Sep 22, 2005

蚊に刺されて

 この夏は蚊に食われることが多かった。理由は、どこか涼しい草原に避暑に行ったわけでも、ほっておいた別荘に久しぶりに出かけて家の周りを家族総出できれいにしたわけでもなく、そういう身分ではちっともないので、あいかわらず、道路より低い穴倉のような自室で机にこびりついていたに過ぎない。では、どこで蚊に刺されたのか?理由は、下側の隣家との間のブロックがゆるんで、落ちかけている、なんとかしろと、再三催促されて、春の初めに、しかたなくブロック垣を積み直したことによる。引っ越してきてから植えた椿、あるいはいつの間にか生えた実生のイイギリ、40年ちかくが経ち、窓を蔽って西日よけにもなり、いい感じだったのに、と名残りを惜しみつつ、根こそぎにした。(抜くために大金をはたいた。)駄目な子ほど可愛い、の植物版で、この野生の素性知れずの駄木たちの生命力に感嘆しながら暮らしてきたのだ。ところが、駄木はだぼく、根が張りすぎてブロックを押し出し、このままにしておくと家のコンクリートの基礎だってあぶないよ、と専門家に脅された。奥さん、もう大きい樹を植えちゃダメだよ。とありがたい忠告とともに、2ヵ月かかかって工事が終った。ほりあげた土を戻したまま、この夏を、土肌をむき出しにしたまま迎えた。びっくりするように、藪が茂った。赤まんま、露草、モントフリージヤ、セージ、みずひき、カタバミ、ススキ、何でもありに伸びまわり、咲き狂って、それはそれなりに美しく、時に見とれていた。土が軟らかいので、風に乗った種が根を張りやすかったのだろう。しその葉まであるので、ときどきいただきにこの藪に足を入れると…地団駄をふみ続けなければならないほど、残酷なほど噛まれて。秋の彼岸を明日にして、まだまだ、足も腕も赤い斑点だらけにして、喜んでいる。この痒さは自虐的な快感ではないか。
十五夜や失敗ばかりするわたし 薫
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