Nov 28, 2013

レイナルド・アーンのオペレッタ「モーツアルト」

アーンが台本作家サッシャ・ギトリーに依頼されて作曲した3幕の小オペラ。作曲家モーツアルトがパリに滞在した数日間、という架空の設定で、初演(1925年)のモーツアルト役はギトリー夫人でソプラノ歌手のイヴォンヌ・プランタンが歌ったそうだ。EMI版の2枚ディスクのCDを運良く借りることができて、ここ半月ほどこればかり聞いている。パリとモーツアルトはあまり似合わないが、ギトリーが妻に歌わせるため新作オペラの題材に思いついた。フランス語がきれいで、科白を言うだけの登場人物も半分。フランス語の会話は歌を聴いているのとさして変らない。意味はあまりはっきりしないが、モーツアルトがクラヴサンを弾いて、サロンの女性たちと合奏するシーンは美しい。プルーストの「失われた時」に出てくるいたちの民謡のフレーズがドッキリさせられる。モーツアルトのフレーズもたっぷり盛り込まれていて、明るく可愛らしく、モーツアルトの音楽がどれほど世の人々の気分を潤したか、あらためて考えさせられる。最後はこのモテモテのイケメン作曲家が惜しまれながらパリを去る、という終幕。別にモーツアルトでなくともよさそうだが、モーツアルトでなければだめでもあるのだろう。他愛ない話し。Youtubeで上演舞台の一部が見られるが、これはピント来ない。CDを聞いているほうがずっとよい。ただ、アーンという人はお父さんがドイツ人だそうで、母はスペイン系ヴェネゼラ人で、フランス人の血はない。30代でフランス市民権をとった。10代から作曲に秀でて、コンセルバトワールでマスネーの愛弟子だったそうだ。このオペレッタを聞くと、ウイーン歌劇の匂いがする。時代も血筋もそんな土台があるに違いない。歌曲「クロリスへ」の無垢さ、バロック的な明るさもフランスを飛び越え、国籍を超えて共感を呼ぶ何かがあると思う。いずれこのオペレッタをローレルが指揮すればいいなと思う。演出と科白を今日的に変貌させるのはのはフランス人のお得意芸だから。繊細で、心深くて、子供っぽくて、やや蓮っ葉な、フェミニンなモーツアルトが生れてほしい。モーツアルトが貧窮の中で亡くなって共同墓地に運ばれていったという話しがずっと記憶に沁みついている。蝶々のような人だ。
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