Apr 24, 2008

小沢信男『裸の大将一代記 山下清の見た夢』

引き込まれて読んだ。山下清もさることながら、小沢さんの語り口のリズムに魅せられた。わたしは両親が地方出身だから、東京生まれといっても、ことに下町にはなじみが薄い。周りには下町育ちの知り合いも多いが、対し方がなんとなくぎこちなくなってしまう。小沢さんは長い間余白句会での先生でいらした。あこがれの、でももうひとつ近ずきにくい先生だった。この本が以前単行本で出たとき、欲しかったが、あきらめていた。それを、小沢さんから直接、それも恐れ多くも献辞入りで(小沢さんの字体の懐かしさも香り出てきて)いただいて、からだの底からうれしさが沁みてきた。先生、ほんとにありがとうございます。
一気に読んだ。いちばん興味を引かれたのは、式場博士と山下清との丁々発止。インテリ代表ヴァーサス放浪の野生児。お互いの言い分がかみ合うわけがないのを、博士が驚くべき包容力で包み込んでいる。博士が山下清という巨大爆弾に向かって突っ込んで行った感じがする。自分が粉々になる危険を感じて避けるにちがいないこういう事態を、あえて(なぜ?)生き切ったこの人のすごさに感服した。巨人だと思う。このワールドに接することができて本当にうれしい。そして小沢さんご自身のこともすごくわかって、それがまたなんとも魅力がある。先生是非、次を書いてください。楽しみにしています。
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Apr 13, 2008

ヘルペスでした

3月18日の昼間、庭先でころんで、唇を切った。右の肩もしたたかに地面に打ちつけて、唇のほうは腫れ上がらずにすんだ。『ウラン体操』を読む当日だったので、ただただ、外から打ち身や傷が見えないかを心配した。2週間たって、右の腕から肩にかけて、鈍痛が増していき、わきの下に赤い疱疹が並んだ。いっこうに引く気配がないので、駅前の玉川クリニックを受診した。老先生が「ヘルペスですね」と、ニヤリとした。その理由は別の話。結果的には、4月11日の『雪柳さん』まで持ち越し、まだ完治していない。筋肉の奥が、ズーンといやな痛さ。これで、いちばんの困惑は、意欲がすっかり削げ落ちてしまうこと。一刻も早く背中を布団にぴったりつけて、じっとしていたい。それだけが生きる希望のような落ち込み方をすること。机に向かおうとすると、吐き気のような嫌悪を覚える。 しばらく死んだ振りをしていよう。
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Apr 04, 2008

スタラクタイツ・スタラグマイツ

4月11日(金)にギャルリー・東京ユマニテで読む『雪柳さん』の中の1篇、「スタラクタイツ・スタラグマイツ」について、最近起こったあることを書いてみよう。遅まきながら平野啓一郎の1998年に発表されたデビュー小説「日蝕」を読んで、その内的な動機が「スタラクタイツ・スタラグマイツ」に酷似しているのに衝撃を受けた。1975年生まれの若い作家の文学の動機と自分のかつての詩のイメージに共通性があるというのは別に取り立てたことではないと思うが、鍾乳洞内の出来事というイメージの共通性に驚いたのだ。23歳の若い作家がイメージしたものの具体性と展開の強烈性には至っていないが、わたしの場合は「ペレアスとメリザンド」のイメージから派生した、少し形成性をぼかした仕上げになっており、それは、それ以上の想像力が及ばなかったせいもあるが、芸術的志向の点での何らかの共通性を感じてしまったのだ。いま、思いついて矢川澄子さんのくださったはがきを探し出した。きちんとした明確な字体で、「散文詩風なnがいちばん好きで、盗みたいくらいです」とあり、nはスタラグマイツ…である。矢川さんからいただいた唯一の葉書である。
Posted at 20:36 in n/a | WriteBacks (0) | Edit
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