Mar 28, 2008

谷口謙詩集『惨禍』

最近送られてくる詩集の中ではきわだって分厚い。茶色を基本にしたベースに石あるいはコンクリートの壁の地肌を思わせる部分を配した装丁がある思いを喚起する(装丁直井和夫)。それを言葉で言うのは難しいが、あえて言えば、精神の継続性と言えばいいのか。自分のやってきたことから逃げない、物静かさ。この1冊に向き合うと、何か鬼気迫るものがあると感じられるのは、その気がここに満ちているからに違いない。内容はいつもと変わらぬ、警察医として死体検案書を書くにいたった人、ひとりひとりの無駄のない簡素な記録。要するに、異常な死を迎えた人の死体の記録。たとえば頭が取れ、足が切断されたぐちゃぐちゃな死体に向き合う。80歳を超えて、最終行に初めての経験と記されている。医者の中でも特に特殊な仕事を日々成し遂げていく人の、個人的な感情の極端に切り捨てられた、そしてその記録性が、一種のリズムとも、文体ともなっている、ほかに類を見ない詩。谷口さんとはもう長いお付合いである。先生、良い詩集です。先生もきっと達成感を感じられていらっしゃるのではないでしょうか?読むほうも、そうです。これだけの人々の死の上に立った言葉に、何か信仰に似たようなものさえ(信仰に無縁なものにとっても)感じます。
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