Jun 19, 2014

「テークラまたは牧場の菫」

ベーズレ、ぼくの従妹(いとこ)ちゃん
このごろになってきみのことをよく思い出します
あれから、ぼくはカトマンズのテロリストのように
爆走してきました
何にむかって?
平たく言えば死にむかって
そう、テロリストの生きがいは抑圧者の破壊
ぼくはそんな直接的な戦士ではない
ぼくのからだは華奢だし
腕力だって貧弱
暴力沙汰はいつも負けだった
ぼくの爆死は
肥沃なぼくの楽想を
ぼくがいなくなってもすぐそばで
ぼくがピアノで弾いているのが聞こえるようにするため
ね、ベーズレ、いとこちゃん
きみはぼくを普通の男にしてくれた
ぼくが生まれつき節をつけて歌えないのにきみは気付いていたね?
父さんや後の時代の人のいうことなど
何も気にしなくていい
ぼくの「すみれ」はきみのための歌です
とりわけ最後の2行は
ゲーテ氏の詩想が切れたあとにぼくがおぎなったもの
いずれぼくはぼくたちが若い頃きみへ送った手紙そっくりな最後の協奏曲を
聴衆の前でこれを最後に演奏することになるでしょう
歌とはちがう、ぼくはきみをちゃんと見つけた
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