Aug 31, 2009

シュペルヴィエル『帆船のように』

1919年26歳のときに出版された2冊目の詩集。若書きで、真率さsincéritéだけがとりえ、と詩人本人が後に語っているというが、76歳までの全作品を読んだうえで、振り返ってみると、なるほどと、その独特な詩才を充分味わうことができる。爽やかで初々しい詩の良さ。成熟期の詩は、かなりニヒルで、イマージュも飛躍しがちで、悲観的であるのに、まだこの頃は、初々しさが先行して、周囲への愛に溢れ、みずみずしい。人はこんなにも最初は柔軟な感情に満ちているのかとほっとする。その証明のような詩集。ウルグアイのモンテヴィデオ生まれで、生涯をパリと行き来してすごした。幼少時代の南アメリカの記憶が作品の独創性の源。南北大西洋を隔てて気が遠くなりそうな距離だ。そこに巨大なアーチが架けられている。「煙は消える 広すぎる青空に」、「柳に空色の長い花を咲かせるように…」鬱積した気持ちが吹き払われる。後藤信幸訳、1985年、国文社刊。
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