Nov 17, 2023

ブラウンの回想 そのさん

b1

ブラウンが外に出ると、
ハンモックの方から声がした。

やあ、ここ、ここ。
久しぶりだね。随分探したよ。


b2

ハリネっていう、
大きなネズミに案内してもらったんだ。
仕事が嫌になる気持ちはわかるけど、
転送装置を盗んだのはまずかったね。


b3

こんなに早く見つかっちゃうとは。

僕の名を騙って、仮想現実体験装置の
情報を得ただろう。あんなことしなければ、
君の居場所はわからなかったよ。

あれは転送装置の改造に
どうしても必要だったんです。

まあ、それはそれとして、
ロボットたちの遺した
転送装置を盗んだのは重罪だよ。
あの世界の未来に影響を与えないように、
レプリカにすり替えておいたけれど。
さて、君をどうするか。

僕を殺すんですか。
そしたらあなたも
消えてしまうのでは。

ふむ。失踪したタイムパトロールを
追跡班が抹殺するというのはただの噂だよ。
たいていみんな生きている。
それより、君はタイムパトロールになって、
自分がやり遂げてきた仕事のことを、
悔やんでいるのかな。

悔やむというか、
そのことの意味がわからなくなっちゃって。

だったら、君に頼みたいことがある。


b4

あら、お話終わったんですか?
はい。
これからちょっと出かけてきます。
転送装置のある場所は、
ミトラに伝えておきました。


b5

ブラウンさん、
連れていっちゃうんですか。
ちょっとした仕事を頼んだんだ。
たぶん戻ってくると思うけど。


b6

その後、しばらくして、
ウェルズが、ペンギン前のスペースに顔を出した。

おお、もう冬支度なのね。
あったかそう。と言われている。


b7

ブラウンさんの件、片付いたの?
うん。結局どうするかは彼に任せることにした。

彼には、過去の自分を
タイムパトロールに勧誘する仕事を
してもらうことにしたんだ。

自分のしていたことに意味がなかったと思ったら、
過去の自分を勧誘するのをやめればいい。
そうすれば過去のブラウンは、
タイムパトロールなどにならず、
別の時間軸で科学者として平穏に暮らすだろう。

そうしたら今のあなたはいないんじゃないの?


b8

ここに今、僕がいるということは、
どういうことかわかるかい?

実は全ては決まっていて、
ループの中に囚われているようにも見える。
でも肝心なのは、
それが彼自身の意思の結果でもあることなんだよ。
まあ、僕自身のことでもあるわけなんだが。

色々大変なのね。
私、時間管理部に入らなくてよかったわ。
とミラが言った。


b9

広場では、旅芸人たちが
「ブラウンの歌」を歌っていた。


b91

それ新曲ね?
ええ、ついさっき思いつたの。



解説)
またしても
よくわからない話の顛末のようでした。
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