Sep 03, 2006

蟻塚の快楽

メーテルリンク「蟻の生活」を読み終えた。蟻は出来ることをし、もっているものを与える。驚くほどの平和愛好者。蟻塚の蟻は働いて自分の袋に溜め込んだ栄養を吐き出して、他の蟻に与える。その行為が唯一の「快楽」で、求められれば、決して拒絶しない。蟻は地下の暗闇で生活しているから、ほとんど眼が見えない。通信は触手による。前足で相手を撫でてコミュニケーションをとる。バルチック地方の琥珀の中に蟻の死骸が見つかる。人間は生物の中でいちばん遅く地球に来たから、蟻がどこから来たのか知ることはできない。蟻は地球外から来たのかもしれないとメーテルリンクは結論として言う。これまでの蟻学をほぼ検討して、それに実地の観察を加えている。この作家がただものではないことがわかる。例えば、この本に沿ってテレビのディレクターが映像を取れば、人類を他の生物と区別したいという「不満」に膨れかえっている現代文明の将来を占うヒントに満ちたドキュメントになるだろう。謎に満ちた台本をいくつも創造した劇作家の頭の中にはさらに神秘に満ちた地球外への想像力が萌しはじめている。他の作品で読んだのだが、メーテルリンクの想像力の出発点は、子供の頃、井戸に落ちて溺れかかったときの視覚だという。「ペレアス…」や「青い鳥」のこの世を越えた視覚の存在の原点はどうやらここにあるらしい。
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