Jun 22, 2022

ハリーとの対話

b1

ハリーさんって、おいくつなんですか。
ふむ。幾つになったか、
もう年のことは忘れましたなあ。


b2

あ、ジルさん。
こんにちわ。
休憩スペース、もうずいぶん前に
完成してるって聞いて、
様子を見に来たんだ。


b3

この季節の眺めは素晴らしいね。
輝く緑が滴り落ちるようだ。

みーどりかがやーく武蔵野にー♪
と、どこか遠くで歌声が聞こえた。


b4

おや、これは魔術劇場の。
私はジルといいます。
お噂は。


b5

私は旅行好きで割合外国に出るんですが、
突然町中に現れて、ある日忽然と消えるという
魔術劇場のことは、これまで世界各地の都市で、
何度も噂に聞いていました。
古い文献に記載があるという人もいるし、
夢に出てきた、という人も多い。
なんとも面妖な話です。
そんな劇場をどうしてこの町に。

ここは魔法使いの故郷のような土地なんです。
私たち魔族は、迷いの森からこの世界にやってきた、
という古い言い伝えがありましてね。
その言い伝えを信じれば、
迷いの森に近接したこの町は、祖先が
初めて暮らし始めた土地ということになる。
そんな由緒もある上に、妹から頼まれたこともあって、
ひさしぶりにこの町に来て劇場を作ってみたのですが、
実際ここで暮らしていると元気になる気がする。

なるほど、確かに迷いの森というのは、今でも
様々な異世界に通じているという説がありますね。
実際に探検してきた友人を何人か知っていますよ。
話によると、森の果てには透明なバリアのような
壁があって、その向こうに行けなかったということです。
もっとも、歩くと地形がどんどん変わるというのでは、
検証のしようもない話ですが。
現在ではそもそも立ち入り禁止になっていますしね。


b6

でも魔族の由来があの森だというのは面白いな。
あの森の泉から湧き出す水のことを、
住人たちは夢見の水と呼んで密かに楽しんでいます。
水には不思議な幻覚作用や覚醒作用があるようで、
それも魔法と何か関係がありそうですね。


b7

そこに気づかれたとは楽しいですな。
私たち魔族の血とその水の成分との関係は、
私の長年の研究テーマの一つでもあるのです。
この周辺地域の地下水脈には、迷いの森から
どうやら、その夢見の水が流れ込んでいるらしい。
それで、変わったことも起きやすくなっている。
人形や土着の精霊にも出逢いましたし、
ともかく私たちには住み心地のいい土地のようです。


b8

その頃、サラたちの部屋では。

ジェイソン、そのスーツ、
もらっちゃったんだって?
サラさんと返しに行ったんだけど、
差し上げますって。
それはラッキーだったね。
僕、このナポレオンのポーズ、
やってみたかったんだ。
とジェイソンは言った。


b9

あのスーツ、どうしたの?
ピッタリサイズだったっていうから、
あげちゃった。もう夏だし。
サラさん喜んでくれたし。
今度は007みたいな黒いのと蝶ネクタイ買おうかな。


解説)
みどりかがやく武蔵野に♪
というのは小学校校歌の一節です。
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