May 12, 2025
ミトラたちとの会話

ヤビーたちの廃屋の庭で、
ミトラと舞子に遭遇したレイチェルたちは、
話し合っていた。
レイチェル。
この方たちは?
と舞子が尋ねている。
アイスとヤビーよ。アイスは古い友達。
ヤビーは元はこの家の住人だったの。
それより、あなたたちはどうしてここに?
しばらく前に大きな地殻変動があったんです。
いつものミズハの仕業だと思うんですが、
そのせいでバーボンハウスも倉庫も、
大地に飲み込まれてしまいました。
行方不明になったシェルの他は、
幸いみんな無事だったんですが、
周辺の森の様子も随分変わってしまいました。
それ以来、復旧作業に取り組み、
今日は家の建て替えや整備が一段落したので、
シェルの捜索を兼ねて森の様子を見にきたんです。
見たことのない廃屋を見つけたので、
屋内を調べていたところです。
とミトラが言った。
ここがあなたたちの暮らす
仮想現実世界だっていうの?
この世界はヤビーたちやミミコのいた
現実の未来世界のはずよ。
どうしてそんなことが。
おっしゃる意味がよくわかりません。
地殻変動で周辺の環境は変わってしまいましたが、
復旧作業も順調に進んでいます。
バーボンハウスもみんなで木造建築に立て直しました。
ご存知のように、木材は豊富ですからね。
いくら樹木を伐採しても、すぐに生えてきますから。
それよりショックだったのは、
転送装置も記憶装置も倉庫ごと失われてしまったこと。
出かけたままのツナとナディアのことが気がかりでした。
レイチェルさんは、
ツナたちの消息をご存知なんでしょうか。
それはもう。
二人とも元気よ。今は夢の世界にいる。
と言ってもにわかに説明するのは無理ね。

アンというAIが仮想現実体験装置を作って、
最初はレイチェルとドロレスがその世界に行き、
その世界の住人であるという設定の
ツナやナディアやあなたたちNPCと知り合った。
そんなふうに私は聞いているの。
とアイスが言った。
その後、アンというAiは、
宇宙人の作った転送装置を入手して改良を加え、
仮想現実世界とだけ行き来できる転送装置に作り替えた。
それでツナやナディアは私たちの世界にやって来た。
ところが、そのAIは、そこにいるヤビーの記憶を
回復する作業をしている途中で変調をきたしてしまった。
今も復旧作業の最中だと思うけど、
転送装置は機能を停止したままで、
仮想現実空間は存在しないはず。
だからNPCのあなたたちも存在しないはずなの。
こうしてここにいますけど。
と、舞子が言った。
だから不思議なのよ。
私たち、調査を終えたので家に戻りますが、
よかったら一緒に来ませんか?
レイチェルに会えたらみんな喜びます。
とミトラが言った。
そうね。私もこの目で確かめてみたい。
とレイチェルが言った。

一行はミトラを先頭に
ジャングルを分けて進んでいく。

しばらくいくと、
ミトラが立ち止まった。
ハリネがいますよ。
ハリネって、あのミズハの使いの
ハリネズミね。
とレイチェルが言った。

やあ、レイチェルじゃないか。
あなたまで、どうしてここに?
とレイチェルが言った。
ふむ。何が起きたか知らないようだね。
私が教えてあげよう。
あのAIが作った仮想現実世界は、
消えてしまったのだよ。
その原因は仮想現実世界の枠組みの中に、
未来の現実世界や異世界の体験データが、
流入して処理できなくなったからだと、
AI自身が言っていた。
世界が消えてしまうと、
そこに住み着いていた夢食いや精霊も消えてしまう。
AIはミズハに、事前に世界の消滅を知らせてくれたんだ。
それでミズハは、別世界に脱出した。
その引越し先に、AIの異常の原因にもなった、
あの仮想現実世界とほとんど環境が変わらない
この世界を選んだのだよ。
この世界でも最終戦争が起きて、
住人は滅び、荒廃したままになっている。
それにこの地域には、森林が増殖するのに最適な
夢見の水が地下に流れているからね。
ミズハはAIに頼まれて、引越しの時に、
一緒にNPCたちを連れてきた。
ミズハは優しいからね。
ミトラも舞子も驚いただろう。
君たちはこの前の地殻変動以来、
別世界にいるのだよ。
それにレイチェルはともかく、
そこの羽根を持った女性と赤いロボット。
君たちは先住民じゃないだろうな。
私はレイチェルの友達のアイス。
今のお話だとAIアンのいる世界の住人よ。
とアイスが言った。
僕は機械軍の作業用ロボットで、仲間たち3人で、
この近くの廃屋でミミコという
魔族の赤ん坊を見つけて世話していました。
とヤビーが言った。
またしても生き残った先住民がいたというわけか。
ミズハに報告しておくよ。
ふむ。ここでレイチェルに出会えたのは驚きだけど、
どうせ魔族の魔法か別の転送装置でも使ったのだろう。
ここはあの仮想現実世界とよく似た未来世界だ。
AIはミズハが引っ越し先にこの世界を選ぶことを、
そしていずれ君たちが再会することも、
予測していたのかもしれないな。
まあ、みんな仲良くすることだ。
また遊びに行くよ。
そういうとハリネは
去っていった。

あのハリネズミはなんなの?
とアイスが言っている。
ミズハっていう樹木の精霊の使いよ。
自分ではミズハの友達だって言ってるけど。
とレイチェルが言った。
もうすぐそこですよ。
そろそろ出発しましょう。
と舞子が言っている。

つきましたよ。
あれが私たちのバーボンハウスです。
見かけが随分変わったわね。
舞子はみんなを呼んでくる。
と言って走り出している。

家から人が出てきた。
ソーダがかけてくる。
バンクとイリスの姿も見える。

レイチェル。戻ってきたのね。
転送装置は倉庫ごとなくなったけど、
いつかまた会えると信じていたわ。
とイリスが言っている。
解説)
続きます。
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