May 31, 2026
幸運な出会い

蜘蛛と毒蛇の睨み合いは続いていた。
蛇は木に上るのが面倒なので、
待ち受けているようだ。
蜘蛛は、集団で行動する夢食い蜘蛛特有の
仲間に対する緊急信号を発していたが、
もちろん仲間はいないので誰も来なかった。

しかし、その時、
巨大な金属製の球体がジャンプしてきて
毒蛇をペシャンコに押しつぶした。

球体からは手足が伸び、
上部のハッチが開いてシノが顔を出した。
あなたは、夢食い蜘蛛ね。
仲間を呼ぶ信号が聞こえたから、
とんできたの。
私は夢食いのシノよ。
と蜘蛛を見上げながらシノが言った。

蜘蛛は球体の上に飛び降りた。
シノさんですか。
私は名もない夢食い蜘蛛です。
助けていただきありがとうございます。
夢食い蜘蛛なら、この世界を
征服するために来たんでしょう。
あなたのお仲間は?
いえいえ、私はただ人を探しに来たんです。
仲間もいなくて一人きりなんです。

夢食い蜘蛛が人探しなんて聞いたことがないわ。
正直に言わないと消してしまうわよ。
本当です。本当です。
死霊のアスラーダ様に頼まれて、
エリーゼという幽霊を探しているんです。
エリーゼ?
聞いたこともない名前ね。
ふーん。確かに、この世界は広大で、
夢食い蜘蛛が束になってきても、
恐竜に踏み潰されるのがオチだから、
本気で征服しにきたとも思えないわね。
まあいいわ。
あなたの言葉を信じて
エリーゼ探しに付き合ってあげる。
私は世界征服をしたがる
あなたたちみたいな夢食いとは違って、
いろんな夢を渡り歩くのが好きな夢食いなの。
この世界でも観光してるのよ。
居心地良くて住み着いちゃってるけど。

とりあえず、私の小屋に行きましょう。
シノさん。
夢を渡り歩くって、その姿だと驚いて、
みんな目を覚ましちゃうんじゃないですか。
この姿はね。シェルっていうロボットの体。
私は今シェルに乗せてもらってるの。
どうぞよろしく、
とシノの胴体の中からシェルの声が聞こえた。

我が家が見えたわ。

いい感じの侘び住まいですね。
屋根が気に入っているのよ。

シェルの胴体の前部が開いて、
シノが中から降りると、
シェルの頭部のハッチから
カプセルが迫り出してきた。
驚きの連続です。
ここでシエルと二人で暮らしているの。
気に入ったら蜘蛛の巣はってもいいわよ。
解説)
続きます。
May 30, 2026
蜘蛛の受難

夢食い蜘蛛は不思議な力によって
「忘れられた夢の世界」に飛ばされていった。

夢食い蜘蛛が現れたのは、
深いジャングルの中の草の葉の上だった。

どうやらここが
「忘れられた夢の世界」らしいな。
しかし、いるのかいないのか
わからない人を探すなんて、
今度も無茶な話だなあ。

白いトカゲが現れた。
お、まずいぞ。
俺は夢食いで、普通の蜘蛛じゃないんだぞ。
といっても、通じそうもないな。

白いトカゲは襲いかかってきた。
ああ、また食べられて
消されちゃうのか。

その時、アロサウルスが現れて
俊敏にトカゲに飛びかかり、
おいしそうに食べ始めた。
おお、今のうちに逃げよう。

蜘蛛は一目散に逃げていく。
全く攻撃能力のない俺に
エリーゼの探索を命じるなんて
アスラーダ様は全く何考えているんだろう。

方角もわからず蜘蛛が当てもなく歩いていくと。
縞柄のいかにも毒蛇らしい蛇がにじり寄ってきた。

蜘蛛は急いで近くの樹木に這い登った。
蛇はとぐろを巻いて見上げている。
木に巻き付いて登ってくるのかなあ。
解説)
続きます。
May 29, 2026
異世界で

ここは迷いの森の中から通じている
数ある異世界の一つ。
ある種の夢食いたちの原郷のような所で、
彼らはここから夢の中に運ばれる。

夢の中で消えた夢食いたちは
双六の振り出しのように、
多くはここに戻ってくることになる。
現実世界に行った蜘蛛もここで蘇っていた。
おや、戻ってきたのね。
はい。

それで迷いの森の湧き水の流れを下っていけば、
現実世界に抜けられるって本当だったの?
はい。
でも現実世界は私たち夢食い蜘蛛にとっては、
とても征服なんてできそうもない、
厳しいところでしたよ。
運よく夢食いのサルバドールに出会って、
親切な魔族のマリアに案内してもらい、
アスラーダ様に命じられた目的を
なんとか果たせたんですが、
夢食いのドラゴンに食べられてしまいました。
アスラーダ様に報告しなくちゃ。

雷鳴が轟き、稲光に乗って
死者の魂の住む異世界から
アスラーダがやってきた。

あのエリーゼと二人の女の居処はわかったかい。
シモーヌとサラの家は突き止めましたが、
二人ともエリーゼと一緒に「常春の国」か
「忘れられた夢の世界」と言うところに
出かけたのではないかと聞きました。
夢の中に逃げるつもりなのか。
しかしシモーヌというのは相当な力を持つ魔族。
そこが魔族が作り出した世界なら好都合だぞ。
魔族は醒めない夢を作り出すことができるらしい。
そんな世界を乗っ取ることができれば、
お前たちはそこにずっと住んでいられるんだ。
俺の関心はエリーゼだけだ。
また協力して動こうと人面蜘蛛のボスに伝えてくれ。
それから、お前はその二つの世界の
どちらにエリーゼがいるのか調べて報告してくれ。

また無茶なことを。
どうやってその世界に行けばいいんです?
それは任せるよ。
そう言い残すと、
アスラーダは雲の中に消えていった。

耳障りな雷鳴を聞きつけた夢食いたちが
集まってきた。
ローゴスとその仲間たちだった。
なんだ人面蜘蛛、お前は、
あんな奴と仲間になっているのか。
強いものと組む方が楽だからね。
アスラーダの放つ死骸線を受けて
消えない夢食いはいないわ。
ふむ。しかしあいつは死霊だろう。
生者の夢にまで出てきて夢を
支配したいわけじゃないだろうに。
彼は特別なのよ。彼はエリーゼという
死者の魂と合体したいだけなの。
だからその目的を遂げた後は、
その夢の世界は私たちのものになる。

随分美味しい話じゃないか。
俺たちにも参加させてくれないか。
それはいいけど、
最後は夢の領土の取り合いになるわね。
弱肉強食は原理原則じゃないか。

その時、アスラーダと話していた蜘蛛が
戻ってきた。
ボス、またエリーゼの居場所を探す
役目を与えられました。
とりあえず「忘れられた夢の世界」と言うところに
行ってみたいんですが、
どうやっていけばいいんですか?
ほー。あそこにいきたいのか。
と側で聞いていたローゴスが言った。
あそこは、巨大な恐竜が住む広大な世界だぞ。
先住の夢食いもいるし、人間の魔族もやってくる。
だがいつまでも消えない夢というのが魅力で、
俺たちは征服しに行って酷い目にあったんだ。
一度征服に行って消し去られた場所に
再挑戦するためには待機時間が必要だが、
諦めたわけじゃない。
行く方法は覚えている。
お前は初めてだろうから、運が良ければ、
すぐに行けるよ。
ただ、どこに飛ばされるかはわからないがね。
「忘れられた夢の世界」の噂は
私も聞いているけど、
住みやすそうなところのようね。
ローゴス、アスラーダにさっきの話、
取り継いであげるから、この蜘蛛のことお願い。
と蜘蛛のボスが言った。
よし、わかった。
「忘れられた夢の世界」に行きたいと念じてみろ。
とローゴスは言うと、
蜘蛛に向かって呪文を唱えた。
解説)
続きます。
May 28, 2026
蜘蛛とマリア そのに

マリアは人間の姿に戻って、
サラたちの部屋を訪問した。
あらマリア。
珍しいじゃない?
と言われている。

ピーナツクリームサンド食べる?
サラはいないの?
最近ずっといないわ。
1週間ほど前にシモーヌと
赤い人形をぶら下げた女の子と一緒に、
マンスフィールドさんの倉庫に行くって出かけたきり。
多分そこから、「精霊たちの暮らす常春の国」とか、
「忘れられた夢の世界」にでも行ったんじゃない?
シモーヌが魔法の扉を使うから、
とてもついていけないのよ。
とメアリーが言った。

そうだったのね。
じゃあ、また出直してくるわ。
そういうとマリアは
ひっそりと棚に潜んでいた蜘蛛と相談している。

部屋を出たマリアは猫の姿になって、
再び部屋に忍び込んできた。
蜘蛛は部屋のテーブルの下で
蜘蛛の巣を張っていた。
あなた本当にこの部屋で
サラの帰りを待つつもり?
居場所が確認できたから
もう役目は終わったんですが、
迷いの森に帰る前に
一目本人を確認したいと思いまして。
役目ってどういうこと?

しかしその時、
オセロがやってきた。
オセロはマリアと蜘蛛を
興味深そうに眺めている。
ここは危険よ。
退散しましょう。

マリアと蜘蛛は高台の休憩所まで逃げてきた。
しかし子供達に見つかってしまった。
わわ。黒猫と大きな蜘蛛だ。
この赤いリボンの猫、きっとマリアさんだよ。
私、変身してるの見たことがある。
とすずが言った。
この蜘蛛はなんだろう。
家来なのかな。
珍しい蜘蛛ね。

マリアと蜘蛛は、なんとか
広場のドルフィンの2階にある
ベランダまで逃げ延びてきた。
ここまで来れば一安心ね。
ところでさっき役目って言ってたけど、
あなたがこの現実世界にきた目的はなんなの?
はい。お世話になっていて
言いにくいんですが、
エリーゼという幽霊の女の子を
追いかけているアスラーダ様に頼まれて、
居場所を突き止めることだったんです。
彼女と行動を共にしていたのが、
シモーヌとサラで、
エリーゼも一緒にいるのだろうと。
見つけてどうするつもり?
死霊のアスラーダ様がエリーゼを襲うのです。
そんなことのために。
私が手伝わされたわけ?
そこはもう。
なんとも申し訳なく。
私はそういう習性の夢食いですから。

その時広場から
ドラコが羽ばたいて飛んできた。
マリアは身を翻して
椅子の上に飛び退いた。
蜘蛛は後退りしている。

ドラコはテーブルに飛び移り、
一瞬のうちに蜘蛛を咥えると、
激しく噛みついた。
蜘蛛の姿が次第に薄れていく。

ドラコはダーダーと雄叫びをあげている。
マリアは人間の姿に戻った。
そうだった。
あなたはこの現実世界の財宝を守るために
迷いの森からきた夢食いドラゴンだったわね。
侵略者の蜘蛛は排除される定めか。

広場から舞がベランダにやってきた。
ドラコが歌の途中で急に
ベランダに飛んでいったから
驚いて様子を見にきたの。
何があったの?
短い間だけど友達だった蜘蛛が消えちゃったのよ。
ドラコが食べちゃった。
ドラコはまた下に舞降りていったわ。
あのドラコが。
やっぱりドラゴンって結構凶暴なのね。
その蜘蛛って美味しいのかしら。
その蜘蛛はね、夢食いの蜘蛛だったの。
だから食べられても死んだわけじゃなくて、
今頃は、迷いの森の別世界で蘇ってる。
それでアスラーダっていう死霊に
サラたちの居場所を報告してるのよ。
そうなの?
なんだかわからないけど
すごそうな話なんですね。
解説)
続きます。
May 27, 2026
蜘蛛とマリア

サルバドールとデュアンは、夢食いの蜘蛛を連れて、
郊外のジルの別荘の敷地にある魔術劇場に帰って来た。
あら、戻ったのね。
公園のお花見はどうだった?
とマリアに聞かれている。

造花の桜とはいえ、大きいので、
なかなか見応えがありましたよ。
蜘蛛がテーブルの上に
ぴょんと飛び移った。
あら、その蜘蛛は、
まさか夢食い?
そうなんです。
実は公園で出会ったんですが、
住む家がないようなので、
ここで暮らしたらどうかと提案して、
連れて来たんですが。
ハリーさんは?

そうだったの。
どうぞよろしく。
私はマリア。
私はハリーの妹ジャンヌの娘で、
ハリーは私の叔父よ。
ハリーはカーミラと一緒に
アフリカのホテルに逗留してて、
このところずっと留守なの。
でも、私が留守を預かってるから、
この魔術劇場に泊まりたいならOKよ。
デュアン。お部屋を用意してあげて。

おお、ありがとうございます。
お世話になります。
と蜘蛛が言った。

寝場所ができてよかったな。
どんな事情で現実世界に来たのか
知りませんが、
同じ夢食い同士なので、
何か助けてやれればと思いまして。
とサルバドールが言った。
人を探しているんです。
名前を思い出せないんですが。
一人は魔族の女性でもう一人は人間の女性です。
と蜘蛛が言った。

ふーん。
ここは魔族の館で、魔族ならハリー夫妻に私に、
私の母、それに今はいないけど、
ハリーの娘のヴィヴィアンも住んでいる。
町で人探しをするなら、その姿では不便でしょう。
ハリーかヴィヴィアンか
フミコかシモーヌがいれば、
人間の姿に変身させてあげられるけど、
あいにくそんなすごい魔法が使える人は今はいないわね。
あ、今おっしゃった名前で思い出しました。
探している魔族の人は確かシモーヌで、
人間の女性はサラです。
と蜘蛛が言った。
シモーヌはパリに家があるらしいけど、
いつも飛び回っているから居場所はわからない。
サラも最近はシモーヌと一緒に
行動してるみたいで不在がちよ。
でも彼女の家ならわかる。

私が案内してあげる。
というとマリアは呪文を唱えて、
黒猫の姿に変身した。
すごいですね。
と蜘蛛が感心している。
私ができる魔法は
この変身の魔法と、
箒にまたがって空を飛ぶことくらいなの。
この姿なら、あなたを守ってあげられるわ。
さあ、いきましょう。

鏡の扉を使って、
バー・デジャの店の奥に抜けてきたマリアと蜘蛛は、
店内を入り口に向けて進んでいる。
店内の常連客は、
赤いリボンをつけた黒猫が
マリアだと知っているので、
誰も気にしないようだ。

マリアと蜘蛛は広場に出てきた。
このあたりの野良猫は
みんな私の手下みたいなものだから安全よ。
でも子供達に見つかると、
面白がって何されるかわからない。
とマリアが言った。
あ、あのドラゴンも
夢食いじゃないですか。
とドラコを見て蜘蛛が言った。
そうだったわ。
見つからないうちに
行きましょう。
解説)
続きます
May 26, 2026
常春の国で そのに

サラたちは城の庭園から
外に出かけた。
この国を案内するついでに
住人を紹介するわ。
とシモーヌが言った。

お花畑に着いた一行は、
カマキリに出会った。
こちらエリーゼとエトナよ。
ここで暮らすことなったの。
嬉しいなあ。
ぜひ仲良くしてください。
エドは水を飲んでますよ。

あなたちはフィギアの精霊なのね。
リアルな造形でうらやましい。
とケイトが言っている。
毛糸人形も
おしゃれじゃないですか。
そうね。

一行は湖の風景を眺めている。
あっちの山々が境界になっているの。
行ってみましょう。

森に入ってしばらく行くと、
大きなトカゲに出会った。
これはこれは
可愛いチビちゃんだね。
ケイトよ。
ふーん毛糸か。
覚えやすい名前だなあ。

森はかなり続いていた。

ここ登るの?
いつかきた道ね。
とサラが言っている。

見晴らしがいいでしょう。

あの洞窟は火星人マルテの家。
今は福郎が留守番してくれてるの。
とシモーヌが言った。
ケイトは福郎の姿を見つけて
走って行っている。

洞窟の中で話をしている。
これで常春の国の住人の紹介が終わったわ。
あとはここに住んでいるマルテだけだけど、
彼はまだ戻ってきていないみたい。
マルテさんなら、
たまに戻ってこられますよ。
今はたぶんトロンさんの家においでです。
そうなの?
執筆は完成したのかしら。
まだ途中のようですよ。
ここに帰ってきて、
真っ白な環境で瞑想しているんです。
昔を思い出すためだとか言ってました。
解説)
続きます
May 25, 2026
常春の国で

シモーヌたちは鏡の扉を抜けて
常春の国にやってきた。
これはこれはシモーヌ様。
皆さんもご無事だったのですね。
先に戻られたオウル様から
事情をお聞きして、
みんなで心配しておりました。
とミネルバが言った。
オウルは起きてるの?
はい。
心配で昼も眠れないと
おっしゃられて。

一行は応接間に行った。
シモーヌ様。
私があの赤いマントの怪人の放った
奇妙な光線で消されてしまった後、
何が起きたのですか。
あれはアスラーダっていう死霊。
エリーゼが目覚めたのを知って、
井戸の中に退散していったわ。
アスラーダはずっとエリーゼに
つきまとっているらしいの。
諦めたわけじゃなさそうだから、
みんなで別世界に避難してきたのよ。
死霊っていうのは
最初にいた蜘蛛たちとは違うんですか。
仲間みたいだったけど蜘蛛たちは夢食いよ。
あの世界は死者の魂がとどまる
夢のような世界みたいで、
蜘蛛たちの目的はその夢を独占すること。
蜘蛛たちには死者の魂を消すことができないから
エリーゼを繭に閉じ込めて眠らせた。
アスラーダの目的は
眠っているエリーゼの魂と合体することだから、
夢食い蜘蛛たちを利用したのかもしれない。
彼らの関係はよくわからないんだけど。

そういえばオウルには
私が夢食い蜘蛛のボスに
食いつかれそうになった時
助けてもらったわね。
私は生身の体だから
別世界に本体があるわけじゃないの。
危ういところだった。
お礼を言わせてちょうだい。
なんのなんの。
その後もシモーヌ様を
お守りできなかったのが、
心苦しいです。

エリーゼとケイトは
城内を見てまわっていて、
ソヴァとイブーに出会った。
わあ。このお城にいるのは、
みんなフクロウの置物の精霊なのね。
私とよく似たもの同士。
とケイトが言った。
お友達になれそうで、
よかったわね。
あら、その曲は?
「エリーゼのために」ですよ。
とソヴァが言った。

大広間に行くと、
オイレとブンディとグーフォに出会った。
私ここに住みたいな。
とケイトが言っている。
ここは私が精霊たちのために作った世界。
ここならアスラーダにも
見つからないかもしれないわね。
しばらくそうしてみる?
とシモーヌが言った。
どおりで現実世界とは空気感が違う。
そうさせてもらおうかな。
とエリーゼが言った。
エドはどこかしら?
野原を駆け回ってますよ。

一行はお城の外に出た。
ここで暮らすのなら
アーキスには最初に紹介しておかなくちゃ。
彼には聞きたいこともあるし。
とシモーヌが言っている。

これはシモーヌ様とサラさんお揃いで。
なんだか新人もいますな。
エリーゼと毛糸人形のケイトよ。
しばらくここで暮らすことになったの。
それでちょっと尋ねたいことが。
なんでしょう。
エリーゼは夢食いの蜘蛛や
アスラーダっていう死霊に
追われているの。
あなたも元は世界を支配したがる
タイプの夢食いだったでしょう。
彼らのことを何か知らない?

死霊のことはよく知りませんな。
夢食い蜘蛛の連中ならよく知ってます。
あいつらは、よく他の夢食いと
一緒になって行動するんですよ。
まあ俺も同じようなもので、
前にはローゴスと組んで動いたんだが、
悪魔に捕まっちまった。
それはともかく、
一緒に行動しても最後は戦いになるんです。
お互い自分がボスだと思ってるからですな。
わはは。
ボスみたいな人面蜘蛛がいたけど、
あれは名前はなんていうの?
名前なんてないですよ。
夢に出てくる奇妙な怪物に
名前なんてつけないでしょう。
俺にも名前がなかった。
ローゴスってつけてくれたのは
悪魔のヴィヴィアンです。
まあ、もし夢食い蜘蛛や
そのなんとかいう死霊がやってきたら、
見つけ次第俺が追い払ってやりますから。

ケイトとフクロウのオイレが話している。
お花畑があるんですよ。
わあ、行ってみたい。
シモーヌとサラも話している。
アーキス、
随分頼もしそうなこと言ってたわね。
蜘蛛に名前がないなんて可哀想。
あの人面蜘蛛に何かつけてあげましょうよ。
クモコなんてどうかしら。
解説)
昨日は、急にネットにアクセスできなくなり
更新できませんでした。
先ほどなんとか復旧しました。
May 23, 2026
シビルの訪問など

シモーヌが常春の国に行くための
呪文を唱えようとしていた時、
鏡の扉が開いてシビルがやってきた。
あら。

シビル、久しぶりにお目にかかるわね。
ここに、人形を連れた幽霊が来ているでしょう。
会って見たいなと思って来たの。
さすがにシビルね。
エリーゼっていう子のことね。
どうしてわかったのかしら。

サラたちはシビルに
エリーゼとケイトを紹介した。
シビルは、眠る人の夢に働きかけて、
夢見るひとに精霊や死者のメッセージを伝えて、
巫女や予言者にさせる特殊な夢食いなの。
今はこの世界の北の孤島で休養中なんだけどね。
私の役目は人間と異世界をつなぐ仲介人のようなもの。
実はね。私はあなたのことを覚えている。
あなたは忘れているでしょうけど、
ずっと昔、赤い人形に精霊を宿らせた少女の噂を聞いて、
あなたの夢に入り込んだことがあったの。
そ、そうなんですか。
そういう霊媒気質の人は滅多にいないからね。
あなたは優しさと繊細な感受性を持っていて、
将来あなたなら偉大な巫女になれると思った。

そ、そうなんですね。
もしかして、それで私は突然、
幽霊が見えたり声が聞こえたりするようになったのね。
私はそのお手伝いをしただけ。
孤独だったあなたはそのことですごく喜んだでしょう。
でも残念ながらあなたは
若くして病気で亡くなってしまった。
その病気も、もしかしてシビルが関係していたの?
とサラが尋ねた。
私にそんな力はない。
ただ死者たちの魂とあまり親しくなりすぎたあなたが、
死者たちの魂の世界に招かれるきっかけに
なったかもしれないけれど。

そこにフミコがやって来た。
ケイト、ちょっと来て助けてくれない?
ミミコがケイトと遊びたいってむずかっているの。
わかった。
とケイトが言った。

ケイトの顔を見てミミコは喜んでいる。
こらこら、泣いちゃダメよ。
とケイトが言っている。
よっぽど気に入ったのね。

フミコはエリーゼに腕を組むように言って、
呪文を唱えると、ケイトの精霊を
エリーゼの腕の中に出現させた。
抜け殻になった人形の本体は
ベッドの上に倒れ込んでいる。
なんかちょっと軽くなった気がする。
とエリーゼが言っている。
でもこれじゃ、
私の本体は?
とケイトが言った。

本体は私がしっかり保管するから大丈夫よ。
とフミコが言った。
フミコが呪文を唱えると、
人形の本体は立ち上がり踊りはじめた。
何だか不思議な気分。
と精霊のケイトが言っている。

結局、エリーゼとケイトも
常春の国に一緒に行くことになり、
シモーヌが呪文を唱えている。
エリーゼから
今の出来事を聞いたサラが、
フミコは物品を操作する魔法を使ったのよ。
魔族は何でもありだからね。
と言っている。
解説)
続きます、
May 22, 2026
蜘蛛の行方

木の葉が一枚、迷いの森から川を流れてきて
森林公園の人工の滝を落ちていった。
蜘蛛が身を縮めて
木の葉にしがみついている。

落下した木の葉は滝壺の石の上に
ぺたりとへばりついた。
蜘蛛は手足を伸ばして
木の葉から這い出した。
ケイトもこうやって
現実世界に来たってわけか。

蜘蛛は公園の中を這い回っている。
あの二人の女は、何という名前だったかな。
彼女たちがケイトと一緒だったんだから、
どこかこの近くで出会ったんだろうけど、
どうやって居処を探せばいいんだ。
確か一人の女は魔族で、
一瞬の魔法で俺の仲間を消してしまったな。
魔族は絶滅危惧種と言われているが、
あれほどの魔族なら有名かもしれない。
しかし全く無茶な話だよ。

蜘蛛はベンチで休憩している
二人の男女を見つけた。

あら、大きな蜘蛛よ。
うん、おや、この蜘蛛は、
普通の蜘蛛じゃないな。
夢食いか。

なんですぐバレるんだ。
お、お前はもしかして。
私も夢食いだから、
同類はすぐわかるんだよ。
と男は言った。
そんなグルーチョ・マルクスみたいな顔の
夢食いは知らないぞ。

わはは。そうだったか。
私は変装しているんだよ。
去年のハロウィーンの時の変装のままなんだ。
この顔が気に入ってしまってね。
私の名前はサルバドール。
サルバドールって言えば、
有名な夢魔じゃないか。
素質のある芸術家の夢に取り憑いて、
インスピレーションを与えて才能を開花させるが、
最終的に破滅に至らしめることもあるという。
あんたがあのサルバドールなのか。
ここ2年ほどは仕事を休んでいるがね。
ハリーという高名な魔族と出会って、
今では彼の魔術劇場に厄介になっているんだ。
今日は、魔術劇場で日頃世話になっている、
デュアンと一緒に、公園に桜見物に来たというわけだよ。

蜘蛛はテーブルに飛び移った。
お洒落なストライブの蜘蛛さんなのね。
おまえは人間の女だろう。
俺が怖くないのか。
俺が話しても驚かないのか。

私は見かけで判断しないの。
変わった魔法生物をたくさん知っているし、
魔術劇場に遊びに来る
百猫の王シュレディンガーとも友達。
それに「シャーロットの贈り物」は愛読書よ。
なんだなんだこの展開は。
そんな有名な夢食いも知り合いなのか。

どんな事情で現実世界に来たのか知らないが、
お前も夢食いなら、住む家もないんだろう。
よかったらハリーに紹介してやるよ。
頼めばきっと魔術劇場に泊めてくれるよ。
そうなさいよ。
とデュアンも言った。
うう。
それはありがたい。
よろしく頼むよ。
解説)
続きます。
May 21, 2026
みすずの家で

三人は鏡の扉を抜けて
みすずの家にやってきた。
シモーヌは早速エリーゼを
みすずに紹介している。
フミコのお知り合いですって?
フミコだったらミミコの世話をしてるわ。

フミコは赤い人形を下げたエリーゼの姿を見て、
驚いている。
2年ぶりの再会ね。

この人形、ケイトって言ったっけ。
精霊は深く眠っているみたい。

フミコが手をかざすと、
身震いしてケイトは起き上がった。
ここはどこでしょう?
また言ってる。
いつも説明が難しいわね。
ここは忘れられた夢の世界よ。
あ、あなたはフミコ。
成仏したんじゃなかったの?
成仏って、ケイトは仏教徒だったっけ。
あなたたちの方こそ、
幽霊になって出てきたのかしら。

ケイトはミミコと遊んでいる。
お茶の用意ができたので、
応接間に来ない?
とみすずが声をかけにきた。

みんなは応接間でくつろいでいる。
ディアナも呼ばれてエリーゼに紹介された。
ここは私たちが住んでいる、
「忘れられた夢の世界」よ。
夢食いや精霊や人間やロボットも
一緒に暮らしているけれど、
幽霊のお客様は初めて。
とみすずが言っている。

ことのあらましを聞いたフミコが言った。
ケイトが公園で拾われたおかげで、
こんなふうに二人と再会できたのね。
これもエリーゼとケイトの深い結びつきがあったから。
私のためにケイトの精霊の宿った人形を
現世から運んでくれたのはフミコ。
そこまで辿ればあなたに救われたのよ。
とエリーゼが言った。
でもその深い結びつきが、
あなたたちをその状態にとどめているとも言える。
因果の支配する現象の世界に。

エリーゼとケイトの関係は、
私とディアナの関係によく似てるわ。
ディアナも私が大事にしていた鹿のフィギアに
宿った精霊なの。
ここは亡くなった祖母の見ていた夢の世界。
魔族だった祖母は生前の思い出を込めて、
この消えない夢の世界を作り上げた。
この世界との結び目にもディアナがいたわ。
とシモーヌが言った。
お二人はお顔がそっくりなのね。
私もエリーゼそっくりに
変身させてもらえないかな。
とケイトが言った。
それは無理。

応接間での話し合いが終わった後で、
フミコとエリーゼは湖畔に散歩に出かけた。
あなたは親切な幽霊だと思っていたけど、
何千年も前に亡くなって、
ずっとあの世界にいた魔族の魂だったなんて、
驚いたわ。そんなに長い間消滅しなかったのは、
やはり現実との強い結びつきがあったの?
私は古代の魔族の娘として生まれ、
戦争が起きた時リーダーだったの。
それで私が死んだ時、仲間たちが
魔族に伝わる復活の呪文を唱えた。
その時は復活できなかったけれど、
その呪文は書き残されて伝えられたのよ。
数千年ののち、その呪文を唱えてくれた人がいたの。
私たちの都は滅びたけれど、
都の森には私の復活を信じて待っている者もいた。
グリーンマンって言うんだけどね。
数千年前、私の魔法によって生まれた森の精霊よ。
彼が私の頭蓋骨を守っていてくれたの。

何千年もあなたを待っていたなんて、
すごい結びつきね。
彼は守護霊みたいに、
私のいるところに、どこでもついてくる。
この世界にも来ている筈よ。
恥ずかしがり屋で、姿はなかなか現さないの。
私も、アスラーダっていう
ストーカーみたいな死霊に
付き纏われているの。
アスラーダもそんな内気なタイプだといいんだけど。

エリーゼは現実世界より、
こういう夢の世界のほうが住みやすそうね。
ケイトも元気になって生き生きしてる。
シモーヌ、これからどうするの?
オウルの様子を見に行ってくる。
私を危ういところで助けてくれた、
お礼も言わなくちゃ。
じゃあ、私も行くわ。
解説)
続きます。
May 20, 2026
新興地区の散歩

三人の会話は続いていた。
マンスフィールドさんが、
赤い人形の話をしていたわね。
あれはあなたたちのことなんでしょう。
あなたが亡くなってから
ケイトはどうしたの?
ケイトは私と一緒にお墓に葬られたの。
私には身寄りがなかったし、
動いたり話したりする噂がある人形は、
みんな怖がって引き取り手がなかったから。
それにそれがケイトの望みでもあったの。
じゃあどうやってケイトは?

もうずいぶん昔のことよ。
私が亡くなって
あの世界に招かれた時、
とても親切な死者の魂に出会って、
その人がお墓の中のケイトの人形本体を
あの世界に呼び寄せてくれたの。
そんなことができるなんて、
信じられなかったけれど、
特別な力を持つ霊魂っているのよ。
その霊魂って、今も
あの世界のどこかにいるの?
2年前に突然いなくなったの。
井戸を通って幽明界に行ったのか、
現実世界との結びつきが消えて、
魂が解放されたのかもしれないわ。

ここ見晴らしがいいわね。
この新興地区は発展してるみたい。
私も来たの久しぶりだし、
もう少し散歩してみましょうか。

お勘定お願いします、
と言っている。

店を出ると、
三人は足の向くまま
繁華街を歩き始めた。

いろんなお店があるわね。

なんか最近天気がいいわね。
もう初夏の気分。

さっきの話の続きだけど、
親切にしてくれた霊魂って、
名前をフミコって言うんじゃない?
とサラが言った。
え、どうしてわかったの?
やっぱり言ってみるものね。特別な力を持っていて、
2年前に突然いなくなったって言ってたから。
フミコのことじゃないかなって。
フミコは2年前の7月に現実世界で蘇ったの。
今は「忘れられた夢の世界」って呼ばれてる所にいるわよ。

三人はフミコの話題で盛り上がり、
話しながら歩いていて、いつの間にか、
新興地域の外れまで来ていた。
フミコと知り合いだったとは驚きね。
じゃあ、忘れられた夢の世界の
みすずの家に会いに行きましょう。
とシモーヌが言った。
いったん倉庫に戻るの?
その必要はないわ。

シモーヌは呪文を唱えて、
鏡の扉を出現させた。
こんな道端に扉を出しちゃって、
大丈夫?
使ったらすぐ消える設定だから大丈夫よ。
人目につかないうちに行きましょう。
解説)
続きます。
May 19, 2026
赤い人形 そのきゅう

三人でマンスフィールドさんの倉庫に
向かうため、シモーヌが呪文を唱えている。

倉庫の鍵を貸してもらったけど、
屋内に抜けてきたから必要なかったわね。
魔法を使うのは秘密だから、
これでいいのよ。

精霊の宿ったフクロウのコレクションは
どこだったかしら。

あったあった。

シモーヌは、オウルのぬいぐるみに、
常春の国に送るための、
呪文をかけている。
このコーナーは
不思議な雰囲気。
何か感じる?
精霊の宿った置物が勢揃いしてるのよ。

さてと。
これでオウルを送れたわ。
これからどうしましょう。
せっかく来たんだから、
ちょっと散歩でもしない?
とサラが言った。

三人は倉庫を出た。

このあたりは倉庫街なのね。
お昼時なのか誰もいない。

ちょっと賑やかになってきた。
もうここは隣町の新興地区よ。
お腹空かない?

このお店知ってる。
2階が簡易食堂になってるのよ。
とサラが言った。
ふーん、いつ来たの?
去年の7月の初め。
マンスフィールドさんとディアナと
ジョー軍曹と4人だった。

三人はコーヒーと肉まんを
注文して休憩している。
エリーゼ、
久しぶりに現世に戻った感想はいかが?
知らない町だけど、
普通に生きている人の姿が懐かしいわ。
肉まんはマンゴー亭の方が
美味しいわね。
とシモーヌが言った。
去年来た時も、
ここでコーヒーと肉まんを頼んで、
ジョー軍曹が同じこと言ってた。
とサラが言った。
解説)
続きます。
May 18, 2026
赤い人形 そのはち

シモーヌたちはサラたちの部屋に
戻ってきた。
おかえりー。
こちらは、エリーゼさんよ。
あ、ケイトは本体に戻ったのね。
エリーゼさんの姿は見える?
何言ってるの?
よく見えるわよ。
どうぞよろしく。
私はメアリー。
そこにいるのはジェット。

こちらはジェイソンとメメ。
棚の上の頭部のオブジェは
骸骨のお父さんよ。
ああ、ケイトの本体を
預かってくださっていたのね。
それに、あなたたちは。
とエリーゼが言った。
おお、あなたはもしかして。
と骸骨のお父さんが言った。
メメもしきりにメーメーと言っている。
私たちと同じ身の上なんですね。
とジェイソンが言った。

シモーヌに、魔法で深い眠りから
起こしてもらったケイトは
エリーゼと話している。
エリーゼ、眠りから覚めたのね。
私も眠ってたみたいだけど、
ずっと会いたかった。
私もよ。

とりあえず広場に案内するわ。
そこでマンスフィールドさんに断ってから、
彼女の倉庫に行って、オウルっていう
ぬいぐるみのフクロウの精霊を常春の国に送るの。
オウルはアスラーダにやられちゃったけど、
シモーヌを助けて活躍してくれたのよ。
とケイトがエリーゼに言った。
それは私からもお礼を言わなくちゃね。

サラとシモーヌとエリーゼとケイトが
広場に出かけた後、メアリーたちが話している。
ふーん。あのエリーゼっていう人、
幽霊だったの。それで、
あなたたちと同郷だったの?
同郷って言っていいのかどうか。
亡くなってから長い間
同じような場所にいたのは確かなんです。
それですごく懐かしくて。
死霊って言えば、
海賊船の船長のクックドゥーもそうだったわね。
でもなぜエリーゼさんだけ、
骸骨じゃないのかしら。
見かけだけかもしれませんよ。
怖いですか。
あなたたちの本当の姿、
見慣れているからねー。

三人は広場にやってきた。

かわいい人形ね。
あなたもなんだか透き通るようお肌。
コンテストに参加しませんか?
と舞が言っている。
なんですかそれ。

サラたちはマンスフィールドさんに
声をかけた。

あのー。倉庫に行ってみたいんですけど。
全然構わないわよ。
あそこの展示は一般にも公開してるから。
入り口の鍵を貸してあげる。
あら、その毛糸の赤い人形。
リリスが言ってたケイトっていう人形なのかしら。
そうです。
リリスと話したんですか。
そうなの。赤い人形のことを聞かれたんだけど、
私が思い出したのは、
不思議な少女と赤い人形の話。
いろんな人が、赤い人形が少女と話をしたり、
人形が紅茶の道具は運んだりしてるのを目撃して、
その界隈で噂が広がり、
人形が病気になった少女を
看病していたっていう人まで出てきて、
人形コレクターの間でも話題になったらしいの。
でもずっと昔のことよ。
解説)
続きます。
May 17, 2026
赤い人形 そのなな

エリーゼは二人に紅茶を入れた。
ケイト、さっきから、
おとなしいわね。
さっき泣きじゃくって、
私を呼び覚ましてくれたせいで、
力を使い果たしたのよ。
今は深く眠っている。
とエリーゼが言った。

あなたとケイトは特別な関係みたいね。
ケイトはあなたの力を弱めるために、
二人が引き離されたとも言っていた。
それと、
ここはあなたの見ている夢の世界なんでしょう?
夢食いが夢の中に侵入するのは珍しいことじゃない。
でもアスラーダは、ここは冥界に近い夢の世界で、
あなたがもう死んでいるっていっていた。
とても謎が多いわ。
とシモーヌが言った。
うまく説明できそうもないけれど、
ここは私の見ている夢の世界というだけじゃないの。
それに、ケイトは否定したけど、
アスラーダが言ったように
私はもう死んでいるのよ。
とエリーゼが言った。
死んでいるって、
こうしてちゃんと話しているじゃない?

この体は幽霊のようなもの。
私は幼い頃両親を亡くして
一人ぼっちになったの。
母が作ってくれた毛糸の人形、ケイトだけが、
私の友達だった。
彼女にいつも話しかけているうちに、
ある日、人形に精霊が芽生えて、
お話ができるようになったの。
それから私には精霊の声ばかりでなく、
亡くなった魂たちの声も聞こえるようになった。
生前の世界に執着して彷徨っている魂たち。
自分が死んでしまったことにまだ気付かない魂たち。
怖い幽霊みたいに言われるけど、
そんな人たちだけじゃないのよ。
私が病気になって死んだ時、
その霊たちが私の魂をこの世界に招いてくれたの。
それは私が病床で見た夢の続きだとも言えるけれど、
死者たちが魂のために用意されていた世界に
招いてくれたんだと思う。
ここには深い森と草原、その果てには
砂漠のような風ばかりが吹く大地が広がっている。

もしここがそんな世界で、
あなたも招かれた死者の一人にすぎないんだとしたら。
夢食いの蜘蛛があなたを繭に閉じ込めて眠らせても、
この世界を支配することはできないんじゃない?
とシモーヌが尋ねた。
普通の夢食いにとってはそうね。
死者の魂を消すことは彼らにはできないから、
ただ邪魔だからという理由で私を眠りに閉じ込めた。
彼らはいつまでも消えない夢の器が欲しいだけなのよ。
でもアスラーダは別。
彼もすでに亡くなっている人の魂なの。
だった、というべきかしら。
今はモンスターみたいな姿になってしまったけれど。
奇妙なマスクをしていたでしょう。
あの下には髑髏の顔がある。

アスラーダも夢食いの仲間じゃないの?
とサラがいった。
同じように夢に入り込む力を持っているけれど、
彼の目的は私の魂なのよ。
私と一体になれれば冥界の覇者になれると思っている。
彼にとって私は特別な存在らしいの。
それで夢食いの蜘蛛たちを利用して
私を繭の中に閉じ込め、
私からケイトを引き離してを燃やすように命じた。
私と一心同体のケイトが邪魔だったの。
じゃあなぜ、
あっさり引き下がったのかしら?
私が繭の中に寝ていると思ってやってきたら、
ケイトのおかげで私が目覚めたので、一旦諦めたのよ。
目覚めていれば私は自ら消滅することができる。
それを彼は一番恐れているの。

繭の中で眠らされている状態を狙うなんて最低ね。
彼はまたやってくるんでしょう。
エリーゼ、この世界から離れて
現実世界に戻ってこない?
とシモーヌが言った。
そんなこと考えたこともなかった。
私は死者の魂なのよ。
生前には幽霊たちが見えて
話ができたって言ってたじゃない?
今度は立場が逆になるだけよ。
それと、お仲間もいるかも。
とサラが言った。

シモーヌが呪文を唱えると、
中空に鏡の扉が出現した。
とりあえずサラたちの部屋に戻りましょう。
マンスフィールドさんの倉庫に行って、
オウルも常春の国に戻してあげないと。
とシモーヌが言った。

ふむ。井戸の壁にへばりついていて、
話が聞けたぞ。
エリーゼ、お前への愛が
私をこんな姿でも生きさせているんだ。
諦めるわけにいかないよ。
さすがアスラーダ様。
なんだ、まだ夢食い蜘蛛がいたのか。
そうだ。お前、現実世界に行って、
あいつらの居所を確かめてくれないか。
私は夢食いですよ。
夢の世界ならともかく
人間たちの現実世界だなんて、
よほどの事情がないといけませんよ。
それにどうやって行くんです。
野原の川を下ればいいんだよ。
迷いの森を通っていけるはずだ。
そんなルートがあったんですね。

夢食い蜘蛛は野原で小川を探していた。
いいこと聞いたな。
迷いの森に飛ばされてしまった
うちのボスにも報告しなきゃ。
解説)
続きます。
May 16, 2026
赤い人形 そのろく

お前たちは夢食いじゃないな。
人間と、さっき魔法を使ったのは魔族か。
こんなところまで来るとは、
お前たちも死に損ないか。
それにしても仲間を一瞬で消し去るとは。
仲間っていうことはあなたも夢食い?
ここはエリーゼとケイトの住んでいた
夢の世界でしょう。
侵略者は容赦しないわよ。
とシモーヌが言った。

ここがエリーゼの夢の世界だと?
たしかにそうも言えるが、
正確ではないな。
ここはお前たちが想像するより
ずっと冥界に近い夢の世界だ。
夢食いばかりでなく、
死者の魂もやってくる。
何も知らないようだから教えてやるが、
エリーゼはすでに死んでいる。

そんなの嘘よ。
とケイトが叫んだ。
ケイトはエリーゼに縋り付いている。
エリーゼ、エリーゼ。
すると、エリーゼの目が開いた。

エリーゼはゆっくり立ち上がった。
おや、これは驚いた。
おまえ、目覚めたのか。

私を繭に封じて眠らせておけば、
思い通りになると思ったのね。
ここから立ち去りなさい。
さもないと。
とエリーゼが言った。

わ、わかったよ。
というとアスラーダは
井戸の中に
吸い込まれるように消えていった。

この井戸は?
幽冥の世界に通じているのよ。
蓋をすることはできないの?
これは通路になっていて、
そういう仕組みだから。

オウルは消えちゃったのね。
とサラが言った。
大丈夫よ。
オウルの精霊は、この世界で消えても、
元のフィギアの体に戻っただけ。
今頃はマンスフィールドさんの倉庫で
眠っているはずよ。
とシモーヌが言った。

まずは自己紹介しなくちゃね。
こちらはサラ、私は魔族のシモーヌ。
私たちは川に流されていた赤い人形ケイトを拾って、
ケイトからあなたのことを聞いて、
ケイトの記憶を辿って、
現実世界からこの世界にきたの。
ケイトを拾ってくれた上に、
わざわざみなさんで私を助けてくれたのね。
とてもとても感謝します。
とエリーゼが言った。

家の中は蜘蛛の巣だらけだけれど、
屋外にテーブルセットがあるはず。
こっちよ。
とエリーゼが案内している。
解説)
続きます。
May 15, 2026
赤い人形 そのご

大きな人面蜘蛛は
シモーヌたちににじり寄ってきた。
何あれ。

大きな蜘蛛の上に
別の蜘蛛が乗っているみたい。
みんな離れて。
とシモーヌが叫んでいる。

シモーヌが呪文を唱えようと
手をかざすと、
蜘蛛の放った黒い糸が、
その手に絡み付いてきた。

強い力で引っ張り込まれたシモーヌは、
組み敷かれている。
お前は魔法を使えるのか。
その口を聞けないようにしてやる。

その時、後ろからオウルが蜘蛛に飛びかかり
鋭い嘴で蜘蛛の首をちょんぎった。
やったねー。
とケイトが歓声を上げている。
蜘蛛の姿は次第に薄れていく。

その時、
奇妙な姿のモンスターが
井戸の中から現れた。
おやおや、
チームプレイは素晴らしいものだな。

モンスターが、
右手から紫色の光線を放つと、
オウルの体が切り裂かれた。
オウルの姿は次第に消えていく。
オウル!

どうだ、いい感じだろう。
この光線は死骸線というのだ。
変な名前つけてるのね。
あなたは誰?

私の名はアスラーダ。
アスラって、
阿修羅のことね。
興福寺の阿修羅像は、
もっと美形じゃないの?
ややこしいことを言うなよ。
あいつとは違うんだ。
私の名には語尾にダがついているだろう。
蛇足付きなのね。
私を怒らせるなよ。
解説)
続きます。
May 14, 2026
赤い人形 そのよん

一行は森の中に
分け行っていた。

随分深い森ね。

これは行き止まり?
ここよ。
ここに私たちの小屋があったの。
壁が草木に覆われてるみたい。
左に行くと井戸があるはず。
とケイトが言った。

井戸を見つけた。
気をつけて、
蜘蛛がいるわ。

なんと大きな蜘蛛が
網の目のような繭の上にいる。

繭の中に女性の姿が見える。
あれはエリーゼ、
とケイトが言った。

シモーヌたちに気がついた
蜘蛛たちは襲ってきた。
シモーヌは身構えて、
咄嗟に呪文を唱えた。

薄煙が立ち上り、
周辺は一瞬光に覆われた。
蜘蛛たちはひっくり返って
次第に姿が薄れていく。

エリーゼ。
大丈夫?
エリーゼは身動きしない。

その時、草むらから
人面の大きな蜘蛛が現れた。
よくもやってくれたわね。
と言っている。
解説)
続きます。
May 13, 2026
赤い人形 そのさん

シモーヌたちはケイトを連れて
応接室でオウルと話している。
そういうわけで、
新しい住人になるかもしれないケイトよ。
本人の希望をまだ聞いてないんだけど。
ここは住みやすそうなところだけど、
私はエリーゼのことが忘れられない。
エリーゼのいた世界に帰りたい。
とケイトが言った。
あなた、燃やされそうになって、
逃げてきたんじゃなかったの?

そうなんだけど、どうしても、
エリーゼと一緒じゃなくちゃ駄目なの。
困ったわね。
それじゃ一緒に探しにいきましょう。
シモーヌ様、そんなことできるんですか。
どんな世界かもわからないんでしょう。
とオウルが言った。

ケイトが、その世界の記憶の風景を
思い出して、心に思い浮かべてくれれば、
鏡の扉を使っていけるわ。
シモーヌさん。
あなたってすごい魔法使いなんですね。
頑張って思い出してみるわ。

ケイトは記憶の風景を脳裏に思い浮かべた。
シモーヌが呪文を唱えると、
ありありとその風景が部屋の背後に現れた。

シモーヌがさらに呪文を唱えると、
鏡の扉が中空に現れた。
さあ、行きましょう。

四人は鏡の扉を抜けて
別世界に入り込んで行った。
オウル。
あなたも来ちゃったの?
それはもう。
創造主さまの護衛ができて
光栄です。

随分広々としているわね。
ケイト、ここがどんな世界なのか、
聞いてなかったけど、
教えてくれる?
エリーゼと私が二人で暮らしていたの。
そしたら、ある日突然、
黒い蜘蛛の群れがやってきて、
エリーゼは囚われてしまった。
私たちは引き離されて、
蜘蛛たちが私を火にくべて
燃やすって相談していたから、
必死になって逃げ出したら
川に落ちちゃったの。
二人だけで暮らしていたとしたら、
それはエリーゼっていう人の見ていた
夢の世界かもしれないわね。
だとしたら、襲ってきたのは
夢食いの可能性が大きいと思うわ。
と側で聞いていたシモーヌが言った。

夢食いって、あのアーキスみたいな
怪物ですか。
とオウルが尋ねた。
アーキスもそうね。
夢食いも色々いるみたいなのよ。
ところで、エリーゼが囚われている場所って
どこなのかしら?
あの森の中よ。
とケイトが言った。
大きな蜘蛛が何匹もいるの。
ほんとに助け出せるのかしら。

それはやってみないとね。
三人は森に向かって行った。
解説)
続きます。
May 12, 2026
赤い人形 そのに

サラたちは森林公園から
部屋に戻ってきた。

サラ、シモーヌ。
おかげで公園見物楽しかったわ。
私これから広場に行って、
マンスフィールドさんに
人形のこと、聞いてみる。
何かわかるといいけど。
と言って、サラは帰って行った。

この人形どうしたの。
公園の川に落ちていたのを拾ってきたのよ。
赤い毛糸で
ぐるぐる巻きになってるのね。
これなら私にも作れるかな。
そうかもね。
この人形には精霊が宿っているの。
今は精霊は別世界に行っていて、
抜け殻状態だけど、
ここで保管することしたの。

メメがしきりにメーメーと言っている。
あら。
どうしたのかしら。

シモーヌは立ち上がって呪文を唱え、
鏡の扉を開けた。
私これから常春の国に行って、
人形の精霊に話を聞いてくる。
サラはどうする?
もちろん、一緒に行くわ。
何がどうなってるのか知りたいし。
あ、その人形は、
なくさないようにしてね。
とサラは、みんなに言った。

ジェイソンは人形を首から下げた。
僕がしっかり保管します。
ジェイソン、さっきから
メメがメーメー言ってるけど、
何言ってるの。
懐かしくて嬉しがっているんですよ。
僕もなぜだか、懐かしいんです。
わしもさっきから
そんな感じがするんだ。
と骸骨のお父さんも言った。

シモーヌとサラは、鏡の扉を使って、
常春の国のお城の一室に出てきた。
これはこれはシモーヌ様。
ミネルバ。
赤い毛糸の人形見なかった?
おお、その人形なら、
お城の入り口に倒れていたので、
客室のベッドに運んでおきました。
また新しい住人になる精霊なんですか。
まだわからないのよ。
話を聞きたいので
案内してくれるかしら。
はい。

よく眠っているようね。
声をかけても応答がない。
また魔法で起こしましょう。
というとシモーヌは呪文を唱えた。
すると薄い煙が立ち上り。
あたりが一瞬クリアになった。

人形はブルブル身震いして
飛び起きた。
おお、ここはどこでしょう?
また同じこと言ってる。
無理ないわね。
ここは精霊たちの暮らす常春の国よ。
気分はどう?
すごくスッキリしてる。
体もなんだか身軽な感じ。
今のあなたは精霊状態なの。
元のあなたの体は別の世界にある。
この世界では、その姿で生きられるのよ。
そうなの?魔法で作った世界なのね。
あ、あなたたちのこと覚えてる。
私また眠っていたのね。
そうみたい。
私はシモーヌ、隣にいるのはサラ。
あなたのお名前は?
ケイトっていうのよ。
毛糸って、
覚えやすそうな、いいお名前ね。
ケイトよ。
解説)
続きます。
May 11, 2026
赤い人形

ソローとリリスとトマソンは
お花見の場所に戻ってきた。
その人形は?

人工の滝の岩の上に
落ちていたのよ。
上流から流れてきたみたい。
精霊が宿っているみたいなんだけど、
反応がないの。
深く眠っているみたいね。
とシモーヌが言った。

シモーヌは人形を
そっと草の葉の上に横たえた。
上流っていうと、
迷いの森の方ね。
とサラが言った。

あの人工の川は迷いの森から流れてくる、
夢見の水を利用して作られているって、
ジルさんから聞いたことがあります。
とソローが言った。
迷いの森から流されて来たのなら、
この人形、この世界のものじゃないわね。
迷いの森は異世界の交差点のようなところだって、
局長が言ってたわ。
とサラが言った。

なんか怖そうな話してるなあ。
と喜六は思っている。

起こしてみましょうか。
そんなことできるんですか。
ショックを与えるのよ。
そういうとシモーヌは
呪文を唱えた。
すると薄い煙が立ち上り、
あたりが一瞬クリアになった。

人形はブルブル身震いして
立ち上がった。
ああ、ここはどこでしょう。
ここは森林公園の中よ。
と言ってもわかるかな?
あなたは川に流されてきたらしいの。

ああ、私を拾って
救ってくださったんですね。
私は燃やされそうになって、
逃げてきたんです。
何か悪いことでもしたの?
エリーゼの力を弱めるために。
エリーゼと私は一心同体なの。
ああ、今頃エリーゼは。
というと人形は、
力が尽きたようで、
また眠り込んでしまった。

何かのっぴきならない
事情があったみたいね。
これからどうしましょう。
まずもっと詳しく事情を聞くために、
この人形の精霊を、常春の国に送ろうと思うの。
精霊たちの世界に行けば、
きっと元気を取り戻すはず。
人形の本体はサラの家で預かって。
わかった。
あと、リリスとトマソンさんは、
赤い人形のこと、
マンスフィールドさんやハリーに
聞いてみてくれる?
コレクターや研究家の間で
知ってる人がいるかもしれない。
迷いの森の別世界から
流れて来たんでしょう?
そうなんだけどね。
あの人形、私たち人間の姿を見ても
全然驚かなかったし、
話しかけても普通に答えてた。
別世界って言っても、
誰かの見ている夢の世界かもしれない。
解説)
続きます。
May 10, 2026
公園の散歩など

ソローは、公園を
案内しましょうと言っている。
僕も一緒に行ってもいいかな。
もちろんよ。

私は彫像のある花壇がみたい。
僕は人工庭園の名残だという、
人工の滝川が見たいなあ。
などと言いながら、
三人は出かけて行った。

サラとシモーヌは、
喜六の魔法の練習を見ている。
バナナの皮を元の大きさにできたわね。
オレンジの皮も小さくしてね。
はい。
ゴミはまとめてもって帰らなくちゃ。

シモーヌが口笛を吹くと、
巣箱から野鳥が飛んできて、
シモーヌの手に留まった。

シモーヌさん、
もしかして野鳥と会話できるんですか。
そういう魔族もいるみたいけど、
私はダメね。
精霊が宿っていれば、
話は別だけど。
でも何を考えているかは、
なんとなくわかるものよ。
何考えているんですか?
お腹が空いたとか。
天気が悪くなるとか。

その頃三人は、公園内を巡って、
正面の入り口付近に来ていた。
この綺麗な花壇も造花なんですね。
ジルさんの趣味で、
全体が人工庭園だったからね。
今では植林もしてるけど。

もう一人の管理人エドワードに出会った。
エドワード、
これから人工の滝川を見に行くんだけど、
橋の上から見たいんで鍵を貸してくれる?
ああいいよ。
あそこまで行くなんて珍しいね。
行っても水量は減ってるよ。

三人は人工の川が見えるところまでやってきた。
この向こう岸は、迷いの森で、
境界のフェンスがあるだけだから、
この橋を渡っても行き止まりだよ。
でも橋の上からは見晴らしがいいんだ。
と言いながらソローは橋の入り口の
柵の扉を鍵で開けていいる。
すぐそこが滝なのね。
確かに水が流れ落ちて
飛沫をあげる水音が聞こえる。

三人は橋の上から
川の風景を眺めている。
あれ、あそこに何か赤いものが。
あれは人形みたいだね。
僕が河床に降りて取ってこよう。
とソローが言った。

人形はわずかな滝の水流に流されて
下の石の上に移動していた。
いそいで取らないと、
川に流されちゃう。
とソローが言っている。
解説)
続きます。
May 09, 2026
魔法の練習 そのに

喜六の魔法の練習は
続いていた。
今のは怪しい光が出たでしょう。
もう少し肩の力を抜いてみて。
とシモーヌが言っている。
わかりました。
今度は、このバナナで。
喜六は肩の力を抜いて呪文を唱えた。
するとバナナは発光せず、
薄い煙が立ち上り。

なんとバナナは
巨大なバナナに変化した。

これってしっかり
中身が詰まってるわ。

飲みかけのオレンジジュース持って来たけど、
これ絞った方が新鮮ね。

それ食べすぎじゃない?

シモーヌさんも
すごい呪力をお持ちだと、
ハリーさんが感心してましたよ。
この巨大化の魔法は使わないんですか。
とトマソンが言った。

必要ないから、普段は使わないわ。
でも呪文は覚えてる。
久しぶりにやってみましょうか。

シモーヌは静かに呪文を唱えた。

薄い煙が立ち上り、
なんと巨大なチップスターの
筒が現れた。
おお、こういうオブジェ作るの、
すごく大変なんですよ。
とトマソンが言っている。
でも空っぽの筒は
ゴミが粗大ゴミになっちゃうだけから、
元に戻すわ。
そう言ってシモーヌは再び呪文を唱えた。

その時、ざわざわと
草むらの揺れる音がして、
茂みから公園管理人のソローがやってきた。
あ、どうも。
覗き見するつもりはなかったんですが、
青い車が公園の裏口から入ったって聞いて、
様子を見に来たんです。
すごいものを見せてもらいました。

今のは魔法ですか。
物を大きくしたり元に戻したり。
魔術劇場のハリーさんや
娘さんのヴィヴィアンさんが
魔法使いだっていうのは有名ですが、
シモーヌさんも。
そうなの、私たちは魔族って呼ばれている。
今見たことを誰かに話したら、
カエルにしちゃうわよ。
というのは冗談だけど、
内緒にしといてね。
わ、わかりました。
このジュースおいしいですね。
果汁100%よ。
とサラが言った。
解説)
続きます。
May 08, 2026
魔法の練習

三人は森林公園を見て回る前に、
桜のある場所で一休みすることにして、
サラはシートを広げようとしていた。
あら、車の音。

トマソンと喜六の乗った
オープンカーが到着した。

誰かと思ったら、
トマソンさんと黒木さん。
こんにちわ。
これから休憩するところ。
オレンジジュースと、
ポテトチップス持って来たから、
よかったら一緒に食べない?
とサラが声をかけている。

五人は車座になって
会話している。
住民はみんな飽きっぽいから、
もうここに来る人は
いないんじゃないかと思ってた。
とサラが言った。
僕もそう思ってたんです。
それで喜六さんの魔法の練習場所に
いいかなと思って来たんです。
とトマソンが言った。

どんな魔法?
物を巨大化する魔法です。
僕は「魔術の書」で
呪文を覚えたばかりなんで。
と喜六が言った。
そうか。喜六さんは
ハリーさんの持っていた、
「魔術の書」で呪文を覚えたのね。
是非、私たちにも魔法を見せて。
ここにいる人たちはみんな
魔族や魔法のことは知っているから、
魔法を使っても大丈夫よ。
とシモーヌが言った。

わかりました。
やってみます。

シートの中央にオレンジを一つ置くと、
喜六は呪文を唱えた。
するとオレンジは怪しげな光を放ち、
周囲に薄煙が立ち上った。

おお。
成功したようです。

これ本物よね。
とサラが言っている。
解説)
続きます。
May 07, 2026
森林公園再訪

トマソンと黒木喜六の会話は
弾んでいた。
それで練習の結果、
物を巨大化する魔法を使えるようになったんですか?
うん、まだ練習中だけど、
なんとか覚えたよ。
練習も兼ねて、お見せしたいところだが、
ハリーさんから、
人前で魔法を使うのは禁じられていてね。

じゃあ人のいない所で
練習されたらどうです。
郊外の森林公園なんていかがです?

郊外には行ったことがないし、
かなり遠いんだろう。
鏡の扉を使ったらいいじゃないですか。
まだそんな高度な魔法は
覚えていないんだよ。
じゃあ車で行きましょう。
前に僕が行った時には、
ルビーがジープで来てました。
確かドルフィンの倉庫でレンタルできるはずです。

喜六は農家の直売所で、
買い物をしている。
バナナとオレンジね。
毎度。

ジープをレンタルできますか?
今ねあいにく出払ってるの。
二人乗りのオープンカーならあるけど、
バービー仕様だから狭いわよ。

二人は車を借りて
森林公園に出発した。

その頃、サラたちの部屋でも、
森林公園の話題が出ていた。
公園にもういちど行ってみない?
この前にみんなで行ったばかりでしょう。
お花見の場所だけはね。
あの公園は広いみたいだから、
他の場所も見てみたい。
とリリスが言っている。

じゃあ行って見ましょう。
一瞬で行けるから。
とシモーヌが言って
鏡の扉に向かって呪文を唱えている。

三人は公園に抜け出てきて、
桜の咲いている場所まで歩いて行った。
綺麗だけど、
ちょっと季節感が狂うわね。
と言っている。
解説)
続きます。
May 06, 2026
子供の日の続き

ケイたちが柏餅を食べているところに、
鏡の扉を抜けて、
サラとシモーヌとリリスが
常春の国から帰ってきた。
おかえりー。

ジェット。
すごいのかぶってるのね。
ドルフィンの倉庫で見つけたんだ。
子供の日に飾る置物みたいだけど、
かぶってみるとなかなか
良い感じなんだよ。

シモーヌはじっくり観察している。
これ一体成型の鋳物ね。
けっこう重いでしょ。
うん。
骨董品なの?
パリのお店で売れる?
ちょっと難しいわね。

広場に、たまきたちも帰ってきた。

試運転にしては
随分遅かったわね。
昨晩はキサラの家に泊まったから。
調子は良好だったわよ。
このペスパは後で
キサラが取りに来るって。

たまきたちはベランダに行って
モモコと話している。
公園の桜はどうだった?
満開で綺麗だったけど、
もう五月だからねー。
それでビストロにピザ食べに行ってから
バイトしてるキサラの家に泊まったのよ。
昨日は子供の日だったから菖蒲湯沸かしたの。

広場には歌声が流れている。
しょうぶゆわか~して~
おとおとと~がまんくらべ~🎵

マンゴー亭では、
トマソンと黒木喜六が話していた。
二人は魔術劇場に客人として泊まっているので、
顔馴染みになっていた。
随分マイナーな曲歌ってますなあ。

ところでここだけの話ですが、
最近はハリーさんに魔術の書をお借りして、
呪文の勉強をしているんですよ。
この前、とある場所で実験したんですが、
やかんを巨大にするのに成功したんです。

魔族の人は羨ましいなあ。
僕は、現物の6倍サイズのオブジェを製作して
路上に展示放置するという芸術活動をやってきましたが、
一瞬に物を大きくできたらさぞ便利でしょうね。
もっとも僕にとっては、結果はさほど重要ではなく、
6倍サイズの物を作り上げるプロセスこそが
芸術活動なんです。
どうして6倍なんですか?
それはどうしてもです。
解説)
続きます。
May 05, 2026
子供の日

広場には
今日も歌声が流れている。
はしら~のき~ずはおととしの~
ご~がついつか~のせいく~ら~べ🎵

今日は魔族の人が魔法で描いたみたいに
いい天気ね。

喫茶ペンギン前では、
ローラが完成した柏餅を
テーブルに並べていた。

美味しそうだけど、
鹿せんべいの方がいいなあ。
とピリカが言っている。

それはなあに?
これはちまき。
昔は関西ではこれを食べたのよ。
柏餅をたくさん作ったから
お裾分けに配るんだけど、
手伝ってくれる?

圭とルイは柏餅の入った籠を
ジェニーたちの部屋に届けに行った。
ローラが作ってくれたんだよ。
お裾分けだって。
それはラッキー。
あの人料理の達人みたいだから
きっと美味しいわね。
他の人たちはいないの?
たまきとナオミは森林公園に出かけて
郊外のキサラの家に泊まったの。
もうすぐ帰ってくると思うわ。
お花見に行ったんだね。
僕も行きたいなあ。

これはなあに?
五月人形の金太郎だよ。
ずっと飾ってあったんだけど、
撮影するには今日がぴったりだね。
誰か撮影するのかなあ。

ローラはすずとピリカと一緒に
サラたちの家を訪ねた。
これおいしいね。
サラはシモーヌたちと出かけたきり
まだ帰ってきてないんだ。
いつものことだけど。

ジェットさん。
その兜私たちとお揃いね。
すごくかっこいい。
とすずが言った。
かぶってみる?
それ金属製ですごく重いのよ。
子供はやめといた方がいいわ。
とメアリーが言っている。
解説)
続きます。
May 04, 2026
すぐに子供の日

広場には
今日も歌声が流れている。
い~ら~か~のな~み~と~
く~も~のな~み~🎵

今日はちょっと
風があるわね。
派遣コウモリのひそこは
吹き流しに巻き込まれて
戸惑っている。

子供たちは
自分たちで折り上げた
紙の兜をかぶって
ドルフィンの2階から降りてきた。

オセロも小さな兜を
折ってもらった。

大人の人に見せに行こうよ。
きっと褒めてくれるよ。

子供たちは
高台の休憩所に
自慢しに行った。
すごいわね。
自分で作ったの?
うん。すごいでしょ。

子供たちは
喫茶ペンギン前まで遠征した。
すごいわねー。
と言われている。

子供の日って明日でしょ。
そうなんだけど。

じゃあ、
私が柏餅作ってあげる。
とローラが言った。
やたー。
と子供たちは
歓声を上げている。
解説)
続ききます。
May 03, 2026
広場の風景 そのに

広場には
歌声が流れている。
屋根よ~り た~か~い
こいの~ぼ~り~🎵
気が早いなあ
とルビーが言っている。

ドルフィンのマスターが
鯉のぼりの支柱を補強しているのだった。
子供たちは真剣に見守っている。

これで完成だよ。
貫禄だけど
破れてないから大丈夫ね。

風がないので、
吹き流しの鯉は
垂れ下がっている。

鯉のぼりって
あんなに大きいのね。
感動しちゃった。
とピリカは言っている。
大きさは色々なんだよ。
ルイちゃんは?
どこだろ。

ルイがドルフィンの2階から降りてきた。

ルイちゃん、その紙の兜
どうしたの?
魔子さんが作ってくれたの。

子供たちは
さっそくドルフィンの2階に
走って行った。
魔子さん。
僕にも兜作って。
私にも。
折り方教えてあげるから
やってみる?
解説)
続きます。
May 02, 2026
広場の風景

今日は薄曇りで
過ごしやすい午後。

ルビー、革ジャン脱いだの?
流石にもう5月だからね。

舞は洗濯物を干している。

子供たちはオセロに
バナナをあげて遊んでいる。

こんな平穏な日が
続くと楽でいいなあ。

ドルフィンの倉庫から、
ナオミとたまきが出てきた。
たまきは和服を着替えて
来たようだ。

私たちも森林公園の桜を
見に行きたいんだけど、
倉庫に乗り物ある?
ペスパがあるわよ。
キサラに修理を頼まれてたんだけど、
もう直したの。
試運転に使ってみて。

これから七夕まで
広場のイベントはないわね。
そういえばそうだね。
暇になりそうでありがたい。

そこに子供達がやってきた。
マスターさん。
もうすぐ子供の日でしょ。
ピリカちゃんに鯉のぼりの
説明したんだけど、
今まで見たことないんだって。
それで。

ドルフィンのマスターは
広場に鯉のぼりを立てることにした。
スタッフのリタが倉庫から出してきた
鯉の吹き流しを確認している。
この鯉も随分貫禄になったわね。
使うの4年ぶりぐらいじゃないかしら。

たまきとナオミは
ペスパで森林公園に出発した。
解説)
続きます
May 01, 2026
コンテストの結果発表

あっという間に
5月になった。

もうコンテストの優勝者の
発表日になったけど、
なかなか決まらないわね。
4月はみんなお花見に出かけたり、
住民以外の新規の登録者もいなかったから、
難しいなあ。
最近は最後まで決まらなくて
ルビーが目についた人に決めてたでしょう。
たまには説得力がある人を選びたいわね。

それもそうなんだけどね。
みんな慣れちゃってて、
参加賞目当てに
普段着で登録に来るからなあ。

そうじゃない人もいたよ。
ほら。
とボニーが言った。

ルビーはマイクを持って
立ち上がってアナウンスを始めた。
みなさん。
4月のコスプレコンテストの
優勝者を発表します。
優勝したのは、
ライダースーツ姿の
エリスさんです。

エリスは、喫茶ペンギン前のテーブルで、
アイスコーヒーを飲んでいた。
拡声器からルビーのアナウンスが
流れてきた。

エリスさん。
優勝おめでとうございます。
とはるなが言っている。
えー。信じられないわ。

エリスはローラと二人で、
広場に出向いた。
いつも通り万雷の拍手と歓声に迎えられ、
トロフィを授与されている。

まさか私がトロフィもらえるとはね。
あのライダースーツは着るのが大変だから
普段着で駆けつけたのよ。

全然OK。
授与式は形だけだから。
エリスのハーレーを整備した
ドルフィンのマスターも喜んでいる。

優勝はエリスさんなのね。
ライダースーツは格好いいからなあ。
オートバイって音うるさい。
そこがいいんだよ。
チョコもらいに行こう。
などと言っている。
解説)
続きます