May 17, 2026

赤い人形 そのなな

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エリーゼは二人に紅茶を入れた。

ケイト、さっきから、
おとなしいわね。

さっき泣きじゃくって、
私を呼び覚ましてくれたせいで、
力を使い果たしたのよ。
今は深く眠っている。
とエリーゼが言った。


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あなたとケイトは特別な関係みたいね。
ケイトはあなたの力を弱めるために、
二人が引き離されたとも言っていた。
それと、
ここはあなたの見ている夢の世界なんでしょう?
夢食いが夢の中に侵入するのは珍しいことじゃない。
でもアスラーダは、ここは冥界に近い夢の世界で、
あなたがもう死んでいるっていっていた。
とても謎が多いわ。
とシモーヌが言った。

うまく説明できそうもないけれど、
ここは私の見ている夢の世界というだけじゃないの。
それに、ケイトは否定したけど、
アスラーダが言ったように
私はもう死んでいるのよ。
とエリーゼが言った。

死んでいるって、
こうしてちゃんと話しているじゃない?


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この体は幽霊のようなもの。

私は幼い頃両親を亡くして
一人ぼっちになったの。
母が作ってくれた毛糸の人形、ケイトだけが、
私の友達だった。
彼女にいつも話しかけているうちに、
ある日、人形に精霊が芽生えて、
お話ができるようになったの。
それから私には精霊の声ばかりでなく、
亡くなった魂たちの声も聞こえるようになった。
生前の世界に執着して彷徨っている魂たち。
自分が死んでしまったことにまだ気付かない魂たち。
怖い幽霊みたいに言われるけど、
そんな人たちだけじゃないのよ。

私が病気になって死んだ時、
その霊たちが私の魂をこの世界に招いてくれたの。
それは私が病床で見た夢の続きだとも言えるけれど、
死者たちが魂のために用意されていた世界に
招いてくれたんだと思う。
ここには深い森と草原、その果てには
砂漠のような風ばかりが吹く大地が広がっている。


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もしここがそんな世界で、
あなたも招かれた死者の一人にすぎないんだとしたら。
夢食いの蜘蛛があなたを繭に閉じ込めて眠らせても、
この世界を支配することはできないんじゃない?
とシモーヌが尋ねた。

普通の夢食いにとってはそうね。
死者の魂を消すことは彼らにはできないから、
ただ邪魔だからという理由で私を眠りに閉じ込めた。
彼らはいつまでも消えない夢の器が欲しいだけなのよ。
でもアスラーダは別。
彼もすでに亡くなっている人の魂なの。
だった、というべきかしら。
今はモンスターみたいな姿になってしまったけれど。
奇妙なマスクをしていたでしょう。
あの下には髑髏の顔がある。


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アスラーダも夢食いの仲間じゃないの?
とサラがいった。

同じように夢に入り込む力を持っているけれど、
彼の目的は私の魂なのよ。
私と一体になれれば冥界の覇者になれると思っている。
彼にとって私は特別な存在らしいの。
それで夢食いの蜘蛛たちを利用して
私を繭の中に閉じ込め、
私からケイトを引き離してを燃やすように命じた。
私と一心同体のケイトが邪魔だったの。

じゃあなぜ、
あっさり引き下がったのかしら?

私が繭の中に寝ていると思ってやってきたら、
ケイトのおかげで私が目覚めたので、一旦諦めたのよ。
目覚めていれば私は自ら消滅することができる。
それを彼は一番恐れているの。


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繭の中で眠らされている状態を狙うなんて最低ね。
彼はまたやってくるんでしょう。
エリーゼ、この世界から離れて
現実世界に戻ってこない?
とシモーヌが言った。

そんなこと考えたこともなかった。
私は死者の魂なのよ。

生前には幽霊たちが見えて
話ができたって言ってたじゃない?
今度は立場が逆になるだけよ。
それと、お仲間もいるかも。
とサラが言った。


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シモーヌが呪文を唱えると、
中空に鏡の扉が出現した。

とりあえずサラたちの部屋に戻りましょう。
マンスフィールドさんの倉庫に行って、
オウルも常春の国に戻してあげないと。
とシモーヌが言った。


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ふむ。井戸の壁にへばりついていて、
話が聞けたぞ。
エリーゼ、お前への愛が
私をこんな姿でも生きさせているんだ。
諦めるわけにいかないよ。

さすがアスラーダ様。

なんだ、まだ夢食い蜘蛛がいたのか。
そうだ。お前、現実世界に行って、
あいつらの居所を確かめてくれないか。

私は夢食いですよ。
夢の世界ならともかく
人間たちの現実世界だなんて、
よほどの事情がないといけませんよ。
それにどうやって行くんです。

野原の川を下ればいいんだよ。
迷いの森を通っていけるはずだ。

そんなルートがあったんですね。


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夢食い蜘蛛は野原で小川を探していた。

いいこと聞いたな。
迷いの森に飛ばされてしまった
うちのボスにも報告しなきゃ。



解説)
続きます。
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