Nov 11, 2025
捜索の広がり

広場に境界警備隊のバギーが
走り込んできた。

バギーから降り立った
ハーレーがルビーと話している。
研究所から警備ロボットが一体
消えたそうで、
私たちにも捜索の依頼があったの。
もう研究所からも人が来て
広場で情報を集めてるわよ。

手配写真を見たけど、
ブルーグレイの顔の色以外、
見かけは普通の人間と変わらないわね。
観光客も多いから、
変装でもされたら、探すのは大変。
時間も経っているから、
もしどこかの組織に拉致されたのなら、
もうこの近辺にはいないと思うけど。
とりあえず郊外の道沿いに注意してみるわ。

バギーの車内ではコフィとイメルダが話していた。
どうして管轄の違う私たちまで
駆り出されたのかな。
それだけ研究所にとっては、
緊急事態っていうことよ。
警備ロボットの開発には、
軍やCGも協力してるから。
軍事機密が流出したっていうわけね。
でも変ね。
もしどこかの組織が拉致したのなら、
そういうチャンスは、警備ロボットが
広場に配置されていた一ヶ月の間に
何度もあり得たわけじゃない?
それをわざわざロボットが研究所に戻ってから、
研究所に侵入して盗むなんて危険を犯すかしら。
あそこの警備は軍の特殊部隊がやっているから、
相当厳重なはず。
侵入者の仕業じゃないとしたら、
ロボットが自分の意思で
出奔したとしか思えないわね。

高台の休憩所に
タバコでも吸いに行こうと
歩いていたレイチェルは、
研究所勤務時代の友人の
ドーリスとアリスを見かけた。

二人はヨシフに質問しているようだ。
ハロウィーン祭りの間に
警備ロボットに不審な点はありませんでしたか。
フェルミのことですね。
彼はずっとそこに立っていて
毎日広場を監視していましたが、
特に何もありませんでしたよ。
何かあったんですか?
研究所からいなくなったので
行方を探しているんです。

高台の休憩所についたレイチェルは、
フードを被った大柄な男性の姿を見て、
それがフェルミだと直感した。

あなたは警備ロボットのフェルミでしょ。
私はレイチェル。
広場で挨拶したの覚えてる?

う。見破られましたか。
覚えていますよ。
確か以前ロボット研究所に勤めていて、
開発に携わっていらっしゃったとか。
記憶は確かなようね。
そんな変装して研究所から脱走してきたの?
研究所の警備の特殊部隊や、
CGの境界警備隊まで駆り出されて、
総出であなたを探しているわよ。
脱走ですか。
やはり、そういうことになりますね。

実は、私。
この町の広場の警護任務にあたっている間に、
自分の意識の不思議な変化を感じたんです。
花や自然に興味を惹かれるようになって。
やがて自分の置かれた立場や未来のことを
考えるようになったんです。
自分は警備用ロボットとして開発されて、
やがては戦闘用のロボット兵士になるだろう。
そのことに微塵の疑問もなかったのですが、
意識に変化が起きて、次第に、
そんなふうになりたくないと強く思い始めました。
そんな時、もう警備任務の終了間際でしたが、
ドロレスさんという方から、
自分もロボットだと打ち明けられまして、
自分という意識を自覚した当初は不安を感じて
研究所から逃げ出したという話を聞いて、
私もそうしようと思い立ったんです。
それで逃げ切れる当てはあるの?
この世界のことはほとんど知りません。
でも人間社会に溶け込んでいる
ドロレスさんに会えれば、
何かアドバイスを貰えるかもしれないと思って、
この町に戻ってきたんです。
彼女もね。
自分がロボットであることを隠して生きている。
失踪して、やはり軍やCGが捜索したけれど、
生みの親であるシェリー博士が匿ってあげたの。
ドロレスはシェリー研究所にいるけど、
今あなたが会いに行くのは危険よ。
見つかればドロレスも危険に晒すことになる。
そうだ。
あなたが自由に生きられる別天地があるわ。
私が案内してあげる。
解説)
続きます。
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