Aug 29, 2021

怪物の話など

a1

それは、奇妙な話だった。
最初は、迷いの森で、村人や兵士が
行方不明になるという事件が続き、
戦時下にもかかわらず、
なぜかあれは怪物の仕業だという噂がひろまった。
兵や村人の失踪は村の近辺でも起こり始め、
移動中の小隊が全員消えたりすることがあって、
作戦にも支障をきたすようになった。

やがて外部との連絡が途絶えた。
それは村を巡って攻防を繰り返していた、
ドイツ軍部隊も連合軍側も同じだった。
孤立して兵員の人数も漸減していき、
危機感を覚えた両軍の指揮官たちは、
捕虜の交換を名目に話し合いの場をもち、
全く同じ状況に直面していることを知り、
それまで争奪の対象だったこの村を
協力して怪物の襲撃から防衛するため
停戦協定を結んだというのだった。


a2

この村とその周辺のわずかな地域をのこして、
世界全体が消えてしまったようなものよ。
とエルマはいった。
もっとも私たちがやってたことは、
この地域で戦闘を繰り返すことだけだから、
行動範囲もあまり変わらず、
戦う相手が怪物に変わっただけかもしれないけど。

その怪物ってみたひといるの?
と、たまきが聞いた。

みたと言っている兵士なら二人いる。
口は耳までさけていて、
俊敏に動いたそうだ。


a3

モモコは想像してみたが、
きもちわるいのでイメージを打ち消した。

長い爪のある手には、
ひれのようなものがついていた、
という者もいた。


a4

モモコは想像してみたが、
やはりきもちわるそう、と思った。


a5

目撃者の証言によると、
怪物に襲われた者たちの体は、
しばらくすると蒸発するみたいに
消えていったというんだ。
たぶん私の見た、
銃撃戦の時のたまきさんや、
このまえのモモコさんみたいに。
もちろん、
その消え方が似てるだけなんだけど。
とジョー大尉はいった。


a6

そのひとたち、私やモモコみたいに
夢から覚めただけなのかも。
と、たまきが言った。

別世界があるんだから。
私たち、別世界から来たんだから。
同じ消え方なんでしょう。
と、たまきはいった。

たしかに。
とジャンは言った。
でも今のところ、それは、
確かめようがないことだね。


a7

会話は一段落して、
エトナはパウル・クレーの
「忘れっぽい天使」を眺めている。
これ、ここに飾るんだ。。


a8

この酒場の呉越同舟状況は、
そのポスターの映画にちょっと似てますね。
とドイツ軍兵士が言い、
ドイツ軍将校はうなずいて、
「ラインの守り」でも歌おう、
と言っている。


px5

エルザはドイツ兵から銃器を借りている。
すごい。それ降下猟兵銃42型だね。
。。


a9

モモコはもうすこし詳しく
怪物のことが聞きたいといって、
目撃者を呼んでもらうことにした。


解説)
すこしずつ進行中です。
Posted at 21:54 in n/a | WriteBacks (0) | Edit
WriteBacks
TrackBack ping me at
http://www.haizara.net/~shimirin/blog/kirita/blosxom.cgi/20210829215323.trackback
Post a comment

writeback message: Ready to post a comment.