Haizara-Cho::Suigara-yama 99[Shinsuke Kirita]

春をまちながら　そのさん

子狐はトラ猫たちに
からまれている。

ここは僕たちの縄張りだぞ。
そんなこといつ決まったの？
今年からきまったんだ。




寅年だから虎しかはいっちゃいけないんだ。
虎なんていないじゃない。
う、なまいきなやつだ。




きつねうどんに箸をつけようとしていた
駒井魔子は、妹の危機に気がついた。




魔子は席をたって
近づいていき、黙ってすっと手を挙げた。
するとその剣幕に驚いた
トラ猫たちは退散していった。




狐の姿のままで町に来ちゃいけないって
いったでしょう。
ごめんなさい。
わたしまだ姉さんみたいに化けられないし。
人間に捕まったらえりまきにされちゃうわよ。
せっかく貴理子さんから
安心安全な土偶の体を頂いたんだから、
もどっておとなしくその中で待っててね。
うん。




森林公園の管理スタッフが、
いやあ、助かりました。
といっている。




小池恵子が事情をきくと、
燃料を町に運んでくる途中で
荷車の車輪が壊れてしまったところ、
通りかかったこの旅の人が、
修理を手伝ってくれたうえに、
車の後押しをしてくれたというのだった。




まだお名前をうかがっていませんでしたが。
あ、私はたんごの権太といいます。
タンゴを踊られるんですか？
いえ。丹後権太というのです。




魔子さん、きつねうどんたべかけで
どうしたのかな？
荷車のところに、
みかけないひとがいるみたい。
とモモコがいった。




あのリックのひとも
人間じゃないよ。
とリリスがモモコに囁いた。


解説）
またまた思いつきエピソードが
つづいていきます。