Oct 03, 2023

仮想世界で そのなな

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ハリネは、レイチェルから、
このあたりに立っていたはずの
金属製のオブジェを探していると聞くと、
驚いた様子だった。

あのヘンテコなオブジェのことを知っているとは。
やはり君たちは先住者だったのか。


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ハリネのそばに、薄い煙と共に
顔のある木立が出現した。


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話は聞いていたよ。
私がこの世界にやってきたとき、
瓦礫の広野の中であのオブジェを見つけた。
文明を作り上げたものたちはすでに滅び、
北方にわずかな森を残すだけの
荒涼とした瓦礫の世界だと思っていた。

このあたりは露出していた岩盤を
緑地にするために地形を変えたところよ。
そのとき、あのへんてこなオブジェも
土中に埋め込んでしまったの。
でも、オブジェの存在を知っているのだとすれば、
あなたたちが先住者である証拠ね。
ということは、この世界に
戦火と災いをもたらしたものの
末裔であるということにもなる。

でも私は裁きをもたらしにきたわけではないし、
先住者の暮らす世界を侵略しにきたわけでもない。
あとのことはあなたたちに委ねます。


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薄い煙が立ち昇って
人面の樹木がうっすらと消えていくと、
もやのような煙の中からオブジェが姿を現した。


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オブジェの
胸部に嵌め込まれていた球体が、
とつぜん微かに回転して振動したが、
やがて動かなくなった。


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木陰からハリネが現れた。

もう森は拡張しない。
ただし。


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ミズハはこの森に
とどまることに決めたようだよ。
果物を取ったり木を切るのは自由だけど、
すぐに再生するからね。

それから、
あのヘンテコなお墓のオブジェが、
お礼に蝶のペンダントを
受け取って欲しいと言っているよ。


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レイチェルは
オブジェの胸にかかっていた
蝶のペンダントを外して手に取った。

ぼくは森の奥に棲むことにする。
寂しくなったら遊びに来てもいいよ。
とハリネは言った。


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かくして一行は
バーボンハウスに帰り着いた。

どーだった?
とドーダが言っている。
ハリネっていう獣の顔が怖かった。
とソーダが言った。
そこなの?
なぜかズームアップが多かったんだよね。
ハリネはあれできっと寂しいんだよ。
また遊びに行ってあげよう。
などと言っている。



解説)
なんとかバーボンハウスが、
森に飲み込まれる危機は
回避できたようです。
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