Apr 15, 2022

春たけなわの頃 そのよん

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夜が更けて、建物に明かりが灯り、
ドアが出現していた。


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ベーカリーの店じまいを終えたルビーが
気がついて建物に近づいてみると、
エヴァが現れた。


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悩みのある人は入場無料です。
と言って、エヴァはそっとドアを開けた。


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これ、ただの鏡じゃないの。
鏡のようで鏡じゃないのです。
そのまま奥へお進みください。


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ルビーが鏡に手を触れてみると、
ほとんど抵抗がなく、
ルビーの体は、そのまま
鏡の奥へと吸い込まれて言った。


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建物の内部は、
見かけよりかなり広がりがあり、
室内の中央に男が一人立っていた。

今宵はようこそ魔術劇場へ。
私は主催者のハリー原といいます。


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あなたは魔術劇場という
名前に惹かれてここに来られたのでしょう。
ここで何か奇術のようなものを
みられると思っていましたか。


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そうね。ただ名前に惹かれて来てみたの。
奇術ショーみたいなものじゃないかなと。

残念ながらここで体験できるのは、
種や仕掛けのある奇術の世界ではありません。
甘くて美味しい種無しスイカのような世界です。
とハリーは言った。


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ところであなたはご自分の心が
ひとつきりだと思っていませんか。
それはまあ、ひとつでしょう。
ところが、そうではないのです。
あなたの心にはいくつもの別人の心があるのです。
というか、別人のあなたは別の世界で暮らしている。
私は魔術でそういう世界を創造して行き来できるのです。
別人のあなたに会ってみたいですか?
もしそんなことが可能ならば。
とルビーは答えた。


解説)
二日も夏日が続いたと思ったら、
連日雨で気温が下がり、
今日は2月並みとのこと。
やっと魔術劇場に入場できました。
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