May 27, 2026
蜘蛛とマリア

サルバドールとデュアンは、夢食いの蜘蛛を連れて、
郊外のジルの別荘の敷地にある魔術劇場に帰って来た。
あら、戻ったのね。
公園のお花見はどうだった?
とマリアに聞かれている。

造花の桜とはいえ、大きいので、
なかなか見応えがありましたよ。
蜘蛛がテーブルの上に
ぴょんと飛び移った。
あら、その蜘蛛は、
まさか夢食い?
そうなんです。
実は公園で出会ったんですが、
住む家がないようなので、
ここで暮らしたらどうかと提案して、
連れて来たんですが。
ハリーさんは?

そうだったの。
どうぞよろしく。
私はマリア。
私はハリーの妹ジャンヌの娘で、
ハリーは私の叔父よ。
ハリーはカーミラと一緒に
アフリカのホテルに逗留してて、
このところずっと留守なの。
でも、私が留守を預かってるから、
この魔術劇場に泊まりたいならOKよ。
デュアン。お部屋を用意してあげて。

おお、ありがとうございます。
お世話になります。
と蜘蛛が言った。

寝場所ができてよかったな。
どんな事情で現実世界に来たのか
知りませんが、
同じ夢食い同士なので、
何か助けてやれればと思いまして。
とサルバドールが言った。
人を探しているんです。
名前を思い出せないんですが。
一人は魔族の女性でもう一人は人間の女性です。
と蜘蛛が言った。

ふーん。
ここは魔族の館で、魔族ならハリー夫妻に私に、
私の母、それに今はいないけど、
ハリーの娘のヴィヴィアンも住んでいる。
町で人探しをするなら、その姿では不便でしょう。
ハリーかヴィヴィアンか
フミコかシモーヌがいれば、
人間の姿に変身させてあげられるけど、
あいにくそんなすごい魔法が使える人は今はいないわね。
あ、今おっしゃった名前で思い出しました。
探している魔族の人は確かシモーヌで、
人間の女性はサラです。
と蜘蛛が言った。
シモーヌはパリに家があるらしいけど、
いつも飛び回っているから居場所はわからない。
サラも最近はシモーヌと一緒に
行動してるみたいで不在がちよ。
でも彼女の家ならわかる。

私が案内してあげる。
というとマリアは呪文を唱えて、
黒猫の姿に変身した。
すごいですね。
と蜘蛛が感心している。
私ができる魔法は
この変身の魔法と、
箒にまたがって空を飛ぶことくらいなの。
この姿なら、あなたを守ってあげられるわ。
さあ、いきましょう。

鏡の扉を使って、
バー・デジャの店の奥に抜けてきたマリアと蜘蛛は、
店内を入り口に向けて進んでいる。
店内の常連客は、
赤いリボンをつけた黒猫が
マリアだと知っているので、
誰も気にしないようだ。

マリアと蜘蛛は広場に出てきた。
このあたりの野良猫は
みんな私の手下みたいなものだから安全よ。
でも子供達に見つかると、
面白がって何されるかわからない。
とマリアが言った。
あ、あのドラゴンも
夢食いじゃないですか。
とドラコを見て蜘蛛が言った。
そうだったわ。
見つからないうちに
行きましょう。
解説)
続きます
Apr 27, 2026
常春の国で

お城の客間での会話は
続いていた。
オウル。それで、
心配事ってなんなの?
いえね。いつもお花畑にいる
カマキリの姿を、
最近見かけないというんですよ。
これからみんなに集まってもらって、
情報を聞こうと思っていたところなんです。
あのカマキリはフクロウ仲間ではないですが、
彼もこの国の立派な住人ですから
心配しているんです。
この前私が、ディアナに
鹿せんべいを届けに来たのは、
そんなに前じゃないわよね。
ディアナはまだいるの?
ディアナ様はエドがこの国に
慣れたからといって、
「忘れられた夢の世界」とかに
お戻りになられましたよ。
エドならお部屋にいるはずです。
エドとディアナは
毎日野原を走り回っていたはず。
カマキリを見かけてないのかしら。
私たちが聞いてみるわ。
では私は広間にみんなを
集めてお待ちしています。

3人はエドの部屋に向かった。
広いから迷いそうだけど、
確かこっちだったはず。
とサラが言っている。
エドっていうのも
何かのフィギアの精霊?
とリリスが尋ねている。
エドは馬のフィギアの精霊よ。

これはこれは、
シモーヌ様に、サラ。
それにあなたは!
リリスではないですか。
エドワードね。
さっき馬って聞いて、
そうじゃないかって一瞬思った。
二人は知り合いなの?
ジャンの倉庫で一緒だったのよ。
短い間だったけどね。
ジャンが連れて行ったまま
帰ってこなかったから
誰かにあげたんだと思ってた。
シモーヌ様がこの世界に
送ってくれたんですよ。
その「さま」ってつけるのやめてよ。
シモーヌでいいから。
はい。ついフクロウたちの口調と、
一緒になっちゃって。

この前いただいた
鹿せんべい美味しかったですよ。
それは良かったわね。
でも馬があんまり鹿せんべい食べすぎると、
馬鹿になるっていうわよ。
そうなんですか。
もちろん冗談よ。
またお土産に持ってくるわ。
ところで最近お花畑で、
カマキリの姿を見た?
オウルが心配してたんだけど。
毎日散歩してますが、
そういえばこのところ見かけないですね。
いつも走る時は、
踏み潰さないように注意してるんです。
やっぱりね。
いなくなったのは事実みたい。
オウルがみんなに集まってもらうって
言ってたから、広間に行ってみましょう。

3人が広間に行くと、
サラたちはオウルの横に
並ぶように言われた。
シモーヌ様、またお目にかかれて
光栄です。などと叫ぶフクロウもいる。
サラは、エドも
カマキリを見かけていないと言っていると、
オウルに伝えた。

オウルは、みんなにリリスを
シモーヌの客人として、
また自分の古い友人としても紹介してから
おもむろに話し始めた。
さてみんな、
集まってもらったのは
お花畑からカマキリがいなくなったようなんだ。
だれか見かけたものはいないかな。
遊覧船を運転してますが、
湖付近では見かけませんでした。
毎日森に木の実を拾いに行きますが、
途中で通るお花畑で
確かにこのところ見かけませんね。
そうかそうか。
見かけたら報告してくれたまえ。
では散会。

みんなそれぞれ
広間から去っていった。
カマキリがいなくなったのは確かで、
そのごの目撃者ゼロみたいね。
あのー、シモーヌ様。
あら、あなたはグーフォ、
頭に乗ってるのは、
この間マンスフィールドさんの倉庫から
ここに送ってあげた
カラフルな置物のフクロウね。
元気で暮らしてる?
おかげさまで。
でも、僕にはまだ名前がないので、
自己紹介できないんです。
そうだったのね。
急いでて名付けるのを忘れてたわ。
じゃあ、ここで名付けてあげましょう。
あなたの名前は福郎。

福郎ですか。おめでたそうで、
いい名前ですね。
とても気に入りました。
でもどうして。
オウルは、マンスフィールドさんが
つけた名前だけど、
ここにいるフクロウたちの名前は、
精霊としてこの国に送るときに、
私がいろんな国の言葉で、
フクロウの名称を呼び変えて
そのまま名付けたの。
あなたの名前はそのまま、日本語よ。
体に福って書いてあるでしょ。
その文字を生かしたの。
そうだったんですね。

オウル。
私とサラは、今回は
リリスにこの国を案内するために来たんだけど、
カマキリの行方を探すのを
手伝ってあげる。
おお。ありがとうございます。
さすがお優しい創造主さま。
夜型のあなたはお昼寝するといいわ。
まずはアーキスに聞いてみる。
解説)
続きます。
Mar 27, 2026
春の雨

広場は今日も花曇りだった。

あら、
ぽつりときたみたい。
とルビーが言っている。

やがて本格的に雨が降り出した。
みんな急いで雨宿りしている。

広場に雨が降るのは久しぶり。

桜の時期は
これだからなあ。
植物にとっては
恵みの雨でしょ。
本物の鉢植えは
砂漠のバラだけだよ。

子供達は、
春雨じゃ、濡れてしんぜよう。
と言って遊んでいる。
あ、ローラさん。
忘れ物だよ。

ありがと。
取り込むの忘れちゃた。

たまきたちも
ドルフィンの2階に
避難させてもらった。

洗濯物大丈夫だった?
ええ手伝ってもらったおかげで
セーフだったわ。

みんなビールは
しっかり手放さないのね。
飲みかけですから。
解説)
続きます。
Feb 27, 2026
子供の領分 そのに

広場の演奏は続いている。

さっきまで広場にいたみたいだけど、
ルイちゃんはどこに行ったのかしら。
他の子と一緒でしょ。
そうだといいけど、
あの子、よく迷子になるのよ。
4年前の春節でも
迷子になったの。
そんなに前から知ってるの?
その時が初めてだったはずよ。

ルイたちは
ベランダの洗濯物干し場に移動していた。

仲良しになったんだし
探偵団を結成しようよ。
少年探偵団。
と圭が言った。

少女探偵団ね。
え。
そんなのないよ。
男の子は圭だけでしょ。
そうか。

団長はピリカだね。
一番年長みたいだし。
私は子鹿のフィギアの精霊で、
年齢なんてないのよ。
精霊であることに目覚めて数ヶ月だし、
この世界のこと何にも知らない。
みんなそうだよ。
脇役みたいだし。
それで探偵団って
何するの?
まだわかんない。

広場のラーメン屋台には、
ドルフィンのマスターと
イベント企画好きの夏木さんがいた。
はい、お待たせしました。
と言われている。

私もラーメンを。
はい。あら初登場、
じゃなかった、初めての方ですね。
観光でお見えですか?
そんなところです。
あ、僕もう食べ終わるので、
この席空きますよ。
とマスターが言っている。

男性はラーメンを啜っている。
うまいですなあ。
春節はラーメンに限る。
餃子もありますよ。

マンゴー亭では、
調理の区切りがついたローラが
厨房から出てきた。
そのチャイナドレス、
なかなかお似合いよ。
ちょっと丈が短すぎると思いません?
それしかなかったのよ。
倉庫でスラックス探してみるわ。
と小池恵子が言っている。
解説)
続きます。
Jan 27, 2026
馬の話 そのなな

あの二人気が合いそうですね。
元々この世界はディアナのために作ったの。
彼女なら土地のことをよく知ってるから、
エドの話し相手になってくれると思って、
一緒に来てもらったのよ。
鹿せんべいはあげたの。
それはもう。

ミネルバがやってきた。
シモーヌ様、
オウル様がお目にかかりたいと
おっしゃっておられます。

シモーヌ様。
おかえりなさいませ。
年末年始にはお世話になったわね。
とシモーヌが言った。
それで何かあったの?
いえ。
ただ、いらっしゃったと聞いて、
お顔を拝見したくなりまして。
これでまた
心置きなく昼寝が再開できます。

サラは分かったばかりのエドのことを
オウルに教えてあげている。
なんと、あのヴィヴィアンさんの、
子供の頃の遊び相手だったのですか。
不思議なご縁ですなあ。
マークは、
お城は森に囲まれているんですね。
と言いながら外の風景を眺めている。

マークさんはここに初めて来たのね。
お城を案内してあげる。
もっと見晴らしのいい場所があるわよ。
と言って、
シモーヌは先導して部屋を出た。

上の階にバルコニーがあるの。

ほう。見事な景観ですね。

バルコニーからは、
遠くの雪を被った山々や
森林や湖の風景が見渡せた。

その頃、
お花畑を走り回ったエドとディアナは、
水辺で休憩していた。
解説)
続きます。