうなの。
でも肝心の桜がないわね。
思いつきで始めたから
準備が全然なのよ。
この辺には桜の木もないしね。
造花を飾ればいいんじゃない?
倉庫にあったっけ?
なかったと思うけど、
トマソンに頼んだら?
あの人、工作器用だから。
彼が作るものって、
全て6倍サイズでしょう。
派手でいいんじゃない?
私、頼んで来る。
解説)
続きます。
Mar 18, 2026
さくら祭

広場でさくら祭が始まった。

あっという間に
出店希望者が集まって、
開催できましたね。
そうね。
ちょっと様子を見てくるわ。

ジョニー、調子はどう?
いい感じですよ。
お客さんはまだ来ませんが。
ビールといっても多種多様、
色々取り揃えてあるんです。

そんなに注いじゃっていいの?
会場を整えてくれた
ドルフィンのスタッフたちに
提供するんです。
ルビーさんも一杯いかがです?
あとでね。

アルとキサラが話している。
突然出店が決まって驚いたわ。
開催の発表が昨日だったからね。

調子はどう?
店でバイトしている
キサラとシオンに
屋台での対応を頼んだんだ。
僕がベーカリーの厨房を借りて
調理をするよ。
シオンは?
もうすぐ来る。

隣ではマンゴー亭の屋台ができていた。
レイが焼きそばを作っている。

小池恵子が食材を調理しているようだ。

どんどん作っちゃって大丈夫かな。
まずは私たちの朝食ね。
すぐ売り切れるわよ。

郊外のアルのビストロから、
シオンがスクーターで到着した。

久しぶりね。
お店から食材を運んできたんです。
そうなの?
材料ならベーカリーにもあるのに。
アルの厳選した小麦粉とか、
秘伝のトマトペーストとか、
こだわりがあるんですよ。
ふーん。
ビストロの味なのね。
解説)
続きます。
Mar 17, 2026
広場で そのろく

広場は静かだった。

子供たちは
盆栽の梅とウグイスに
みとれている。
早く咲かないかな。

ルビーは夏木さんと話していた。
広場でイベントといっても
考えちゃうわね。
フリーマーケットも
音楽会もやったし。
同じことするのは気が引けるし。
この季節何かある?

もうすぐ本格的な春で、
さくらの季節でしょう。
さくら祭りでいいんじゃないでしょうか。
とボニーが言った。
それで何をするの?
屋台を出したりして、
お花見用の環境を作るんです。
桜の開花予想日っていつ頃だっけ。
今年の関東地方は
たしか明日くらいですよ。

ルビーはマイクを持ってアナウンスしている。
みなさん。
広場で、明日から
さくら祭のイベントをはじめます。
屋台で参加したい方は、
こちらのベーカリーまでご連絡ください。
広場のスペースには限りがありますので、
参加は先着順になります。

ドルフィンのスタッフや、
舞たちがさっそくテーブルのセッティングを
始めている。

バー・デジャから
バーテンダーのジョニーがやってきた。
アナウンス聞いたんですが、
広場に出店できますか?
一番乗りね。もちろん歓迎よ。
どんなお店出すの?
酒類の販売ですよ。
屋外ならビールが一番。

マンゴー亭から、
小池恵子がやってきた。
お祭りイベント始めるのね。
うちからも屋台を出したいんだけど。
いいわよ。
またラーメンの屋台?
さくら祭でしょう。
焼きそばとか、たこ焼きを
メインにしようかと思ってるの。

郊外のビストロから
アルがやってきた。
アナウンスを聞いてきたんだ。
うちでも屋台を出せると、
お店の宣伝になると思ってね。
まだ間に合うかな。
三件目でギリギリね。
何を販売するの?
うちはピザやスパゲティが
メインだけど、
注文を受けて運んでくるのが大変。
屋台だと何にするかなあ。
それならベーカリーで作れるわよ。
厨房を貸すからそのメニューで
いいんじゃない?
それは助かるなあ。
解説)
続きます。
Mar 16, 2026
広場で そのご

ルビーと少佐はサニーとの、
一年ぶりの再会で、
話は尽きなかった。
宇宙ステーションの中で
そんな事件があったの?
そうなのよ。
火星人が原因だったの。
ピピっていろんな災難にあってるのね。
本人はいつもケロッとしているわ。

さて、そろそろステーションに戻るわ。
任務を終えないと。
私もCGの本部に戻る。
仕事抜けてきたから。
と少佐も言っている。

広場ではベーカリーに文学青年が来ていた。
珍しいわね。
図書館の帰り?
とサラに言われている。

毎年この時期にドルフィンの倉庫から、
この梅の盆栽を借り出すんだけど、
今年は、広場に置くことにしようと思って。
ふうん。
それもいいわね。
みんなが鑑賞できるから。

文学青年はルルに手伝ってもらって、
盆栽を広場の隅の、
鉢植えコーナーに置くことにした。
子供たちがさっそく
集まって見ている。

こんな感じでいいかな。
ウグイスが留まってるんだね。
と圭が言っている。
梅が咲くのを待ってるんだよ。

サニーはドルフィンで
梱包された円盤を渡してもらった。

サニー一人で大丈夫?
それ重くないの?
私、体はサイボーグだから、
へっちゃらなのよ。
とサニーが言っている。

少佐も本部に帰るので、
ルビーと別れの挨拶をしている。
何かあったら連絡してね。

挨拶を済ませたルビーに、
イベント企画好きの夏木さんが声をかけた。
ルビー。
広場が空いてるでしょ。
何かイベントでもしない?
そういえば去年はこの時期、
広場でフリーマーケットをやったわね。
何かアイデアはあるの?
それはこれから
考えるのよ。
解説)
続きます。
Mar 15, 2026
広場で そのよん

広場では、
子供達がアンと遊んでいた。

どうして逆立ちしてるの?
頭が重いんです。

交代して
ルイが抱いてもらっている。
スーパーマン。
ぴゅー。

ピピはドラコとも
仲良くなったようだ。
ドラコはダーダーと言っている。
いつも何言ってるのか
わからないのよ。
チョコが食べたいって言ってます。
ほんとかな。

バー・デジャでは、
ルビーたちが肉まんを食べていた。

発見された円盤の件、少佐が
こっちに回してくれて助かったわ。
CG本部に持っていかれたら、
大事になるところだった。

サニーが宇宙ステーションで
暮らしていることや、ルビーやアイスが、
宇宙人とコンタクト取ってることは、
一年前に聞いていたからね。
境界警備隊から、
最初に私に連絡が来たからよかったけど、
いつもこううまくいくとは限らないわよ。

こういう遭難事故は今回が初めてじゃないの。
国によっては宇宙人や円盤に関する情報を
結構収集しているし。
私以前、米軍のヨコタベースにいたでしょう。
パイロット仲間では円盤の目撃情報が、
珍しくなかった。

近いうちに情報公開されるっていう
話もあるわね。
でもね。宇宙連合は消極的よ。
人類との表だっての交流は
時期尚早っていう意見が大半。
そうなんでしょうね。
相変わらず仲間内で戦争ばっかりしているし。
あら賑やかな歌声。

階下のマンゴー亭で、
食事をしていた大道芸人たちが、
興に乗って歌っていたのだった。
はる〜は な〜のみ〜の
かぜ~の さむさよ~🎵
解説)
続きます。
Mar 14, 2026
広場で そのさん

少佐が車を降りると、
アンたちがストーブを運んでいるところだった。
もう春ね。

少佐はドルフィンに向かった。
あ、少佐。

気になって本部から飛行物体を確認しにきたの。
それにルビーが乗員を探すって言ってたけど。
見つかったのよ。
ここです。
とピピが言った。
少佐は一瞬たじろいでいる。

少佐は、
ドルフィンに案内された。
あら、サニーじゃないの。
円盤の回収を仰せつかっちゃってね。
少佐と会うのも1年ぶりね。

壊れてるの?
宇宙ステーションに持ち帰って調べます。

ジェットたちがストーブを運んできた。
今立て込んでるから、
そこに置いといてくれる?
あとはスタッフに頼むから。
了解。

一応ステーションに報告しといたわ。
とサニーが言った。
じゃあ、一安心ね。
3人の旧友の一年ぶりの再会を祝して、
肉まんでも食べましょう。

しかしマンゴー亭は、
休憩している大道芸人たちが食事中で、
満席だった。

じゃあ、バーデジャに行こう。
肉まんは、デリバリーして貰えばいいわ。
ヨシフ。
3人だけど席空いてる?
空いてますよ。
ルビーさん。
解説)
続きます。
Mar 13, 2026
広場で そのに

大道芸人たちの演奏のない広場は
ふつうに静かだった。

ピピ、見つけてもらって良かったわね。
とサニーが言っている。
あ、サニー、どうしてここに?
あなたの円盤を回収しに来たのよ。
この人、
ピピのお友達なの?
私たちピピと遊んでいるの。
とピリカが言った。

残念だけど、レプティリアンたちの規約で、
地球人との直接的な
コンタクトは禁じられてるのよ。
知ってるけど、
サニーも人間の友達がいるんでしょう。
きっと大丈夫だよ。
見つからないようにするから。
とピピが言っている。

あの銀色のロボット人形。
本物の宇宙人みたい。
聞かなかったことにしよう。
とヘルミーネたちが話している。

ピピが見つかってよかったわ。
なぜかピピはトラブルに遭いやすいのよ。
小さいから、
扱いやすいのかな。
そんなことってあるの?

サニーはドルフィンに
円盤を確認しに行った。
壊れてましたか。
さっぱりわかりません。

そうこうするうちに、
サラの部屋から、
ジェットとアンが、
ストーブを運んできた。

あれサラたちの家の石炭ストーブだよ。
毎年春になるとドルフィンの倉庫に
片付けるんだ。
アンは力持ちだね。

その時広場に、少佐の乗った
赤いワーゲンが乗り入れてきた。
解説)
続きます。
Mar 12, 2026
広場で

サラはサニーと二人で、
部屋に戻ってきた。

こちらはサニー。
宇宙ステーションからのお客様よ。
これから円盤を回収しに、
広場に行くの。
と言っている。

最近、忙しそうね。
とりあえず広場に行くなら、
アンに声をかけてくれない?
そろそろストーブを
片付けようと思うんだけど、
またお手伝いを頼みたいの。
とメアリー=ケイトが言った。

二人は広場にやってきた。

あ、ちょうどよかった。
アン。お部屋のストーブをそろそろ
片付けたいんだけど。
はい。喜んでお手伝します。
もうすぐはーるですね。
ドラコもダーダーと言っている。

あら、あなたはサニーね。
お久しぶり。
と舞が言っている。
ちょうど1年ぶりですね。
今井舞さんでしたね。

あら、二人は知り合いだったの?
去年の3月初めにアイスとルビーに誘われて、
18年ぶりに広場に来た時、
知り合ったんですよ。
懐かしの喫茶ペンギンを訪ねたり、
ミューっていうロボットと
情報交換したり、色々楽しんだんです。
私は家にいたから、
すれ違いだったのね。
とサラが言った。

3人が立ち話をしていると、
ルビーたちの乗ったジープが
森林公園から戻ってきた。

ルビーはサニーがいるのに気がついて、
早速ジープを降りて話しかけている。

1年ぶりね。元気にしてた?
元気でしたよ。
ルビーも。
ええ、色々あったけど、
1年はあっという間ね。

子供達は舞と話している。
これ人形みたいだけど、
動くの?
人形じゃないのよ。
動くし話もできるの。
とピリカが言った。
じゃあロボットなのね。
ロボットじゃないよ。
と圭が言った。
ピピは宇宙人なの。
とルイが言った。
そうなのね。
みんなダメよ。
誰か大人の人に聞かれたら、
ロボットの人形だって
いうようにしなさいって、
ルビーが言ってたでしょ。
そうしたら一緒に遊べるって。
とすずが言った。
そうなのね。
解説)
続きます。
Mar 11, 2026
森林公園で そのに

ピピの捜索は続いていたが、
さっぱり見つからない。
みんなは、円盤が見つかった場所に戻ってきていた。
今日もまだ寒いけど、
天気はまずまずね。
と言いながら空を見上げていたルビーが、
あら。あそこで何か光ったわ。
と言った。

樹木の梢にピピが引っかかっていたのだった。

ソローがさっそく樹木に登って行った。
これ、おもちゃみたいだなあ。
と言っている。

ソローはピピを確保した。
受け止めるから
投げてよこして。
とルビーが言っている。

ピピはぐったりしている。
大丈夫かなあ。
すずが近づくと、
いい匂い。
とピピが呟いた。

お腹空いてるのかも。
すずがポケットから
チョコを取り出すと、
ピピはシャキッとして
もらえるのを待っていた。

ごちそうさまでした。
あ、ルビーさん。
またお会いできましたね。
いったい何があったの?
広場の上空で春節の踊りを見ていたら、
龍が空に登ってきて、
円盤が口にくわえられちゃったんです。
しばらく上空を漂っていましたが、
それから龍はこの公園の上空まで
飛んできて、急に落下したんです。
そのはずみで円盤も口から外れて落ちていき、
この樹木に引っかかりました。
僕はなんとか脱出したんですが、
円盤は地上に落ちていきました。
あれ、円盤はどこでしょう。
心配いらないわ。
回収してドルフィンに保管してある。
あなたが乗ってなかったので探してたのよ。

ルイが
見つからないよーと言っている。
ルイちゃん。
もういいのよ。

森林公園の表の入り口まで
戻った一行は、
ソローに遊具のある場所に
案内してもらった。

代わりばんこよ。
とすずが言っている。
解説)
続きます。
Mar 10, 2026
サラの行動

その頃サラは、鏡の扉を使って
アフリカに移動し、
さらに転送装置を使って
宇宙ステーションに向かっていた。

やあサラ。
こんにちわダック。
ピピの乗った円盤が墜落したの知ってる?
墜落したんですか?
春節の踊りを見にいくと言って、
地球に向かったのは知ってますが。

メイズに知らせましょう。

サラはメイズに、
ピピの乗っていた円盤が墜落して、
駆けつけたCGの境界警備隊が回収したが、
宇宙ステーションの存在を知っている
少佐の機転で、円盤は内密にドルフィンに
運ばれて保管されていることや、
ルビーたちが墜落現場に行って、
ピピを捜索していることなどを話した。

地球観光中に
こうしたトラブルがあるのは仕方ないわね。
一応地球はレプティリアンの保護下にあるから、
リザードたちにも話しておくわ。
それと、こういう時のために、
仲介役を頼んであるのよ。

一同は別フロアに移動した。
サラは初めて間近に見る
円盤に驚いている。

メイズが声をかけると、
円盤からはサニーが降りてきた。
サニー。
アイスに連絡してくれない?

それがもうひと月近く連絡できないんです。
位置情報も確認できなくて。
とサニーが言った。
ああ、それはね。
アイスは忘れられた夢の世界にいるから。
たぶんまだ船旅をしているはずよ。
とサラが言った。
魔法で異世界に行っているのなら、
彼女に渡してある通信装置は使えないわね。
どうします?
うーん。アイスがいなくてもなんとかなるかな。
サニー。ピピの円盤の回収に向かって。
わかりました。
サラと一緒に行ってね。
え、空から円盤で行くんじゃないんですか?
そうしたら大事になるでしょ。
もちろん担いで運んでくるのよ。
私も手伝うわ。
とサラが言った。
問題はピピの行方だけれど、
今ルビーたちがピピを捜索しているのなら、
その結果次第ね。
理解がある人間に探してもらうのが一番。
見つからなければ、
上空から円盤の透視装置で
広範囲に付近を探索します。
宇宙人襲来って騒がれるかもしれないから、
それは最後の手段。

二人は円盤の回収のため、
ドルフィンに向かうことになった。
サニーさんは人間なの?
昔は人間でした。
今は頭だけ。
事故に遭って宇宙人たちに命を救われ、
サイボーグとして生まれ変わったんです。
そうそう、
この前のお寿司、懐かしい地球の味で、
美味しかったですよ。
それはどうも。
解説)
続きます。
Mar 09, 2026
森林公園で

子供たちは公園に入っていく。
わあ。
お花が咲いてるよ。

これはキューピッドの彫像ね。
お花は造花みたい。
森林公園は元はジルっていう人が作った
人工庭園だったって聞いたことがあるよ。
だから植物も作り物が多いんだ。
圭は物知りね。

ルビーは公園の管理人に
声をかけた。
こんにちわエドワード。
最近、飛行物体が見つかったって
聞いたんだけど、どのあたりだったかわかる?
最近は来園者が多いね。
ドルフィンから竜のハリボテを回収しに来たし、
その飛行物体っていうのは
通報を受けた境界警備隊が来て回収していった。
見つかったのは、たしか裏門の方だよ。
ソローが見つけたんだ。

ルビーは公園管理人のソローと
話している。
あの円盤型のドローンみたいなものだね。
裏門の方の森の中で見つけたんだ。
公園は広くて、滅多にいかない場所だけど、
巣箱を取り付けにいった時、
偶然通りかかってね。
それでね。
ここだけの話だけど、
その円盤に乗っていた宇宙人を探してるの。
え、あれはUFOだったの?
玩具みたいに小さかったよ。
銀色の小さい宇宙人なのよ。
探す相手もわかっているのか。
じゃあ現場に案内するよ。
ジープで来たんなら、
ちょっと遠いから、
車で裏門まで回ろう。

子供連れなの?
捜索は秘密にしたいから、
少女探偵団に手伝ってもらう
ことにしたの。
すずは少女探偵団と言ってもらえたので、
感激している。
ルイちゃん、出発するわよ。

一行を乗せたジープは、
公園の裏手に回って、
門から公園内に乗り入れた。
確かこのあたりだったよ。
とソローが言っている。

ソローの設置した
小鳥用の巣箱が見える。
じゃあみんな、
このあたりの茂みを探してみて。
遠くには行かないでね。
とルビーが言った。

子供たちは
茂みを探している。

銀色なんだよね。
なんか怖いなあ。
圭は男の子でしょ。
解説)
続きます。
Mar 08, 2026
森林公園へ

ルビーはドルフィンの倉庫から
ジープを借り出してきた。

かっこいいなあ。
私も乗ってみたい。
などと言っている。

二人で森林公園でピピっていう
宇宙人を探すんですか。
そのつもりよ。
人手は多いほどいいけどね。
噂になると問題なの。
子供たちならどうでしょう。
大人に宇宙人を見つけたと言っても、
本気にされなそうだし、
秘密も守ってくれそうですよ。
それもそうね。
手伝ってもらいましょうか。

君たち、
森林公園で、
宇宙人探すの手伝ってくれない?
わーい。
やりますやります。

舞、森林公園まで、
子供達を遊ばせに行ってくるから、
マンスフィールドさんに
よろしく言っておいてね。
わかりました。
私も行きたいなあ。
また今度ね。

少女探偵団の
初仕事だね。
宇宙人っ何人?
鹿せんべい食べるの?
などと言っている。

ジープは広場を発進した。

郊外への道を
ジープはひた走っている。
子供たちはわきゃわきゃと騒いでいる。

このジープ、
ドルフィンで共有で使ってるけど、
元はジョー軍曹の愛車でしょ。
彼らがいたら手伝ってもらうんだけどね。
生憎、ジョーもエルザもいないし、
アイスもいない。

そうこう言っている間に、
時は迅速に流れ、
ジープは森林公園に到着した。
解説)
続きます。
Mar 07, 2026
新しい出来事

広場で子供達が遊んでいると、
境界警備隊のバギーがやってきた。
イメルダとコフィが乗車している。

あら、スペースがあるのね。
広場の奥に止めましょう。
了解。

バギーは一旦バックすると、
ハンドルを切り返して発信し、
広場の奥の子供達の前に、
ぴたりと停車した。
スリルだなあ。
と圭が言っている。

イメルダ、珍しいわね。
何かあったの?

それがね、森林公園の中で、
怪しげな飛行物体らしきものが見つかったの。
本部に連絡したら、少佐から、
内密にベーカリーに届けるようにって
指令を受けてね。

あれがその飛行物体よ。
円形で操縦席が付いているけど、
大人が乗るには小さすぎるから、
ドローンみたいなもの
じゃないかと思うんだけど。

少佐は本部の他の部署にも
秘密にするようにと言ってた。
あなたたち何か知ってるの?
特殊な任務を帯びてるとか。
まあ、そんなところね。
秘密厳守で頼むわ。
お役目ご苦労様。
また近いうちに飲みましょう。

イメルダとコフィの乗ったバギーは
走り去っていった。
佳奈がさっそく梱包を解いた。
これ、
おもちゃの円盤みたい。
と言っている。

舞が見に来た。
これ、UFOですよ。
春節でガルーダの舞をやっていた時、
広場の上空を飛んでいたのを見ました。

噂にならないように、
円盤はドルフィンの屋内に運び込まれた。
マスターがあれこれ調べている。
故障してるの?
さっぱりわからない。

ルビー。
あれはピピの乗り物よ。
とサラが言った。
ピピって、
小さな銀色の宇宙人ね。
一昨年の9月に、
アフリカで会ったことがあるわ。
確かにピピのサイズなら乗れそう。
きっと何かの事故で不時着したのよ。
誰も乗っていなかったとすると
ピピはどこかにいるはず。
円盤が見つかったのは森林公園だって
言ってたわ。
公になるのはまずいから、
私が佳奈と探しに行ってくる。
舞も円盤のことは黙っていてね。
はい。
私は宇宙ステーションに行って、
現状を報告してくる。
事故だとしたら、彼らも
捜索を始めてるかもしれない。
とサラが言った。
解説)
続きます。
Mar 06, 2026
ローラの帰宅

ペンギン前のテーブル席に
ローラが戻ってきていた。

しばらく忙しくしてたみたいね。

マンゴー亭でお手伝いしてたんです。
常勤のスタッフにならないかと誘われたんですが、
ミラさんたちの家で
家事や料理をするのが日課ですから、
忙しい時だけ手伝うということにしました。
そうなのね。
私たちのことは気にしなくてもいいのに。
料理は好きですが、
自分の好きなものを作りたいんです。

それでお漬物なのね。

お手伝いしたお礼にって、
ぬか床を分けていただいたんですよ。

マンゴー亭にも
提供するっていうことで。
たくさん漬け込みます。

このお煎餅美味しいわね。
鹿せんべいなんですが、
フィギアの鹿用に調理したので、
普通の人でも食べられるんです。

バグさん。
お箸持ってきましょうか。
それには及びません。
これもいけますね。
そうでしょ。
解説)
続きます。
Mar 05, 2026
子供の領分 そのよん

子供達は広場に出てきた。
春節が終わって、
大道芸人たちは休息しているので、
広場は広々としている。

こんなに広いの初めて。

何かして遊ぼうか。
かくれんぼしたい。
うん。

誰が鬼なの。
じゃんけんして決めよう。
みんなパーしか出せないよ。
じゃあ私が鬼になるわ。
とすずが言った。

すずは言葉を唱えている。
とうきょうのまんなかで
だるまさんがころんだ。
懐かしいセリフだなあ。
と言われている。

みんなは広場に
隠れたようだ。
すずは探し始めた。

ピリカちゃん。
見つかったか。

圭!
バレバレだったか。

もう探すところないなあ。
その時、
モゾモゾとスカーフが動いた。

ルイちゃん。
見つかっちゃった。

子供は天真爛漫でいいわね。
さっきのかけ言葉
懐かしかったですね。
よくお風呂の中で
数えたわね。
解説)
続きます。
Mar 04, 2026
後片付け

春節が終わったので、
リタが万国旗を片付けている。
あっという間ね。
これでしばらく静かになりそう。
次の広場のイベントっていうと、
七夕くらいかしら。

ドルフィンの2階でも、
ひな人形の片付けが始まっていた。

箪笥や鏡台やお茶の道具は
お嫁入りの道具。
駕籠や牛車に乗って、
婚礼行事で練り歩くんだよ。
圭ちゃん、物知り。
ネットがあるからね。

もう片付けちゃうの?

雛人形は早く片付けないと、
お嫁に行けなくなるって、
ルビーが言ってたわ。

こういう情景って、
ちょっと寂しい。

作業はどんどん
はかどっていった。

ルイちゃん、
お人形とお話できるの?
子供なのでできるの。
太郎さんと花子さんが、
もっと遊びたいって言ってます。
お話作ってない?

エトナは雛人形を
ドルフィンの倉庫に片付けている。
あら、もう仕舞ってるの?
早く片付けないと、
お嫁に行けなくなるって、
言ってたでしょう。
ああ、あれは昔の話よ。
ひな人形は貴重品だったから、
大事に保存するためにそういう
言い伝えがあったっていうこと。
そうなのか。
でもやることを思いつかないと、
片付け作業でも時間が潰せるわね。
そうなのか。

雛人形がなくなっても、
子供達は人形と遊んでいた。
次郎さんは今日も元気です。
とルイが言っている。
解説)
続きます。
Mar 03, 2026
ひな祭りなど

ペンギン前のテーブル席には、
はるながマンゴー亭に注文していた料理が
届いていた。

マスターのマリーネも
店から出てきて餃子を食べている。
私いつもカウンターにいるから
お会いする機会がないけど、
お二人は常連のお客様ですってね。
そうなんです。
お店が家の前なので、
いつもお茶しにくるんですよ。

今日はランチにお誘いいただいて、
ありがとうございます。
とミラが言っている。

リズは一緒に食べないの?
お店は営業してるから、
交代でね。

今日は春節のお祝いに、魚料理と
餃子を注文したんです。
あら、それは何?
出すの忘れてました。
ローラが、サービスですって。
お煎餅みたいね。

ドルフィンの2階では、
雛人形の飾り付けが終わっていた。

随分立派だね。
久月でしょうか。
違うみたいよ。

昔から女性の方が位が上なのね。
そういう意味なのかなあ。

お姉さん、
古い雛人形出してきたのね。
年に一度のお祭りだからね。
楽しんでもらうの。

ルビーも見物にやってきた。
綺麗に飾ったわね。
ひなあられの差し入れよ。
と言っている。
解説)
続きます。
Mar 02, 2026
子供の領分 そのさん

シモーヌはベランダにやってきた。
ピリカ、
私は鹿せんべいをディアナに届けにいくけど、
あなたはどうする?

常春の国に行くのね。
みんなと一緒に行ってもいい?
それはやめときましょう。
みんな普通の人間の子供たちで、
知らない子もいるから、
何かあったら大変。
そうか。
じゃあ、ここにいてもいい?
いいわよ。
夢の世界に戻りたくなったら、
サラたちの家に行ってサラに言ってね。
鏡の扉の呪文を知ってるから。
わかった。
シモーヌありがとう。
ディアナによろしくね。

エトナもやってきた。
ルイちゃん、ここにいたか。
すずちゃんや圭と一緒なら安心だけど、
どうせなら部屋の中で遊ばない?

ずずたちはドルフィンの2階の部屋で
遊ぶことにした。
駒井姉妹に挨拶している。
お邪魔しまーす。
わー、参加賞のチョコだ。
食べていいわよ。

素敵なお部屋ですね。
私は子鹿のフィギアの精霊のピリカと言います。

ピリカちゃんね。
私は魔子。隣に立ってるのが妹の今子よ。
私たち姉妹は野狐の精霊。
フィギアや物品に宿る精霊とはちょっと違うの。
あ、フィギアといえば、
明日はひな祭りね。
お雛様飾って遊んだらどうかしら。

すずと圭は歓声をあげている。
やったー。
ルイはよくわかっていないけれど、
一緒にやったーと言っている。

エトナは早速一階に降りて、
ドルフィンの倉庫から
雛人形を運んでいる。
リタも手伝ってくれているようだ。

2階で子供達のために
雛人形を飾ることになったのよ。
珍しいわね。
完成したら明日観に行くわ。

そばで話を聞いていた舞もやってきた。
子供たちは歓声をあげている。
これセッティングするの大変そうね。
私も手伝うわ。
と舞が言った。
解説)
続きます。
Mar 01, 2026
コンテストの優勝者発表

月が変わっても、
広場の様子はあまり変わらなかった。

はるなが餃子の注文をしに、
マンゴー亭にやってきた。
ローラ、最近見かけないと思ったら、
マンゴー亭で働いてたのね。
春節の間だけ
お手伝いしてるのよ。
すごく料理がお上手なので
助かってますよ。
と丹下健太が言った。

佳奈、何食べてるの?
焼きそばに餃子よ。
お煎餅もついてるんだけど、
これなんだろう。
それはサービス。
とローラが言っている。

ベーカリーでは。
ルビー、参加賞のチョコの用意ができたわ。
そろそろ優勝者の発表の時間よ。
そうなんだけど、決まらなくてね。
先月も新規の参加者がいなくて、
住民の中で誰か選ぶことになるんだけど。
ほとんどみんな過去に受賞してるから。

はるなはまだ優勝してないわよ。
と舞が言っている。
そうか、あ、マンゴー亭にいるみたいね。
彼女にしちゃおう。

ルビーはハンドマイクをオンにした。
みなさん、2月のコスプレコンテストの
優勝者を発表します。
厳正中立な審査の結果、
優勝したのはいつもペンギンでアルバイトしている、
はるなさんです。

おめでとう。あなたが優勝よ。
あ、ありがとう。
そろそろあなたじゃないかって
噂してたのよ。
広場に来ててちょうどよかったわ。
なんかそんな気もしてたので、
楽しみにしてたんです。

盛大な拍手と歓声に包まれながら、
はるなは優勝トロフィを授与されている。

はるなちゃんは、
この町に来てどのくらいになるんだっけ。
私が来たのは2021年の3月ですから、
今月でちょうどまる5年になります。
マリーネさんと知り合って、
その月に喫茶ペンギンが新装開店したので、
すぐにバイトを始めたんですよ。
ああ、あの頃はまだ
ベーカリーもマンゴー亭もなかった。
広場にドルフィンだけがあって、
みんな再会したり昔の思い出に浸りながら、
バタバタしてた時期ね。

毎月あのコンテストの
優勝者発表イベントやってるんですか?
そうなんですよ。
最近マンネリ気味で、
毎回選考に悩んでるみたいですけど、
4年前のハロウィンから、
毎月初めにやっています。
習慣の力は怖いですね。
解説)
続きます。
Feb 28, 2026
二月の終わり

広場の歌声は絶えない。
今日は風があるので、
早春譜がぴったりね。

屋台では男性が
餃子を追加注文していた。
春節はこれですなあ。

ローラはドルフィンの倉庫から
小池恵子が選んできた
スラックスを身につけた。
どうかな?
ゆったりしてて
動きやすそうよ。

ローラ。
餃子が。
あ、今戻ります。

その頃、久々の
ジェニー達の家では。

マンゴー亭からアンナが
デリバリーで餃子を届けにきていた。

やっぱり春節は餃子ね。

龍の舞がすごかったって
新聞に書いてあるよ。
今年は中止だって聞いてたけど、
広場に行けばよかったなあ。
どうせすごく混んでたんでしょう。
そうみたい。
人波の上で舞ってたらしい。

喫茶ペンギン前では。
マリーネが、今年の春節は
3月3日までだから、そろそろ餃子を
食べましょうって言ってるわ。
私広場に注文しに行ってくる。
とはるなが言った。
今月も今日で終わり。
もう3月で明日はコンテストの発表ね。
明日行けばいいことがあるかも。
私もそんな気がする。
解説)
続きます。
Feb 27, 2026
子供の領分 そのに

広場の演奏は続いている。

さっきまで広場にいたみたいだけど、
ルイちゃんはどこに行ったのかしら。
他の子と一緒でしょ。
そうだといいけど、
あの子、よく迷子になるのよ。
4年前の春節でも
迷子になったの。
そんなに前から知ってるの?
その時が初めてだったはずよ。

ルイたちは
ベランダの洗濯物干し場に移動していた。

仲良しになったんだし
探偵団を結成しようよ。
少年探偵団。
と圭が言った。

少女探偵団ね。
え。
そんなのないよ。
男の子は圭だけでしょ。
そうか。

団長はピリカだね。
一番年長みたいだし。
私は子鹿のフィギアの精霊で、
年齢なんてないのよ。
精霊であることに目覚めて数ヶ月だし、
この世界のこと何にも知らない。
みんなそうだよ。
脇役みたいだし。
それで探偵団って
何するの?
まだわかんない。

広場のラーメン屋台には、
ドルフィンのマスターと
イベント企画好きの夏木さんがいた。
はい、お待たせしました。
と言われている。

私もラーメンを。
はい。あら初登場、
じゃなかった、初めての方ですね。
観光でお見えですか?
そんなところです。
あ、僕もう食べ終わるので、
この席空きますよ。
とマスターが言っている。

男性はラーメンを啜っている。
うまいですなあ。
春節はラーメンに限る。
餃子もありますよ。

マンゴー亭では、
調理の区切りがついたローラが
厨房から出てきた。
そのチャイナドレス、
なかなかお似合いよ。
ちょっと丈が短すぎると思いません?
それしかなかったのよ。
倉庫でスラックス探してみるわ。
と小池恵子が言っている。
解説)
続きます。
Feb 26, 2026
子供の領分

広場では大道芸人たちの演奏が再開され、
人々は平常に戻って聞き入っている。

「春一番」は名曲ね。
この季節にぴったり。
などと話している。

エトナがドルフィンの2階から、
小さな女の子を連れて降りてきた。
あらかわいい子ね。

その子は、ルイちゃんっていうのよ。
私の遠い親戚の娘さんなんだけど、
両親が不在がちで、よく預かってるの。
と言っても、ほとんどドルフィンの2階で
預かってもらってるんだけど。
とマンスフィールドさんが言った。

子供達が話している。
あなたはドラコにお煎餅あげたり、
話したりしてたわね。
すごいなあ。
あ、私は鈴木すず。
僕は池谷圭。
私はピリカよ。

そこにルイがやってきた。

ルイとピリカは見つめあっている。
あなたは、ルイね。
その声は、
もしかしてピリカ?

やったーと言い合って、
ハイタッチしている。

ルイちゃん、
ピリカと知り合いだったの?
マンスフィールドさんの倉庫で出会ったの。
ピリカは子鹿のフィギアだったのよ。
この前行ったらなくなっていて、
マンスフィールドさんに聞いたら、
シモーヌっていう人にあげたって言ってた。
いなくなって寂しかったの。
それってどういうこと?
私はまだ子供だから、
人形と話ができるの。
とルイが言った。
私はできないよ。
とすずが言った。
僕も。
と圭が言った。
子供にもいろいろあるのよ。
とピリカが言った。
私は子鹿のフィギアに宿っていた精霊。
マンスフィールドさんの倉庫に
置かれていたとき、
ルイが話しかけてくれて、お友達になったの。
それから去年の7月の初め。
倉庫に見学に来たディアナが、
フィギアの中に宿っていた私を見つけて、
マンスフィールドさんから譲り受けたの。
ディアナも鹿のフィギアの精霊だから、
私のことがわかったのね。
それから、ディアナに夢の世界に連れて行ってもらって、
そこに来ていたフミコっていう魔族の人が、
魔法で人間の姿に変身できるようにしてくれたのよ。
おとぎ話みたいだね。

仲良くなった子供達は
鹿せんべいを食べている。
子供なのでなんでも食べるのだった。
解説)
続きます。
Feb 25, 2026
春節の広場 そのきゅう

龍は宝珠を探す仕草をしている。

宝珠を見つけた仕草をしている。

やがてうねうねと天に昇っていく。

流石にみんな気がついて、
踊りをやめて空を仰いでいる。

空に登っていっちゃったね。

見事なもんですね。
みんな踊りをやめましたよ。
帽子どうしたんです。
脱帽しているんだよ。

あれ、どうしたんだろう。
なんか頭が軽くなったみたい。
龍の舞が終わったんだよ。

見事なものね。
そういえば、2年前の春節でも、
ハリーさんが最後に
龍を天に登らせたのよ。
同じ魔法なのかしら。
今のは人形を操る魔法の応用です。
物品に精霊が宿っていなくても、
操ることはできるんですよ。
あの作り物の龍は微妙で、
自分で舞の手順を覚えていました。
精霊が目覚めかけているのかもしれません。
ふーん、春節だから、
龍の舞を踊りたかったのかも
しれないわね。
それで龍はどこに行ったの?

まだ空を漂っていますよ。
じゃあ、郊外の森林公園に
おろしてくれない?
ドルフィンのスタッフに頼んで、
後で回収してもらうわ。
わかりました。
解説)
続きます。
Feb 24, 2026
春節の広場 そのはち

シモーヌは、
作り物の龍の頭に向かって呪文を唱えている。
薄い煙が立ち上った。

龍はゆっくりと頭を上げて
もぞもぞと動き出した。

龍は広場に出てきた。

みんな踊りに夢中で
まだ気がついてないみたい。
頭ごしに動いていくから、
持ち上げているように見えるわね。

あれは龍でしょう。
みんなで踊りながら運んでいるのか。
器用なものだなあ。

なんだこれ。
ジェットが気がついたようだ。

わー龍だよ。
龍の舞が始まったんだ。

龍はお構いなしに
うねうねと踊っている。

ケイ、気がついたのね。
龍の舞は中止じゃなかったんですか。
それが事情が変わったのよ。
解説)
続きます。
Feb 23, 2026
春節の広場 そのなな

広場で踊る人の数は増えていた。

大道芸人たちの演奏も
熱を帯びている。

踊らにゃ損損。
と言っている。

ジェットとケイも
噂を聞いてやってきて
参加している。

カオス状態になってきたわね。
今日は気温も上がって
春一番が吹いたそうだよ。
踊り日和だね。

ルビーのところに、
シティポリスがやってきた。

あのー。
この踊りいつまで続くんでしょう。

春節の時には、よくこうなるの。
ご存知でしょう。
ここの住人はみんな
歌や踊りが大好きですからね。
しかし、
これ以上人数が増えると
カオスになりますよ。
怪我人が出ないうちに
とめないと。

私が止めましょうか。
とシモーヌが言った。
そんなことできるの?
龍に踊ってもらうんです。

魔法で龍を動かすのね。
見てみたいわ。
とサラが言った。
魔法を使うのは
まずいんじゃないですか。
みんな踊りに夢中だから、
きっと大丈夫よ。
解説)
続きます。
Feb 22, 2026
春節の広場 そのろく

シモーヌは倉庫から戻ってきた。
おかえり。

シモーヌは部屋の奥に目をやった。
あれはなんですか?
春節の竜の踊りに使われる、
作り物の竜よ。
準備のためにスタッフが出してきたんだけど、
今年は操作する人がいなくて、
舞は中止になったの。

シモーヌたちはベーカリーの
テーブル席に座って話している。

シモーヌ。
一人で鏡の扉を使って、
マンスフィールドさんの倉庫にいって、
すぐに戻ってきたのは、
素早い行動で驚いたけど、
わけを説明してくれる?

ええ。実はね。
私、以前にもあの倉庫を訪れたことがあったの。
マンスフィールドさんのお話で、
倉庫の一部を美術館として開放していることや、
フクロウのコレクションがあるって聞いて、
本当に同じ場所か確かめに行ったというわけ。
黙っていてごめんなさい。
全然いいけど、
確認できたの?
ええ、あのフクロウの置物のコレクションの多くには、
精霊が宿っていて、今は別世界で暮らしているんです。
ふーん。そうだったの。
私はそういう判断能力は全くないからわからない。
あのコレクションは確か知人から譲り受けたものよ。
そうなんですね。
でも一つカラフルな新しいのがありましたよ。
ああ、あれね、
あれは最近買ったのよ。

広場では
踊る人が増えていた。

だんだん盛り上がっている。

屋台ではルビーと
ドルフィンのマスターが話している。
賑やかになってきましたね。
カオス状態にならないといいけど。

マンゴー亭では、
ローラが、春節の期間中のお店の手伝いを
頼まれて、承諾していた。
春節の間は、従業員はチャイナドレスで
統一することになったんで、
その服装で頼むよ。
解説)
続きます。
Feb 21, 2026
春節の広場 そのご

サラたちはマンゴー亭で
話し込んでいる。

ジャンさん。
あなたは庭にジオラマの村を作るほどの
フィギアマニアなんでしょう。
その村に配置していたフィギアたちに
精霊が宿って異世界で暮らし始めた。
そのきっかけはなんだったの?
とシモーヌが尋ねた。

話せば長いんですよ。
僕はあの郊外のバービーハウスを、
美術品のコレクターだったマンスフィールドさんから
購入したんです。
家には人形の保管用の倉庫が付いていたんで、
それが魅力だったんです。
その倉庫にはリリスという人形が置いてあって、
マンスフィールドさんから、リリスは
倉庫の主だから大事にするようにと言われました。
それが購入の条件だったんです。
後で知ったんですが、その人形に精霊が宿っていたんです。
ある日、たまきとベーカリーで知り合って、
僕が庭にジオラマの村を作っていることを知った、
たまきたちが、家に遊びにきて、
倉庫で休憩していた時、フィギアの兵士たちが乱入してきました。
倉庫のドアが、突然異世界と繋がるようになったんです。
やがて異世界からリリスが現れて、
その異世界はリリスの力だけでなく、
その土地の持つ力や、フィギアたちの思いや、
もちろん僕の願いなど、いろんな事情が重なって
生まれたというようなことを教えてくれました。

なるほど。
魔族が魔法で生み出した世界じゃなかったっていうことね。
その家の前の持ち主のマンスフィールドさんは?
彼女なら大抵広場のベーカリーにいますよ。
コンテストの審査員をされているんです。
町の市街地に近い場所に大きな倉庫を持っていて、
今でも美術品のコレクターとしても活躍されています。
ご紹介しましょうか。
ええぜひ。

3人は広場のベーカリーに向かった。
マンスフィールドさん。
あら、ジャン。
お揃いで何かしら。
ご紹介したい方が。
こちらシモーヌさん。
骨董品の売買をされています。
シモーヌです。どうぞよろしく。
ところで突然不躾なお願いで恐縮ですが、
マンスフィールドさんは美術品を蒐集されていて、
大きな倉庫をお持ちとか。
仕事柄とても興味があるんです。
拝見させていただけないでしょうか。

もちろん歓迎するわ。
倉庫の一部は、美術館のように一般にも開放しているの。
でもここからだと、
車で行かないとちょっと遠いわね。
シモーヌは、その言葉に何か思い当たったようで、
もしかして、フクロウのコレクションをお持ちですか?
と尋ねた。
フクロウの置物なら、結構あるかな。
やっぱり。じゃあ早速伺います。

ドルフィンの建物の中に入ると、
シモーヌは壁に向かって呪文を唱えた。
すると薄い煙がたちのぼり、鏡の扉が現れた。
またなんでもありなのね。
と言われている。

シモーヌが扉を抜けると、
そこはマンスフィールドさんの倉庫の
中だった。
やっぱりここだったわ。
と言っている。

棚にはフクロウの置物のコレクションが
並んでいる。

カラフルなフクロウの置物がある。
おや、君は新入りね。
それに精霊が宿っている。
君も自由になって、常春の国に行きたい?
解説)
続きます。
Feb 20, 2026
春節の広場 そのよん

ガルーダの舞に続いて、
自由参加の踊りが始まった。

みんな好き勝手に
踊っている。

今年はわりと参加者が少なくて、
カオス状態になりそうもないわね。
結構なことです。
などとルビーたちが話している。

ピリカは、
ドラコと話している。
私もあなたと同じ夢食いなのよ。
ダーダー。

マンゴー亭では、
ジャンとシモーヌが話していた。
この前の馬のフィギアの精霊は元気ですか。
エドね。
常春の世界で、ディアナと一緒に
野原を駆け回っているわ。

鹿せんべいが焼きあがったわよ。
とローラが言った。

鹿せんべいをもらったピリカは
ドラコにもあげている。
ドラコはダーダーと
お礼を言っている。

ピリカはアンに抱き上げてもらった。

サラはマンゴー亭に行った。
あら、ローラ、
マンゴー亭で働いてるの?
忙しそうだったので、
お手伝いしてるだけよ。
あなたの腕なら、きっと
スタッフに誘われるわよ。
解説)
続きます。
Feb 19, 2026
春節の広場 そのさん

広場の一画から大道芸人たちが移動して、
マイクを持ったルビーが現れた。

これから春節恒例の
ガルーダの舞の演舞を始めます。
舞手は舞踊研究家にして
マンゴー亭のシェフの丹下健太氏。
ごゆるりとご観覧ください。

ガルーダのお面を被った
丹下健太が登場して一礼した。

大道芸人たちの演奏に合わせて、
丹下健太は早速踊り始めた。

軽やかにジャンプしながら、
意味不明の身振り手振りをしている。

音楽がクライマックスに達して、
健太は驚異的なジャンプをした。
時の流れが緩やかになって、
空中に静止しているように見えた。

万雷の拍手と歓声に包まれ、
健太はお辞儀をしている。

舞と佳奈は食事に夢中だったようだ。
あれは何?
と空を見上げて舞が言った。

上空には円盤が浮かんでいた。

宇宙ステーションから、
ピピが踊りを見にきていたのだった。
解説)
続きます。
Feb 18, 2026
春節の広場 そのに

マンゴー亭で
ジャンとローラが話している。

君は去年のハロウィーンのコンテストで
ゾンビの仕草で優勝した人だろう。
この町の人じゃないよね。
ええ、観光に来たんだけど、あれから、
喫茶ペンギンの前のカコさんたちの家に
家事手伝いで居候させてもらっているの。
ふーん。これ美味しいね。
君が焼いたの?
そうよ。
私は料理研究家なの。

バターを塗ると
こくが出て一味違うわよ。
お塩を少し振ると、さらに甘味が引き立つわ。

そこにシモーヌとピリカがやってきた。
マスター。この前は
鹿せんべいを作ってくれてありがとう。
すごく好評だったので、
また注文してもいいかしら。

もちろん。
と言いたいところだけど、
これから、ガルーダの舞を
踊らなくちゃならないんだ。
それに春節でラーメンの屋台も出してるし、
注文が多くてね。
ちょっと時間がかかるかもしれないな。

あ、だったら私に手伝わせてもらえませんか。
鹿せんべいは得意なんです。
と会話を聞いていたローラが言った。

サラはルビーたちに会って話をしている。

もう春節なのね。
今年は恒例の竜の舞は見られるの?

それが今年は取りやめになったんですよ。
いつもは軍の特殊部隊が協力してくれるけど、
今年はなんでも豪雪地帯に派遣されていて、
雪かきをしてるらしくてね。
とドルフィンのマスターが言った。
でも恒例の春節の踊りは
これから始めるつもり。
解説)
続きます。
Feb 17, 2026
春節の広場

サラたちは鏡の扉を使って
サラたちの部屋に戻ってきた。

広場で春節が始まってるよ。
今年は屋台が出てるみたい。
まだ寒いよね。

サラは上着を着込んでいる。

3人は広場に出かけた。
万国旗がはためいている。

ピリカは干支の馬の埴輪に
注目している。
いい匂い。

ラーメンの屋台が出ていたのだった。

佳奈と舞がラーメンを食べている。

鈴木すずと圭も
出来上がりを待っている。

アンナと小池恵子は
チャイナドレスを着ていた。
その格好二人とも
久しぶりじゃない?
春節だからね。
解説)
続きます。
Feb 16, 2026
朝の出来事 そのに

なんかすごい声が聞こえたけど。
ああ、
恐竜が叫んだんですよ。

何が起きたか、
聞かないことにしよう。
家の周りを案内するわ。
とみすずが言っている。

ここは菜園なの。
ヤビーが喜びのポーズをしている。

あれは常設タイプの鏡の扉ですか。
ええ。
現実の未来の世界に行けるのよ。
現実世界ですか。
私は遠慮したいなあ。

一行は家の玄関前に戻ってきた。
ところで、
情報の記録装置みたいなものはありますか。
とマルテが言った。
紙とペンね。もちろんあるわよ。
でもどういう風の吹き回し?
湖でアンモナイトを見つけたり、
恐竜を見ているうちに、
大昔のことをいろいろ思い出して、
記録に残しておきたくなったんです。

そうそう、レイチェルが使っていた
机と椅子があるわ。

何を書くの。
もちろんマルテの手記です。
そのタイトルは
やめた方がいいわよ。
じゃあ火星年代記。
それもやめた方がいいわ。

文字を書くなんて、
見かけによらないわね。
人間みたい。
そこにピリカがやってきた。
シモーヌ。
鹿せんべいごちそう様でした。
また食べたいんですけど。

あれは広場のマンゴー亭で、
特別に作ってもらったの。
また行って頼んでみましょうか。
うん、私も行きたい。
広場ねー。
そういえば今日は2月の16日。
今年の春節は明日からだから、
里帰りして見物するのもいいわね。
とサラが言った。

サラはシモーヌとピリカを連れて
家に戻ることにした。
解説)
続きます。
Feb 15, 2026
朝の出来事

サラはぐっすり眠って
部屋から起き出してきた。
おはよー。
おはよ。
今日もいい天気よ。

夢とは思えない瑞々しさね。

マルテは起きたかしら。
あ、ヤッピー。おはよう。
おはようございます。
マルテさんなら、
みすずさんと散歩から、
戻ってこられたところです。
玄関の前にいらっしゃいますよ。

二人が玄関前のベランダに
回ってみると、
アンキロサウルスのアンキローに乗ったみすずと
マルテの姿が見えた。
おはよーと声をかけている。

天気がいいので、
湖畔で朝食を食べようということになった。

あれはサイカニアの群れね。

マルテは何も食べないの?
私は水だけでいいんです。
昨日たっぷり飲みましたから。
ちょっとこの辺を歩いてきます。

さっきのみすずが乗ってた恐竜は?
ああ、アンキローね。
群れに帰ったみたい。
いつも私の朝の森林浴に付き合ってくれるの。
あれでまだ子供なのよ。

マルテは
ティラノサウルスに出会っていた。
解説)
続きます。
Feb 14, 2026
夕食のあとさき

サラは食堂に降りてきた。
ヤッピーが配膳をしている。
すっかりうたた寝しちゃった。

夕食が始まった。
ふーん。そんな夢を見たの。
マルテに似た宇宙人に、
声をかけたところで目が覚めたのよ。

ヤビーが、料理を運んできた。
それは。
湖でとれたアンモナイトですよ。
それ夢に出てきたわ。

食事が終わり、
みすずはシモーヌを
来客用の寝室に案内している。
シモーヌさんは
この家に泊まるの初めてでしょう。
一人だとちょっと広いけど、
この部屋を使ってね。

確かに広いわね。
応接セットもついてる。

サラはいつもの部屋ね。
了解。

サラの泊まる部屋を
見に行ってもいい?
もちろんよ。

このベッドも寝心地良さそうじゃない?
そうなのよ。
ところで、さっき話した夢のことだけど、
何か意味があるのかしら。
夢の中で見た夢でしょう。
さすがに、そういうのはよくわからないわ。

フミコはマルテを
来客用の寝室に案内していた。
二人用の大きいベッドだから
あなたでも十分使えるでしょう。
そうですね。
私は手足をまとめると
意外と場所をとらないんですよ。
人間用のベッドを使うのは初めてですが。

私たちの星が見える。
とはいえ、ここは忘れられた夢の世界。
この夢を見た人はかなりの人ですね。
シモーヌの祖母だったって聞いてるわ。
亡くなる直前に見ていた夢で、
夢を見ながら亡くなったのかもしれないの。
じゃあ私たちみたいに
夢の中に移り住んで、
ずっと生きておられるのかもしれない。
木々の梢をゆすって、
風が波のように通り過ぎていった。
解説)
続きます。
Feb 13, 2026
サラの夢

サラは夢を見ていた。

あの星は。

どんどん近づいていく。

地表まで接近したようだ。

井戸のような人工物がある。

サラが吸い込まれるように
落ちていくと水中だった。

どうなってるのかしら。

あ、あなたはマルテなの?
サラ。

サラはその声に目を覚ました。
サラ。
そろそろ晩御飯よ。
といわれている。
解説)
続きます。
Feb 12, 2026
みすずの家で

水浴びしてるよ。
大丈夫かなあ。
とヤッピーたちが噂している。

サラとシモーヌは
おやつを食べていた。

おやつを食べたら、
なんだか私眠くなっちゃった。
とサラが言った。
ふーん。
そういえば、サラとはエクレア号で出会ってから、
ほとんど一緒に行動してるけど、寝てないわね。
エクレア号にマーレが来た夜に、
海賊船に泊まって以来ずっと寝てない。
船から町に戻ってきたと思ったら、
馬のフィギアのエドの件で常春の国に行ったり、
アフリカに行ってピピの件で宇宙船に乗ったり、
色々あったけど全然寝てない。
鏡の扉を頻繁に使うと、
疲れたり時間の感覚もおかしくなるのよ。
特に普通の人間はね。
寝室に行って本格的に休む?
それほどでもないわ。
今寝たら、
晩御飯寝過ごしちゃいそうだし。

サラたちは
フミコがミミコの世話をしている部屋に行った。
ここは爽やかな風が吹き込むから、
気持ちよさそう。
そこ座ってもいい?
もちろんよ。
お茶でも飲む?

マルテが湖でタコ泳ぎしてるわよ。
そんな泳法あったっけ。
あ、あれはタコ踊りか。

サラは疲れが溜まっていたのか、
あっという間に寝てしまった。

やがて
マルテとみすずが
湖畔の散歩から戻ってきた。
泳ぎがお上手なんですね。
手足がたくさんあるので。
あれ、
サラは?
寝ちゃった。

そよ風を受けながら、
サラは眠っている。

パラサウロロプスの子供が
覗き込んでいる。
解説)
続きます。
Feb 11, 2026
湖畔の散歩

サラたちはみすずの家にやってきた。
マルテはさっそく湖を眺めている。
あら、珍しい姿のお客様ね。
とフミコが言っている。

応接間にみんなが集まった。
私の名はマルテ。
夢の中で暮らせる世界を探していたところ、
シモーヌに常春の国に送ってもらえました。
マルテさんは夢食いなの?
よく聞かれませすが、
元はあなたたちが火星と呼ぶ星の住人です。
遥か昔に精神的な進化を遂げた代償に、
現実世界では長時間存在できなくなり、
あなたたちが夢食いと呼ぶような存在と
類似した生き方をしていますが、
異世界由来の夢食いではありません。
元は惑星で生まれた生物で、
人間や魔族やタコと同じなのね。
違いますが同じです。

恐竜が見たいというマルテを
みすずが湖畔に案内することになった。

ヤミーやヤッピーと出会った。
湖畔巡りですか。
今日はプラキオサウルスが来てますよ。
といわれている。

二人が岸辺に沿って歩いて行くと、
プラキオサウルスに出会った。

二人が近づいていくと、
プラキオサウルスは
水辺を離れていった。
このへんの草食恐竜は、
最近私たちに慣れてきて、
棲み分けしてくれてるみたいなの。
とみすずが言っている。

さらに岸辺を回っていくと、
漁をしているスピノサウルスを見かけた。

二人の姿に気がついた
スピノサウルスたちは
立ち去って行った。
礼儀正しい連中ですね。
あなたが怖いのかも。

マルテは湖に入っていく。
まるでタコみたいね。
といわれている。
解説)
続きます。
Feb 10, 2026
雪の日

ジェニーたちの部屋で
たまきたちが話している。
雪が降ってる。
夜中に降り積もったみたいね。

年に一度か二度の雪景色ね。

探偵事務所でも。
雪が降るなんて珍しいね。

冬らしくていいんじゃない。

喫茶ペンギンでも。
昨日は冷え込むと思っていたら、
やっぱり雪になったのね。

雪景色は暖かい部屋から
見るのが一番。
雪見酒したいなあ。

サラたちの部屋でも。
雪だね。
薄着で出かけたサラはどうしているかなあ。
きっとあったかい世界で
快適に過ごしているわよ。

サラは
トロンの小屋でくしゃみをしていた。
誰か私の噂をしたのかしら。

さてシモーヌ、これからどうしましょう。
マルテも住処が決まって、
新しい世界に馴染めそうだし、
一件落着ね。
ホテル・ナジャに行って、
ハリー夫妻に報告するか、
常春の国に行って、
城のフクロウたちにマルテを紹介するか、
物語の分岐点のようで迷うわね。
どっちでもあまり変わらないと思う。
とサラが言っている。

この鏡の扉は、
去年の6月にアイスとヴィヴィアンとセリーヌが来た時、
アイスがいつでもみすずさんの家に行けるように、
設置してくれたんです。
とトロンが言っている。
そこはどんなところ?
この忘れられた夢の世界の中央にある森林地域よ。
恐竜たちが棲息している。
行ってみたいな。
とマルテが言った。
それは構わないけど、
マルテは一人きりの暮らしが好きなんじゃないの?
恐竜を見てみたいんです。
遥か昔、地球で恐竜が栄えたのは、
私たちの文明が最盛期の頃でした。
もう何億年も前のことよ。
マルテが突然現れたらみすずたちが驚くから、
私たちも一緒に行きましょう。
思いつきみたいだけど、
これで話の行き先が決まったわね。
解説)
先日の日曜日、珍しく雪が降ったので、
常設セットの窓から見える雪景色を撮影しました。
Feb 09, 2026
マルテ そのご

ところでマルテ、あなたは大昔に、
隣の星に住んでいた連中の生き残りだって、
レプティリアンのシベールから聞いたんだけど。
そうですか。
隣の星って、火星のことでしょう。
そうです。遥か昔のことです。
隕石が衝突し、気候が大変動して文明は滅びました。
夢の世界で生きられるすべを覚えていたものたちだけが、
極地の地下の氷の中で生き残ったのです。
それから長い時が過ぎ、
レプティリアンたちが探索にやってきたのです。
でも彼らの目的は隣の青い水の惑星、地球でした。
接触はあったものの、
砂漠と化していた惑星に関心を失った彼らは、
いくつかの補給基地を残して地球に去っていった。
私たちがそう仕向けたこともあったんですが。
古代に地球に来たレプティリアンたちが、
人類、特に魔族と共存していたっていう話は、
フミコから聞いたことがあるわ。
それ以前の出来事なのね。

あら、ここには壁があるみたい。
前に進めない。
見えないだけで、ここは洞窟の中なんです。
雪で塞がれているという
向こうの入り口に行ってましょう。

3人はどんどん
洞窟の奥に進んで行った。

雪の壁に突き当たると、
マルテは目から怪光線を発して雪を溶かした。
すると洞窟の出入り口を塞いでいた雪が溶けて、
雪塊が音を立てて崩れ、
3人は忘れられた夢の世界に出るとことができた。

サラ。
という声がする。
トロン!
谷川に水を飲みに来ていたら、
大きな音がしたので様子を見に来てみたんです。
アイスさんと二人で、
せっかく塞いだのにまた開けちゃったんですか。
ちょっと事情が変わったみたいでね。
そう言って、サラは、
トロンをシモーヌとマルテに紹介した。

トロンは夢食いなの。
子供のみる夢だけに出没するらしいのよ。
姿もおもちゃみたいで
一見幼児用玩具の精霊みたいね。
とシモーヌが言った。
それが違うんですよ。

3人はトロンに小屋に来ないかと
誘われたので、ついていくことにした。
このあたりは
忘れられた夢の世界の中でも
最西端の辺境で、住人も恐竜も滅多に来ない。
一人暮らしには最適なんです。

やがてトロンの住む小屋に到着した。

快適そうなお部屋ね。
そうなんですよ。
水しかないですがどうぞ。
あ、これお水なのね。
解説)
続きます。
Feb 08, 2026
マルテ そのよん

マルテさーん。
随分探したのよ。

マルテでいいですよ。
森の中に出現して
あちこちを観察していたんです。

ここは山紫水明の世界ですね。
気に入りました。
ここには私が送り込んだ
主にフィギアの精霊たちが
暮らしているの。
住み着いた夢食いもいる。
あなたが来たことは
みんなに知らせておくから
出会ったら挨拶してね。
あまり交流はしたくないんですが。

シモーヌは、
ちょっと考えているようだったが、
やがて口を開いた。
マルテは寒さは大丈夫?
前の世界では氷に閉じ込められていた
こともありましたから、
全然平気ですよ。
だったら。
いい住処があるわ。

3人はセコイアの根元で眠っていた
オオトカゲに出会った。
こちらはマルテ。
新しい住人だから
仲良くしてね。
最近は馬とかタコとか
賑やかになってきましたね。
どうぞよろしく。
とトカゲは言った。

この辺りは雪が積もっていますね。
常春の国と言ってもそれは平野や森や湖のある中央部分。
雪を被った周辺の山々は世界の境界になっているの。
ここ登るんですか。

3人は雪山に登って行った。
ここに洞窟があるの。
トンネルになっていて、
忘れられた夢の世界に抜けることができるけど、
今は向こう側の入り口は雪で塞がれている。
普段はフクロウたちが、たまに吹雪の際の避難所に
使っているみたいだけど、
あなたの住処にどうかなと思って。

なるほど。
住み心地が良さそうですね。
トンネルを抜けて、
忘られた夢の世界に行きたければ、
それも構わない。
ただし、向こうの世界には
すでに夢食いたちが暮らしていて、
恐竜も生息しているのよ。

ここ改造してもいいですか。
どうぞご自由に。

マルテが呪文のようなものを唱えると、
周辺がホワイトアウト状態になった。
これってピピの夢の中と同じ。
とサラが言った。
ピピの夢もそうやって変えていたのね。
変えたのは洞窟の中だけです。
私には、この状態が落ち着くんですよ。
天国にいるみたいで。
解説)
続きます。
Feb 07, 2026
マルテ そのさん

オウル様はお昼寝中で、
ディアナ様はエドさんと
お花畑にお出かけです。
新しくこの世界に来てるはずなんだけど、
マルテっていう
タコみたいな生物のこと知らない?
存じませんです。
私はいつもお城におりますので。
みんなを集めて聞いてみましょうか。
それには及ばないわ。

二人は城を出て
マルテを探してみることにした。
いつも巡回パトロールをしてる、
アーキスに聞けばわかるかも。

アーキスは、庭園の中の
カエルの彫像を栖にしている。
見なかったなあ。
タコみたいな姿なんだな。
探してみるよ。
新しい住人なんだから、
仲良くしてね。

この世界、結構広いから
きっとどこかにいるんでしょうね。
野原の方にいってみましょう。

カマキリに聞いても
知らなかった。

私たち平原をずっと駆け回っていたけど、
誰もみなかったわよ。
と言われている。

森の中に入っていたら
見つけるのは大変そうね。
やっぱりフクロウたちに
集まってもらって
目撃者を探したほうがいいかなあ。

二人は湖のほとりまでやってきた。
あ、あそこに。

大きな石の上にポツンと立っている、
マルテの姿が見えた。
解説)
続きます。
Feb 06, 2026
マルテ そのに

3人は鏡の扉を抜けて、
ピピの見ていた夢の中から
宇宙ステーションに戻ってきた。

シモーヌたちは夢の中で起きた出来事を
みんなに説明している。
タコのような姿の生命体。
それがピピの夢の世界に侵入して、
いつか誰かがそこにやってくるのを期待して、
ピピを長時間眠らせていたというわけね。
住んでいた世界を失って、
ピピの夢の中に緊急避難したんだって言っていたわ。
それにしては、あまり困っているようにも
見えなかったけど。
住みやすい場所を知らないかっていうので、
とりあえず、精霊たちの住む常春の世界に送ってあげたの。
随分大胆な決断だね。
そのマルテという生命体は、信頼できるのかな。
彼の素性は何もわからないんだろう。
とハリーがいった。
そこは私の直感です。
住みやすい場所を知らないかって言われた時、
常春の国のことが思い浮かんだの。
確かにマルテのことは
まだ何も知らないに等しいけど、
常春の国に送ればうまくいくような気がした。
変な言い方ですが、
常春の国がマルテを招いているような感じです。
私はこういう直感を大事にしてます。
とシモーヌが言った。
わかる気がするわ。
そういう感覚は魔族の特性なのかもしれないわね。
とカーミラが言った。
とにもかくにも原因が究明されて、
昏睡状態からピピが目覚めたのは、喜ばしいこと。
シモーヌさんの活躍に感謝するわ。
皆さん、どうぞゆっくりしていってください。
とメイズが言った。

一行は宇宙ステーションの中にある
バー・エデンに案内された。

あの人、すごいパワーを持っているんですね。
シモーヌのことね。
彼女は昨年の11月にハリーを訪ねてきて
知り合ったので、まだよく知らないの。
あのパワーには私も驚いたわ。
彼女の祖母も相当な魔力の持ち主だったそうだ。
その血を受け継いでいるようだな。
シモーヌはパリでアンティークの店を経営してるそうで、
しっかり人間社会にも溶け込んでいる。
いつも遊び回っているヴィヴィアンとが大違いだな。
ヴィヴィアンだって、
バー・デジャや、ホテル・ナジャを経営してるわよ。
そういえばそうだが、
実務はイリヤやマリアに任せきりだろう。
それはともかく、
パワーという意味では、ヴィヴィアンもすごいよ。
あいつだったらどんな対応をしたかな。
あんまり想像したくないわね。
そうなんですね。

シモーヌとサラも、
ピピとダックにお礼の歓待を受けていた。
目を覚ましてもらった上に、
こんなにチョコもらえるなんて
嬉しいなあ。
あ、ラッカスって知ってますか。
何それ?
今年の1月に新発売された
チョコなんですよ。
ラミーとバッカスを組み合わせた
洋酒チョコなんです。
細かいことに詳しいのね。

やがて地球に戻る前に、
一同はメイズに挨拶しにいった。
もうご存知かもしれないけれど、
この宇宙ステーションには、
地球オタクの宇宙人たちが乗船していて、
ここから円盤を飛ばせて、
地球観光をしたり地球を観察しているの。
宇宙連合の規約として、一応
地球の住人との直接的なコンタクトは
禁止されているけれど、特例措置もあり、
アフリカのホテル・ナジャは例外。
今回は非常事態ということで、
そういう経緯で知り合えた、
魔族の皆さんの力を借りられたわけです。
今後ともどうぞよろしくね。
とメイズが言った。

サラとシモーヌは帰りがけに通路で
レプティリアンのシベールと出会った。
やあサラ、
随分面白いショーを見せてもらったよ。
シベール。
あ、こちらは。
シモーヌさんだね。よろしくな。
船内はどこもモニタリングされてるんだ。
あのタコのような宇宙人のこと
教えてやろうか。
あ、ええ、お願い。
あれは隣の星に大昔住んでいた連中の
生き残りだよ。
え、そうなの。
これから会いにいくんだろう。
ええ。
流石に気になるから。
おれはこれから
おやつを食べにいくんだ。
またな。

一行は転送装置で
アフリカに帰ってきた。
さっきのトカゲ頭の宇宙人は?
とシモーヌが尋ねている。
大昔から地球に来ていた宇宙人で、
レプティリアンって呼ばれてる。
特にシベールは魔族のパワーに関心を持ってるから、
用心したほうがいいかも。
とサラが言った。
色々複雑なのね。
ともかくハリー夫妻にご挨拶してから、
常春の国に向かいましょう。

二人は鏡の扉を抜けて
常春の国にやってきた。
おお。シモーヌ様、
それにサラさん。
とミネルバが言っている。
解説)
続きます。
Feb 05, 2026
マルテ

世界は真っ白な状態になった。
ピピは眠っているようだ。

サラはポケットから、持っていた
チョコレートを取り出して、
ピピの鼻先にかざしてみた。

ピピは飛び起きた。
いい匂い。
と言っている。
あれ、ここは?
ここはあなたの夢の中よ。
夢の中でも寝てたみたいだけど。

3人はとりあえず前方に歩いてみた。
方角も遠近感も全く掴めない。

これは本当に僕の夢の中なの?
これじゃ、起きてから
何も思い出せないのも無理ないわね。
僕たちは夢って滅多に見ないんだ。
それに、こんな夢初めて。
あら、あそこの
タコのようなものは何?

タコのようなものは
そろそろと近づいてきた。
やはり来ましたね。
君たちは、夢食いですか。
それとも宇宙ステーションの乗員かな。
おや、ピピも目覚めているのか。
夢食いでも乗員でもないわ。
この人は魔族のシモーヌ、
私はサラサラのサラよ。
地球人でしたか。
なるほど魔族が鏡の扉を使ったのか。
あなたこそ、夢食いなんでしょう。
ピピの夢の中に入り込んで
何をしているの?

私の名はマルテ。
確かに夢食いと同じように
ピピの夢に入り込んではいるが、
これは臨時の緊急避難なんだ。
私たちの住んでいた世界は、
失われてしまってね。
安住の地を探している。
それはお気の毒だけど、
ここはピピの夢の中でしょう。
ピピはずっと眠っているのよ。
夢を持続することが大事だったのだよ。
持続する夢にはやがて夢くいが来るだろう。
あるいは君たちのように、
異変に気がついて様子を見に来るものがいる。
宇宙ステーションには、
宇宙連合に加盟している様々な惑星から来た
地球オタクの宇宙人が乗っているから、
誰か夢に入り込める能力を持った宇宙人が、
来ると思っていたんだが、
船に乗っていないはずの
地球の人間や魔族が来るとは意外だったよ。
それで、来たけど、どうするつもりなの。
こうして話してるじゃないか。
どこか住みやすい世界を知らないか?
その言い方、
とても緊急避難で助けを求めてるように
見えないけど。

しばらく考えてシモーヌが言った。
わかったわ。
あなたの住みたい世界には何か条件があるの?
持続可能で平和な世界がいいな。
こんなに真っ白な、
手抜き画像のような世界がお望みなの?
それも手軽でいいな。
あ、今のは冗談だよ。
ただしこの宇宙を構成する現実世界はだめなんだ。
私たちは進化した結果、
もう夢のような異世界でないと、
長時間は体がもたない。
風邪もひきやすいし。
わかったわ。
あなたを常春の国に送ってあげます。
とシモーヌはいうと呪文を唱えた。

なんと薄い煙がたちのぼり、
マルテの体は煙に紛れて消えていった。
シモーヌ。
あの人送っちゃって大丈夫なの?
話していて害意はないことが
感じ取れたの。
まだわからないことは多いけど、
とりあえず、みんな心配してるだろうから
急いで帰りましょう。

シモーヌが呪文を唱えると、
鏡の扉が現れた。
ちょっと安易すぎる展開じゃない?
この世界、
ちょっと気に入ったなあ。
なんだか天国に続いているようで。
こんな夢、また見られるかなあ。
とピピが言っている。
あなたが望めばね。
とシモーヌが言った。
解説)
続きます。
Feb 04, 2026
ピピの夢へ

みんなはメイズのいるフロアに行き、
事態の報告をしている。
もうチョコレートの匂いに、
慣れてしまったのね。
でも一度普通に目覚めて話せたのなら、
意識に精神的な障害は起きていないっていうことね。
見ていた夢を覚えていないということは、
夢の中で特に劇的なことがなかったということかしら。
夢の記憶が封印されて、
夢を思い出せなくなっているのかもしれませんよ。
などと口々に話している。

ピピは、夢を見たことを覚えていないって言ってたけど、
ピピがずっと睡眠中に夢を見ていて、その夢の中に、
外部からの侵入者がいるっていうのは確かなんですか。
とサラが尋ねた。
それは睡眠中のピピの頭脳の活動を調べてわかったのよ。
夢の内容まではわからないけれど、夢を見ている領域に、
正体不明な生命体の存在を示す反応もあったの。

メイズは立ち上がって言った。
今まで留保してたけど、
そろそろ宇宙連合の本部に報告すべきかな。
報告するとどうなるんですか。
とカーミラが尋ねた。
たぶん本部から調査団が来るでしょうね。
その結果によっては、内密に、事故という名目で、
ピピを破棄するように言われるかもしれない。
破棄するって、消しちゃうんですか。
未知の生命体との接触では、
何が起きるかわからないからね。
いろんな意味での感染が脅威なの。
ピピは親善大使だから、無害とわかれば
眠ったまま母星に搬送されると思うけど、
問題が見つかれば、
その星全体を危険に晒すことになるから。
同じ論法でいえば、
この宇宙ステーション自体も
隔離や破棄の対象になりかねないですね。
感染の危険を回避するには。
とハリーが言った。
それって宇宙連合に
攻撃されるってことですか。
やっぱり
報告はやめておこうかしら。
とメイズが言った。

ちょっと私、
試してみたいことがあるんですけど。
とシモーヌが言った。
なんでしょう?
さっき、目覚めたピピと話している時、
彼は私に夢のことを聞かれて、
「夢ですか。よく覚えていないなあ。
ベッドに寝ている感触はあって、
起きなくちゃって思いながら、
まあいいかなって。」
って言ったんですが、
その時、ピピが脳裏に浮かべたイメージを、
のぞいて見たんです。
さすが、精霊発見のプロね。
とカーミラが言った。
それって、夢うつつ状態の記憶でしょう。
ぼんやりと意識があるっていう。
はい、そのイメージの世界に行ければ、
夢の世界に入り込めるかもしれない。
そんなことできるの?

シモーヌが呪文を唱えると、
薄い煙がたちのぼり、
会話した時、ピピが思い浮かべたイメージが
窓にスクリーンのように浮かび上がった。

シモーヌはさらに呪文を唱えた。
すると鏡の扉が中空に浮かび上がって現れた。
魔法って、
なんでもありなのね。
視覚的な記憶の手がかりがあればなんとかなるんです。
ちょっと様子を見てきます。
と言ってシモーヌはドアを開けて鏡の扉に。
サラも咄嗟に寄り添うように続いて扉を抜けていった。

ここはもう夢の中なの?
夢うつつの心象風景ね。
まどろみのような浅い意識の状態。
じきに。

周囲の物象が霞み始めた。

ホワイトアウト状態になっていく。
解説)
続きます。
Feb 03, 2026
チョコを運ぶ

ヘルミーネは、レイとアンナに
お祝いされている。
優勝おめでとう。
これで私たちと一緒。
広場にいる人はみんな優勝する感じですね。
コンテストの新しい参加者がいないと、
審査が難航して、
最後はいつもルビーが決めてるみたい。
その時、目についた人を選んでるのよ。
マンネリ化してるけど、
みんな毎月チョコがもらえるのを
楽しみにしてるから、
やめるわけにいかないのね。
よくあることですね。

サラはルビーに会いに行った。
あ、サラ、
これから恒例のコンテストの参加賞の
チョコレートの掴み取りが
始まるところよ。
ちょうどよかった。
チョコが必要なの。

サラは特別に最初にチョコの掴み取りを
させてもらっている。

時は迅速に流れ、
サラは急いでチョコをゲットすると、
鏡の扉を抜けて宇宙ステーションに戻ってきた。

サラがピピのいる部屋に着くと、
ピピはまだすやすや眠っていた。

ダックがさっそくチョコレートの
包装紙を剥がして、
ピピの鼻に近づけている。

なんとピピが目覚めて
飛び起きた。
なんていい匂い。
と言っている。

あれ、みんなどうしたの?
ハリー夫妻やサラもいるね。
あなたはずっと眠っていたのよ。
それであなたを起こすために、
みんなこの宇宙ステーションに来てくれたの。
とカコが言った。
そうだったんですか。
今日は何日ですか。
今日は2月3日で節分、明日はもう立春よ。
そんなに。

あなたには初めてお目にかかりますね。
私は魔族のシモーヌと言います。
サラやハリー夫妻のお友達よ。
ピピさん。あなたは、
ずっと夢を見ていたでしょう。
その夢のこと覚えている?
夢ですか。
よく覚えていないなあ。
ベッドに寝ているっていう感触はあって
起きなくちゃって思いながら、
まあいいかって。
突然、チョコレートの
すごくいい匂いがして目が覚めたんです。
あ、また眠くなってきた。

そう言い終わるとピピは
眠り込んでしまい、
再びチョコレートの匂いを嗅がせても
目覚める様子はなかった。
解説)
続きます。
Feb 02, 2026
メイズの話と優勝者の発表

みなさん、ようこそ
宇宙ステーションへ。
私は艦長のメイズ、
横にいるのは副官のオニールです。

カコは、ハリーの呪文でも
ピピが目覚めない現状をメイズに告げた。
やはりピピの見る夢は、
人間のみる夢とは異質なのね。
そもそもピピは夢をみる生命体だったのかどうか。
地球観光にこの宇宙ステーションに来てから、
夢というものを見るようになったのかもしれないの。

私たち魔族の中には、夢とは異なる、
異世界を生み出すことのできる者もいます。
夢や異世界には夢食いと呼ばれるものが侵入して
住み込むことがありますが、
その種類と作用は実に様々なので、
悪いことが起きているとも一概にはいえない。
何か夢の物語が進行していて、
一段落つけば自然に目覚めることもありますよ。
とハリーが言った。
そう期待していたんだけど、
かなり長い間眠っているから心配なのよ。
宇宙には様々な生命体がいて、
言葉でなく、直接夢や意識に働きかけてくるものもいる。
それはあなたたちのいう夢食いとは多分別種ね。
この船には定期的に食料や物資が運ばれてくるから
その貨物船に潜んでいた生命体が、
このステーションに潜入した可能性もあるの。
まだ同じ症状のものはいないけれど。
もし病気みたいに感染したら、
乗員がみんな眠ってしまうということですね。

私はピピとは結構仲良しだったんです。
去年のハロウィーンには、
バッグの中に入れて、広場を見物させてあげたくらい。
ピピはチョコレートが大好物だった。
とサラが言った。
ピピのチョコレート好きは有名ね。
最初に地球に来た時、
チョコレートを盗もうとして
人間に追われたという話をいつもしていたわ。
とカコが言った。
それって使えるかもしれない。
とシモーヌが言った。
どういうこと?
ピピにチョコレートの匂いを嗅がせるのよ。
そんなに大好物だったのなら、
気付け薬になるかもしれない。

みんなまさかの思いつきだとは思いながら、
試してみることで意見が一致した。
本当は宇宙連合の本部の
了承を得ないといけないんだけど、
今回は緊急事態なので、
私の責任で許可します。
とメイズが言った。
確かに宇宙船の中に鏡の扉を作るなんてね。
レプティリアンたちの作った転送装置はあるけど、
行けるのはアフリカの奥地なので、
チョコレートを入手するには時間がかかる。
広場のドルフィンの倉庫にはストックがあるはずだから、
私がすぐに取ってきます。
とサラが言った。

ハリーが呪文を唱えると、
薄い煙がたちのぼり、鏡の扉が現れた。
ドアは開けておくからね。
とハリーが言った。

サラは、バー・デジャの店内の奥の壁に
常設されていた鏡の扉に抜けてきた。

広場では、ちょうど、
月初めのコスプレコンテストの
優勝者の発表が終わり、
万雷の拍手と歓声の中、
優勝したヘルミーネが、
トロフィを授与されているところだった。

驚きの受賞です。
とヘルミーネが言っている。
あなたはいつも広場にいるし、
その農作業スタイルがついに評価されたのよ。
コスプレコンテストなのに、
すごい評価基準ですね。
解説)
続きます。
Feb 01, 2026
宇宙ステーションで

サラたち一行は
宇宙ステーションに乗船した。

船内の通路を通っっていく。

地球は青かったのね。
そのセリフは古すぎるだろう。

到着した部屋のベッドには、
銀色の小さな宇宙人ピピが眠っていた。

ハリーは呪文を唱えて、
想念を送っている。
しかし変化はないようだ。
私も普段から器物に宿る精霊の声を
聞き取ることをしていますが、
何も反応がないわ。
深く眠り込んでいるみたい。
とシモーヌが言った。

しばらくして、ダックがやってきた。
みなさん、
艦長がお目にかかりたいと
おっしゃっています。
艦長は別のフロアにおいでです。

一行はまた通路を案内されている。

途中でエレナとルースに出会った。
サラ。この前はお寿司をごちそうさま。
ローラは元気にしてる?
私もあれから会ってないけど、
多分まだミラたちの家にいるはずよ。
とサラが答えた。
そちらは魔族のシモーヌさんね。
どうぞよろしく。
あ、こちらこそ。
どうして私の名前を?
あなたたちが来たことは
ダックが教えてくれたの。

広いフロアに到着すると、
艦長のメイズたちが現れた。
解説)
続きます。
Jan 31, 2026
ホテルでの会話

ハリーさん、お部屋に
お荷物を運んでおきました。
とシーザーが言っている。
ありがとう。
じゃあ、部屋で話そう。

ハリー夫妻は
いつも利用している部屋に向かっている。
よかったら、あなたたちも
一緒に来てくれない?
とカコが言った。
いいですけど。
夢や夢食いのことに詳しそうだから、
色々情報が欲しいのよ。

カコはハリーに、宇宙ステーションの中で、
宇宙人のピピが夢見る昏睡状態になってしまい、
その夢に夢食いらしき侵入者が
入り込んだらしいというようなことを話している。
ふむ。
その夢の世界が人間が見る夢や
魔族が作った異世界と同じだと考えれば、
夢食いが入り込むのは珍しいことじゃないな。
ただ夢食いというのは総称で、いろんなタイプがいる。
その上、そのピピというのは、
どこかの惑星で生まれた宇宙人なんだろう。
そういう生物の頭脳の中の夢の世界がどうなっているのかは、
ちょっと見当がつかないなあ。
宇宙ステーションには、
宇宙連合に加入している惑星の
多種多様な宇宙人たちが乗船しているんでしょう。
それぞれが高度な文明を発展させているはず。
それでも対処法が見つからないの?
とサラが言った。

そこがかえって問題なのよ。
それぞれが異なる惑星の文明圏から来ているし、
お互いのことを全てわかり合っているわけでもない。
弱点を知られてしまうと大問題になりかねないからね。
ピピは私と同じように親善大使という身分で乗船しているの。
彼が目覚めなければ、いずれは昏睡状態のまま
母星に搬送されることになると思うけど、
そうなると政治問題になるかもしれない。
そういうトラブルを利用したがる勢力もいるのよ。
何処も同じ秋の夕暮れね。
何それ。

さっきハリーが、
夢食いにはいろんな種類があるって言ったでしょう。
夢の世界を独占しようとするものもいれば、
夢の世界を外敵から守ろうとするものもいる。
ひっそりと夢に棲みついて暮らしたがるものもいれば、
気ままにいろんな夢を渡り歩くのが好きなものもいる。
例えば、メルティっていう女の子の夢には、
今では百猫の王って呼ばれる夢食いが棲みついていて、
その子のみる夢の世界を守っているの。
だからそのピピっていう宇宙人の夢に入って来たのが、
どんな種類の夢食いなのかによって、
状況は全然変わってくる。
とカーミラが言った。
お前随分詳しいな。
とハリーが言った。
あなたと一緒にいれば詳しくはなるわよ。
とカーミラが言った。
興味深いお話ね。
そう言えば、さっき食堂で、
サラは、大勢、夢食いの知り合いがいるって
言いかけてたわね。
とカコが言った。
ええ。今カーミラさんが言ってた
百猫の王シュレディンガーとも友達だし、
芸術家の夢に取り憑くサルバドールとも友達。
いつまでも消えない夢の世界に住む、
みすずやシノやシビルやセリーヌ、
カエル王女とも友達よ。

だったら、そのうちの誰かに
ピピの見ている夢の世界に行って、
様子を見てきて欲しいって頼めないかしら。
とカコが言った。
夢に入り込むのは、
夢食いといえども、そう簡単じゃないんですよ。
とハリーが言った。
大抵は何かのきっかけが必要なんです。
そのきっかけは偶然のように見える場合もあるけれど、
時には夢見る人の無意識の欲求や、
夢食いを引き寄せる原因になるような出来事が必要です。
言ってみれば縁ですね。
もちろん夢食い自身のパワーや意思や願望も必要です。
それらが重なった時、通路のようなものが生じて、
夢食いはその世界に行くことができるらしい。
夢の世界は普通、夢を見ている人の無意識の
防御壁に守られているわけです。
さっきカーミラが例に出したメルティの場合には、
病気だった彼女はピピと同じように昏睡状態で、
ずっと覚めない同じ夢を見続けていました。
その一人きりの世界から彼女は逃れたがっていた。
ある時、その強い思いを私が受け取ったのです。
そこで初めて彼女と交信できるようになり、
夢の世界の様子を聞くことによって、
とうとう彼女の夢に通じる鏡の扉を作るのに成功しました。
なるほど。この星の魔族は
鏡の扉をそんなふうにも使うことができるのね。
お二人の交信って、
テレパシーでのやり取りみたいなものに思えるけど。
そういうことが可能な宇宙人なら結構いるわ。
ハリーさん、みなさん。
これからステーションに来て下さらないかしら。
もちろんいいですよ。
お役に立てるかどうかわかりませんが。

一行は裏の広場にある
転送装置に向かった。
こんなに大勢で
押しかけて大丈夫なの?
サラはこの前の寿司パーティで
みんなと顔見知りだし、
ハリー夫妻はこんなことがなくても、
ステーションにお招きしたかったところ。
シモーヌさんは魔族の人だし、
装置がデータを検索してすぐに許可が出るわよ。

サラが空に吸い込まれるように
空中を登っていく。
あれ、気持ちいいのかな。
一度やってみたかったの。
私もなんだ。

宇宙ステーションについたサラは、
ダックに挨拶されている。
ああ、サラさん。
ピピが眠ったままに。
解説)
続きます。
Jan 30, 2026
ホテルへ

二人はホテルの入り口で
チンパンジーのリンリンに出会った。
サラさんこんにちわ。
お泊まりですか。

まだ決めてないのよ。
セリーヌさん、どうしましょう。
そうねえ、予定はないけど、
思いつきで来ただけだから。
とりあえずホテルの食堂で
お茶でも飲みましょう。

受付にはいつも通り
フンボルトがいて、
いらっしゃいませと挨拶している。
ロビーに行けば
裏の広場が見渡せるわよ。

二人がロビーに行くと、
先客がいた。
あ、あの人はカコ。

サラたちに気がついたカコは
さっそく手を挙げて、
歩み寄ってきた。
サラ。
この前はどうもありがとう。
おかげさまで、ステーションでの、
寿司パーティは大盛況だったわ。
カコさんに、お土産にいただいた
甲殻類の卵も
広場のみんなに好評だったわよ。
とサラが言った。

サラはカコにシモーヌを
紹介した。
ふーん。魔族の人か。
私はハリーさんと会う約束で
ホテルに来たんだけど、
まだ到着してないみたい。
あ、時間があるなら、
お茶でも飲まない?

3人はホテルの食堂で
コーヒーを飲むことにした。
実はね。
ステーションで問題が起きて。
あ、宇宙ステーションのことは、
シモーヌさんはご存じなの?
このホテルを介して、人間と、
宇宙人と交流があるということは
サラさんから聞きました。
普通の人みたいに見えますけど、
カコさんも宇宙人なんですか。
そうよ。
町で見かけてもわからないくらい
人間そっくりでしょ。

それで問題って?
とサラが尋ねた。
ピピが寝込んじゃったのよ。
昏睡状態なんだけど、検査の結果、
ずっと夢を見ているらしいことがわかったの。
ピピって、あの小さな銀色の宇宙人ね。
目が覚めない原因は分かったの?
どうもね。
どこか外部から原因になる生命体が
ピピの夢に侵入したらしいの。
それって夢食いじゃないですか。
とシモーヌが言った。
あなたたちはそう呼んでるらしいわね。
私も夢食いのことは
ハリーさんから聞いていたので似てるって思ったわ。
そのことを艦長のメイズたちに話したら、
ハリーさんに相談しようということにって。
夢食いの知り合いなら、
大勢いるわよ。
とサラが言った。
え、
夢食いは夢の中だけにしか存在しないんでしょう。
そうでもないんですよ。
と話を聞いていたシモーヌが言った。
人間のみる夢の世界と、魔族が生み出す異世界は、
よく似ていて、夢食いはどちらにも出現します。
それに通路があれば、夢食いたちは、
この現実世界とも行き来できます。
現実世界と言っても、
人間が共同で見ている夢みたいなものですから。
古来、妖怪とか幽霊と呼ばれるものの類は
夢食いの場合もあるんです。
ただ、ちょっとややこしいですが、
この現実世界の物象から生成される精霊とは微妙に違います。
精霊たちはその起源をその存在する世界に持っています。
夢食いは別の世界からもたらされたもの。
別の世界って?
その世界のことは私にもよくわかりません。
そこも特殊な異世界であることは確かだと思うんですが。

その時、リンリンがやってきた。
カコさん、
ハリーご夫妻がおいでになりましたよ。

ロビーに行くと、ハリーたちがいた。
カコさん、待たせてすまなかったね。
おや、君たちも一緒なのか。
偶然ここでさっき出会ったんです。
コート着てるんですね。
暑くないですか。
とサラが言った。
向こうは冷え込んでてね。
散歩中に約束を思い出して、
急いできたんだよ。
解説)
続きます。
Jan 29, 2026
村での会話

3人は集落のメインストリートを
歩いている。
マークは、アマンダを見かけて、
挨拶している。
あの人は?
村でハウスキーパーをしてくれている
アマンダさん。
住民が何日も家を空ける時、
頼むと留守番してくれるのよ。

ここは豹変亭っていうレストラン。
向こうにいるのは
経営者のローズとアンドレアよ。
歩いてお腹も空いたから
一休みして行かない?

サラは、すごく詳しいのね。
実はね。フラハの家の近くに
魔法生物たちのやっているホテルがあるの。
昨年のお正月にそこに泊まった時、
ホテルで知り合った宇宙人たちと、
この村を歩き回ったのよ。
このお店にもその時に来たことがあるの。
給仕をしにきた
アンドレアがそばで話を聞いている。

宇宙人ですって?
知り合いが多いのね。
ホテルのことはあまり知られていないんですよ。
村外れのフラハの家の、
そのまた奥の広場に立地しています。
僕も詳しくは知らないんですが。
きっと私の方が詳しいわね。
その広場には転送装置があって、
その装置を使って宇宙人たちが地球観光に来るの。
ホテルはほぼ彼らの御用達になっている。
あまり評判になると問題だから、
招待される人間はほぼホテルの関係者だけね。
サラはよく招待されたわね。
だってホテルの経営者は
マリアっっていう魔族の女性なんだけど、
実質的な経営者はヴィヴィアンですもの。
あの人、そんなこともやってるの。
ハリーさんたちも夫妻でよく利用してるのよ。
今も逗留しているかもしれない。
興味あるなら案内するわよ。
ちょっとこの村のことを説明しますと、
村には先住民はあまりいなくて、
住民はジャングルで遭難してたどり着いた人や、
事情があって都会から逃れてきた人が多いです。
ほぼ1日かけて行ける場所に古代遺跡があって、
遺跡調査にきた人たちも住み着いている。
最近では宇宙人たちも時々見物に来ますが、
そういう外来の人たちばかりなので、
特にトラブルはないですね。
住民はみんな知り合いなので
よろしければ紹介しますよ。
とマークが言った。

うーん。
ストーリーの分岐点見たいね。
ホテルに行くか、村を見て回って
村の人を紹介してもらうか。
どっちにしようかなあ。
どっちでもあんまり
変わらないと思うわよ。

結局、シモーヌは
ホテルに行ってみることを選んだ。
じゃあ僕は、これから家に帰って、
庭の雑草の手入れをします。
またお会いできるのを楽しみに。
とマークは言った。

3人が立ち去った後、
ローズとアンドレアが話している。
一年前にホテルができて、
宇宙人みたいな変わった風体の人が結構
来るようになったけど、
やっぱり広場に転送装置があるんだってさ。
地球征服がダメなら、
宇宙征服ね。
それって順番が逆じゃない?

二人は元きた道を引き返し、
村外れのフラハの家の前を素通りして、
さらにジャングルに分け入って。

ホテル・ナジャの入り口にたどり着いた。
随分瀟洒な建物ね。
あれは従業員用の宿舎。
ホテルはあの奥にあるの。
と言っている。
解説)
続きます。
Jan 28, 2026
マークの村へ

シモーヌは、
バルコニーに続く部屋に
案内している。
あら素敵なお部屋ね。
隣はディアナの部屋よ。
元々ディアナのために作ったお城だから、
私の部屋はなかったんだけど、
昨年来たときフクロウたちが私のために、
用意してくれたの。

世界を作ってくれた創造主の到来だから、
よほど嬉しかったのね。
私は仕事もあるし、
精霊たちには自分たちの力で生きてほしいし、
ここで暮らすつもりはないんだけど。
仕事ってアンティークの売買の仕事ね。
それと骨董品に宿ってる精霊を見つけて、
自由にしてあげるっていう。

マークさんは、これからどうするの。
そろそろ村に帰ろうかなと思います。
去年ハロウィーン前に家を出て以来、
ずっと帰ってないんですよ。
マークさんは一人で
アフリカの密林を開墾したのよ。
そこが今では小さな集落になって、
マークの村って呼ばれてる。
とサラが言った。
そうだ。私たちも一緒に行かない?
その村には魔族の人が一人住んでるの。
シモーヌさんに紹介したいわ。

3人はマークの村に行くことにした。
平原から帰ってきたディアナたちと話している。
ディアナはエドがこの国に慣れるまで、
しばらくこの国にいると言った。
ウマが合ったのね。
とサラが言った。

サラはアイスに教えてもらった呪文を唱え、
3人は鏡の扉を抜けて、あっという間に
アフリカのフラハの家にやってきた。
おお、珍しいな。
それにマーク、久しぶりの帰郷じゃないか。

こちらはシモーヌさん。魔族の方です。
そちらはフラハさんよ。やはり魔族の人よ。
フラハさん、
お名前はハリーさんから伺っています。
ケントさんというお兄様がいらっしゃるという方ですね。
どうぞよろしく。
ふむ。ハリーはそんな話もしたのか。
まあ今や絶滅危惧種と言われる魔族の仲間と
知り合えるのは嬉しいな。
それでシモーヌさんは普段は何をされているのかな。
フランスにお店を持っていて、
骨董品の売買で生計を立てています。
もっとも、店は店員に任せて、
世界中を気ままに旅しながら
骨董品の買い付けをしてるんです。
なるほど、骨董の鑑定には魔力が活かせるか。
普通に人間社会に溶け込むと、
魔力を生かす機会は滅多にないからな。
魔族でも魔法を使うのをやめて、
私の兄みたいに新聞記者になるものもいる。
まずます絶滅に近づくというわけだよ。

マークの案内で、
3人は村を散歩することにした。
サラはフラハに挨拶している。
フラハの家は村外れで、
村までちょっとあるんですよ。
さすがに買い付けにアフリカの奥地まで
来たことはなかったから興味深いわ。
村には民芸品なんかもあるの?
先住民にとっては、
開拓者が作った新興の村なんで、
たまに住みつく者もいますが、
伝統的な民芸品というものは特にないんです。

3人はジャングルに分け入っていく。
フラハさんはどうして村外れに?
彼は人間の世界に馴染めなくて、
アフリカに来たと言ってました。
彼はこの土地を先住の部族の長から譲り受けたんです。
僕がここを開墾して住むことができたのも
彼のおかげなんですよ。

やがて
まばらに民家が見えてきた。
村に到着しましたよ。
解説)
続きます。
Jan 27, 2026
馬の話 そのなな

あの二人気が合いそうですね。
元々この世界はディアナのために作ったの。
彼女なら土地のことをよく知ってるから、
エドの話し相手になってくれると思って、
一緒に来てもらったのよ。
鹿せんべいはあげたの。
それはもう。

ミネルバがやってきた。
シモーヌ様、
オウル様がお目にかかりたいと
おっしゃっておられます。

シモーヌ様。
おかえりなさいませ。
年末年始にはお世話になったわね。
とシモーヌが言った。
それで何かあったの?
いえ。
ただ、いらっしゃったと聞いて、
お顔を拝見したくなりまして。
これでまた
心置きなく昼寝が再開できます。

サラは分かったばかりのエドのことを
オウルに教えてあげている。
なんと、あのヴィヴィアンさんの、
子供の頃の遊び相手だったのですか。
不思議なご縁ですなあ。
マークは、
お城は森に囲まれているんですね。
と言いながら外の風景を眺めている。

マークさんはここに初めて来たのね。
お城を案内してあげる。
もっと見晴らしのいい場所があるわよ。
と言って、
シモーヌは先導して部屋を出た。

上の階にバルコニーがあるの。

ほう。見事な景観ですね。

バルコニーからは、
遠くの雪を被った山々や
森林や湖の風景が見渡せた。

その頃、
お花畑を走り回ったエドとディアナは、
水辺で休憩していた。
解説)
続きます。
Jan 26, 2026
馬の話 そのろく

サラたちはお城に戻って、
オウルと面会している。

ふむ。君はエドという名前なのか。
この国は魔族のシモーヌ様が
生み出してくださった常春の国。
暮らしているのはフィギアや置物に
宿っていた精霊たちで、
みんな君と同じような身の上だよ。
では早速みんなに紹介しよう。
ミネルバ君。
はい、では広間の方に。

広間にフクロウの置物たちが
集まっていた。
オウルはエドを紹介している。
ここにいるフクロウたちはみんな、
同じ倉庫に並べて置かれているのを、
シモーヌ様が見つけてくださって、
この世界に送られてきたんだが、
それ以前の境遇は様々。
誰かこれまでに
馬のフィギアを見たものはいるかな。
馬のブロンズ像なら見たことがあります。
民芸品のチャグチャグうまっこならあります。

紹介が終わり、
サラたちはお城の一画の
眺めのいい部屋に案内された。
この部屋を自由に使っていいって言われたのね。
みなさん親切ですね。

話していると、
ミネルバがやってきた。
シモーヌ様がいらっしゃいましたよ。

シモーヌはみすずの家から、
ディアナを連れてきていた。

シモーヌは、
ディアナをマークとエドに紹介している。
お二人は姉妹なんですか。
お顔がそっくりですね。
とマークが言っている。
ちょっと訳があってね。
ディアナは鹿のフィギアの精霊なの。
とシモーヌが言った。

エドはシモーヌに
質問されている。
エドさん、あなた、広場で話した時、
また人を乗せて走りたいって言ってたわね。
ということは、以前にも、
精霊としてその姿になったことがあるっていうこと?
はい。そうなんです。
ずっと昔のことなんですが、
私が馬のフィギアとして骨董品のお店で売られていたとき、
フィギアの中に精霊の私が宿っているのを見つけて、
母親にせがんで買ってくれた幼い女の子がいたんです。
その女の子は私に名前をつけて、
牧草地まで運んで行って、この姿に変えてくれて
深夜に、私に乗って一緒に走り回って遊んでくれたんです。
ふーん。そうなの。
それからどうしたの。
やがて女の子は乗馬遊びに飽きちゃって、
私は子供部屋の棚の隅に置かれたままになりました。
よくあるパターンね。
それからどうしたの?
それから随分時間が経って、
女の子は大人になって外出が多くなりました。
ある日突然、彼女が帰ってきて、
その直後に、家具を残して一家は引っ越して行きました。
その家にはその子と母親が暮らしていたんですが、
母子ともども蒸発したみたいに消えて、
その後、残された空き家に盗みに入った盗賊が、
馬のフィギアである私を見つけて盗み出し、
盗品であることを隠してオークションにかけたんです。
それでそのフィギアを落札した
ジャンさんの手に渡ったというわけなんですね。
とマークが言った。
そうなんです。
本当の話なんでしょうけど、
フィギアに精霊が宿っているのを見抜いて、
変身させて遊んだなんて、
そんな呪力を持つ魔族の子供がいたなんて、
ちょっと信じられない。
とシモーヌが言った。
ずっと話を聴いていたサラが言った。
私何となく心当たりがある。
その女の子の名前はヴィヴィアンでしょう。
それでその子のお母さんの名前はカーミラじゃない?
そ、そうです。

え、どうしてわかったの?
幼い頃からそんな魔力を持っていたなんて、
ヴィヴィアン以外考えられない。
飽きっぽいのも彼女の特徴。
それとね。三年前に彼女はロンドンのカジノで
問題を起こして、地元のマフィア組織に追われていたの。
それで、お母さんのカーミラと一緒に、
別居していた魔術劇場のハリーさんのところに、
緊急避難してきたのよ。
そのまま今でも同居してるけど。
追われていたので、家具類を残したまま、
慌ただしく家を出払ったというわけね。
深夜に牧草地で遊んだって言ったでしょう。
彼女には半分ヴァンパイアの血が入っていて、
子供の頃は、日光が苦手だったって聞いたことがある。
その家ってトランシルヴァニアにあったんでしょう。
はい。
やっぱりね。
あ、ヴィヴィアンなら今、
幽霊船のエクレア号に乗ってるはず。
近いうちに再会できるわよ。
ただ、向こうが覚えてるかな?
なんか問題の多そうな人なのね。
でもエドの探してた人が見つかったのは
よかったわ。

エドはディアナと
野原を走りに行くことになった。
フクロウたちが
挨拶している。
解説)続きます。
Jan 25, 2026
馬の話 そのご

よく見ると、
エドは怪鳥に追われていた。

サラたちの姿に気がついたエドは
駆け寄ってきた。
怪鳥が追いかけてくる。

サラは、
大きな声で呼びかけた。
アーキスさん。
この馬は侵入者じゃないのよ。
シモーヌさんが新しくこの世界に送ってきた
馬のフィギアの精霊で、エドっていうの。

なんだと。そうだったのか。
てっきり侵入してきた夢食いかと思ったよ。
ふむ、あんたは俺がヴィヴィアンと契約を結んだ時、
そばにいたな。
シモーヌさんのことも知ってるなんて、
魔族の仲間なのか。
私はサラで、隣にいるのはマーク。
魔族じゃないけど、みんな友達よ。
私たちはエドに会いにきたの。
エドは新しい住人なのよ。
新しい住人か。まあ、よろしくな。
俺は巡回に戻るよ。

アーキスはそういうと
去っていった。

この世界に送ってもらって
嬉しくて平原を走り回っていたら、
あの怪鳥が追いかけてきたんです。
あれはアーキスって言って、
凶暴な夢くいのモンスターだけど、
この常春の世界が気に入ったらしく、
ヴィヴィアンと契約して
この世界に住まわせてもらう代わりに、
巡回パトロールをしてるの。
今ではガードマンみたいなものね。

そのとき、突然エドが前足を上げていなないた。
今度は何なの?

巨大なカマキリが近づいてきたのだった。

これはこれはサラさん。
また観光ですか。
とカマキリは言った。
あ、紹介するわ。
こちらはマークで、
この馬はエド。
あなたと同じフィギアの精霊で、
エドはこの世界の新しいお仲間よ。
そうでしたか。
それはどうぞよろしく。
あ、それからお花畑を走る時は、
前方に注意してくださいね。
時々私が寝てますから。

いったんお城に戻ってフクロウたちにも
挨拶した方がいいわよ。
あなたのことは話題になっているみたいだし。
分かりました。
そうしましょう。
ところで、あなたパニくると、
馬の声になるのね。
なぜかそうなんです。
解説)
続きます。
24日土曜日の更新が25日にずれ込んだので、
いつも夜の8時過ぎ頃にしている本日分の更新は、
お休みします。
Jan 23, 2026
馬の話 そのよん

サラとマークは、鏡の扉を抜けて、
常春の精霊の国のお城の一室に現れた。
随分立派な部屋ですねえ。

話声を聞きつけて執事のミネルバがやってきた。
これはこれはサラさん。
去年の9月以来のお越しですね。
また観光においでですか。
おひさしぶり。
今回はちょっとすることがあって。
こちらはマークさん。
これは肉まんのお土産よ。
国王代理のオウルさんは起きてる?
珍しく起きていらっしゃいます。
さっそくご案内しましょう。

応接間に案内されると、
オウルがソファに座っていた。
これはこれはサラさん。
お元気でしたか。

サラはマークを紹介して、
つい最近、この世界に馬が
やってこなかったかと尋ねた。

はいはい。
報告を受けたばかりですよ。
それで昼寝を起こされたんです。
なんでもお花畑のあたりを
元気よく走り回っているとか。
あれはまたシモーヌ様が、
送り込まれたフィギアの精霊なんでしょうか。
そうなのよ。
さっそく会いに行ってみるわ。

オウルとミネルバに見送られて、
二人はお城を後にした。

随分、立派なお城と庭園ですね。
この世界をシモーヌさんが魔法で作ったんですか。
そうみたいね。
私たちの現実世界からいえば、
幻なんでしょうけど、
私たちの現実世界も人間の脳が
脳同士だけで分かり合えるように
生み出した幻想みたいなものだから、
同じようなものかもしれないわね。
難しいこと言いますね。

おお桜が満開ですね。
ここは常春の世界なの。

前に来たから覚えてる。
お花畑はこの辺りよ。

遠くで馬のいななく声がした。
あ、あそこにエドが。
解説)
続きます。
Jan 22, 2026
馬の話 そのさん

シモーヌさん、その魔法はここではまずいわ。
とルビーが言っている。

あ、ごめんなさい。
いつもは慎重に場所を選ぶんだけど、
なぜかついその気になっちゃって。
今、観光客はいないみたいだし、
ルビーに注意されても、
ヴィヴィアンはいつも平気で魔法を使うから、
住民はもう慣れっこ。
そんなに気にすることないわよ。
とサラが言った。

じゃあエド、
とりあえずあなたを
常春の国に送ってあげましょう。

シモーヌが呪文を唱えると、
薄い煙がたちのぼり、
エドは元のフィギアの姿に戻ったように見えた。

このフィギアは。
精霊の元の体だから大事にしてね。
壊したりすると、精霊が戻れなくなるから。
なるほど、
精霊が抜け出しても元の器は残る。
兵士たちのフィギアと同じなんですね。

私はパリのアンティークのお店に戻る。
貝殻を金庫に保管して、お店の仕事を終えたら、
またみすずの家に行って、
ディアナたちに鹿せんべいを渡してから、
常春の国に行ってみるつもり。
それでサラ、
もしよかったら。
先に常春の国に行って
エドの話を聞いてあげてほしい、
っていうんでしょう。
よくわかったわね。
なぜかそんな普通の展開になる気がしたの。
いいわよ。
マークさんもいらっしゃる?
はい。お供します。
馬の姿でも、同じサイズのフィギアの
精霊仲間だと思うと、他人事とは思えない。
とマークは言った。

シモーヌが立ち去った後、
関係者はマンゴー亭で話し合っている。
ジャンさん。そのエドっていう馬のフィギアの
元の持ち主のことはわかる?
いえ、オークションで入手したので。
でも主催者に聞けば何かわかるかな。
今度会ったら聞いてみますよ。
とジャンが言った。
お願いね。
それからサラはルビーに、
船の旅やマーレのいた島の話などを
かいつまんで伝えた。
ハリーさんにも話しておきたかったけど。
わかったわ。
アイスやヴィヴィアンは元気なのね。
ハリーに会ったら伝えとく。

サラはバー・デジャの門番をしている
ヨシフにも話しかけている。
あなたたちとクックドゥーとは、
魔術劇場で寝泊まりしてるんでしょう。
はい、そういえば最近見かけませんが。
家事をしてくれているデュアンが
気にしてました。
あの人、海の世界で航海してるの。
しばらく戻ってこないかも。
そーなんですね。
みんなにも伝えておきます。

サラとマークは、
お土産の肉まんを買い込むと広場を去っていった。
サラたち、常春の国に行ったんですか。
いいなあ。
佳奈は長期休暇取ったばかりでしょ。
と言われている。
解説)
続きます。
Jan 21, 2026
馬の話 そのに

サラはジャンたちにシモーヌを紹介して、
一緒に肉まんを食べることにした。
シモーヌが骨董品の売買をしているというので、
フィギアの話題で盛り上がっている。
このお馬さん、1/6のスケールで、
けっこう精密に出来てるのね。
兵士のフィギアとセットで売られているのも
あるんですよ。

そういえばマークさんは、
フィギアの兵士の精霊なんでしょう。
以前にいたフィギアの世界には軍馬もいたの?
ほとんど覚えていないですが、
戦場だったので、当然いたと思いますよ。

この馬はちょっと歩き出しそうな
ポーズをしているのね。
それは骨董のオークションで手に入れたものです。
かなり年季が入ってますが、
微妙なポーズが面白いでしょう。
あら。この馬のフィギアには、
精霊が宿っているわ。
とシモーヌが言った。

え、やっぱりそうなんですか。
とジャンが言った。
普段、倉庫の陳列棚に置いてあるんですが、
時々移動してることがあったんです。
僕のコレクションしている兵士のフィギアには、
そういう精霊を宿したのが多くて、
彼らは異世界の村で暮らしていましたが、
色々な出来事の末に、
ハリーさんやヴィヴィアンさんが
魔法でサイズを変えてくれて、
今では、何人かはこちらの世界に移住して、
人間と同じように郊外で暮らしています。
ジョー軍曹やエルザや、
ギルダやロンメル将軍たちね。
とサラが言った。
僕も住む世界は違いますが、
別世界から来たフィギアの精霊らしくて、
彼らと同じ身の上のようです。
今でもどうも釈然としませんが。
とマークが言った。

この馬は、以前乗り手と一緒にいたらしい。
またその人を乗せて走りたいって言ってるわ。
シモーヌさんは魔族で、
これまで沢山のフィギアや置物に宿った
精霊たちを見つけては、
別世界を作ってそこに送って
自由にしてあげているの。
私その常春の国に遊びに行ったから知ってる。
とサラが言った。
そーなんですか。
だったら、ぜひその馬の願いを叶えてあげてください。
他の兵士フィギアの精霊たちも喜ぶでしょう。
とジャンが言った。
なにか始まるのかな。
とレイとアンナが興味津々で立ち聞きしている。

ここでやっちゃうの?
善は急げでしょ。
シモーヌさんも、
ヴィヴィアンと同じようなことをいうのね。

シモーヌが呪文を唱えると、
薄い煙がたちのぼり、
広場に忽然と馬が現れた。

ベーカリーから
佳奈やルビーや舞が何事が起きたかと
やってきた。
今、煙の中から出てきたよね。
魔法なんでしょ。

ありがとうございます。
私はエドワードと言います。
エドと呼んでください。
と馬は話した。

う~まがしゃべる。
そ~んなパカな🎵
と大道芸人が歌っている。
古すぎる歌ね。
聞かなかったことにしよう。
とサラは思っている。
解説)
続きます。
Jan 20, 2026
馬の話

帰っちゃうと寂しくなりますね。
帰るって言っても、鏡の扉を使えば
いつでも来られるんだから、
全然感動の別れっていう感じじゃないけどね。
などとシノとクックドゥーが話している。
奥でもサラたちが話していた。
シモーヌはフミコと一緒に?
しばらく帰ってないし、
マーレからもらった祖母の貝殻を、
フランスのお店に保管しに戻るつもり。
サラは?
私は今度のことを
魔術劇場のハリーさんに報告しに行く。
クックドゥーが航海に出たことも、
知らせないと。
じゃあ途中まで一緒に行きましょう。
私、広場のマンゴー亭に
注文していたものがあるの。
ついでに肉まんでも食べましょう。

二人はサラたちの部屋に
戻ってきた。
お帰りなさい。
と言われている。

サラは、お土産のたこ焼きと
夢の見られる貝殻を持っている。
帰ってきて早々だけど、
ちょっと広場まで行ってくる。

これは美味しそうなたこ焼きだね。
あ、サラ、今日は風があって寒いから、
暖かくしていったほうがいいわよ。

さっそく二人は広場に出かけた。

今年の干支はうま。
丙午か。

マンゴー亭には先客がいた。

ジャンとマークが、
馬のフィギアを並べて話し込んでいる。
ジャンがコレクションのフィギアを
マークに見せるために持ってきたようだ。

注文していたもの出来てますか。
はい。これです。

何なのそれ?
特別に鹿せんべいを焼いてもらったの。
ディアナとピリカへのお土産よ。
味見してみる?
解説)
続きます。
Jan 19, 2026
新たな船出

おはよう。
昨晩はちょっと
飲みすぎちゃったみたい。

ダリオさんおはよ。
潮風が気持ちいいですよ。
みんな早起きなのね。

昨夜は楽しかったわ。
みんなこれからどうするのかしら。
フミコはみすずの家に戻るって言ってたよ。
砂漠の家でラルゴとシェルが留守番してるから、
セリーヌたちはたぶんそこに帰る。
私は、まだ何も決めてないけど、
ヴィヴィアン次第ね。
彼女のお目付け役のつもりなの。
とアイスが言った。
本当は一緒に冒険がしたいんでしょ。
クックドゥーはどうするのかしら。
船長なら向こうのテーブルにいるわよ。

クックドゥーとセリーヌは
海図を広げていた。
記憶だと、この海域の無人島に
クリスタル真珠があるんだ。
探しにいくんですか?
ずっとハリーさんたちにお世話になってたからね。
魔術劇場の皆さんにプレゼントしたいんだ。
クックドゥーさん、ちょっと。
とサラが声をかけた。

やあサラ、何かな。
どうやら海に戻る気になったみたいね。
そうなんだ。
みんな帰っちゃうみたいだけど。
サラも行っちゃうの?
ええ。それで思いついたんだけど、
あなたの船旅のお仲間を誘ってくるわ。
そういうとサラは
鏡の扉に向かった。

しばらくして、
サラは船に戻ってきた。
サラが連れてきたのは、
ジョー軍曹とエルザだった。
やあキャップテン。
去年のハロウィンでは
その海賊コートをお借りできて助かりました。
海賊は憧れだったんですよ。
とジョー軍曹が言った。
無人島で宝探しをするそうね。
ジョー軍曹は元上官。今では
仲のいい友達なので、お話を伺って、
私も寄せてもらいました。
とエルザが言った。
おお、
君たちでしたか。
やはり持つべきものは友人だなあ。

クックドゥーは、
軍曹たちに船を案内している。
潮風が気持ちいいわね。
おや、なんの音だろう。

エクレア号のマストに
帆がスルスルと張られ、
錨が巻き上げられて、
船は島の浅瀬から離れていった。

船は目的地に進路をとったようで、
島が次第に遠ざかっていく。
海図の必要ないんじゃない?
とサラが言っている。
解説)
続きます。
Jan 18, 2026
マーレとの会話

夕暮れになり、
サラとクックドゥーは
沈む夕日を見ていた。
サラはクックドゥーに
マーレのことを知っているかどうか
尋ねた。
姿は見たことないですが、
島に貝殻を拾いに行くたびに、
誰かがいるという雰囲気は、
いつも感じていました。

そこにマーレがやってきた。
あ、きてくれたんですね。
約束したからね。
クックドゥー、久しぶりね。
とはいえ、こうして直接会うのは初めてだけど。

私はあなたが初めて島に来た時から
覚えているわ。
あなたが夢見る貝殻の虜になって、
やがて航海中に嵐で死んでしまって、
骸骨になって蘇ってからのことは、
トンピリビから聞いているの。
そーなんでしたか。
あなたの愛したこの船。このエクレア号も
あなたと運命を共にしたけれど、
あなたは改心して夢の航海を諦めたでしょ。
集めた夢見る貝殻もサラに譲ってしまった。
そーなんですよ。
海の思い出は封印したんです。
それで乗り手がいなくなったエクレア号は、
あなたと一緒に航海したいという願いを抱いて
貝の見る夢の海を彷徨っていたのよ。
そーなんですか。
それは知らなかったなあ。
生前の世界に執着したあなたが
貝の夢に人を誘う死霊になって蘇ったように、
エクレア号も意思をもつ夢食いのような存在になったの。
それでこの船の中で不思議なことが起こるのね。
あ、マーレさん。
そろそろ船室に入りませんか。
みんながお話を聞きたがっています。
とサラが言った。

食堂にみんなが集まっていた。
大ダコのくれた足を調理したんですよ。
たこわさもタコの握り寿司もたこ焼きもあります。
素敵な歓迎をありがとう。
それではみなさん
質問をどうぞ。
とマーレが言った。

私たちは、忘れられた夢の世界から、
このエクレア号に乗って、
船の進むままにこの島に辿り着いたんですが、
ここも忘れられた夢の世界の一部なんですか?
それとも隣り合った別世界で、
どこか途中で境界を越えてきたんですか。
とシノが尋ねた。
忘れられた夢の世界って
あなたたちが呼んでいるのは、
シモーヌさんのお婆さまが見ていた夢の世界。
お婆さまは病で亡くなられたけれど、
最後まで見ていたその夢の世界に魔法をかけて、
消えないようにしたの。
その世界の中でお婆さまは今も生きているとも言えるわ。
この島はお婆さまの故郷で、最後に見た夢の一部分。
そういう意味では二つの世界に境界はないとも言えるけれど、
遥かな海で隔てられている。
お婆さまの夢の中でもその深さが違う世界なの。
別世界って言ってもいいくらいにね。
祖母は、私と鹿のフィギアの精霊のディアナを
その忘れられた夢の世界の森に招いたんです。
私たちはそこで楽しい時間を過ごした。
ディアナだけその世界に取り残されてしまったけれど。
祖母が私にオウム貝の貝殻を渡したかったのなら、
なぜその時、夢の中で渡してくれなかったのかしら。
とシモーヌが尋ねた。
お婆さまはもう亡くなる間際で、
夢の中であなたたちに語りかける力を
持っていらっしゃらなかったのよ。
ディアナだけが夢に取り残されたのもそのせいね。
お婆さまは、それで貝殻のことを私に託されたの。

お婆さまがマーレさんに指輪を託された時、
お婆さまはもう亡くなられていたのよね?
だとすれば、ここは一体。
とフミコが言った。
ここはお婆さまの故郷の島。
お婆さまにとっては夢の中だけど、
かって魔族の住む都があった実在の世界なの。
この島には古代の魔族たちのかけた
深い魔法がかかっている。
亡くなった魔族の魂はここに帰ってくるのよ。
フミコさん。
あなたも古代魔族の生き残りとか。
魔族が土地にかける魔法のことはご存知でしょう。
その影響で、グリーンマンや
マービーみたいな魔法生物が生まれるのよね。
とアイスが言った。
もしかして、あなたもそのお仲間?
古代の魔族がこの島にかけた魔法によって生まれた
魔法生物なの?
とヴィヴィアンが尋ねた。

私のことはなんといえばいいかしら。
古代魔族がこの島に移り住んで都を開く、
もっとっずっと前からこの島にいるわ。
土地の精霊みたいなもの?
それとも、バルやバーンやスーラみたいな
元素の精霊?
いろんな精霊を知ってるのね。
もし私が精霊だとしたら、たぶん海や貝の精霊ね。
自分のことはよくわからないんだけど、
オウム貝の貝殻のベッドで眠り、
アンモナイトの貝殻で夢を見ているの。
アンモナイトの夢って、
どんな夢なんですか?
とシノが尋ねた。
ジュラ紀や白亜紀の思い出の夢よ。
恐竜たちも出てくる。

質問攻めが一段落して
歓迎の宴も終わり、
アイスたちは甲板で休憩している。
ここに住んでいた魔族が、
魔法で貝殻に夢見る力を与えたって
噂があるらしいんですが本当なんですか?
また質問?
そうね。本当は少し違う。
もともとこの島の貝殻は夢見る力を持っていたのよ。
ここは精霊の宿った貝殻たちの墓所だったの。
島に来た魔族がそれを見つけて、
ここが特別な土地であることを知り、
この島に住むことを決めたの。
シモーヌのお婆さまのように、
事情があって島を離れた魔族は
故郷を偲ぶためにそんな貝殻を持っていった。
やがて島の魔族の都は滅び、長い時がたち、
離散した魔族が持っていた夢を見られる貝殻は、
人間の手に渡ることもあって、
手に入れれば、ひと財産築けると考える船乗りもいた。
だから何人もの冒険者が島のある場所を探しまくり、
運よく見つけた船乗りが、魔族の遺跡と関連づけて、
そんな噂を広めたんでしょうね。
クックドゥーもそんな冒険者の一人だった。
彼の場合は、貝の夢の依存症になっちゃったけど。

クックドゥーは
これからどうするの?
また魔術劇場に帰って平穏に暮らす?
なんでもご存知なんですね。
海の世界のことは諦めたつもりだったんですが、
エクレア号に戻ると懐かしくて。
船が船長を失って途方に暮れて
夢の海を漂っていたので、
シモーヌさんを呼ぶのを手伝ってもらったの。
今は操舵する乗組員がいなくても自力で航海できる
立派な幽霊船になったのよ。
苦労をかけたんですね。
だったら乗組員を勧誘しなくても
一緒に航海ができそうだ。
また宝探しをしようかなあ。

エクレア号はクックドゥーの言葉に応えるように、
一斉に船のあちこちに灯りを点した。
解説)
続きます。
Jan 17, 2026
思わぬ出会い そのに

サラたちは水辺で休憩している。
冷たくて気持ちがいいわ。
とフミコが言っている。
サラはアイスに、
水盤から現れたマーレから、
シモーヌが祖母の形見の貝殻を
渡されたことを話した。
お婆さまの望みだったそうよ。
なるほどねえ。
それが船がこの島に呼び寄せられた
理由だったんだ。
でもアイスがこの泉の中で
鏡の扉を見つけたのは、
別のことよね。
どこまでが偶然なんだろうね。

マーレとマービーは
仲良くなったようだ。
マービーは小さな滝に打たれて
懸命に尾鰭を振っている。
楽しいわ。
こうしてると立ってるみたいでしょ。
私、こういうの初めてなの。
そういうのを
鯉の滝登りっていうのよ。

しばらく時が経った。
あ、そろそろ戻る。
また遊びにくるね。
マービーは
みんなに手を振ると
水中に没していった。

マーレはサラたちに
顔を向けていった。
そこの銀髪の方、
アイスさんっていうのね。
泉の中に隠されていた古い魔族の
鏡の扉を見つけるなんて素晴らしいわ。
マービーは水没した地下都市で暮らす魔法生物。
あなたのおかげでいいお友達になれた。

さてそろそろ私も戻るわ。
お婆さまとの約束も果たせたし。
あのー、山ほど質問したいことが
あるんですけど。
とサラが言った。
ふーん。
いいわよ。
じゃあ日暮にでも船に伺うわ。
そういうと、
マーレの姿は水中に没していった。

サラたちも船に戻ることにした。

船の近くの砂浜に
大きな亀のような動物がいるのを
サラが見つけた。
これはなあに?
クリプトドンっていうらしい。
新生代の生き物で、アルマジロの仲間ですって。
今朝、砂浜で魚を獲ってる時にも見かけて、
セリーヌが教えてくれたの。
砂漠にも居たって言ってたわ。
とアイスが言った。
砂漠にもいた古代の生き物か。ということは、
この島にも恐竜がいるのかしら。

船に戻ると甲板にシノたちがいた。
たこ焼きを食べているようだ。
お帰りなさい。
今出来立てよ。
とセリーヌが言っている。

程なく、
ヴィヴィアンが島の視察から戻ってきた。

ヴィヴィアンは、アイスとサラから
遺跡で起きた出来事を聞いている。
島の上を飛んでゆっくり回ってきたけど、
特に何も見つからなかった。
その間に面白そうなことが起こっていたのね。
フミコと、向こうにいる
シモーヌさんも島に来てたなんて。
あなたとは初対面だけど、
噂は色々聞いてるわ。
とヴィヴィアンはシモーヌに声をかけるように言った。
私も。ヴィヴィアンさんのことは色々と。
ご両親にもお会いしたんですよ。
とシモーヌが言った。
そうらしいわね。
魔族の仲間と知り合うのは嬉しいけど、
そのマーレっていう女性は、何者なの?
古代に魔族の都があった島の住人なら、
やはり魔族の末裔っていうことかしら。
わからない。
夕暮れ時に船に来てくれるっていうから、
その時に尋ねてみましょう。
このたこ焼き美味しいわね。
解説)
続きます。
Jan 16, 2026
思わぬ出会い

驚かせちゃったかしら。
ご丁寧な挨拶をありがとう。
礼儀正しい魔族の方ね。
私の名はマーレ。

あなたたちのことは
トンピリビから聞いています。
あなたがシモーヌさんね。
顔立ちがお婆さまによくにてらっしゃるわ。
そうそう。
あなたにお渡しするものがあるの。

そういうとマーレの姿は水中に没し、
程なく貝殻を二つ手にして浮上してきた。

このオウム貝の貝殻は
シモーヌさんのお婆さまから預かっていたもの。
孫のシモーヌがいつかここに来たら、
渡して欲しいと頼まれたのよ。
祖母がそんなことを。
お婆さまはこの貝殻をあなたに譲るつもりでいたの。
でも病で倒れてそのことが果たせなかった。
そのことが心残りだと言って、
最後に見た夢の中で、私に託して逝かれたのよ。
孫のシモーヌには、自分がそうしてきたように、
時々、この貝の夢を見て故郷を偲んで欲しいって。
祖母がそんなことを。

これで約束が果たせたわ。
あ、あなたがサラね。
これはあなたが、
昨日ここに戻してくれた貝殻。
あなたの優しい気持ちはよくわかったけれど、
この貝殻はもうあなたのもの。
また手元に置いて、時々は潮騒の音を聞いてあげて。
いいんですか?
トンピリビは、これで貝が安らかに眠れるって、
言ってましたけど。
それは嘘じゃないけど、忘れられた永遠の眠りよ。
人間に潮騒を聞いてもらえることで貝の思い出も蘇る。
この貝も、心の優しいあなたに、
そうして欲しいって希んでいるの。
そ、そうなんですか。
じゃあ喜んで頂戴して大事にします。
ところで質問してもいいですか?
何なりとどうぞ。
マーレさんって、
ちゃんと両足があるんですね。
さっきすごく気になったんですけど。
そこなの?
あの大きなオウム貝は
私のベッドのようなもの。
その時、泉の方で、
水しぶきが上がる音がした。
あ、アイス、
戻ってきたんだ。

一行が降りていくと、
泉には見知らぬ女性の姿があった。
あれは誰?

女性はもの珍しそうに
周囲を見回している。

やがてアイスも水中から
浮かんできて顔を見せた。
やあ。
つい話し込んじゃって遅くなっちゃた。
この人はマービーって言うんだ。
と言っている。
マービーも
どうぞよろしくと言っている。

アイスはサラたちに説明している。
やはり泉の底の方の岩陰に、
常設タイプの鏡の扉があったのよ。
そこを抜けると、
フミコの住んでいたアフリカの遺跡の
今では水没している地下都市の中の
民家の屋内につながっていたの。
そこで以前調査した時知り合ったマービーに再会して、
久しぶりなんで話し込んじゃってね。
水の中なんでしょ。
レプティリアンたちが使う
空気のある部屋があるのよ。
あれ、あそこにいるのは?
とアイスが尋ねた。
あの人はマーレさん。
素性はよくわからないけど
この島の住人みたいで魔族か精霊みたいな感じがする。
夢見る貝のこともよく知ってるみたいだったわ。
マービーとマーレは
何やら話しているようだった。
解説)
続きます。
Jan 15, 2026
遺跡にいく

4人はさっそく遺跡に向かった。

ここがそうよ。
石造りのアーチに囲まれた、
小さな泉があるの。
ふーん。
確かにあの石組みは、
古代の魔族の建築様式ね。

フミコは挨拶の呪文を唱えている。
応えるように不意に風が吹き、
木々の梢がさわさわと葉ずれの音を立てた。

こんな絶海の孤島みたいなところで、
文明が栄えてたなんて不思議な気がする。
魔族たちは便利な道具を
使いこなしていたからね。
あ、鏡の扉のことね。
あれがあれば確かにどこにでも行けたはず。
古代の都には、魔族でなくても使えるように、
特定の場所に行ける常設式の扉があったの。
当時、アフリカで栄えていた
私たちの都とも繋がっていたかもしれない。
でも戦争の時、レプティリアンたちによって、
見つかり次第徹底的に破壊されてしまった。
あら、アイスどうしたの?

今の話を聞いていて、
ちょっとこの泉が気になってね。
彼らに見つからないように扉を設置するなら、
どこにするかなって。
確かレプティリアンたちは
水が苦手だったはず。

ちょっと潜って確かめてみるわ。
さすがアイス。
気をつけてね。

アイスなかなか戻ってこないね。
あのうえはどうなっているの。
とシモーヌが言った。
あ、説明し忘れてた。
この泉の水源となってる
湧き水が出てくる水盤があるのよ。

3人は石段を登って行った。
ここって祭壇の跡なの?

フミコはまた
挨拶の呪文を唱えている。

すると、
水の中から大きなオウム貝が浮上し、
貝の中から女性の姿が現れた。
その女性はフミコたちに
顔を向けた。
解説)
続きます。
Jan 14, 2026
島の話など

アイスはみすずの家にやってきた。
アイス、今年は初めてね。
おめでとう。
フミコ?
ミミコと部屋にいるわよ。

魔族の都の話?
ちょうどシモーヌが遊びに来てるから、
そっちで話しましょう。

アイスさん、去年はお世話になりました。
今年もどうぞよろしく。
とシモーヌが言った。
常春の国を一巡り散歩してから、
お城で別れたんでしたね。
フクロウたちは元気ですか?
みんな元気よ。
歓迎会はやめてって言ったのに、
フクロウたちに引き止められて
結局お城で年末年始を過ごしちゃった。
ひと月ぶりにここに来たの。

ディアナも話を聞きにやってきた。
それで魔族の都の話って?
アイスは、ヴィヴィアンと二人で、
北の海辺で見つけた海賊船を調べていたら、
船がかってに動き始め、
小島にたどり着いたことを話した。
そこは海の夢が見られる貝殻の採れる島で、
何度も訪れたことのある船長の話によると、
昔、魔族の都があったという噂があるんですって。
確かに島にはそれらしき遺跡があるの。
そんな古代の都のこと知ってる?
大昔には、
魔族は世界のあちこちで繁栄していたから、
そういう島もいくつかあったわ。
でもレプティリアンたちの戦争に巻き込まれて、
その時にほとんど滅びたのよ。
とフミコが言った。
今、海の夢が見られる貝殻って言ったでしょ。
とシモーヌが言った。
ええ。

私の祖母も、そういう貝殻を持っていたわ。
気分が沈んでいるとき潮騒を聞いて眠るって言ってた。
それを聞くと、故郷の夢が見られるっていうのよ。
その貝殻はどうしたの?
小さなオウム貝の貝殻
探したけれど遺品の中には見つからなかったの。
ふーん。それでなんとなく謎が解けてきたわ。
と話を聞いていたアイスが言った。
え、どういうこと?
あの島は、多分あなたのお婆さまの故郷。
お婆さまは、あの島に暮らしていた魔族の末裔だったのよ。
この忘れられた夢の世界が、
お婆さまが亡くなる間際に見た夢の世界だとすれば、
その夢に思い出の故郷が繋がっているのもわかる。
どうして船がそこに向ったのかな?
きっと何かわけがあるはずね。
シモーヌ。あなたも一緒に行ってみましょうよ。

キッチンに出向いて、アイスはヤッピーから
サラに頼まれた醤油を借りている。
これですね。
ありがと。
また補充するから、
半分分けてね。

3人で島に向かうことなった。
この世界には、まだまだ
謎が多いわね。
海があることも
知らなかったですし。
とみすずとディアナが言っている。

3人が鏡の扉を抜けると
そこは船室だった。
早かったわね。
そちらこそ。
忘れずにお醤油持ってきてくれた?
とサラが言っている。

サラはシモーヌとフミコを
みんなに紹介している。
ヴィヴィアンはまだ島の調査から
戻ってないけど、これで船にいる全員よ。
キャップテン・クックドゥーや
シモーヌさんとは、初対面の人もいるわね。
クックドゥーって
お料理が得意そうなお名前ですね。
とシモーヌが言っている。
解説)
続きます。
Jan 13, 2026
朝の出来事

船で朝食が始まった。

結局捌いたのは一種類だけか。
食べられるのかなあ。
私はバナナとイチゴで充分。
アイス味見してみてよ。
とサラが言っている。

その時、
何かがぶつかる音がして、
船が揺れた。
ダリオ、どうしたの?
それがまたあのタコが。

タコが船に迫っている。
あ、ごめん。
引き寄せの呪文を解くのを忘れてた。
とヴィヴィアンが言っている。

ヴィヴイアンは呪文を唱えている。
その上、何か会話しているようだ。

タコは去っていった。
どういうことだったの。
タコは自分の体が思い通りにならず、
船に引き寄せられていくので
パニックになっていたわ。
解放してあげたら喜んでいた。
お礼に足を一本くれるって。

セリーヌは鉈で
タコの置いて行った
足を切ろうとしている。
足を一本くれるなんて
大サービスだね。
タコの足って
また生えてくるのよ。
タコわさにしましょうか。
たこ焼きがいいなあ。

さっき思いついたんだけど、
フミコを呼んでこようと思うの。
とアイスが言っている。
魔族の都のことならきっと詳しいし、
この島のことも知ってるかもしれない。
それも一案ね。
私は空から島を一巡りしてみる。
山の向こう側も見てくるわ。
とヴィヴィアンが言った。
私は家に帰って
広場でわさびを買ってくる。
あ、お醤油はみすずのところにあるから、
アイスに頼むわね。
とサラが言っている。

どうも調子が狂うわねえ。
と言いながら、
ヴィヴィアンは飛んでいった。
解説)
続きます。
Jan 12, 2026
朝食の準備

おはよう。
今日もいい天気ね。

ダリオさんおはよ。
アイスたちは?
朝食用に魚を獲るって
出かけましたよ。

二人は様子を見にいくことにした。
あ、浜辺の方にいるかも。
ここから砂浜が続いているのよ。

波がきれいね。

やがて波打ち際に、
アイスとセリーヌの姿が見えた。

随分獲れたのね。
変わった魚類ばかりだけどね。
食べられるのかな。
ヴィヴィアンと
クックドゥーは?
岩場の方に行ったみたいだよ。

ヴィヴィアンは
魔法で魚類を引き寄せていた。
便利な魔法ですなー。
最近覚えたの。
私のパワーは増している。

見慣れない魚類が集まってくる。
とても食べられそうもないわね。

ヴィヴィアンさん。
あのタコが。
引き寄せられてきたのね。
もう船に戻りましょう。
解説)
昨日は画像テキストは制作してあったものの、
アップするのを完璧に忘れていて、
パスしてしまいました。
Jan 10, 2026
遺跡のことなど

一行はそれぞれ
海景を満喫している。

海を見ていて思いついたんだけど、
この貝、さっきの水盤に戻そうと思うの。
海の夢が見られる貴重な巻貝なんでしょ。
とアイスが言った。
そうなんだけど、
貝の見せてくれる夢は、
きっと貝の思い出の世界なのよ。
ということは、もともとこの貝は、
この島で生きていたんじゃない?
故郷に帰してあげようと思ったの。
そうかもしれないけど、
そうじゃないかもしれない。
でも思いついたのなら実行すべきね。
とヴィヴィアンが言った。

サラは水盤まで戻っていって、
巻貝を水盤の中にそっと戻した。

するとトンピリビが飛んできて、
石段の上に止まった。
良いことをしましたね。
これで巻貝も安らかに眠れると思います。
あら、あなた人の言葉が話せるの?
モノマネ鳥は仮の姿で、
私は精霊なんですよ。
この島でクックドゥーと出会って以来、
ずっと彼に付きそっていますが。
あの木の上で、
ずっと私たちの行動を見てたのね。
それに、前に私の見た夢にも出てきたでしょう。
そうですね。
この島は、確かにあの巻貝の故郷。
私の故郷でもあるんです。
今ここは夢の中じゃないのよね。
でもどうしてこんなことに。
この島のことなら、
クックドゥーに聞くといいですよ。

クックドゥーか。
そういえば彼は、
島影を見ても特に驚かなかったわね。
ダリオと二人で船で留守番するって言って
上陸も辞退したわね。

とりあえず一行は
船に戻ることにした。
ヴィヴィアンは空が飛べていいなあ。
とシノが言っている。

船に戻ると、
夕暮れになっていた。
お帰りなさい。
もう夕食の支度ができてますよ。
とダリオが言っている。

みんなで夕食のテーブルを囲んでいる。
アイスがリュックに詰めてきた食材で、
調理された料理が並んでいる。
それでさあ。
クックドゥー。
あなたがこの島のことを知ってるって、
トンピリビが言ってたわよ。
あ、そうでしたか。
実はそうなんですよ。
島に上陸しなかったのにも
訳があるんでしょう。
実はそうなんですよ。
私がこの島を見つけたのは遥か昔、
まだ私が生きていてバリバリの
海賊船の船長をやっていた頃のことです。
海の夢が見られる貝を拾える島があるという、
船乗りたちの噂を聞いて立ち寄ったのですが、
確かにその通りで、
私はその夢の虜になりました。
それで溺死してからもその夢の中に、
生者を船員として勧誘しようとしていた。
そうなんですよ。
私にとっては自分の運命を狂わせてしまった、
あまり思い出したくない島だったんです。
でも生前何度も通いましたから、
このエクレア号がその島に向かっていると知っても、
驚きはありませんでした。
この船に魂があれば、そこに行くだろうなと。

アイスとヴィヴィアンがこの船を発見して、
久しぶりに乗員を乗せた船は喜んで
本能的にこの島に向かったというわけね。
とサラが言った。
そういう比喩が正しいかわかりませんが、
こいつはそういう奴なんですよ。
ちなみにエクレアというのは、
フランス語で稲妻という意味です。
かっこいいでしょう。

でもエクレア号が、
どうして忘れられた夢の世界の岸辺に
停泊していたのかしら。
その船は嵐で沈没したんでしょう。
夢の中では不滅なんですよ。
貝のみる夢の中では私と一緒にいて、
募集して契約した船員たちと一緒に
宝探しの航海を続けるんです。
というつもりでしたが、
ヴィヴィアンさんに諭されて悔い改めたんです。
そうだったわね。
私はあの遺跡が気になるわ。
島に古代文明があったっていう名残でしょ。
何度も島に来たのなら、クックドゥーさん、
何かご存知ないの?
とシノが言った。
大昔に魔族の都があったっていう
話は聞いたことがあります。
その魔族が島の巻貝に魔法をかけて
故郷を夢見る力を与えたっていうんです。
確かめようのない噂話ですが。
とクックドゥーが言った。
元は魔族の住んでいた島か。
島全体に魔法がかけられている
可能性はあるわね。
それで私たちが招かれたとか。
まさか。
だったら住人がいるの?
とりあえず
何か手掛かりがないか、
明日からゆっくり探索してみましょう。
解説)
続きます。
Jan 09, 2026
島に行く

サラはみんなに集まってもらって
話をしている。
ここは私が夢で見たことがある世界よ。
キャップテン・クックドゥーから頂いた巻貝を、
耳に当てて眠って見た夢の景色にそっくりなの。

サラは部屋から持参した巻貝を
みんなに見せている。
それでその夢の中では、
どんなことが起きたの?
森の斜面を登って行って、
山の中腹で遺跡を見つけて、
そこの水盤の中から、
別の巻貝を拾ってくる夢だった。
目が覚めると、
その巻貝を握りしめていたの。
変わった夢だね。
その巻貝もやはり、耳に当てて眠ると
潮騒の音に誘われて夢を見られる貝で、
モモコに貸したこともあったのよ。
モモコは別の夢を見たみたいだけど。
さっそくその遺跡に
行って見ましょう。
とセリーヌが言った。

一行は森の中の斜面の細道を
登っていく。

程なく泉のある遺跡に到着した。
何も変わっていないわ。
とサラが言っている。

この水はどこから湧いてるの?
その上に水盤があって、
そこから湧き出ているはず。
変わった風景ね。
あれは何?
とシノが言っている。

あれはトンピリビじゃない?
クックドゥーの飼ってるオウムよ。
船から飛んできたんだね。

あったあった。
ここから水が湧いているの。

懐かしいわ。

ここは日陰で涼むのに最適ね。
どんな人たちが作ったんだろう。
あ、夢の中だから考えても無駄か。
あっちにもアーチが見えるね。
とアイスが言った。

3人はアーチの方に歩いて行った。
シノとセリーヌが出迎えている。
アーチの上には用水路があって、
水道橋になってるのかしら。
古代文明があったっていう雰囲気ね。
夢だけど。
とシノが言っている。
解説)
続きます。
Jan 08, 2026
海の世界で そのに

シノは水平線を見ていた。

なにか発見したようだ。
あれは陸地よ。
みんな来て見て。

水平線にくっきりと
陸地が見えた。

見たところあの陸地は島のようね。
船はあそこに向かってるみたいよ。
目的地っていうことかしら。

ちょっと様子を見てくるわ。
ヴィヴィアンは翼をひろげ、
島に向かって飛び立って行った。

やがてエクレア号は
島の浅瀬に停止した。
碇が降ろされ、不思議な力で
するすると帆が巻き上げられていく。

一行が上陸すると、
浜辺にはヴィヴィアンが待っていた。
どんな様子だった?
ざっと上空から見ただけだけど、
そんなに大きな島じゃない。
森に覆われているみたいね。

この辺り透明度が高いね。
私、この景色見たことがある気がする。
とサラが言った。
え。
それはないんじゃない?
夢で見たのよ。
貝殻の潮騒の音に誘われた夢の世界で。

きれいな潮溜まりがあるよ。
フナムシもいるみたい。
とシノが言っている。
サラはこの景色にも
見覚えがあった。
あの夢と同じ世界だわ。
だとすれば、この岩場の先には、
森があって遺跡に続く道があるはず。
解説)
続きます。
Jan 07, 2026
海の世界で

タコはエクレア号に
よじ登ってきた。

船は左右に揺れている。
シベールは
銃を構えている。

私に任せて。
ヴィヴィアンが前に進み出て
両手を広げて呪文を唱え始めた。

タコはかっと目を見開いて、
ヴィヴィアンを見つめた。

やがて、タコはずるずると
甲板から身を引くと、
海中に没して行った。
ヴィヴィアン。
何か話してたの?
船が珍しくて様子を見にきたみたい。
敵意がないことが伝わったみたいで、
帰って行ったわ。
十分ありすぎたんで、
引き下がったんじゃないの?
それはどうかしら。

シノはまた何か見つけたようだ。
あれ、あそこに。
今度は何?

魚の群れが海面から飛び上がり、
すれすれに滑空していく。
綺麗だねー。

サラはお土産に持参した
バナナとイチゴを食べている。
セリーヌさんは
勉強熱心ね。
それ恐竜図鑑でしょ。
よくご存知ですね。
レイチェルさんから
お借りしたんですよ。
古代の魚類も載ってるの?
載ってるけど、
さっきの魚は見つからないですね。

シノは船首で水平線を見ている。
解説)
続きます。
Jan 06, 2026
海の世界へ

アイスとサラは
エクレア号にやってきた。

新年おめでとう。
年末年始に変わったことなかった?
特に何もないですよ。
陸地も見えず、天気も穏やかで
至って平穏です。

サラは海景を眺めている。

甲板を歩いていくと、
シノとセリーヌに出会った。
あ、サラ、また会えたね。
とシノが言っている。
サラはセリーヌを紹介してもらった。

アイスはヴィヴィアンたちと話していた。
さっそくお土産の片口鰯を肴に
ワインを飲んでいる。
この海でも魚が獲れるかな。
どうだろうね。
船がどんどん進んでいくので、
試したことないけど。

そこにサラがやってきた。
ヴィヴィアンに船長さん。
あけおめ。
あ、もう飲み始めてるのね。
と言っている。

シノは何かが近づいてるのを
発見した。
あれはなんだろ。
みんな来て見て。

あれはタコ足よ。

それは巨大なタコだった、
解説)
続きます。
Jan 05, 2026
仕事始めなど

カルタ取りが終わり
みんなは寛いでいる。

たまきが一番か。
賞品は大きいみかんだよ。

羨ましいなあ。
ほんとにそう思ってる?

喫茶ペンギンが営業を始めていた。

洗濯したら
新品みたいになったわ。
リズはメイド服がお似合いね。

ミルフィーユは
また外の席に来ていた。
あったかくしてきた、
と言っている。

アイスは鏡の扉のある
サラたちの部屋に来ていた。
また出かけるのね。
そうなの。
あ、おいしそうな
片口いわしが。

この干物は年末に大量に買ったので、
まだ随分あるのよ。
その貝殻は?
ああ、これは一昨年クックドゥーから頂いたの。
耳に当てて眠ると、潮騒の音に誘われて、
海の夢が見られるのよ。
この前アイスが海の話をしてたから
懐かしくなって出してきたの。
ふーん、だったら
サラも船に行ってみない?

サラは一緒に行くことにして
さっそくセーターを脱いでいる。
これ甘辛くて美味しいね。
ワインにも合いそう。
だったらお土産に
持っていきましょう。
解説)
続きます。
Jan 04, 2026
お正月の風景 そのに

ジェニーたちの部屋では
カルタ取りが続いていた。
読み札は残り少なくなっている。

「犬も歩けば棒に当たる」

カルタ取りは熾烈さを増していた。

モモコ大丈夫?

今の私が早かったでしょ。
これ以上は危険だから
そろそろやめましょうか。

広場でも凧上げが続いていた。

リズが佳奈に声をかけた。
佳奈、休暇楽しんでるみたいね。
明日からバイト再開よ。
あっという間ね。
リズはアキバで買ったあの服着て
お店に出るの?
いえいえ。メイド服よ。
休暇中に洗濯したから
そろそろ乾く頃なの。

ベランダでは、
マヤと今井舞が話していた。
その黒い服、メイド服ね。

ペンギンでバイトしてるリズが
いつも着てる服よ。
店内は喫煙者が多いからって、
洗濯したみたい。
今時そんな喫茶店があるのね。

ベーカリー前で
アイスとルビーが話している。
また出かけるの?
忘れられた夢の世界の船のことが気になってね。
船にはヴィヴィアンがいるんでしょう。
心配ないんじゃない?
だからかえって心配なのよ。
あの人魔法で何するかわからないから。
結局一緒に冒険したいわけね。
解説)
続きます。
Jan 03, 2026
お正月の風景

広場では凧上げが
始まっていた。

凧は新春の風を受けて
はためいている。

はるなと佳奈が
あやつっているようだ。

お正月の風物詩ね。

凧たこあがれ~🎵

ジェニーたちの部屋では、
カルタ取りが始まっていた。

みんな真剣な面持ちで
絵札を見つめている。

読み上げているのはジェニーだ。
「よそ見する子は、」

「よくころぶ」
たまきが猛然と
身を乗り出して札を取った。

そんな諺あったっけ。
これ新種のかるたなのよ。
解説)
続きます。
Jan 02, 2026
コンテストの結果発表など

ジェニーたちの部屋では、
みかんを食べていた。

お正月だから、
久しぶりにカルタでもやろうよ。
とモモコが言っている。

ナオミたちが帰ってきたらね。
あら、二人でどこに出かけたの?
近所のお稲荷さんまで
初詣だって。

ナオミと文学青年は
初詣を終えて広場に来ていた。

ナオミははるなたちと
挨拶している。

子供達は、文学青年から
お年玉をもらっている。

12月のコスプレコンテストの
優勝者発表のアナウンスが始まった。
みなさん。
先月のコンテストの優勝者の発表をします。
厳正中立な審査の結果、
優勝したのは、白いフード付きの
うわっぱりを着た中野佳奈さんです。

佳奈やったね。

佳奈は、偶然近くにいた人々の
万雷の拍手と喝采を受けて
トロフィを授与されている。
おめでとう。
ありがとうございます。
でもどうして私が。
あなた優勝したことがないって
嘆いていたでしょ。

ルビー先輩の推しだったのね。
やっぱり持つべきものは先輩だなあ。
そういえば、
この中で優勝したことがないのは
私だけになっちゃったか。
とはるなは思っている。
解説)
続きます。
Jan 01, 2026
年の初め

あけましておめでとう。

二人で頑張って
おせちつくったのね。
ナオミ、その片口鰯。
これおつまみの味がするよ。
まずはお屠蘇を。
などと言っている。

そこにあるのはお年玉?
広場によく来る
子供達にあげるんだ。
ああ、すずちゃんと圭ちゃんね。
たまきその盃大きすぎない?
などと言っている。

サラたちの部屋でも、新年の挨拶が
交わされていた。
あけおめ。
今年もよろしくね。

この黒いおせちの重箱新しくない?
最近ガチャで買ったのよ。

広場にも新年の日差しが
降り注いでいた。

佳奈とはるなは、
狐の駒井姉妹と挨拶している。
おめでとうございます。

それって晴着なんですか?
これは巫女の装束よ。
お正月は奉仕活動で結構忙しいの。
皆さんもお稲荷さんに
初詣に来てね。

アイスとソローも挨拶している。
郊外まで行く人力車、
まだやってるの?
紅葉シーズンも終わって、
随分暇になりました。

いよいよ新年ですね。
月が変わって12月のコンテストの発表は?
今日は元旦だし、
明日にしましょう。
先月は新規の参加者がいなかったから、
また地元の人から
選ぶことにになりそうですね。
解説)
続きます。