Mar 27, 2014

『海と毒薬』ようやく読了

いくども途中まで読んで先へ進めなかった。地元町田文学館の遠藤周作展示が終って、久しぶりにもう一度挑戦した。家でひとりで読むのはつらく、薄い文庫本なのでかばんに持って出て、駅のベンチや車中で断片的に読むという防御策を講じた。きのう最後のページまで読むのに、帰りの電車の乗換駅をやり過ごし、めったに使わないおよそ遠回りな順路をとることになり、ひどく疲れた。だが読み終えてよかったとおもう。そしていままで読んでいなかったことを悔いた。大変しつこい作家だ。しつこくて強い。明晰で容量が大きい。鋭いが細かくはない。でだしの部分の意図がつかめず強い違和感におびやかされた。作家の業、作家であることの苛烈さを思う。できればこんなテーマの中で生きていきたくはない。一言で言えば、日本人の自意識をひとりで背負ってしまった人格といえばいいだろうか。子供の頃、周囲の大人の意図でクリスチャンになった。そのことを青春時代にずっと意識の上に担い、いくども捨てたいと思った。フランス文学を学ぶ中で、自分のからだにあわない洋服のようなこの信仰を、脱ぎ捨てるのではなく、少しずつ仕立て直して自分の身に合うようにして着続けて生きていこうと決心した。ここに遠藤周作という作家の核心がある。この忍耐力としつこさ、うつわの大きさと誠実さがある。
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