Sep 20, 2006

秋日和

今日から秋の彼岸。台風13号がよろよろと、あと味の悪い災害をのこして日本海を北に去った。「嵐のあとはハダカで洗濯」と母がよく云っていた、そんな暑い晴天。なにもかも泥の中に浸け込んで。ピースボートで地球を1周してきた人が、けっきょく、日本の自然が最も美しいと結論する。その世界一の風景は毎年泥の中に崩し落とされ、また必死に再生され、それをくり返して成り立つつかの間の美か。自然の災害から開放されるどころか、以前には考えもしなかった悲惨なダメージがますますエスカレートして行く。人間同士も、互いに絶望的に傷つけ合っている。陸地はいずれ水没する。そうなる前に死ねることが人類の唯一の僥倖だなんて。 生者の不意を衝いてつかのま姿を現す「死者の町」について、 アルベール・ポフィレ『中世の遺贈』を町田図書館で借りて読んでいるものだから、頭を占領されている: ブルターニュの神話だそうだが、現われ方に2通りある。 ①ある湾で漁をしている船が、錨が外れないので、ひとりの漁夫が海へもぐってみると、教会の搭に絡まっていた。窓からのぞくと、内部は明るく、着飾った人びとが大勢集まり、ミサが始まろうとしている。司祭がミサの進行をしてくれる人はいないかとたずねている。あとで港の牧師が言った。それはイスの町だ。もしその時あなたが申し出れば、その町は蘇っただろうにと。海底の町がどこにあるのか、もう決して分からない。 ②たぶん、フィニステール県の港町ドアルヌネーズ辺り、女が海水を汲みに浜辺に行くと、不意に巨大な柱廊が現れ、そこに入ると市場がにぎわっている。商人が美しい布地を呼び売りしていて、買ってくれ、としつこく頼まれたが、財布を持っていないので、買えなかった。ふと気がつくともとの浜辺に一人で立っていた。教会の牧師の話では、もし、ほんの切れ端でも買ってやっていたら、その町はこの世に蘇ることができたのに。 死者たちは、生者の目前にいつも頼みごとを抱えて、現われる。死者の町には欠けたものがあって、それを生者に求めて一瞬姿を見せる。要請が受け入れられないと分かればたちまち姿を消す。 台風で泥水に呑み込まれた街は、緑の稲田の続く美しい風景を回復したがっている。ひとびとは必死に町を掘り起こす。生の現実の裏側に巨大な無言の死の町が横たわっている。
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