Jun 14, 2005

中目黒のマンションで

家裁の調停が決着し、もう3ヶ月近く長兄のマンションのかたずけをやっている。老令の母に代わってきょうだいが入れ替わり立ち代りごみ出しに通った。昨日午後、神保町の田村書店が蔵書の引き取りに来てくれた。2時の約束が3時半になった。午前中の引き取り先の本の量がよそうよりはるかに多くて時間がずれたとのこと。洋書部長さんが若い社員を連れ、台車2台を持ってドア前に現われた。それからえんえん3時間強、わたし達がそれぞれ記念に欲しい本をもらった後のすべての本を引き受けると言ってくれた。これにはびっくりした。いずれ、めぼしいものだけを引き抜いて帰るのだろうと予想していたから。あと何軒の古書店と交渉しなければならないだろうかと心配していたので。大学の研究費で買い、研究室の印判が押してあるものは、解除の印を押したうえで扱うということで合意した。高価な本にこの印のあるものが多いのだ。50代はじめ?のこの部長さんは、パリ、ニューヨークの古書市を回ってきたばかりとのことで、その人柄と見識の高さにわたしたちは唸った。いままで長兄の死後、なさけないことばかりで、気持ちが沈み、少し悲観的に考えすぎていたようだ。未だワールドワイドの古書文化の変わらぬレベルというものが実際に存在して居る風景をこの人の話を窓にして、覗いた気がした。外国の古書商にはドクターが多いんですよとの話だった。値段は数日後に弟のところに知らせてくれるとのこと。私たちは何よりも共通の認識で取引きが成立した喜びをかみしめた。さすが日本一の古書街である神田神保町に店舗を張っているだけのことはある。3LDKの空間全てを埋め尽くしていたものが運び出され、思わず金メダルの水泳選手のことばのように「わー(さすがにチョーとは言わず)、気持ちいい!」と叫んだ。きょうだいが5人で手伝ったり、蒸し暑い午後にときどき飲み物を差し出したりするのを、めずらしいお客さんだと部長さんたちも喜んでくれた。中目黒駅のそばの居酒屋で祝杯を挙げ、疲れたが清々しい気持ちで夜おそく帰宅した。
遺されし蔵書の埃梅雨に入る  みなと
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