May 25, 2011

予言  ジュール・シュペルヴィエル  中村真一郎訳

やがて地球は
夜昼の区別もなしに廻る
盲いた空間にすぎなくなるだろう。
アンデス山脈の巨大な空の下には、
山も見えず、
小さな窪地一つなくなるだろう。

世界中のすべての家から、残るものは
ただ一つのバルコンだけだろう。
人間の世界地図から残るのは
天井のない一つの悲しみだけだろう。

大西洋は火と燃えて、
風の中の塩辛い一滴の味と、
海のことはすっかり忘れた
魔法の飛魚一匹だけになるだろう。

1905年型の自動車では
(車輪は4つもあっても、道がない!)
当時の三人の娘が
気体になって残って、
パリも遠くないと思いながら、
窓から景色をみているだろう。
そして、喉をしめつける
空の匂いしか嗅げないだろう

森の広場では、
一羽の鳥の歌が立ち昇るが、
誰もそこをどことも言えず、
好きだとも言えず、聞こえもしないだろう。
それを聞いて、「ひわだな」とつぶやく
神様以外には。
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