Nov 15, 2025
一件落着

数日後のこと、サラたちの部屋で、
ジェットはデイリープラネット紙を
読んでいた。
この前の、警備ロボットの捜索について、
ロボット研究所の謝罪記事が小さく載ってるよ。

失踪したと思われていた警備ロボットは、
研究所の中で発見されたって書いてある。
燃料切れで倉庫の隅で
固まっていたんだってさ。
「お騒がせして申し訳ない」っていう、
バトラー博士のコメントも載ってるよ。

おかしいわね。
レイチェルが未来の世界に連れ出したのが
本当のことでしょ?
捜索して発見できなかったから、
きっと大きな問題になるのを恐れて
虚偽の発表をしたんだよ。

でも記者会見の様子が、
写真付きで掲載されてるよ。
発見された警備ロボットと
バトラー博士のツーショット。
ドーリスも写ってる。
どういうことなんでしょうね。

その頃広場では、
CG本部から少佐がやってきていた。

研究所の謝罪記事読んだわよ。
いろいろ大変だったみたいね。
会議で捜索を打ち切る決定をするのに
ちょっと時間が掛かっちゃった。

経緯を説明すると、
この町の郊外の道沿いのフェンスのそばで、
うちの境界警備隊のパトロールが
警備ロボットが装着していた、
飛行用の燃料タンクを発見したという
報告があった。
それで捜索本部では、警備用ロボットは、
研究所から飛行して脱出して、
「迷いの森」の中に逃走した、
という結論に至ったの。
確かにあそこに逃げ込んでしまえば、
追跡するのは不可能ね。
それでも探索すべきだという
強硬意見はあったけれど、
探索部隊も森に迷い込んで
生還しない可能性が高いから、
どの部隊が行くかで揉めることになった。
結局議論の結果、警護ロボットが
研究所から逃走したという事実を
なかったことにして、
事態を収束することに決定したの。
警備ロボットが逃走したままだと知られると、
世間に不安が広がるし、研究所も非難されて、
計画の継続にも支障が出るということでね。
それで研究所の所長が記者会見を開いて
今回の新聞報道になったわけ。
写真に写っている警備ロボットは、開発中の
フェルミ02を使ったのよ。
それにしても、
警備ロボットを未来の世界に逃したなんて、
あなたたちから事前に異世界のことや、
鏡の扉のことを聞いてなかったら、
とても信じられなかったわ。
捜索の打ち切りに協力して欲しいって
アイスから言われて驚いたけど、
私は特に何もする必要がなかった。
郊外で燃料タンクが発見されたあとは
おおむね自然な推移だったのよ。
あれはあなたたちの仕業でしょ。

アイスのアイデアなの。
研究所の兵士ロボットの開発計画自体を
止められたわけじゃないけど、
結果的に少しは遅らせることになったわね。
あの開発計画は軍やCGの一部のグループが
特定の多国籍企業と組んで、
内密に行っていたことが問題になって、
今でも軍やCGの中で揉めている。
もっとも計画自体に反対する者はいないから、
要は利権絡みの内輪揉めよ。
何か進展があれば、また教えてあげる。
と少佐が言った。

少佐がワーゲンに乗って立ち去った後、
ルビーとアイスが話している。
これでどうにか一件落着ね。
こうなることを予想してたの?
研究所がいろんな住民に聞き回って、
捜索を始めていた事実は消せないから、
ああいう苦しい発表になったんでしょうね。
いつまでも捜索を続けると不安が広がり、
研究所の評判が悪くなる。
捜索を中止する口実を与えてあげれば、
飛びつくと思ったのよ。

マヤさん。
12月から休暇もらえそうなんですけど、
一緒にどこか行きませんか。
そうねえ。
解説)
続きます。
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