Aug 14, 2013

My affections to Jaroussky

 もしジャルスキーがフランス歌曲のCD を出していなかったら、装飾音符の技巧が見事なバロックアリア歌手とだけの認識だったろう。CD 『OPIUM』をいやになるほど聞き続けることで、私のアフェクションは老い猫のスーと同じ位置を占めるようになった。 そこで:ジャルスキーの歌う楽曲ナンバー5:
①レイナルド・アーン+ヴェルレーヌ詩「白い月」
②レイナルド・アーン・+テオフィル・ド・ヴィオー詩「クロリスに」
③JCバッハ+メタスタジオ詩「甘い炎」
④レイナルド・アーン+ヴェルレーヌ「牢獄から」
⑤ヴィヴァルディ歌劇”Andromeda liberata”より「いつも太陽は(ペルセオのアリア)」
次点⑥エルネスト・ショーソン+ルコント・ド・リール「はちすずめ」
①は絶対美。他のどの歌手より完成度が高い。抽象度と言い換えてもいい。楽曲の完璧な完成度に息吹を吹き込む若い声質が魅力。
②は個性美。ジャルスキーの右に出る歌はいまのところない。「ぼくにぴったりです」と本人が言うとおり、デビューから間もないジャルスキーの初々しさ、素朴さが絶妙。やがて大歌手になってこのみずみずしさは失われるのだろうか。
③はオケの力。ローレルの控えめかつ超快速特急のような疾走感がたまらない。ローレルさんいいね!頼りにしてまっせ!
④は透明美。地上のわれわれにある瞬間に奇蹟的に見えるクリスタルな世界。ルミューのコントラルトの暖かなふくよかさも捨てがたく、甲乙つけがたし。
⑤は地中海天使スピノージのバイオリンが乗せる照らされた内面性。繁栄の極みの憂愁。Look at me! と叫ぶ兄貴。歌唱自体はチェンチッチのさらに内面的な声質のほうが適しているかもしれない。
⑥はこれも、親しい兄貴デュクロのピアノがリードしている。ジャルスキーはほんとに共演者に恵まれている。共演者の音楽に乗って自分に没入していく。加えてマナーの良さが優れた才能を引き寄せるのだろうか。うらやましい。これからもこれらの音楽家とどんどん共演してほしい。練習シーンを見るとかなりクサイ表情で口をゆがめて、指揮者に文句をつけていることがある。持ち前の才能を恃む自信ときちんと勉強してきたという自負(譜面主義)で完全武装しているなという感じ。
それが無いと世間は渉れまい。
コベールの小説『骨の列島』は今月末刊行です。
5つのエピソードのうち「ノゾキとチカン」が出色です。
Posted at 13:19 in n/a | WriteBacks (1) | Edit
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初コメントです

初めまして。
今年になって初めてJarousskyのコンサートに行ってすっかりファンになってしまいました。
今は全部買いましたが、真っ先に買ったCDは、このOpiumでした。繰り返し聴いているうち、アーンの「白い月」が一番好きになりました。
私もバロックアンサンブルで演奏しているので、リハーサルや録音の風景のビデオは本当に興味深く見ています。
練習シーンで、クサイ顔で口をゆがめて指揮者に文句を言っているというのは、アイム女史とCaldaraのレペの時のビデオでしょうか。
Jarousskyが"C'est bizarre"と言っているのは、文句を言っているのではなくて、音の流れが変だ、ということを指摘しているように思えます。楽譜がいつも正しいとは限らないので。
本人はオケと合わせる前に自分で声楽の教師とじっくり練習しているけれど、オケと初めて合わせると全く違うものになると言っていますね。指揮者と意見をぶつけ合って曲を作っていくのでしょうね。
音楽をする醍醐味は、みんなで一つの音楽を作り上げてゆくことだと思います。大体の歌手は、自分がソリストでオケは伴奏、と思っているように見えますが、Jarousskyの場合はヴァイオリニストだったこともあって、みんなで作り上げた演奏、という意識が特に強いようですね。類まれな歌手だと思います。

Posted by gyu at 2013/12/22 (Sun) 07:56:17
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