Oct 24, 2023

盗まれた転送装置

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研究所の倉庫から、
転送装置が盗まれたんです。

転送装置?
そんなものあったっけ。


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すっかりお忘れのようですね。
15年前に、事故で墜落した宇宙船に
搭乗していた二体のロボットが、
母星に帰還するために制作して、
残していった装置ですよ。


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ふむ、思い出したぞ。
あの装置は、たしか軍の主導した
大掛かりな惑星開発計画に使用されたが、
転送先の惑星に先住民がいることがわかり、
撤退したという経緯があったな。
しかし、その後、
あの大掛かりな装置は解体されたはずだが。

研究所に設置されていた装置はそうなんですが、
転送先で帰還のために使用された小型の装置は、
こちらに戻されて、ずっと倉庫に保管されていたんです。


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なるほど。
あの光沢のあるリングを重ねた
モダンな箸置きセットのような装置だね。
しかしあれを盗んでも使い道がわかるとは思えないな。
私たち研究者もお手上げだったんだから。
美術館にでも飾るのが関の山だろう。

盗んだ相手によっては、私たちにも未知の技術が
仮想敵国に漏洩する可能性もあります。
軍やCGにも盗難のことを報告すべきかと。
それはそうだな。
たぶんまだ将軍がドルフィンにいるはずだ。
さっそく会いに行こう。

それ持って行くんですか。
ふむ。これは虫じゃないんだよ。


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バトラー博士とアリスが立ち去った後、
シェリー博士もマヤもそれぞれ帰っていった。
はるなはテーブルの食器や果物を片付けながら、
ブドウをつまみ食いしている。


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そこに読みかけの本を手に、
隣家に住むミラがやってきた。

あ、珍しく空いてる。
今日もサービスの果物があるのね。
コーヒーください。

はい。


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ミラがベンチに座って本を読んでいると、
ブラウンがやってきた。

あら、ウェルズ、
今日はフォーマルな服装してるのね。

実は事務所で開発されたという
仮想現実体験装置について、
ちょっと調べておきたいことがあるんだ。


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あら、時間管理部はタッチしないんじゃなかったの。


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生起する出来事について関与はしないけれど、
時間に関わることだからね。
装置の構造について知っておきたいと思って。

ふーん。それで訪問用にそんな格好しているのね。
わかったわ。事務所のみんなとは顔馴染みだから、
私が付き合ってあげる。


解説)
地球にロボットたちが飛来した経緯については、
2008年8月17日「おばあちゃんの家 番外編そのいち」から。
軍主導で移住計画が行われ撤退した経緯については、
2009年6月28日「夢見る機械 そのに」、
2009年7月3日「異世界にて」などに掲載されています。
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