Apr 30, 2026
カマキリを探す そのさん

すごいところね。
この斜面を登ると
トロンの住む小屋があるのよ。
また登るのね。

ここは「常春の国」とは違うのね。
ええ。
私の祖母のみた「忘れられた夢の世界」なの。
祖母は夢を見ながら亡くなったけど、
最後に見ていたその夢だけは残っているのよ。
ふーん。シモーヌのお婆さまって、
さぞかしすごい魔族だったんでしょうね。
すると風が吹いてきて
あたりの粉雪が煌めいた。

トロンの家が見えると、
サラは走って行った。
家からトロンが出てきて挨拶している。

3人はトロンの小屋で
休憩している。
あなた、洞窟を抜けて
「常春の国」に出かけたでしょう。
はい。
マルテが洞窟の入り口を溶かしたから、
一人で散歩に行ってみたんです。
お城には知り合いのフクロウもいるし。
でもお城に行く途中で。
途中で?
お花畑でカマキリに出会って。
意気投合して二人で戻ってきたんです。
そのカマキリを探しているのよ。
カマキリなら、
雪原で遊んでいますよ。

サラたちが雪原に行くと、
カマキリの姿が見えた。
ゆ~きやこんこ🎵
と歌っている。

カマキリはサラたちに気がついて
飛んできた。
これはこれは、
シモーヌ様にサラさん。
シモーヌさんたちは、
君を探しにきたんだって。
とトロンが言った。
えー。そーなんですか。

僕は、毎日お花畑にいるのに
飽きちゃったんです。
平和で天国みたいなところですけど、
昆虫の友達もいないし。
それでトロンと出会って、
話が盛り上がって彼の家に遊びに来たんですよ。
あなたの行動はもちろん全然自由だけど、
急にいなくなったので、オウルが心配してるのよ。
オウルは、ディアナの代役の王様をやってるから、
常春の国の治安にすごく責任を感じてるみたいなの。
それは気がつきませんでした。
お花畑には毎日エドが散歩に来たり、
フクロウたちも通りますから、
誰かに出かけることを言えばよかったんですね。
そういうことね。
随分前にディアナが失踪したこともあったから、
みんなも気にしてた。
私も夢食いに攫われたりしたんじゃないかって、
ちょっと心配してたの。
それはどうも。
わざわざこんな遠くまで探しに来られたなんて
恐れ入ります。
大したことじゃないのよ。
私たちは一瞬で移動できるから。

シモーヌは鏡の扉に向かって
呪文を唱えている。
カマキリはいいなあ。
僕なんて誰も心配してくれないよ。
とトロンが言っている。
あなたは夢食いでしょ。
神出鬼没なんだから当たり前じゃなの。

一行は鏡の扉を抜けて
お城の部屋に移動してきた。
これ便利ですねー
とカマキリが言っている。

昼寝から覚めたら
カマキリが戻ってきていたなんて
私の心配事も短い夢のようでした。
これもシモーヌ様のおかげです。
オウル。
ちょっと相談があるの。
あの雪山の洞窟は
マルテっていう火星人の家にしたんだけど、
マルテはしばらく不在なの。
洞窟は今も別世界との通路になってて不用心だから、
誰か留守番を頼めない?
もちろん向こうの世界に遊びに行くのは自由だけど、
留守番がいれば出入りをチェックできるわ。
わかりました。
それじゃ、この世界に来たばかりで
仕事を探している福郎に頼みましょう。
解説)
続きます。
Mar 30, 2026
雨上がり そのに

デジャでは、
会話が続いていた。
魔族って、そんな呼び名があるんですか。
今や絶滅危惧種だけどね。
私も魔族の仲間を探すという目的もあって、
魔術劇場の興行で世界を回っていたんだ。
私が調査して、これはもしやと思っているのは、
デイリープラネット紙の記者で、
ケントっていう人ですよ。
魔法を使ったとしか思えないような、
すごいスクープ記事を時々書くんです。
その人も魔族よ。
とカーミラが言った。

みなさん、
雨が上がったようですよ。
とゼロが言った。

外の方が気持ちがいいから、
外の席に戻ろうか。
ご一緒してもいいんですか?
もちろん。
なかなか熱心に魔族のことを
調査されているようなので、
もし差し支えなければ。
もっとお話を伺いたいからね。
黒木は嬉しかったようで、
椅子から立ちかけている。

ハリーさんたち、
出かけちゃったわね。
とアンジーが言った。
魔族の調査か。
MI6顔負けだね。
とジムが言った。
さっきの黒木っていう人、
宝石商としては、
結構名の知れた人物ですよ。
時々、すごい宝石を
オークションに出品するんです。
とゼロが言った。
ふーん。
さすが怪盗ゼロと呼ばれる、
宝石泥棒ね。
盗んだことがあるの?
直接はないです。
とゼロが言っている。

雨は完全に上がったようで、
広場は活気を取り戻していた。

また忙しくなるわね。
と言っている。

すごい売れ行きだね。
ビールもそうでしょ。

外の席でも
ハリーたちの会話は続いていた。
黒木さんって、
ファーストネームはなんて
おっしゃるの。
親が回文好きで。
わかった。
きろくさんでしょ。
喜びの喜に、漢数字の六で、
喜六って書くんです。
小池恵子とか、中野佳奈とか、
今井舞とか、駒井魔子とか、
なぜかこのあたりにも、
そう言う名前多いのよね。
とルビーが言っている。

そろそろ堤防の桜も、
見頃じゃないかしら。
明日行ってみましょう。
解説)
続きます。
Jan 30, 2026
ホテルへ

二人はホテルの入り口で
チンパンジーのリンリンに出会った。
サラさんこんにちわ。
お泊まりですか。

まだ決めてないのよ。
セリーヌさん、どうしましょう。
そうねえ、予定はないけど、
思いつきで来ただけだから。
とりあえずホテルの食堂で
お茶でも飲みましょう。

受付にはいつも通り
フンボルトがいて、
いらっしゃいませと挨拶している。
ロビーに行けば
裏の広場が見渡せるわよ。

二人がロビーに行くと、
先客がいた。
あ、あの人はカコ。

サラたちに気がついたカコは
さっそく手を挙げて、
歩み寄ってきた。
サラ。
この前はどうもありがとう。
おかげさまで、ステーションでの、
寿司パーティは大盛況だったわ。
カコさんに、お土産にいただいた
甲殻類の卵も
広場のみんなに好評だったわよ。
とサラが言った。

サラはカコにシモーヌを
紹介した。
ふーん。魔族の人か。
私はハリーさんと会う約束で
ホテルに来たんだけど、
まだ到着してないみたい。
あ、時間があるなら、
お茶でも飲まない?

3人はホテルの食堂で
コーヒーを飲むことにした。
実はね。
ステーションで問題が起きて。
あ、宇宙ステーションのことは、
シモーヌさんはご存じなの?
このホテルを介して、人間と、
宇宙人と交流があるということは
サラさんから聞きました。
普通の人みたいに見えますけど、
カコさんも宇宙人なんですか。
そうよ。
町で見かけてもわからないくらい
人間そっくりでしょ。

それで問題って?
とサラが尋ねた。
ピピが寝込んじゃったのよ。
昏睡状態なんだけど、検査の結果、
ずっと夢を見ているらしいことがわかったの。
ピピって、あの小さな銀色の宇宙人ね。
目が覚めない原因は分かったの?
どうもね。
どこか外部から原因になる生命体が
ピピの夢に侵入したらしいの。
それって夢食いじゃないですか。
とシモーヌが言った。
あなたたちはそう呼んでるらしいわね。
私も夢食いのことは
ハリーさんから聞いていたので似てるって思ったわ。
そのことを艦長のメイズたちに話したら、
ハリーさんに相談しようということにって。
夢食いの知り合いなら、
大勢いるわよ。
とサラが言った。
え、
夢食いは夢の中だけにしか存在しないんでしょう。
そうでもないんですよ。
と話を聞いていたシモーヌが言った。
人間のみる夢の世界と、魔族が生み出す異世界は、
よく似ていて、夢食いはどちらにも出現します。
それに通路があれば、夢食いたちは、
この現実世界とも行き来できます。
現実世界と言っても、
人間が共同で見ている夢みたいなものですから。
古来、妖怪とか幽霊と呼ばれるものの類は
夢食いの場合もあるんです。
ただ、ちょっとややこしいですが、
この現実世界の物象から生成される精霊とは微妙に違います。
精霊たちはその起源をその存在する世界に持っています。
夢食いは別の世界からもたらされたもの。
別の世界って?
その世界のことは私にもよくわかりません。
そこも特殊な異世界であることは確かだと思うんですが。

その時、リンリンがやってきた。
カコさん、
ハリーご夫妻がおいでになりましたよ。

ロビーに行くと、ハリーたちがいた。
カコさん、待たせてすまなかったね。
おや、君たちも一緒なのか。
偶然ここでさっき出会ったんです。
コート着てるんですね。
暑くないですか。
とサラが言った。
向こうは冷え込んでてね。
散歩中に約束を思い出して、
急いできたんだよ。
解説)
続きます。