Aug 26, 2006

メーテルリンク『蟻の生活』

ほぼ半世紀以上、ということは、青春時代から、読もうと思って果たせないでいる本というものがある。この本もそういった中の一冊。バルザック全集や仏蘭西戯曲全集なども。念願かなってクリヤしたのは、ドストエーフスキー全集、これは高1の春から夏休みを費やし、書簡集まで行った。「戦争と平和」やチェーホフ戯曲全集、シェークスピア全集もそうやって読んだ。「チボー家…」も。「失われた時…」は学部の卒論にしたから当然。原文は読みきれなかった。
メーテルリンクは不思議な作家だ。高校時代に演劇部で、1幕劇「ひそみいる者」を脚本の読み合わせまで行って、つぶれた。これは無理だという人がいて。確かに無理だったかもしれない。だが、上演まで行って無残に敗退したほうがすっきりしたのではないかという思いがこびりついている。そんな事情で、メーテルリンクの戯曲は、わたしにとってハムレットの亡霊のような、つきまとい感がある。その、神秘主義の戯曲家が、3部作と言われる理科的観察の本を書いているというのは、妙な感じがする。「蜜蜂」「白蟻」「蟻」のいずれも日常極めて卑近な昆虫の観察記録なのだから、ファーブルさんも真っ青と言えようか。ファーブルとの関係もどうなっているのか、まだ分からない。
ともかく、年来の思いに着手できたのはうれしい。古くなって、汚い本で、昭和7年(1932)改造社刊、訳者は園信一郎。1930年パリ留学中に訳したとある。まだ、はじめの数ページだが、言葉使いは古めかしいが、明解、リズムがあり、感じがいい。まだ日本が幸せだった時代だと思うと、感慨が深い。それからほぼ10年して、戦火の地獄を舐めようとは、歴史というものは思いも及ばぬところに国を人を導いて行くものだなと思うと、少し空恐ろしい。
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