Apr 28, 2025

ヤビーたちの家で

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その頃、南の世界の
ヤビーたちの家では。

トリコ随分大きくなったわね。
このシチューは君用じゃないのよ。


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一晩経つけど、みんな戻ってこないわね。
どうしているのかしら。

アイスの付けている指輪から、
様子がわかるわ。
ちょっと見てみましょう。
とフミコが言った。


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フミコが呪文を唱えると、
幻影が浮かび上がった。

誰かの家みたい。
住民がいたんだわ。


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みんな楽しそうに食事してるわよ。
美味しそうなもの食べてるなあ。
こっちは毎日ナーガラと、
ドラゴニアベリーなのに。


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そうそう。
ミミコをシェルニに
預かってもらいましょう。
何かの時の予行演習ね。


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ミミコはシェルニの
頭部のカプセルの中で
頭を覗かせている。

クッションを詰めて、
安全ベルトで固定したから、
お外も眺められるわよ。

この状態で、
ちょっと試しに散歩して来ます。
とシェルニが言った。


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シェルニはミミコを乗せて
近くの小川まで歩いて行った。
なんと向こうからトリコがやってくる。


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シェルニは素早く手足を引っ込めて、
防御体制を取った。
トリコはこれは何だろうと
つついている。


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その頃、家の庭隅に出現した鏡の扉から、
アイスとナディアが現れた。

おかえりなさい。
向こうの世界と鏡の扉で繋げたのね。
さっきあなたたちの様子を魔法で見てたのよ。
とフミコが言った。


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アイスは探検してきた北の世界の
様子をみんなに報告している。

恐竜が沢山生息していることを除けば、
ほとんどこっちのジャングルと環境は変わらない。
みすずさんっていう住民もいてね。
彼女の家にお世話になっているんだけど、
こちらの様子を話したら、
よければみんなで引っ越して来たらっていうのよ。
みすずさんの家は広くて快適だし、
ミミコを育てる環境としては、ここより、
ずっといいんじゃないかと思うんだけど。
ただ、
みすずさんと言うのは普通の人じゃなくて
夢食いで、彼女が言うには
あちらの世界は、かって魔族のみた夢が、
消えずに残ったままの夢の世界らしい。
魔族のフミコとしてはどう思う?

そんな世界だとしたら、
夢食いが住みついて当然かもしれないわね。
そういう特別な世界は、見た人が忘れてしまっても、
夢自体に宿った魔力で消えずに残っているのよ。
その力とうまくやっていければ受け入れてもらえる。
ご厚意に甘えて、引越してみればいいんじゃない?
もし問題があれば戻ってくればいいのよ。

ポイントは美味しそうな食べ物ね。
とサラが言った。



解説)
続きます。
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Mar 28, 2025

フリマは続く そのはち

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サラと局長とミラは、
部屋に戻っていた。

やっぱり部屋に戻ると
ほっとするわね。
あとは堤防の桜の見頃まで、
ゆっくりしましょう。


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これはなあに?
それはフミコが使う道具よ。
強い魔法をかける時に持ってるから、
呪具なんじゃないかしら。


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ミラは情報管理部の仕事はしなくていいの?
局長のお供ですから。
私はお忍びの休暇中で、
サラと一緒だから気にしなくていいのに。
最近は宇宙人も来てるんですよ。
万全を期してお花見にもついていきます。
じゃあ、ずっと休むつもりなのね。


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そこの絵は何かしら。
前にこの部屋に飾ってあった絵です。
フリマに出品しようと思って
絵画類を部屋の隅から出してきたんですが、
この絵は、もし売れちゃうと惜しいので、
出品をやめることにしたんです。
みんな気持ち良さそうに寝てるのね。


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広場の賑わいは続いていた。


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大道芸人は絵画のパネルを見ている。
この絵は、どうなってるんだろう。

人々がみんな階段を登り続けてるでしょう。
マウリッツ・エッシャーの
「上昇と下降」っていうタイトルの作品よ。
とマンスフィールドさんが言った。


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フミコのブースには怪盗のゼロが来ていた。

2階からずっと拝見してました。
僕のコレクションも
出展させてください。
どうぞどうぞ。


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木箱には高価そうな
宝飾品が並んでいる。


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この指輪欲しい。
どれもすごく高いんですよ。
これみんな盗んだんですか?
え。何ということを。


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ヘルミーネが皮のジャンパーを
ドルフィンの倉庫に預けにきていた。

ヘルミーネさん。
素敵なペンダントね。
ええ。いただき物なの。


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マンゴー亭では、
カメラマンが蛇に絡まれていた。

どうしちゃったのかな。
あなた、そこの蛇の彫像の上に、
ヘルメットを被せたでしょ。
多分蛇が戻りたがってるのよ。


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テーブル席にいたノヴァのところに
ピエールたちがやってきた。

ああ、ピエールさん。
この前は森に案内していただき、
お世話になりました。
いえいえ。
実はちょっと折り入って
ご相談が。



解説)
続きます。
Posted at 20:21 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Feb 28, 2025

迷いの森へ

a1

ふうむ。
てっきり注文依頼の話かと思いましたが、
なんと迷いの森に行ってみたいので、
フェンスに破れ目のある場所を教えて欲しいと。
それは困りましたなあ。
破れ目のある場所は企業秘密なんですよ。
場所が知られて競争相手が増えたり、
通報されるとお手上げですからね。

そこをなんとかならない?

僕はノヴァと言います。
お願いしたのは僕です。
僕は森の泉やそこで湧いている夢見の水に
興味があるわけじゃないんです。
ただ、観光客として、
迷いの森に行ってみたいだけなんです。

ノヴァさんは、観光で来られたんですか。
ますます信用できないなあ。
まさかCIAやMI6の関係者じゃないでしょうね。

関係ないですよ。
実は僕は宇宙から来たんです。

ええ!それはますます。
地球侵略者の手先かもしれないじゃないですか。


a2

ピエールさん、それはSFの読みすぎよ。
でも企業機密だとおっしゃるのはわかるわ。
あなたも生活がかかってるんでしょうからね。
じゃあ、一度だけ、
あなたにノヴァさんだけが付き添って
行くというのでどうでしょう。
泉のある場所までは行かないで
すぐに戻ってくる。
交換条件として、バー・デジャでも、
夢見の水を買い上げる専属契約をするわ。

う。それはいい条件ですね。
実は、付き添いといえば以前に
アルバイトを雇ったこともあるんですよ。

そうだったの。
企業機密って結構管理がゆるゆるじゃないの。

いや、その人は信用おける人だったので。
では、その条件で
ノヴァさんをご案内しましょう。
でもノヴァさん。
迷いの森に行っても、
ファンスの近くは普通の森と変わりませんよ。
深入りすると怖いところですが。

いいんです。気持ちの問題ですから。
とノヴァが言った。


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支度を整えたピエールとノヴァは、
郊外に続く道のフェンス脇に来ていた。

ポンチョが見つからなかったんで。


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フェンスの破れ目っていうのはこの先です。
そこの隙間を通っていくんです。


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二人は迷いの森に分け入った。

いつもくるたびに
微妙に風景が変わっているんですが、
気にしてたら商売にならないんで。


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この先に泉が湧いているんですが、
そこまで行かなくていいんですね。

ああ、もうこのあたりで十分ですよ。
とノヴァが言った。

なるほどねえ。
ここでは浄化装置の必要がないようだ。

ノヴァはしばらくの間、
深呼吸して思案や瞑想をしているようだったが、
マスクをしているので、
外見からはその様子は窺えなかった。


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二人はフェンスの破れ目を抜けて、
迷いの森から郊外への道に戻ってきた。

いやあ、おかげで
貴重な体験ができました。

なんだか私にはさっぱりですが、
あれでお役に立てたのなら。


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その時、境界警備隊の
巡回パトロール中のバギーがやってきた。


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あら、ピエールさん、
こんにちわ。今日も良い天気ですね。
とハーレーが声をかけている。


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毎日パトロール大変ですね。
まあ仕事ですからね。
そちらの方は?

広場に観光にいらした方です。
郊外に案内しているんですよ。
僕、最近観光ガイドを始めたんです。

そうなの。
じゃあ、今度友達が来たら
ガイドを頼もうかしら。
とイメルダが言った。

え、も、もちろん、歓迎ですよ。
連絡先は前にお伝えした通りですから。


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バギーは去っていった。

ふー。
いつも緊張するなあ。

顔見知りなんですか。

うん。何度も出会ってるからね。
彼女たち巡回時間を守らないから、
いつ通るのか予測がつかないんです。


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ピエールって、密猟者なんでしょう。
捕まえないの?
とハーレーが言った。

あなたは配属されてまだ日が浅いから、
町の事情をよく知らないのも無理ないわね。
とコフィが言った。

私たちの目的は、あくまでも迷いの森からの
侵入者に対処するため。
建前は、立ち入り禁止地域への住民の
出入りも監視することになってるけど、
それは知らずに森に入り込む人を止めるため。
彼らは確信犯だから、見逃してるの。
ある意味勇気があるし、町にも貢献してるしね。
とイメルダが言った。



解説)
続きます。
Posted at 20:31 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Jan 28, 2025

ピピたちとベランダで

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サラはダックとピピと連れ立って
魔術劇場を経由してデジャに戻ってきた。

あら、今度はまた変わったお客さんね。
ダックって言います。
私はヴィヴィアン。よろしくね。
お父さんたちは?
まだホテルにいるみたい。
よほど気に入ったのね。


a2

サラは、ルビーに会いにベーカリーに行った。

ルビー、あなたとフレイムが、
ジャングルの洞窟で
二人の宇宙人を助けたことがあったでしょ。
お礼を言いたいっていうんで、
お連れしたの。

ふーん。どこに?

ドルフィンの二階のベランダで待って貰っているわ。
ちょっと目立つので、
あまり人目につかないようにしてるのよ。

私もついて行っていい?
とアイスが言った。

もちろんどうぞ。
あなたなら驚きそうもないから。


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一行が洗濯物干し場のベランダに行くと、
ダックが座っていた。

お久しぶりです。その節は
お世話になりました。
あ、もう一人の方は?

フレイムね。声をかけたから
すぐ来ると思うわ。
とルビーが言った。


a4

サラがバッグのチャックを開くと、
中からピピが現れた。

こんにちわー。あの時はどーも。
と言っている。

さすがにピピの姿は、
広場の観光客も驚くと思うので、
バッグの中に入っていて貰ったのよ。
とサラが言っている。


a5

元気そうでよかったわ。
あなたたちをジャングルの洞窟で見つけたのは確かだけど、
翌朝、あなたが九官鳥に攫われて、
その後を円盤で追いかけて鳥の巣から救出したのは、
リザードでしょう。
私たちはあなたたちを見つけて一晩一緒に過ごしただけ。

その話ね。私の体験とも辻褄が合うのよ。
とアイスが言った。
私はジャングルの山の上で枯れかけた大きな樹木を見つけて、
魔法で元の姿に戻したの。
そこに大きな九官鳥の巣があったらしくて。

そうですそうです。
私を攫ったのはその九官鳥で、
山の上の大きな木の巣の中に囚われていたんです。
とピピが言った。

それは奇遇でしたね。
ともあれ、あなたたちが見つけてくれなければ、
私たちは暗い洞窟の中で
ジャングルの獣たちの餌食になっていたでしょう。
やはり命の恩人に変わりはないのですよ。
とダックが言った。

ものは考えようねー。


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やがてフレイムがやってきた。
懐かしいわね。
ピピ。あなた洞窟の前で焚き火した時、
しきりにチョコを食べたがっていたでしょう。
これはお手製のチョコパフよ。


a7

なななんと。
フレイムさん、僕の言葉覚えていて
くれたんですか。

ピピは感激している。


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ちょっと失礼。
と言って立ち上がると、
サラはドルフィンの
二階の部屋に通じるドアをノックした。


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あらサラじゃない?
どうしたの。
ニッキー、悪いけど、
このバッグの中の私の服預かってくれない?
今、バッグだけ必要なの。
いいわよ。


a91

ピピさん、ダックさん、
このバッグ、差し上げるので、
町を見物するなら人目につくから、
ピピさんはバッグの中に入って、
ダックさんに運んでもらってね。

ああ、お気遣いありがとう。

帰り道は私がエスコートするわ。
本部に呼び出されて行けなかったけど、
あのホテルに泊まってみたかったし。
とアイスが言った。

また留守するつもりね。
とルビーが言った。


a92

サラは部屋に戻ってきた。

おかえりー。
2泊三日のアフリカ旅行からご帰還ね。
あれ旅行バッグどうしたの?
と言われている。



解説)
続きます。
Posted at 20:27 in n/a | WriteBacks (0) | Edit
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