May 29, 2026
異世界で

ここは迷いの森の中から通じている
数ある異世界の一つ。
ある種の夢食いたちの原郷のような所で、
彼らはここから夢の中に運ばれる。

夢の中で消えた夢食いたちは
双六の振り出しのように、
多くはここに戻ってくることになる。
現実世界に行った蜘蛛もここで蘇っていた。
おや、戻ってきたのね。
はい。

それで迷いの森の湧き水の流れを下っていけば、
現実世界に抜けられるって本当だったの?
はい。
でも現実世界は私たち夢食い蜘蛛にとっては、
とても征服なんてできそうもない、
厳しいところでしたよ。
運よく夢食いのサルバドールに出会って、
親切な魔族のマリアに案内してもらい、
アスラーダ様に命じられた目的を
なんとか果たせたんですが、
夢食いのドラゴンに食べられてしまいました。
アスラーダ様に報告しなくちゃ。

雷鳴が轟き、稲光に乗って
死者の魂の住む異世界から
アスラーダがやってきた。

あのエリーゼと二人の女の居処はわかったかい。
シモーヌとサラの家は突き止めましたが、
二人ともエリーゼと一緒に「常春の国」か
「忘れられた夢の世界」と言うところに
出かけたのではないかと聞きました。
夢の中に逃げるつもりなのか。
しかしシモーヌというのは相当な力を持つ魔族。
そこが魔族が作り出した世界なら好都合だぞ。
魔族は醒めない夢を作り出すことができるらしい。
そんな世界を乗っ取ることができれば、
お前たちはそこにずっと住んでいられるんだ。
俺の関心はエリーゼだけだ。
また協力して動こうと人面蜘蛛のボスに伝えてくれ。
それから、お前はその二つの世界の
どちらにエリーゼがいるのか調べて報告してくれ。

また無茶なことを。
どうやってその世界に行けばいいんです?
それは任せるよ。
そう言い残すと、
アスラーダは雲の中に消えていった。

耳障りな雷鳴を聞きつけた夢食いたちが
集まってきた。
ローゴスとその仲間たちだった。
なんだ人面蜘蛛、お前は、
あんな奴と仲間になっているのか。
強いものと組む方が楽だからね。
アスラーダの放つ死骸線を受けて
消えない夢食いはいないわ。
ふむ。しかしあいつは死霊だろう。
生者の夢にまで出てきて夢を
支配したいわけじゃないだろうに。
彼は特別なのよ。彼はエリーゼという
死者の魂と合体したいだけなの。
だからその目的を遂げた後は、
その夢の世界は私たちのものになる。

随分美味しい話じゃないか。
俺たちにも参加させてくれないか。
それはいいけど、
最後は夢の領土の取り合いになるわね。
弱肉強食は原理原則じゃないか。

その時、アスラーダと話していた蜘蛛が
戻ってきた。
ボス、またエリーゼの居場所を探す
役目を与えられました。
とりあえず「忘れられた夢の世界」と言うところに
行ってみたいんですが、
どうやっていけばいいんですか?
ほー。あそこにいきたいのか。
と側で聞いていたローゴスが言った。
あそこは、巨大な恐竜が住む広大な世界だぞ。
先住の夢食いもいるし、人間の魔族もやってくる。
だがいつまでも消えない夢というのが魅力で、
俺たちは征服しに行って酷い目にあったんだ。
一度征服に行って消し去られた場所に
再挑戦するためには待機時間が必要だが、
諦めたわけじゃない。
行く方法は覚えている。
お前は初めてだろうから、運が良ければ、
すぐに行けるよ。
ただ、どこに飛ばされるかはわからないがね。
「忘れられた夢の世界」の噂は
私も聞いているけど、
住みやすそうなところのようね。
ローゴス、アスラーダにさっきの話、
取り継いであげるから、この蜘蛛のことお願い。
と蜘蛛のボスが言った。
よし、わかった。
「忘れられた夢の世界」に行きたいと念じてみろ。
とローゴスは言うと、
蜘蛛に向かって呪文を唱えた。
解説)
続きます。
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