Mar 10, 2007

バーナード・ショウの戯曲「聖女ジョウン」

これとシェークスピアの「ヘンリー六世第1部」の2つの戯曲は敵側イギリスの側から書かれたジャンヌ・ダルクで、とくにショウの「聖女ジョウン」は極めて冷静で鋭い優れた作品であることが読むとわかる。戯曲の面白さとしては、多少長台詞が多いので、退屈かもしれないが、ショウの興味が、ジャンヌそのものよりも、ジャンヌをどう考えるか、の方に重きを置いており、一言で言えば、神と普通の人間との間に牧師や貴族が介在することに対する個人の精神の反抗であると極めて明快に整理し尽くしており、さらになぜ聖女であったかについては、命を救われても、教会の牢に囚われたままであるならば救われはしないとしたジャンヌがむしろ死ぬことを望むという結末になって、かなり近代人的な解釈になっている。わたしはこれはすとんと落ちて、もうこれでジャンヌ問題は、自分としてはいいかな、とも思わせられた。このへんでいいのではないか。他の登場人物の描き方も、極めて冷静で人間的。例えばジル・ド・レエは、《すこぶるお洒落で冷静な二五歳の青年で、みんながひげを剃っている宮廷の中で、ひときわ目立つように、…伊達男。努めて機嫌のいい振りをしようとしているが、自然に備わった朗らかさがなく、本当に愉 快なのではない。…》とト書きにある。ジャンヌについても、《体格のいい一七,八歳の田舎娘で、かなり上等な 赤地の服を着ている。顔つきは尋常ではなく、非常に想像力の強い人間にしばしば見かけるように、両目はひろく離れて、とび出している。鼻孔が大きく鼻筋の通った形のいい鼻。短い上唇。意思的で、しかもふっくらした口。負けん気のつよそうな美事な顎。…》というような具合。目の前に見えるようだ。二五歳のオルレアンの守備隊長デュノアを含めて、シャルル26歳、で、この歴史的な大事件を牽引したのは25,6の青年たちだったことがわかって面白い。活動的なロックグループという感じだ(とはいえ今で言えば30を越した分別盛り)。「ヘンリー六世」のほうは、いかさまのキチガイオンナとして描かれており、とても読んでいられない。同じ人間がこれほど別の人格に作られているのもまた珍しいのではないだろうか。
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