Nov 27, 2025
常春の国へ

シモーヌさん。
あなたが作ってくれた
精霊たちの世界に行きませんか?
一度行ったきりっておっしゃってたでしょう。
と立ち上がってディアナが言った。
そうね。
世界を作ってあげたあとは、
住人の精霊たちに任せきりで、いっさい、
顔も手も出さないっていうのが私の方針なんだけど。
あそこは最初にあなたのために作った世界。
そのあとで自由に生きたいと望む
フィギアの精霊たちを送る場所にしたの。
みんなで楽しくやってるんじゃないかと思ってた。
あなたがここの夢の世界に置き去りにされてたなんて
あなたたちに聞いて初めて知ったのよ。
それはともかく、さっきまで私が話したことは
みんな私の推測だから、実際は何が起きたのかは謎。
行けば少しはわかるかもしれないわね。
と言ってシモーヌも立ち上がった。

向こうの世界にも鏡の扉が常設してあるのよ。
呪文を唱えて私も一緒に行くわ。
とアイスが言っている。
最初はどうやって向こうの世界を見つけたの?
この世界の西の果てに雪山があって、
そこに向こうの世界に抜けるトンネルがあったの。
この世界に来た夢食いが、
そこから向こうの世界に侵入したので、
今は雪で埋め戻してある。
色々あったのね。

アイスは呪文を唱えて
常春の国のお城の中にある
鏡の扉のイメージを思い浮かべている。

三人は鏡の扉を抜けて、
お城の中の一室に出た。

同じ顔の人が二人もいると
フクロウたちが混乱するから。
と言って、ディアナは
鹿の姿に変身した。

誰かいないかなあ。
と言いながら三人が別室に行くと、
執事のミネルバとイブーに出会った。
これはこれはディアナ様とアイスさん。
それにお連れの方は。
とミネルバが言った。
ああ、あなたは忘れもしない、
倉庫で私たちをこの世界に導いてくれた、
あの時の方ですか。
とイブーが言った。
そうなのよ、
この人はシモーヌさん。
感激です。
とミネルバが言った。
よろしくね。
とシモーヌが言った。

すぐにお昼寝中のオウル様に
声をおかけしてお呼びしますので、
応接間でお待ちください。
私がご案内します。
イーブは喜んでいる。

やがて三人が案内された応接間で待っていると、
寝起きのオウルがやってきた。
ディアナ様、シモーヌ様という
創造主が来られたと聞きましたが、
本当でしょうか。
あそこにいるのがシモーヌさんよ。
シモーヌはよろしくね。
と言っている。

シモーヌ様。感激のあまり、
なんと言ったらいいか、言葉もございません。
私は女王代理のオウルと申します。
私たちがシモーヌ様にこの世界に導かれて以来、
ただ一人の先住者であった鹿のディアナ様を
国の女王と戴いて仕えてきましたが、
ある時ディアナ様が失踪されたので、
私が臨時に代理役を務めていました。
先頃ディアナ様は一度戻ってこられたんですが、
自分は自由の身でいたいから、
国王の代理役を続けて欲しいとおっしゃられて、
現在に至っているわけなのです。

それはご苦労様。
ディアナの失踪と帰還という出来事を除けば、
だいたい私の予想通りの展開ね。
あなたたちフィギアの精霊同士なら
みんな仲良くやっていけると思っていたわ。
あなたたちをこの世界に送り込んだまま、
私が一度も姿を現さなかったのは理由があるの。
けしてあなたたちを見捨てたわけじゃない。
それは全て生きていて生じる問題を
自分たちの力で解決して欲しかったからよ。
それはこれからも同じ。今日ここにきたのは、
ディアナの失踪にまつわることを
知りたいというのが大きな理由なの。
それと一つはやっぱり世界の変化を確かめたいことかな。
このお城、最初はこんなに立派じゃなかったし、
壁にはディアナの肖像画もなかった。
あなたたちがこの世界を作り替えているのよ。
さてと、もうこのお話は終わり。
散歩して戻ってくるから、
大袈裟な歓迎会なんてしないでね。
解説)
続きます。